TOP > 国内特許検索 > 表面物性の測定方法及び測定装置
工業的に多くの分野で重要視される表面張力や接触角は、気液固3相系が関与する現象であり、コーティング剤やインク、化粧品、界面活性剤などの性能を決める重要な要素である。工業的にこのような物質が関与する現象を理解することや、メカニズムを解明する際に、物質の組成や温度、圧力など、多岐に渡る条件下での表面張力と接触角を容易に入手できることは重要である。
現在、表面張力と接触角を測定する方法は種々の測定法が、非特許文献1、非特許文献2に紹介されており、実用化されている。代表的な表面張力の測定法を以下に簡潔に示す。(1)毛管上昇法:毛細管を上昇する液に注目する。メニスカスに作用する力と、液柱に作用する重力とが釣り合う。毛管半径と上昇高さから液体の表面エネルギーを算出することができる。(2)最大泡圧法:毛細管を液体の中に入れて空気を吹き込み、その時の圧力の最大値から表面張力を求める。吹き込み時に、空気の最下部の泡の曲率半径が最小になる時の圧力と、その場所の液側からかかる圧力の差から表面張力が求められる。(3)円環法:バネばかりに接続された円環に溶液を接触させ、溶液面を下げると、円環に付着しながら液が引き上げられる。液面から離れる瞬間は引き上げられる液体に作用する重力と表面張力がバネの力と釣り合うことから表面張力が求められる。(4)Wilhelmy法:プレートを液体に接触させると、表面張力によってプレートが引き込まれるので、その力を計測する。(5)懸滴法:鉛直方向に設置された毛管から押し出された液滴が懸垂状態にある時、液滴にかかる重力と毛管で支える表面張力(毛管力)とがバランスする。液滴にかかる重力を、半径方向における液滴半径から求めた球体積と密度から求め、毛管の内半径を用いて表面張力を求める。ただし、液滴が完全に滴下せず、一部は毛管に付着するため、補正係数を用いる必要がある。(6)液容法:懸滴法と原理は同じであるが、落下した液滴の重量を測定し、懸垂状態にある液滴にかかる重力と表面張力のバランスから求める方法である。(7)準弾性レーザー散乱法(特許文献1):液体表面に表面張力に起因するリプロンと呼ばれる表面張力波が自然発生することに注目し、準弾性レーザー散乱法によりその周波数と波長を求める。この波は、表面張力の関数で表わされるため、表面張力が求められる。非接触にて測定される。(8)微小重力浮遊液滴法(特許文献2):人工的に作り出す微小重力場では、球状の液滴にU字管マノメータを付着させることができる。これにより、精度良く液滴の内部圧力を得る。液滴径と気相圧力、内部圧力から表面張力を求める方法である。
また、接触角は、一般に、固体面上の液滴や固液界面の形状をカメラや望遠鏡などで観察し、接点を決め、そこに接線を引いて固体と液体との接触面での角度を読む方法で測定される。非特許文献2に述べられている接触角計を用いた代表的な測定手法には、接線法とθ /2法がある。接線法は、観察した液滴形状に合わせて接線を引き、接触角を直接求める手法である。θ /2法では、液体の外周を円と仮定し、固体上の液滴の高さと半径から図形的に接触角を求める。また、非特許文献2には、接触角計を用いない方法として、メニスカスを利用した測定法が示されている。液中に垂直に支持した板を徐々に傾けていき、板と液が形成するメニスカスが水平になる角度を探す。この角度を読むことで接触角を測定できる。
激しく流動している液体の状態を調べるための重要な指標に動的表面張力がある。動的表面張力は、非特許文献3や非特許文献4に示すように最大泡圧法や懸滴法を動的な系に拡張・適用することにより求められることがそれぞれ示されている。また、別の動的表面張力の測定法として特許文献3の振動ジェット法がある。これは毛管から一定速度で液体を噴出し、液体表面に形成される定在波の波長と振幅とを正確にレーザーを用いて測定し、動的表面張力を求める方法である。
本発明は、表面張力と接触角の測定方法及び測定装置に関するものである。
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