TOP > 国内特許検索 > RNA発現用線状二本鎖DNA
様々なタンパク質を細胞内に発現させる技術は、細胞内におけるタンパク質の機能解析、工業・医療・農業分野で商業的に利用されるタンパク質の生産等に広く用いられており、今日では欠かせない技術である。細胞内で特定のタンパク質を発現させるためには、細胞内へタンパク質をコードする遺伝子を導入する方法が有用であり、導入する遺伝子等のRNA発現用DNA配列の運搬体としてプラスミドベクターを使用した方法が広く利用されている。
一方、これまでに正確性の高いDNAポリメラーゼが開発されたことから、PCR法によりタンパク質をコードする遺伝子を数時間で合成することが可能になった。そこで、タンパク質をコードする遺伝子を含む線状二本鎖DNAを細胞に導入する方法も検討されている。この方法により、タンパク質の機能解析、タンパク質の生産、創薬のためのスクリーニング等の目的に応じて、細胞内でRNA発現用DNA配列由来のRNAが十分に発現すれば、従来の手間と時間のかかるプラスミド構築を、簡便で迅速なPCR法による線状二本鎖DNAの作製に替えることが可能となり、大幅な時間の短縮、ハイスループット化が期待できる。
線状二本鎖DNAをそのまま細胞内に導入し、細胞内でRNA発現用DNA配列由来のRNAを発現させる場合に用いる線状二本鎖DNAとしては、プロモータ配列、タンパク質をコードする遺伝子配列等のRNA発現用DNA配列、ターミネータ配列を順次備える線状二本鎖DNAが用いられているが、細胞内でのRNAの発現は簡便かつ十分なものではなかった。また、プロモータ配列、タンパク質をコードする遺伝子配列、発現マーカーをコードするDNA配列、ターミネータ配列、ポリアデニレーションシグナル配列を含むDNA断片をPCR法により調製する方法が提案されているが(特許文献1参照)、各配列の両端に制限酵素サイト又はアニーリング配列をそれぞれ組み込み、PCR法により該DNA断片を構築し、次いでその5’末端にリン酸を付加するか制限酵素により突出末端を作製してセルフライゲーションにより環状化を行う必要がある等、作業が煩雑でかつ時間がかかるという問題があり、さらに、作製したDNA断片も、線状二本鎖DNAとしてではなく、環状化して動物細胞に導入するものであった。
本発明者らは、ターミネータ配列を含むDNA配列の相補配列からなり、線状二本鎖DNAによる細胞におけるRNA発現用のリバースプライマーであって、前記ターミネータ配列が、30~200塩基からなり、(A/T/G),(A/T/G),T,A,A,A,(A/T/G/C),(A/T/G/C),(A/G/C)の連続した9塩基の配列を含むリバースプライマーや、このプライマーを用いて、プロモータ配列とRNA発現用DNA配列と前記連続した9塩基の配列を含むターミネータ配列とを順次備えた線状二本鎖DNAをPCR法により作製し、これを細胞内に導入してRNAを発現させることを提案した(特許文献2参照)。
この特許文献2の手法により、複雑な操作を必要とせず、簡便かつ迅速にRNA発現用の線状二本鎖DNAを作製することができ、該線状二本鎖DNAを細胞に導入することにより、タンパク質の機能解析、タンパク質の生産、創薬のためのスクリーニング等の目的に応じて、細胞内でRNA発現用DNA配列由来のRNAを簡便かつ十分に発現させることが可能となった。しかしながら、あくまでプロモータ配列とRNA発現用DNA配列とターミネータ配列とを順次備えたものであるため、タンパク質にシグナルペプチド又はタグペプチドを付与する場合は、RNA発現用DNA配列とプロモータ配列又はターミネータ配列との間にシグナルペプチド又はタグペプチドをコードするDNA配列を挿入する必要があり、作業が煩雑になるという問題が残っていた。さらに、RNA発現用DNA配列に対して変異を導入する場合にも、RNA発現用DNA配列の上流にプロモータ配列、下流にターミネータ配列を備えていることから、変異を有するプライマーを用いてPCR法によりRNA発現用DNA配列に変異を導入する作業が煩雑になるという問題も残っていた。
本発明は、ターミネータ配列とプロモータ配列とを順次備えたRNA発現用線状二本鎖DNAや、該ターミネータ配列とプロモータ配列とを順次備えたRNA発現用線状二本鎖DNAを作製するためのフォワードプライマーに関する。