TOP > 国内特許検索 > 組み換えヒト膵臓リパーゼの調製方法
ヒト膵リパーゼ(E.C.3.1.1.3.)は、膵腺房細胞で合成され膵液中に分泌される分子量約4万8千の糖タンパク質である。膵リパーゼはトリグリセリドのα位脂肪酸エステルを加水分解し、ジグリセリド成分と遊離の脂肪酸へ分解する。
ヒト膵リパーゼの大量発現法としては、昆虫細胞sf6を用いて発現させる方法(例えば、非特許文献1参照)、チャイニーズハムスター由来細胞V79を用いて発現させる方法(例えば、非特許文献2参照)、酵母を用いて発現させる方法(例えば、非特許文献3参照)が知られている。しかし、これらの方法はいずれもコストが非常にかかる上、発現に6~10日間を要する。また、いずれの方法においても、リパーゼにヒト型ではない糖鎖が修飾される場合があるため、ヒトがこれらリパーゼを摂取するとアレルギーが引き起こされたり、生体内での安定性が変わる可能性があり、安全性に乏しいと言える。このため、より短期間で発現でき、かつ糖鎖の修飾が起こらない、大腸菌を用いた大量発現方法の開発が求められている。
他方、大腸菌を用いてリパーゼを発現させる方法としては、ジオバチルス属の耐熱性T1リパーゼをGSTタグを組み込んだ融合タンパクとして発現させる方法(例えば、特許文献1参照)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の成熟リパーゼ(SAL3)を、N末端側にHis6タグを組み込んだ融合タンパクとして発現させる方法(例えば、非特許文献4参照)、Candida antarctica由来のリパーゼを、N末端側にFLAGタグ、あるいはC末端側にHis6タグを組み込んだ融合タンパクとしてそれぞれ発現させる方法(例えば、非特許文献5参照)、Ralstonia sp.M1由来のリパーゼを、His6タグを組み込んだ融合タンパクとして発現させる方法(例えば、非特許文献6参照)が知られている。また、デンプン結合性タンパク質(SBP)タグを使用する、大腸菌で発現した組換えリパーゼの精製方法(例えば、特許文献2参照)も知られている。これらタグ付きリパーゼにはいずれも酵素活性がみられているが、大量発現系の確立には至っておらず、また、微生物由来のリパーゼとは構造の異なるヒト型リパーゼを大腸菌で発現させる方法については一切考慮されていない。
本発明は、組換えヒト膵臓リパーゼ(recHPL)の調製方法、より詳しくは、C末側にStrep-tagIIを付加して精製したHPLを、段階透析法を利用してリフォールディングするrecHPLの調製方法に関する。