TOP > 国内特許検索 > 混合流発生装置および混合流の発生方法
従来より、種々の混合流発生装置が提案されており、例えば、特許文献1には、複数種の液体が導入されるパイプの内部にロータを収容し、該ロータを回転駆動することによって、前記パイプの内周面と前記ロータの外周面との隙間を流れる液体を混合する化学反応用の装置が記載されている。この装置では、前記ロータが前記パイプの外部に設けられたモータに駆動軸を介して連結されており、前記モータを駆動することによって前記ロータを回転駆動するものとなっている。
しかし、特許文献1の装置では、駆動軸を軸支するための貫通孔をパイプやパイプに取り付けられる蓋体などに設ける必要があり、駆動軸と前記貫通孔との隙間には、パイプの外部に液体が漏れることのないように、何らかのシールを施す必要があった。ところが、前記シールを液密性の高いものとすると、駆動軸に作用する摩擦力が大きくなって、ロータが円滑に回転しなくなるばかりか、シールの磨耗やそれによる発熱など、新たな不具合が生じるおそれもあった。また、特許文献1の装置は、駆動軸やシールの存在が支障となるために、寸法の小型化が困難であった。
近年のMEMS(Micro Electro Mechanical System)の進展に伴って、化学工学や生物工学などの分野においても装置の小型化が積極的に行われるようになっており、反応場の寸法が微小化されたマイクロリアクタとよばれる化学反応器が注目を集めるようになってきている。マイクロリアクタは、単にスペースを節約したり、環境に対する負荷を軽減したりすることができるというだけでなく、以下のように、化学反応器としても優れた性能を発揮するために、化学薬品のスクリーニングのための合成反応試験や、新しい化学プロセスの開発研究などにおいて、その実用化が期待されている。
すなわち、マイクロリアクタは、(1)反応場の寸法が小さいために、混合や抽出に要する時間を短縮することができることや、(2)反応場を流れる液体の体積に対する表面積の割合が高くなるために、液体と液体の界面での反応や分子移動を効率的に行うことができることや、(3)反応場を流れる液体の熱容量が小さく熱交換が速やかに行われるために、精密な温度制御を容易に行うことができるなどの利点をも有している。
しかしながら、反応場の寸法を小さくしていくと、従来のマクロなスケールでの反応とは異なった流動現象が発現するようになる。例えば、反応場を流れる液体のレイノルズ数が小さくなるために、層流が支配的になることや、反応場を流れる液体の体積に対する表面積の割合が大きくなるために、表面張力の影響が大きくなることなどが挙げられる。このように、反応場の寸法が小さくなると、マクロなスケールにおける機械的撹拌による乱流発生などとは大きく異なった現象が発現することになるので、それをうまく制御することが重要になってくる。
マイクロリアクタにおいて、反応場を流れる液体の流動状態を調整する方法は、多数提案されており、その中には、互いに相溶しない2種類の液体を反応場である流路に同時に流して流路内に並行二相流を発生させるものや、互いに相溶しない2種類の液体を反応場である流路に交互に流して流路内に交互流を発生させるものなどもある(非特許文献1を参照。)。特に、交互流を発生させる方法は、並行二相流を発生させる方法と比較して、抽出率を大きくできることが分かっており、この優劣は、交互流のピッチを流路径よりもはるかに長くした場合においても確認されている。
このことは、接触する界面までの分子移動の距離を考えれば驚きであるが、レイノルズ数が小さく、層流が支配的である微細な流路内での交互流において、分子移動に有利な特別な流動状態が発現していると考えられる。例えば、各相内において循環流が発生して撹拌と同じような効果が得られ、結果として界面近郷の境膜厚みが減少して界面における分子移動速度が増加するような現象が生じていると推定することができる。
また、特許文献2には、容器に導入される2以上の物質を攪拌混合する装置であって、容器を非磁性材料によって形成し、容器内部に配した攪拌子に磁性体を装着し、回転磁界を発生するための巻線を容器の外部に配置したものが記載されている。この装置では、巻線から発生された回転磁界によって容器の内部に収容された攪拌子を回転させるものとなっており、攪拌混合する物質は、容器の下面に設けられた導入口から供給されるようになっている。特許文献2には、攪拌子の下面中央(上流側の端部の中央)に設けた尖頭を容器の下側の内壁面に接触させた状態で攪拌子を回転することについても記載されている。
この特許文献2の装置は、攪拌子が回転磁界によって回転されるので、特許文献1の装置に見受けられた欠点を有さないものの、攪拌子が自重によって支持される構造のものとなっていた。このため、攪拌子を軽くすると、容器の下側から供給された物質によって攪拌子の尖頭が容器の下側の内壁面から浮き上がってしまい、攪拌子の中心軸がぶれるおそれがあるなど、攪拌子を安定して回転させることができるものとはなっていなかった。したがって、攪拌子を軽く寸法の小さいものとして、装置を小型化することが困難であった。
【特許文献1】 米国特許出願公開第2004/0013587号明細書【特許文献2】 特開平03-181324号公報【非特許文献1】 園田 康夫、外3名、“3次元マイクロリアクター内流動状態の制御と流動状態が反応速度に及ぼす影響”,化学工学会第70年会予稿集(CD-ROM),平成17年2月,講演番号J215
本発明は、2種以上の液体を混合して混合流を発生させるための混合流発生装置と、それを用いた混合流の発生方法とに関する。