TOP > 国内特許検索 > 内循環流動層を用いた水熱分解装置及び水熱分解法
太陽光を集光して得られる1000℃以上の熱を利用して水熱分解により水素を製造する方法として、鉄酸化物、酸化セリウム等の金属酸化物による二段階水熱分解サイクルが有望視されており、そのための反応器の開発が各国の研究機関で行われている。
本発明者らは、金属酸化物粒子が内循環流動する流動層式ソーラー反応器を開発するとともに、この流動層式ソーラー反応器を用いて、二段階水熱分解サイクルの2つの反応である水素製造反応と酸素製造反応を、金属酸化物粒子が内循環流動する反応器内で同時に進行させ、水素と酸素を同時に製造する方法を開発した(特許文献1)。
この流動層式ソーラー反応器は、図16に示すように、ステンレス合金とインコネル合金からなる反応器101を備え、この反応器101には、金属酸化物の粒子からなる流動層102が収容されている。反応器101の内部には、上下方向に開口した筒状のドラフト管103が備えられ、ドラフト管103は、流動層102に埋没して流動層102の中央部に配置されている。また、反応器101の底部には、中央部と周辺部にそれぞれ分散板104,105が設けられている。分散板104,105は、流動層102を構成する金属酸化物の粒子を反応器101内に保持するともに、反応器101の底部から気体を導入することができるように、多孔質材料から形成されている。反応器101の天井には、太陽光が透過できるように石英製の窓106が設けられている。また、ドラフト管103の上方には、ドラフト管103の内側から上方に放出されるガスと、ドラフト管103の外側から上方に放出されるガスを分流するために、逆裁頭円錐形状のガスセパレータ107が設けられている。そして、反応器101の上部の側方には、ガスセパレータ107により分流されたガスを取り出すための取り出し口108,109が設けられている。201はヘリオスタットと呼ばれる地上反射鏡、202はタワー反射鏡であり、これら地上反射鏡201とタワー反射鏡202によりビームダウン型の集光システムが構成される。そして、このビームダウン型の集光システムにより、太陽光Sが集光されて反応器101に収容された流動層102の上面中央部へ照射されるようになっている。
そして、分散板104からドラフト管103の内側に窒素を導入し、同時に、分散板105からドラフト管103の外側に水蒸気を導入する。ドラフト管103の内側における窒素の流量を、ドラフト管103の外側における水蒸気の流量よりも大きくすることにより、流動層102をドラフト管103の内外で循環させる。すなわち、ドラフト管103の内側の領域において流動層103が上昇し、ドラフト管103の外側と反応器101の間の領域において流動層103が下降する内循環流動を生じさせる。続いて、地上反射鏡201,タワー反射鏡202により集光された太陽光Sを、窓106を通して流動層102の上面中央部へ照射し、流動層102を加熱する。太陽光Sが照射された流動層102の上面中央部の近傍では1400℃以上の高温部Hが形成され、この高温部Hで熱還元反応が進行し、金属酸化物の粒子から酸素が放出される。放出された酸素は、ガスセパレータ107の上方を通って取り出し口108から回収される。還元された金属酸化物の粒子は、内循環流動によりドラフト管103の外側と反応器101の間の領域を通って反応器101の下部に送られる。金属酸化物の粒子は反応器101の下部に送られる間に温度が低下し、その結果、流動層102の下部に1400℃以下の低温部Lが形成される。この低温部Lで水熱分解反応が進行し、熱還元反応により還元された金属酸化物の粒子は酸化されてもとの金属酸化物となり、同時に水素が発生する。発生した水素は、ガスセパレータ107の下方を通って取り出し口109から回収される。
上記の従来の方法は、太陽光Sの照射によって形成される流動層103の温度分布に着目し、酸素発生反応と水素発生反応をそれぞれ流動層103の上部と下部で同時に進行させることを特徴とするものである。しかし、この方法には、以下のような問題点があることが判明した。1 反応器の構造上、流動層102の表面とガスセパレータ107の隙間を通じて酸素と水素が混合して酸素と水素の一部が再結合してしまうため、水素の回収量が低下する。なお、隙間と通じたガス混合を防止するためにガスセパレータ107を流動層102の表面に密着させた場合は、金属酸化物粒子の内循環流動が阻害され、2つの反応を円滑に進行させることが困難となる。2 流動層102の上部と下部で反応温度の異なる2つの反応が同時に進行するが、2つの反応温度をそれぞれ任意に制御することが困難である。3 流動層102の上部と下部で反応速度の異なる2つの反応が同時に進行するとともに、金属酸化物粒子がドラフト管103の内側を上昇して外側を下降するが、2つの反応時間をそれぞれ任意に制御することが困難であり、酸素と水素の発生濃度の増加に限界がある。4 流動層102の下部で進行する水素発生反応は発熱反応であり、流動層102の上部で進行する酸素発生反応は吸熱反応であるが、それぞれの反応の反応時間および反応速度を任意に制御することが困難であるため、水素発生反応で発生した反応熱(放熱量)を酸素発生における吸熱反応に十分活用できず、太陽熱→水素転換効率の向上が困難である。5 太陽光Sが照射された流動層102の上面中央部の近傍では1400℃以上の高温部Hが形成されるが、反応器の構造上、集光された太陽光Sの一部がガスセパレータ107により遮られ、ドラフト管103の外側と反応器101の間の領域を加熱できず太陽エネルギーの利用効率が低くなる。6 反応器の構造上、流動層102の上面中央部の近傍の一部がガスセパレータ107により遮られるため、1400℃以上の高温部Hの領域を広げ、酸素生成量を増加させることが困難である。7 反応器の構造上、1400℃以下の低温部Lの領域が流動層102の下部に限られ、低温部Lの領域を広げ、水素生成量を増加させることが困難である。8 反応器の構造上、流動層102の上面中央部の近傍に形成される高温部Hの金属酸化物粒子は、速やかにドラフト管103の外側と反応器101の間の領域に移動するため、高温部Hの金属酸化物粒子の持つ1400℃以上の高温の顕熱を排熱として熱回収して再利用することが困難である。
本発明は、内循環流動層を用いた水熱分解装置及び水熱分解法に関する。
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