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リチウムイオン電池およびリチウムイオンキャパシタ用負極活物質 UPDATE 新技術説明会

国内特許コード P160013523
整理番号 S2016-0666-N0
掲載日 2016年11月28日
出願番号 特願2016-084945
公開番号 特開2017-195102
出願日 平成28年4月21日(2016.4.21)
公開日 平成29年10月26日(2017.10.26)
発明者
  • 熊谷 誠治
出願人
  • 国立大学法人秋田大学
発明の名称 リチウムイオン電池およびリチウムイオンキャパシタ用負極活物質 UPDATE 新技術説明会
発明の概要 【課題】優れたリチウムイオン電池およびリチウムイオンキャパシタ用負極活物質を提供する。
【解決手段】非晶質炭素と非晶質ケイ酸から構成される混合系であり、特定の非晶質ケイ酸の含有率、BET比表面積、メソ・マクロ孔比表面積、メソ・マクロ孔容積を有する負極活物質。特に、天然にケイ酸を含有する植物系有機物であるもみ殻を原料とし、一次炭化、ケイ酸の部分的除去、さらに二次炭化を経由することで製造したものは、大きなリチウムイオンの吸蔵放出容量を示し、レート特性およびサイクル特性にも優れる。
【選択図】 なし
従来技術、競合技術の概要


小型で大きなエネルギーを入出力できる蓄電デバイスへの社会的需要が近年急激に高まっている。電気自動車やハイブリッド自動車、産業機械やロボット、スマートフォンやタブレットなどの携帯端末など、外部電源から独立して動作が求められる製品は、エネルギー密度および入出力(電力)密度が高く、かつ、寿命の長い高性能な電気化学系蓄電デバイスを要求する。
電気化学系蓄電デバイスには、高いエネルギー密度を実現できるリチウムイオン電池などの二次電池と、高い入出力密度を実現できる電気二重層キャパシタなどのキャパシタがある。また、二次電池とキャパシタの中間的な性能を有するリチウムイオンキャパシタがある。特に、リチウムイオン電池およびリチウムイオンキャパシタは、リチウムイオンを負極に吸蔵させ、負極の電極電位をリチウムの標準電極電位(-3.045V)近くまで低下させることで、正極と負極間の電位差(セル電圧)を拡大し、高いエネルギー密度を実現する。



二次電池およびキャパシタとも、それらの基本構成要素は、正極、負極、電解液、セパレータである。負極および正極は、電荷の直接的授受を担う活物質が集電体としての金属箔上に塗工されたものがよく利用される。活物質は通常粒状であり、活物質粒子間および活物質粒子と集電体の電気的接触を保持する導電助剤、さらに、それらの機械的接着を保持するバインダが一般的に添加される。また、セパレータは正負極の電気的接触を避けつつ、正負極間のイオン移動を実現するために正負極間に挟まれて使用される。紙や微細孔を有する樹脂が一般にセパレータとして用いられる。
現在の一般的なリチウムイオン電池は、負極活物質にグラファイトやハードカーボンなどの炭素系材料、正極活物質にコバルト酸リチウムやマンガン酸リチウムなどのリチウム遷移金属酸化物が用いられる。また、電解質にはヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)といったリチウム塩を、溶媒には炭酸エチレンや炭酸ジエチルなどの混合有機溶媒を用いた系が電解液として広く用いられている。



炭素系負極活物質に着目すると、結晶構造を有するグラファイトは、グラフェン層間にリチウムイオンが挿入されることで、リチウムイオンを吸蔵することができる。その最大吸蔵理論容量は、LiCの形態において、372mAh/gである。グラファイトの場合、リチウムの標準電極電位近くの電位で、リチウムイオンの大部分の吸蔵放出が行われるため、放電が進行しても、電池セル電圧が維持されやすいこと、また、リチウムイオンの吸蔵放出にともなうエネルギー損失が小さいことが挙げられる。一方で、リチウムイオンの吸蔵放出に伴う結晶構造の膨張収縮に起因して、活物質のゆがみ、亀裂、変形が生じやすい。従って、充放電サイクル数の増加に従い、活物質そのものの構造変化、活物質粒子間および活物質粒子と集電体との隔離が進行し、電極としてのリチウムイオン吸蔵容量が低下しやすいため、サイクル特性には劣る。さらに、結晶性の高い活物質内をリチウムイオンが移動する必要があるため、充放電電流密度が高い場合などは、リチウムイオンは律速移動となりやすい。それゆえ、充放電電流密度の増加に従い、リチウムイオンの吸蔵放出容量は低下していく。すなわち、レート特性には一般に優れない。



