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従来より、プラズマジェットは、被加工物に溶断、エッチング、薄膜堆積等の加工・表面処理を行うのに有用とされており、また有害物質の高温処理等、他の様々な分野で利用されている。
このようなプラズマジェットに関し、現在、直径2mm以下の精細プラズマジェットを発生させるには、直流アーク放電を用いる方法がよく知られている。しかしながら、直流アーク放電を用いる方法は、電極が劣化しやすいこと、反応性ガスの使用ができないこと、被加工材料が導体に限定されることなどの様々な問題を有している。
一方、近年、マイクロプラズマジェット発生装置がプラズマディスプレイパネル(PDP)等の実用的な応用面から非常に注目されており、更には、化学・生化学分析の分野における分析装置や、マイクロデバイスに用いられるマイクロチップ等の加工・表面処理などのプロセス装置への応用も期待されている。
とりわけ、化学・生化学分析の分野においてシリコン、ガラス、プラスチックなどのチップ上に数十μm幅の溝を微細加工してガスクロマトグラフィー(GC)やマイクロキャピラリ電気泳動(μCE)などの極微量物質の高速分離を行うフロー型分析システムを形成し、レーザー誘起蛍光検出や微小電極を用いた電気化学計測などのオンチップ高感度検出方法と組み合わせ、革新的な高性能分析を実現するμTASの研究が急速に進んでおり、遺伝子解析、医用検査、新薬開発など幅広い分野での応用が期待されている。
また、近年、ベンチトップの分析装置ではキャピラリー電気泳動などの分離技術に極めて感度の高い元素分析法として知られる誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES:Inductively Coupled Plasma Optical Emission Spectroscopy)やICP質量分析を結合させた高速かつ超高感度な物質検出方法が開発されている。そこで、高密度マイクロプラズマをガラス等のチップ上で生成させ、μTASに集積して高感度検出モジュールとして応用することが考えられる。
分析用マイクロプラズマチップの最初の報告は、A.ManzらによりμTAS化したGC(ガスクロマトグラフィー)での原子、分子検出を目的として1999年に発表されている。ガラスチップ内に形成した幅450μm×深さ200μm×長さ2000μmの微小空間内に約17kPaの減圧下で10~50mWの電力でHeの直流グロー放電を発生させ、メタンの検出限界600ppmを見積もっている。減圧下での動作ではカソード電極のスパッタにより、2時間で放電不能になったが、その後、大気圧では24時間の動作も可能であると報告されている。
また、マイクロストリップアンテナを用いた2.45GHzマイクロ波放電チップが、大気圧かつ無電極で動作する最初のマイクロプラズマチップとして報告され、深さ0.9mm×幅1mm×長さ90mmの放電室内に長さ2~3cmの放電を10~40Wで発生させ、水銀蒸気の検出限界として10ng/mlが報告されている。
しかしながら、微小空間での安定した高密度プラズマを小電力で生成することは容易ではないことから、μTASチップへのマイクロプラズマの実現による高感度な微量分析を可能とすることは実現不可能とされてきた。
そのような状況の中で、本発明者は、先に、マイクロプラズマを利用したVHF駆動マイクロ誘導結合プラズマ源を用いたμTASを提案し、これにより高感度な微量分析の途を開くことに成功した(特許文献1)。この特許文献1に開示したVHF駆動マイクロ誘導結合プラズマ源は、図10に示すような、30mm角の石英製の基板101中央に放電管103と、一巻き平板型アンテナ102を具備するマイクロプラズマチップ110である。このマイクロプラズマチップ110は、VHF帯の高周波電源により駆動され、放電管103の一方からプラズマガス104を導入し、他方からマイクロプラズマジェット105を生成させる。【特許文献1】 特開2002-257785号公報(特許請求の範囲、[図1]等)
本発明は、マイクロプラズマジェット発生装置に関し、詳しくは、大気圧にてマイクロプラズマジェットを良好に生成させ、被加工物の局所部位に溶断、エッチング、薄膜堆積などの加工・表面処理を高速で行うことができ、かつ、マイクロ化学分析システム(Micro Total Analysis System)(以下、「μTAS」と称する)にも有用なマイクロプラズマジェット発生装置に関する。
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