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(In Japanese)分化多能性幹細胞の製造方法

Patent code P160013446
File No. (S2013-0103-N0)
Posted date Nov 2, 2016
Application number P2014-544531
Patent number P5987063
Date of filing Oct 29, 2013
Date of registration Aug 12, 2016
International application number JP2013079311
International publication number WO2014069479
Date of international filing Oct 29, 2013
Date of international publication May 8, 2014
Priority data
  • P2012-237734 (Oct 29, 2012) JP
Inventor
  • (In Japanese)加藤 英政
  • (In Japanese)森山 陽介
  • (In Japanese)平木 啓子
  • (In Japanese)奥田 晶彦
Applicant
  • (In Japanese)学校法人埼玉医科大学
Title (In Japanese)分化多能性幹細胞の製造方法
Abstract (In Japanese)TET1タンパク質のアミノ末端から2番目のアミノ酸を異なるアミノ酸に置換等することにより、TET1タンパク質をヒト分化多能性幹細胞において従来より安定に発現させることができた。そして、かかる変異型TET1タンパク質を分化多能性幹細胞に導入することにより、分化誘導の抑制因子であるNANOG等の発現を速やかに消失させ、分化誘導に関わる因子の発現を促進させることができた。分化能を向上させた分化多能性幹細胞の製造方法、並びに当該製造方法に有用な物質を提供する。
Outline of related art and contending technology (In Japanese)

分化多能性幹細胞は、自己とは異なる複数系統の種類の細胞に変化することができる能力(分化多能性)と、細胞分裂を経ても自己と同じ能力を有する細胞を娘細胞として創出できる能力(自己複製能)とを備えている細胞であると定義されており、胚性幹細胞(ES細胞)や誘導多能性幹細胞(iPS細胞)等がこの定義に該当する細胞であると考えられている。そして、かかる能力を有しているが故に、ES細胞やiPS細胞等は、再生医療や創薬開発の分野において重要な役割を果たすことが強く期待されている。

しかしながら、最近、マウス分化多能性幹細胞とヒト分化多能性幹細胞とは、基本性質が異なっており、こと分化能に関しては、ヒト分化多能性幹細胞がマウス分化多能性幹細胞より劣っているということが報告されている。

マウス分化多能性幹細胞に関しては、実験的に分化多能性を比較的正確に評価することができる。例えば、マウスES細胞を胚盤胞の腔内に注入すると、内部細胞塊と細胞同士とが混ざり合い、ES細胞由来の細胞が胚内で正常な発生を呈する場合があり、これをキメラ形成と呼んでいる。マウスES細胞にとって、このように発生時期が同等の内部細胞塊と発生の進行を同期できるかどうかは、分化多能性の良き指標になる。この場合、更に発生が進むと、これらES細胞の一部が生殖細胞系列に動員されることも知られている。この生殖細胞移行(germ line transmission)が起こることは、ES細胞由来の遺伝情報が次世代に渡されることを意味しており、この意味においてより広い意味での正常細胞としての適合性を示すことが可能である。またさらに“究極”とも言える分化多能性の証明方法が存在する。マウス受精卵の細胞分裂を一時的に阻害した後にこれを培養皿で培養すると、4倍体(tetraploid)の胚盤胞が形成される。この4倍体胚盤胞に含まれる内部細胞塊は、一見性質は正常に見えるが、その後の胚発生が進行することはない。このため、この4倍体胚盤胞をそのまま偽妊娠させた母親マウスの子宮に戻しても個体は得られない。しかし、この4倍体胚盤胞に対して、分化多能性を持った幹細胞を注入し、前述のキメラ形成を行わせると、この場合は注入した細胞のみが正常な核型を持ち、発生に貢献できる。こうすることで、単一世代で、注入した分化多能性幹細胞に完全に由来する個体が発生する。この方法は一般には4倍体補完(tetraploid-complementation)アッセイと呼ばれ、その際生まれたマウスを、注入した由来細胞にちなんでall-iPSCマウスと呼ぶ。このように、マウスにおいては、分化多能性を幾重にも検証することが可能であり、これまでに多くの証左によって、マウスiPS細胞も厳密な意味で分化多能であることが示されている。

一方、ヒト分化多能性幹細胞に関しては、当然のことながら、倫理的な観点から上述の検証法はヒトでは用いる事ができない。その代用法としてよく用いられるのはテラトーマ形成である。ヌードマウスの皮下に幹細胞を移植すると、宿主となるマウスの血行に支えられて移植した細胞が“ランダム”に分化して組織化する。この腫瘍片を生長させ、その病理標本から外・中・内胚葉を探し出すことで、一応の分化多能性が示される。しかし、テラトーマ形成法によって分化多能性を評価する上で大きな問題が存在する。それは、本法においては、例え元の幹細胞の分化効率が悪くても、三胚葉への組織が確認された段階で分化多能性ありと判断される点である。これでは、腫瘍内に発生の全く進んでいない未分化な細胞が残留していても多くの場合これを無視して分化多能性を評価してしまうことになる。テラトーマ形成では、元の幹細胞集団に真の分化多能性細胞が数個存在すれば、他の細胞は全く何でもよくなり、評価方法としては全く定量性がない。例えば、マウスiPS細胞でもc-Mycを用いて作製されたものは、テラトーマ形成では三胚葉分化能が認められるものの、キメラ形成を行うと、ほとんどの場合、iPS細胞に由来する自然発生的な腫瘍を形成してしまう。次善の策として、実際に三胚葉に個別に分化誘導し、それを評価する方法も考えられる。これは、分化プロトコールに左右され、やはり定量的な実験は難しいことが予想される。