一方、難黒鉛化炭素とも呼ばれるハードカーボンは、微細な結晶性グラフェン層が規則性なく配置されている構造を有する。ハードカーボンのリチウムイオン吸蔵はグラフェン層への挿入とグラフェン層間に形成された空間へのリチウム凝集(リチウム金属化)による。結晶性グラフェン層におけるリチウムイオンの吸蔵脱離の比率が小さいため、充放電の繰り返しおよび充放電電流密度の増加に起因する容量低下は小さく、ハードカーボンのサイクル特性およびレート特性は一般にグラファイトのそれらより優れている



リチウムイオンキャパシタは、負極活物質に主として炭素系材料、正極活物質に活性炭を用いる。正極では電解液中イオンの吸脱着という非ファラデー反応が進行し、負極ではリチウムイオンの吸蔵放出というファラデー反応が進行する。リチウムイオンキャパシタは、リチウムイオン電池ほどの高エネルギー密度は要求されないが、数万サイクル以上の寿命と大きな充放電電流密度での効率的なエネルギーの入出力が要求される。一般的なリチウムイオン電池のサイクル寿命が数千サイクルを想定しているのに対して、数万サイクル以上に渡って高入出力密度を維持されることがリチウムイオンキャパシタの電極材料には要求される。負極活物質に用いられる炭素系材料にはハードカーボンや、グラファイトとハードカーボンの混合物が用いられることが多い。



電池およびキャパシタの仕様は、使用条件に適合するように設定される。例えば、リチウムイオンが負極活物質の最大容量まで吸蔵され、かつ、完全に放出されるまで充放電が繰り返されるディープサイクル仕様や、最大容量の80%±10%で充放電が繰り返される仕様、最大容量の60%±20%で充放電が繰り返される仕様などが想定され、その仕様に最適な負極活物質の種類や物性が選択される。特に、大きな需要が期待される車載用途向けリチウムイオン電池やリチウムイオンキャパシタは、負極活物質に対して優れた時間的応答性(レート特性)と繰り返し充放電に対する耐性(サイクル特性)を要求する。
現状、その用途に対応する負極活物質としてハードカーボン系が広く用いられている。しかし、ハードカーボン系活物質はリチウムの放出に伴い、徐々にその電位を増加させていく。その結果、正極との電位差は縮小し、電池セルまたはキャパシタセルの起電力は徐々に低下していく。同じ充放電電流レベルであれば、電池セルおよびキャパシタセルから貯蔵放出できるエネルギーは、高い起電力の状態において大きい。従って、ハードカーボンにリチウムが十分に吸蔵されている状態での充放電が、エネルギーを最も効率的に貯蔵放出する。一方で、最大吸蔵容量付近でのリチウムイオンの吸蔵放出は、負極におけるリチウム金属のプレーティング(析出)、さらには活物質、バインダおよび集電体の構造・化学変化を誘導しやすい。すなわち、セパレータによって隔てられた正負極の短絡や電極の構造的劣化および充放電容量の低下など、電池およびキャパシタの性能低下を加速させるデメリットもある。



