TOP > 国内特許検索 > ナトリウム加熱蒸気発生器の水リーク音響検出方法
【課題】検出目的の水リーク音をバックグラウンドノイズから明確に分離でき、それによってナトリウム加熱蒸気発生器における水リーク発生を迅速に且つ的確に検出する。【解決手段】ナトリウム加熱蒸気発生器の容器胴部10の外壁に、5個以上の加速度計24を一列に配置して音響データ受信アレイ20を形成し、各加速度計で検出した音響信号を多チャンネルアナログ/デジタル変換器30を通してコンピュータ32に取り込み、該コンピュータで遅延和法ビームフォーミング処理を施す。これにより音響データ受信アレイ出力が最大となる値を求めて最大音響検出値とし、予め同様の手法で正常運転時における蒸気発生器運転ノイズについて求めた音響データ受信アレイ出力をバックグラウンドノイズとして、前記最大音響検出値とバックグラウンドノイズとを比較し、両者間に有意な違いが生じたときに水リークが発生しているものと判定する。【選択図】図1
ナトリウム冷却高速増殖炉の蒸気発生器は、容器胴部内に多数本の伝熱管を組み込み、該伝熱管の内部を流れる水を伝熱管外側のナトリウムにより加熱する構造となっている。万一、運転中に伝熱管が破損すると、伝熱管内の高圧水がナトリウム中にリークし、リークした水とナトリウムとの間で激しい化学反応が生じる。このナトリウム/水反応によって、高温・腐食性の環境が発生し、それにより伝熱管破損が伝播する可能性があり、重大な事故に至る恐れがある。従って、水リーク発生を迅速に且つ的確に検出できるようにすることが肝要となる。
水とナトリウムが反応すると水素気泡が発生し、その際に音響が生じる。そこで、従来技術として、その音響(水リーク音)を蒸気発生器の容器胴部に取り付けた音響検出器で検出し、検出値が設定値以上になったときに水リーク発生と判定するという検出手法がある。しかし、蒸気発生器内部には運転中ナトリウム流動音及び水蒸発音など大きなバックグラウンドノイズが存在し、検出目的の水リーク音との分離が課題となっており、そのため蒸気発生器運転中における十分な検出性能が提供できておらず、未だ実用化には至っていない。また、蒸気発生器のバックグラウンドノイズおよび水リーク音のスペクトルはともに白色ノイズに近く、スペクトル解析により音源を分離することも困難とされている。
そこで、例えばセンサ光ファイバを組み込んだ計装管を蒸気発生器の胴部内に挿入し、水リーク発生時の音波を光の位相のずれとして検出するなど、蒸気発生器の胴部内に挿入される計装管の内部に,水リーク時に発生する事象を検出する検出手段を装備し、前記検出手段の検出結果に基づいて水リークの有無を判定する信号処理装置を備えた水リーク検出装置が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1によれば、前記音響検出法の問題を解決できるとされているが、この技術では、センサを組み込んだ計装管を蒸気発生器の内部に挿入しなければならないという問題がある。
ところで、全く異分野の技術であるが、近年、マイクロフォンアレイを用いて指向性を形成することにより,発話音声を高品質で受音する研究が盛んに行われている(非特許文献1など参照)。ここで、マイクロフォンアレイを用いた指向性形成の一つとして、遅延和法ビームフォーミングがある。この技術は、対話型テレビなどにおいて、ユーザにマイクロフォンを意識させないハンズフリー音声認識への応用が期待されている。
【特許文献1】特開2003-28979号公報【非特許文献1】藤本 雅清、有木 康雄「マイクロフォンアレイとカルマンフィルタによる実環境下でのハンズフリー音声認識-対話型テレビのフロントエンドシステムの構築-」第4回DSPS教育者会議、pp.55-58,Aug. 2002.(www.me.cs.scitec.kobe-u.ac.jp/publications/papers/2002/2002-08-dsps-fujimoto.pdf)
本発明は、ナトリウム加熱蒸気発生器の水リークを音響的に検出する方法に関し、更に詳しく述べると、5個以上の加速度計からなる音響データ受信アレイを用い遅延和法ビームフォーミング処理を施して最大音響検出値を求め、予め同様の手法で求めたバックグラウンドノイズと比較し、両者間に有意な違いが生じたときに水リークが発生しているものと判定するナトリウム加熱蒸気発生器の水リーク音響検出方法に関するものである。
※ 画像をクリックすると拡大します。
PROBLEM TO BE SOLVED: To quickly and precisely detect occurrence of water leak in a sodium heating steam generator by clearly separating water leak sound to be detected from background noise.
SOLUTION: On an outside wall of a vessel body part 10 of the sodium heating steam generator, five or more accelerometers 24 are aligned in a single line to form an acoustic data receiving array 20, acoustic signals detected by the respective accelerometers are taken in a computer 32 through a multichannel analog/digital converter 30, and delay summing beam forming processing is carried out in the computer. In this way, a value giving a maximum acoustic data receiving array output is found to be used as a maximum acoustic detection value, while an acoustic data receiving array output previously found in a similar manner as to steam generator operation noise in a normal operation period is used as background noise, and by comparing the maximum sound detection value with the background noise, it is determined that water leak occurs when there is a significant difference between them.