TOP > 国内特許検索 > 透明導電性薄膜の製造方法
ITO(Indium Tin Oxide)は、酸化インジウム(In2O3)に数%の酸化スズ(SnO2)を添加した化合物であり、導電性を有すると共に可視光透過率が約90%程度と透明性が高いため、主にフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)向けの電極として用いられ、近年、FPDの出荷量が増加しているためITO透明導電性薄膜の需要も拡大している。
しかしながら、ITOの主成分であるインジウムは希少金属であるためインジウムの資源枯渇は深刻な問題であり、危機感が高まっていると共に、インジウムの価格の高騰が続いている。
そのため、ITOの廃材を回収してインジウムをリサイクルする手法が提案され、さらに回収率を高める試みもなされているが、抜本的な解決方法として、ITO透明導電性薄膜に代わる材料開発が強く求められている。
ITO透明導電性薄膜に代わる材料として、カーボンナノチューブの透明導電性薄膜が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1では、カーボンナノチューブを分散した状態で透明性基材上に配置することによって、波長550nmの光透過率95%で105~1011Ω/sq.の表面抵抗となることが開示されている。
しかしながら、カーボンナノチューブのうち単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotubes:SWNTs)には、その合成過程において不可避的に金属性のもの(m-SWNTs)と半導体性のもの(s-SWNTs)とが混在しているが、SWNTsを用いた従来の薄膜においてはm-SWNTsとs-SWNTsとの混在については考慮されていない。そのため、薄膜の導電性と光透過性の両立には限界があった。
また、SWNTsを用いた従来の薄膜形成技術ではSWNTsの分散剤として酸性ポリマーのアルキルアンモニウム塩やポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体などのポリマー(高分子)を用いていることから、その薄膜はSWNTs含有高分子薄膜として特徴づけられるものであり、特許文献1の場合にもその事情は同じである。このような薄膜では高分子分散剤が薄膜中に残存するため、薄膜の導電性と光透過性の両立および薄膜形成工程において一定の制約があった。
なお、本発明者らはアミンを分散剤として用いた単層カーボンナノチューブの分散について研究を進めており、これまでに遠心分離等との組み合わせによってm-SWNTsを濃縮する技術を提案しているが(特許文献2参照)、それを用いた薄膜形成とその光透過性や導電率などの諸物性についてはこれまでに検討を行っておらず、具体的な事実は何ら明らかにされていない。【特許文献1】 特開2006-049843号公報【特許文献2】 国際公開WO2006/013788号パンフレット
本発明は、透明導電性薄膜とその製造方法に関するものである。
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