ハードカーボン中では、リチウムイオンのグラフェン層への挿入とグラフェン層間に形成された空間でのリチウムの凝集が起きる。原材料の種類や炭化条件により、ハードカーボンのリチウムイオン吸蔵容量は大きく変化するが、一般に200~400mAh/g程度である。また、グラフェン層間に形成された空間でのリチウムイオンの吸蔵放出においては、その容量が安定するまで不動化するリチウムが発生するため、初期の不可逆量はグラファイトと比較して大きい。その初期不可逆容量を打ち消すため、さらに、その容量安定化のため、あらかじめリチウムイオンを活物質に十分に吸蔵させるプレドープ処理が採用されることが多い。一般に炭素系負極活物質にリチウムイオンをプレドープする方法として、リチウムイオンを含有する電解液中において、リチウム金属と直接接触させるか、リチウム金属と電気的に接続する方法がある。リチウム金属と接触または電気的に接続する時間を変化させる、または、電気的に接続する際に抵抗を介在させるなどして、ドープされるリチウムイオン量を制御することが可能である。しかし、負極活物質に均等に所望量のリチウムイオンをドープすることは困難である。従って、十分な時間を確保して、リチウム金属と負極を直接接触させるか、リチウム金属と負極を電気的に短絡して、負極活物質のリチウムイオンの最大吸蔵容量までドープさせる手法が簡便である。この簡便な方法を採用するには、最大吸蔵容量までリチウムイオンがドープされても、リチウム金属のプレーティングおよび構造変化を発生させにくい特性を活物質は有する必要がある。しかし、ハードカーボン系活物質はそれら特性に優れておらず、最大吸蔵容量までの簡便なプレドープ処理後のリチウムイオンの吸蔵放出のサイクル特性は優れていない。実際に本発明者は、複数の市販ハードカーボン系の活物質およびグラファイト系活物質に対して最大吸蔵容量までリチウムイオンを吸蔵させるプレドープ処理を施した後、リチウムイオン電池およびリチウムイオンキャパシタの負極活物質として性能評価を行ったが、十分な性能は得られなかった。



一方、リチウムイオン電池の負極活物質として、シリコンおよび酸化シリコンといったシリコン系の活物質がある。室温におけるシリコンのリチウム最大吸蔵理論容量は、シリコンとリチウムのLi15Siへのアロイ化を想定すると3590mAh/gであり、グラファイトの容量の約10倍である。酸化シリコンであるSiOおよびSiOのリチウム吸蔵理論容量は、リチウムイオンによるSiへの還元と酸化リチウムの生成を想定することで、それぞれ2287mAh/gと1678mAh/gと見積もられる。シリコンは大きなリチウム吸蔵放出容量を有するものの、同時に大きな膨張収縮を引き起こす。その結果、ゆがみ、亀裂や変形が発生し、活物質粒子間および活物質粒子と集電体との隔離が生じる。それゆえ、シリコン系活物質のサイクル特性は、炭素系活物質より極めて低い。しかしながら、シリコン自体の大きなリチウムイオンの吸蔵放出容量、さらには、部分的な酸化シリコンの存在は、リチウムイオンが負極活物質に過度にドープされた場合でも、酸化シリコンの還元によるシリコン生成と酸化リチウムの生成により、吸蔵放出容量の低下およびリチウム金属のプレーティングを大きく抑制できる。



本発明者は、上記負極活物質の状況に鑑み、鋭意検討した結果、結晶性の低い炭素とケイ酸(酸化シリコン)の混合物が有望であること、さらに、それには最適なケイ酸含有率と細孔構造が存在すべきと想到した。そして、かかる負極活物質の材料としては、特に、天然に約20質量%の結晶性の低いケイ酸を含有し、残りはセルロース、ヘミセルロース、リグニンといった植物性有機物で構成されるもみ殻が、その混合物前駆体として使用可能であることを見出した。
もみ殻は農業廃棄物として国内で毎年約200万トン弱排出される。畜産や園芸資材として利用用途はあるものの、排出量の約4分の1に明確な利用用途がない。ケイ酸植物である稲は、土壌から水溶性ケイ酸を取り込み、もみ殻に非晶質の形態で集積させる。もみ殻のケイ酸含有率はおよそ20質量%である。もみ殻中のケイ酸は、その化学的および構造的な安定性のため、もみ殻を有機肥料源、燃料源および炭素源として扱いにくいものとする。一方で、もみ殻は集約的に収集されることが多く、その収集コストは低い。それゆえ、もみ殻を原料とすることで、低廉な価格の負極活物質を実現できる。



