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特殊な包囲体によって物体を包囲することにより、包囲体自体と包囲された物体がある範囲の電磁波に対してほぼ不可視となるような不可視包囲体は、クローク媒質などとも呼ばれ、その実現のための研究が進められている。従来から、研究や試作が行われてきた不可視包囲体は、共振現象を利用したメタマテリアル(metamaterials)を使ったものであった。ここで、このメタマテリアルについてまず説明する。
金属、誘電体、磁性体、超伝導体などの小片(単位構造体)を、波長に対して十分短い間隔(波長の10分の1程度以下)で並べることで自然にはない性質を持った媒質を人工的に構成することができる。この媒質を自然にある媒質のカテゴリに比べてより大きいカテゴリに属する媒質と言う意味でメタマテリアルと呼んでいる。メタマテリアルの性質は、単位構造体の形状、材質およびそれらの配置により様々に変化する。
このようなメタマテリアルによる人工磁性体として、下記の特許文献1に記載されたような技術が公知である。特許文献1には、従来技術としてスプリットリング共振器を用いた人工磁性体が記載されており、また、誘電体を挟んで対向する導体片対を配列して構成した人工磁性体が記載されている。
そして、このようなメタマテリアルを利用すると、任意の物体を包囲する包囲体によって包囲体およびその物体を不可視とすることが可能である。このような包囲体は、クローク媒質などとも呼ばれ、被せたものが見えなくなるという、いわゆる透明マントの機能を実現するものである。
なお、ここで言う不可視とは、包囲体および物体を通過後の電磁波の伝播状態が、包囲体および物体が存在していない場合と全く同一となることである。このような不可視の状態では、包囲体および物体を通過した電磁波が、それらが存在しない場合と全く同一の状態で伝搬するため、その電磁波によってそれらが存在するか否かを検出することはできない。すなわち、包囲体および物体は全く見えない。
この明細書では、このような不可視の状態あるいは不可視に近いほぼ不可視の状態を作り出すことのできる包囲体を不可視包囲体と呼ぶことにする。このような不可視包囲体をメタマテリアルからなる人工磁性体によって構成することは、下記の非特許文献1などに記載されているように公知である。非特許文献1には、非磁性金属のスプリットリング共振器を円筒状に多数配列した包囲体が、特定の周波数の電磁波に対してほぼ不可視の状態を作り出すことが示されている。
本発明は電磁波(光を含む)に対して、物体を不可視あるいはほぼ不可視にするための包囲体に関する。詳しくは、物体を包囲可能な包囲体を構成し、その包囲体自体と包囲体によって包囲された物体がある範囲の電磁波に対してほぼ不可視となるような不可視包囲体に関する。なお、ここで言う不可視とは、包囲体および物体を通過後の電磁波の伝播状態が、物体が存在していない場合と全く同一となることである。
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