TOP > 国内特許検索 > 配位性側鎖を有する光学活性らせんポリマー
我々の身の回りにある合成高分子は、一般的にランダムな構造を取るのに対し、DNAやタンパク質に代表される生体高分子には、左右一方向のらせん状のものが数多く存在する。そこで、生体高分子だけでなく、左右一方向のらせん状のポリマーを人工的に合成することが近年検討されている。
たとえば、Y. Ito et al., J. Am. Chem. Soc., 1998, 120, 11880 およびM. Suginome et al., Org. Lett., 2002, 4, 351 には、不斉リビング重合による完全ならせん方向の制御を伴った光学活性らせんポリマーが開示されている。しかし、これらの文献には、側鎖に機能性を有する置換基を導入することが開示されておらず、らせんポリマーにさらなる機能性を付与させ、具体的に活用することも開示されていない。
ところで、医薬産業や材料科学における光学活性化合物への需要の増大に伴い、不斉有機合成は、急速な発展を遂げてきた。なかでも、光学活性分子触媒を用いた触媒的不斉合成法は、少量の光学活性源から多量の光学活性生成物が得られる(不斉分子数増幅)ため、重点的に研究が進められている。この分野のさらなる発展に向け、従来のデザインとはまったく異なるキラル触媒の開発が強く求められている。キラル高分子配位子は、低分子配位子では構築し得ないキラル反応場を提供し得る点、および回収・再利用の容易さにおいて、次世代の実用キラル配位子として注目され始めている。
しかしながら、配位子を有するキラル高分子のほとんどは、単に優れたキラル低分子配位子を高分子に担持させただけのものであり、光学活性を有する低分子化合物をベースとするキラル触媒は、光学活性体を合成するのに多大な労力を費やすことが多く、また、ベースとなった低分子配位子を用いた場合の選択性を凌駕することがないなどの問題がある。
また、M. Reggelin et al., Proceeding of the National Academy of Sciences of the USA, 2004, 101, 5461 には、配位子にパラジウムが配位結合した側鎖を有する、ポリメタクリル酸メチルを用いた不斉合成が開示されている。該ポリマーの配位子は、嵩高い構造であり、主鎖がらせん構造を有するので、光学活性を持っている。しかしながら、主鎖であるポリメタクリル酸メチルは柔軟であるため、らせん構造が不安定であり、該ポリマーを用いた不斉合成は、高温を避けて行なわなければならず、また、該ポリマーの利用、回収および精製の各過程でラセミ化が起こりやすいなどの問題がある。
本発明は、配位性側鎖を有する光学活性らせんポリマーおよび配位性側鎖と金属が配位結合したキラル高分子触媒に関する。
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