炭化したもみ殻のリチウムイオン電池負極活物質の可能性については、かねてから検討されている(特許文献1、非特許文献1)。さらに、炭化したもみ殻から、酸またはアルカリを用いて、大部分のケイ酸を除去した二次電池電極用の非晶質炭素系活物質についても検討がなされている(特許文献2、3)。特にFeyらは、濃度の異なる水酸化ナトリウム水溶液を使用して、700℃で製造したもみ殻炭からケイ酸を部分的に除去した場合のリチウムイオンの吸蔵放出容量を報告した(非特許文献2)。炭化温度を変化させたもみ殻炭をベースに活物質を製造し、対極をリチウム金属として、セル電圧がそれぞれ3~0Vおよび2~0Vの範囲で、すなわち、負極活物質のリチウムイオン吸蔵放出容量の大部分が使用される条件での単位質量あたりの容量が計測された。しかしながら、Feyらは、ケイ酸の除去量の最適化について全く検討しておらず、ケイ酸の部分的除去による特性向上のメリットを見出せなかった。特に、プレドープ処理への耐性、さらにはレート特性およびサイクル特性への言及は全くなされていない。一方、10~60質量%のシリカ成分を含有するもみ殻由来活性炭が電気二重層キャパシタ電極材料として有望であると主張された(特許文献4)。しかし、それは電極材料中に発達した細孔内部への電解液中イオンの吸脱着現象に起因する非ファラデー反応を経由して蓄電がなされるものであり、活物質中にリチウムイオンが吸蔵放出される蓄電機構と異なる。もみ殻など天然に炭素およびケイ酸を含有する植物系原料を利用しない、黒鉛とシリコン、または黒鉛と一酸化シリコンの混合系リチウムイオン電池およびリチウムイオンキャパシタの負極活物質について報告されている(特許文献5)。しかし、黒鉛に対するシリコンまたは一酸化シリコンの最適な含有率、さらには活物質中の最適な細孔構造については言及されていない。一方、リチウムイオンをプレドープする蓄電デバイスの負極材料について、メソ・マクロ孔比表面積を11~35m/gの範囲に規定することで、エネルギー密度の向上が図れると報告されている(特許文献6)。一般にメソ孔は幅が2nmより大きく50nm以下の細孔であり、マクロ孔は幅が50nmを超える細孔である。従って、メソ・マクロ孔はメソ孔およびマクロ孔の両者、すなわち、幅が2nmより大きな細孔を指す。しかしながら、リチウムイオンを吸蔵放出できる炭素とケイ酸の混合系活物質についての検討はなされていない。以上のことから、非晶質炭素と非晶質ケイ酸の混合系リチウムイオン電池およびリチウムイオンキャパシタの負極活物質に関しては、最適な非晶質ケイ酸含有率が存在し、かつ、最適な細孔構造が存在することについては、これまでにおいて開示されていない。

産業上の利用分野


本発明は、リチウムイオン電池およびリチウムイオンキャパシタ用負極活物質に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
非晶質炭素と非晶質ケイ酸から構成される混合系であり、それぞれ非晶質炭素の含有率が60~80質量%、非晶質ケイ酸の含有率が40~20質量%、さらに、BET比表面積が70~120m/g、メソ・マクロ孔比表面積が50~100m/g、メソ・マクロ孔容積が0.10~0.18cm/gであることを特徴とする負極活物質。

【請求項2】
もみ殻由来である請求項1の負極活物質。

【請求項3】
リチウムイオンのプレドープ処理がなされた請求項1又は2の負極活物質。

【請求項4】
もみ殻を800℃以下で一次炭化し、その炭化物から非晶質ケイ酸の部分的除去を行い、その後、800~1200℃において二次炭化を行うことを特徴とする請求項2又は3の負極活物質の製造法。

【請求項5】
リチウムイオン含有有機系電解液中において、請求項1又は2の負極活物質とリチウム金属とを短絡することによる、リチウムイオンのプレドープ処理がなされた負極活物質の製造法。

【請求項6】
負極が、請求項1、2又は3の負極活物質を有してなり、リチウムイオンの吸蔵放出を行うことで繰り返し充放電を実現する電気化学系蓄電デバイス。

【請求項7】
電気化学系蓄電デバイスが、リチウムイオン電池である請求項6の電気化学系蓄電デバイス。

【請求項8】
電気化学系蓄電デバイスが、リチウムイオンキャパシタである請求項6の電気化学系蓄電デバイス。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開
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