さらに、ヒト分化多能性幹細胞に関しては、もっと根源的な問題点がある。それは、全ての細胞系譜に均等に分化する潜在能力を有する理想的なヒト分化多能性幹細胞が存在しないことである。長船らの報告によると、ヒトES細胞は遺伝子発現レベルでどれ2つとして同一のものは存在せず、それを受けて個々のES細胞株は、どれか特定の胚葉への分化誘導性に偏っていること、ひいては、ヒトES細胞は、定量的な点において、十分な“分化多能性”を持っていないことが示唆されている(非特許文献1)。

また、マウスのES細胞が樹立されてから、ヒトのES細胞が樹立されるまで17年という時間がかかっている。これは、マウスES細胞の樹立方法ではヒトES細胞が樹立出来なかったために他ならない。マウスES細胞の自己複製培養には白血病抑制因子(以下「LIF」とも称する)が必要であるが、ヒトES細胞はLIF添加培地では自己複製させることができない。ThomsonらがヒトES細胞の維持に必要だと見出したのは、FGFとアクチビン(Activin)/Nodalとであった(非特許文献2)。さらに、マウスES細胞はJAK/STATシグナルを介するのに対し、ヒトES/iPS細胞ではSMAD2/3シグナルを介するという双方で異なるシグナル系を介してそれぞれの分化多能性幹細胞が自己複製することが明らかになっている。また、ヒト分化多能性幹細胞において、SMAD2/3を介した細胞内シグナルは、NANOGの発現上昇に関わるとの見方が優勢である。一方で、SMAD2/3シグナルは、哺乳類の発生では中内胚葉分化に必要なシグナル伝達経路であり、実際、これらの細胞系譜を目指して分化誘導を施すためには高濃度のActivinAを用いる。よって目的は異なるが、現状で多く用いられているヒト分化多能性幹細胞の自己複製シグナルは、同細胞の中内胚葉系への分化シグナルと重なっている。

ヒトES細胞もマウスES細胞も、胚盤胞から樹立する点は共通している。しかしながら、前述の培養条件の違いからか、それらの性質は異なる。これまでの知見を総合すると、マウスES細胞は胚盤胞の内部細胞塊の遺伝子発現プロファイルを踏襲していることが判明しているが、ヒトES細胞は、胚盤胞が少し発達して形成されるエピブラスト内の原始外胚葉に最も性質が似ているということである。その後、マウスエピブラストから直接エピブラスト幹細胞(EpiSC)がヒトES細胞と同様の培養条件にて樹立されたことを受けて(非特許文献3及び4)、分化多能性を大きく2つに分けて考えるようになった。1つはマウスES細胞やマウスiPS細胞に代表される胚盤胞型の分化多能性を持つ幹細胞であり、もう1つはヒトES細胞、ヒトiPS細胞、マウスEpiSC等のエピブラスト型幹細胞であり、前者の性質はナイーブ(naive)と、後者の性質はプライム(primed)と称されるようになった(非特許文献5)。

以上の通り、ナイーブ型の分化多能性幹細胞もプライム型の分化多能性幹細胞も共に三胚葉への分化能を有し、ヌードマウスに移植すればテラトーマが形成される点においては共通している。しかしながら、ナイーブ型の分化多能性幹細胞は、発生段階において受精卵に近い初期状態(胚盤胞)の性質を反映しているため、樹立等が容易であり、さらには、この細胞に完全に由来する個体を発生させることができる程の完全な分化多能性を有している。一方、プライム型の分化多能性幹細胞は、胚盤胞より発生の段階が進んでいるエピブラストの性質を反映していることもあり、樹立等が容易ではない。また、この細胞においては、前述の通り、分化多能性に偏りがあることも明らかになっている(非特許文献1)。さらに、プライム型の分化多能性幹細胞は、生殖細胞移行能やキメラ形成能を有しておらず、分化多能性を含め分化能の点において、プライム型の性質を有するヒト分化多能性幹細胞等は、ナイーブ型の性質を有するマウス分化多能性幹細胞より劣っていることが明らかになっている。

再生医療の実用化や創薬開発において、多種多様な細胞、組織、臓器等を提供し得る程の高い分化能を備えることが、ことヒト分化多能性幹細胞には求められている。そのため、プライム型の性質を有するヒト分化多能性幹細胞等の分化能を向上させる方法が強く求められているが、かかる方法は未だ開発されていないのが現状である。

Field of industrial application (In Japanese)

本発明は、分化多能性幹細胞の製造方法に関し、より詳しくは、分化能を向上させた分化多能性幹細胞の製造方法に関する。また、本発明は、当該製造方法に利用されるタンパク質にも関する。

