TOP > 国内特許検索 > レンズ機能部材アレイおよびホログラム生成装置ならびにホログラム生成プログラム
立体画像の分野において、インテグラル・フォトグラフィ(Integral Photography:以下、IPという)は、被写体の奥行きを明に求めなくても立体像の再生が可能なことから、撮像から再生までを実時間で行うことができる技術として注目されている。このIPを利用してホログラムを生成する技術が従来から知られている。そして、IPを利用してホログラムを生成する技術のうち、表示に関する部分を電子ホログラフィで行おうという試みがなされてきている。電子ホログラフィは、ホログラム作成時に被写体を点光源の集合体と考え、液晶等の電子デバイスにホログラム(干渉縞)を表示し、ホログラムが表示された表示パネルのホログラム面にレーザ光等の参照光を照射して再生像を得る技術である。ここで、表示パネルに表示されるホログラムは演算処理により生成されており、被写体を撮影した撮影画像からホログラムへの変換はIPホロ変換と呼ばれている。
図15に、従来のホログラム生成装置によるIPホロ変換の原理の説明図を示す。IPホロ変換は大別して2つの過程を経て行われる。IPホロ変換の第1段階、つまり撮影画像を生成する段階において、図15(a)に示すように、被写体101をレンズアレイ102越しに、図示しないCCD等の撮影装置で撮影する。このとき、撮像面を、レンズアレイ102(Lens Array、LA)の後側焦平面に置く。被写体101が自然光で照らされているときの被写体光(拡散光)103は、レンズアレイ102を通過して撮像面において撮影画像104として取得される。
レンズアレイ102は、被写体101の水平方向および垂直方向に対応させて複数の要素レンズ105が水平方向および垂直方向に2次元マトリクス状に並設されて構成されている。この例では、レンズアレイ102は、3行3列の9つの要素レンズ105を備えている。要素レンズ105は、被写体101を所定の焦点距離fの位置に結像する凸レンズである。また、撮影画像104は、各要素レンズ105の配置に対応して3行3列の9つの要素画像106を含んでいる。撮影画像104において、要素画像106の位置は、光線の通過する場所を示しており、要素画像106中の被写体の画像はその位置での方向別の光線情報を示している。なお、要素画像106は、被写体101の上下左右が反転した状態で撮像される。
IPホロ変換の第2段階、つまり表示のためにホログラムを生成する段階において、図15(b)に示すように、レンズアレイ102の前側焦平面に表示面(撮影画像104を演算処理により変換した表示用画像107)を置き、レンズアレイ102の後側焦平面にホログラム109を置く。ここで、表示用画像107は、各要素レンズ105の配置に対応して3行3列の9つの反転要素画像108を備えている。反転要素画像108は、要素画像106を上下左右反転させたものである。このIPホロ変換の第2段階では、一般に3つの変換処理が行われる。すなわち、表示面(表示用画像107)からレンズアレイ102までのフレネル変換(Fresnel diffraction)、レンズアレイ102の入射面から出射面までの位相シフト、レンズアレイ102からホログラム面(後側焦平面)までのフレネル変換が順次実行される。この一般的な3つの変換処理は、フレネル領域の光波の伝搬を忠実に辿る演算処理を行うものである。
フレネル変換は、ホログラム面の位置等の条件に制約を受けることがない反面、その演算処理に多大な時間を要するという欠点がある。そこで、このIPホロ変換の第2段階において、特定の制約条件を受け入れつつ、短時間の演算処理を可能とするものとして、表示面(表示用画像107)からホログラム面(後側焦平面)まで、フレネル変換を利用せずに、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を使う方法が知られている(非特許文献1、2参照)。このようにFFTを使ったIPホロ変換(以下、FFTIPHという)では、反転要素画像108を2次元FFTして、2次元FFT後の変換画像を、表示用画像107中の反転要素画像108と同じ位置に配置する。この作業をすべての反転要素画像108について行うことで出来上がった画像をホログラム109として扱う。この作業でホログラムを生成可能とするために、非特許文献1、2に記載の技術では、制約条件として、レンズアレイ102の要素レンズ105が凸レンズで構成されているものとしている。それは、「凸レンズには、前側焦平面上における光分布のフーリエ変換を後側焦平面上に形成する性質がある」からである(非特許文献3参照)。FFTIPHは、実時間で立体像を再生できる可能性が高いことから、興味深い方法であると言える。
電子ホログラフィは、ホログラムとして液晶等の電子デバイスを使うため、ホログラムを書き換え可能である。そのことから究極の立体動画表示装置として期待されている。しかしながら、電子デバイスの解像度が写真乾板に比べて低いことに起因して、物体光と共役光とが重なってしまい、再生立体像の画質が著しく劣化するという問題があった。この問題に対処するため、ハーフゾーンプレート法とシングルサイドバンドホログラムの併用法(Single-sideband holography with half-zone-plate processing、以下、SSHZPという)が使われてきた。この方法は、光の進行方向を光軸方向周辺のすべての領域ではなく、半分の領域に制限することで、物体光と共役光との重なりを排除できるというものである。このSSHZPは、例えば、非特許文献2に記載のFFTを使う方法等においても利用されている。なお、SSHZPの詳細については非特許文献4に記載されている。【非特許文献1】 大井隆太朗、三科智之、奥井誠人、岡野文男、“インテグラル・フォトグラフィを利用したホログラム作成におけるFFTの適用”、信学技報, vol. 105, no. 37, IE2005-16, pp. 31-35, 2005年5月【非特許文献2】 大井隆太朗、三科智之、奥井誠人、野尻裕司、岡野文男、“実写ホログラムの高速な計算方法の提案”、映像情報メディア学会誌Vol. 61, No. 2, pp. 198~203 (2007)【非特許文献3】 小山次郎および西原浩、“光波電子工学”、コロナ社、pp.79-81、1978【非特許文献4】 T. Mishina, F. Okano, and I. Yuyama, “Time-alternating method based on single-sideband holography with half-zone-plate processing for the enlargement of viewing zones,” Applied Optics, vol. 38, no. 17, pp. 3703-3713, Jun. 1999
本発明は、レンズ機能部材アレイおよびホログラム生成装置ならびにホログラム生成プログラムに関し、特に、インテグラル・フォトグラフィを利用してホログラムを生成するために用いられるレンズ機能部材アレイおよびホログラム生成装置ならびにホログラム生成プログラムに関する。
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