Scope of claims (In Japanese)
【請求項1】
 
分化能が向上したヒト分化多能性幹細胞の製造方法であって、
下記(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも一つの分子を、ヒト分化多能性幹細胞に導入する工程を含む、分化能が向上したヒト分化多能性幹細胞の製造方法
(a)そのN末端から2番目のアミノ酸残基が、配列番号:2、4又は6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質である正常型TET1タンパク質のN末端から2番目のアミノ酸残基とは異なるTET1タンパク質であって、i)正常型TET1タンパク質のN末端から2番目のセリン残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を有するTET1タンパク質、およびii)正常型TET1タンパク質のN末端から1番目と2番目のアミノ酸残基間に1~50個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列を有するTET1タンパク質からなる群より選択され、前記正常型TET1タンパク質と比較して安定性が向上した、変異型TET1タンパク質
(b)前記変異型TET1タンパク質をコードする核酸
(c)前記変異型TET1タンパク質をコードする核酸が挿入されているベクター。

【請求項2】
 
前記変異型TET1タンパク質は、N末端から2番目の位置においてセリン残基をグリシン残基またはアスパラギン酸残基に置換したヒトTET1タンパク質である、請求項1に記載の分化能が向上したヒト分化多能性幹細胞の製造方法。

【請求項3】
 
前記変異型TET1タンパク質は、さらに、配列番号:2に記載のアミノ酸配列においては、1611~2074番目のアミノ酸からなる領域であり、配列番号:4に記載のアミノ酸配列においては、1640~2103番目のアミノ酸からなる領域であり、配列番号:6に記載のアミノ酸配列においては、809~1272番目のアミノ酸からなる領域である、ジオキシゲナーゼ領域を欠失しているTET1タンパク質である、請求項1または2に記載の分化能が向上したヒト分化多能性幹細胞の製造方法。

【請求項4】
 
ヒト分化多能性幹細胞の製造方法であって、
下記(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも一つの分子を、ヒト分化多能性幹細胞に誘導するためのヒト体細胞に導入する工程を含む、ヒト分化多能性幹細胞の製造方法
(a)そのN末端から2番目のアミノ酸残基が、配列番号:2、4又は6に記載のアミノ
酸配列からなるタンパク質である正常型TET1タンパク質のN末端から2番目のアミノ酸残基とは異なるTET1タンパク質であって、i)正常型TET1タンパク質のN末端から2番目のセリン残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を有するTET1タンパク質、およびii)正常型TET1タンパク質のN末端から1番目と2番目のアミノ酸残基間に1~50個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列を有するTET1タンパク質からなる群より選択され、前記正常型TET1タンパク質と比較して安定性が向上した、変異型TET1タンパク質
(b)前記変異型TET1タンパク質をコードする核酸
(c)前記変異型TET1タンパク質をコードする核酸が挿入されているベクター。

【請求項5】
 
前記変異型TET1タンパク質は、N末端から2番目の位置においてセリン残基をグリシン残基またはアスパラギン酸残基に置換したヒトTET1タンパク質である、請求項4に記載のヒト分化多能性幹細胞の製造方法。

【請求項6】
 
変異型TET1タンパク質であって、そのN末端から2番目のアミノ酸残基が、配列番号:2、4又は6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質である正常型TET1タンパク質のN末端から2番目のアミノ酸残基とは異なり、i)正常型TET1タンパク質のN末端から2番目のセリン残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を有するTET1タンパク質、およびii)正常型TET1タンパク質のN末端から1番目と2番目のアミノ酸残基間に1~50個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列を有するTET1タンパク質からなる群より選択され、前記正常型TET1タンパク質と比較して安定性が向上している、変異型TET1タンパク質。

【請求項7】
 
前記変異型TET1タンパク質は、N末端から2番目の位置においてセリン残基をグリシン残基またはアスパラギン酸残基に置換したヒトTET1タンパク質である、請求項6に記載の変異型TET1タンパク質。

【請求項8】
 
さらに、配列番号:2に記載のアミノ酸配列においては、1611~2074番目のアミノ酸からなる領域であり、配列番号:4に記載のアミノ酸配列においては、1640~2103番目のアミノ酸からなる領域であり、配列番号:6に記載のアミノ酸配列においては、809~1272番目のアミノ酸からなる領域である、ジオキシゲナーゼ領域が欠失している、請求項6または7に記載の変異型TET1タンパク質。

【請求項9】
 
請求項6~8のいずれか一項に記載の変異型TET1タンパク質をコードする核酸。

【請求項10】
 
請求項9に記載の核酸が挿入されているベクター。

【請求項11】
 
下記(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも一つの分子が導入されている、ヒト分化多能性幹細胞又は該細胞に誘導するためのヒト体細胞
(a)請求項6~8のいずれか一項に記載の変異型TET1タンパク質
(b)前記変異型TET1タンパク質をコードする核酸
(c)前記変異型TET1タンパク質をコードする核酸が挿入されているベクター。
IPC(International Patent Classification)
F-term
State of application right Registered


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