TOP > 国内特許検索 > 混合粘性蓄熱体およびその製造方法

混合粘性蓄熱体およびその製造方法

国内特許コード P160013551
整理番号 S2016-0750-N0
掲載日 2016年12月19日
出願番号 特願2016-097527
公開番号 特開2017-206571
出願日 平成28年5月16日(2016.5.16)
公開日 平成29年11月24日(2017.11.24)
発明者
  • 藤 正督
  • 高井 千加
出願人
  • 国立大学法人 名古屋工業大学
発明の名称 混合粘性蓄熱体およびその製造方法
発明の概要 【課題】粘性の調整が容易であり、粉体としても利用可能、可視光透過性のある蓄熱マイクロカプセルを安価に提供する。
【解決手段】ポリマーと無機塩との混合粘性蓄熱体において、ポリマー水溶液と、ポリマー/硫酸ナトリウム水溶液と水溶性界面活性剤とを水相とし、オクタノールと増粘剤とを油相とし、無機塩を滴下し、撹拌、合成することにより、硫酸ナトリウム内部にシリカシェルを形成させたことを特徴とする、または粘性蓄熱体を、3-10wt%の硫酸ナトリウム水溶液中にて、数μm程度のマイクロカプセル化したことを特徴とする、または水相をポリエチレングリコールと硫酸ナトリウム10水和物の組み合わせとしたことを特徴とする。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


蓄熱とは入出力方法が熱エネルギー形態の貯蔵方法である。熱エネルギーは最も多く使われているエネルギー形態であり、これを蓄える技術の発展によりエネルギー全体の有効利用に大きく寄与すると考えられる。
近年、電力需要拡大や地球温暖化、化石燃料枯渇問題などの影響によりエネルギー利用の高効率化が注目されるなかで蓄熱材料の重要性も高まっている。例えば工場の廃熱利用や、衣料、建材へ応用することにより省エネルギー化やエネルギーの利用効率の向上など幅広い分野において応用が期待されている。
蓄熱方法はその貯蔵する熱エネルギー形態により顕熱蓄熱法、化学蓄熱法そして潜熱蓄熱法と三つに大別することが出来る。顕熱蓄熱法は蓄熱材の熱容量を利用し熱を貯蔵する手法である。蓄熱原理がシンプルであり、技術的な課題も少なく水、煉瓦、コンクリートなどがよく用いられており、広い温度範囲で安定して熱を蓄えることが出来るという利点を持つ。特に水蓄熱技術の開発は空調設備の設計を通じて様々な応用研究がなされている。
一方で単位面積当たりの熱貯蔵量が少なく、大きな蓄熱槽が必要であること、使用温度以上の高温で蓄熱しなければならず、熱損失が大きいという課題がある。
化学蓄熱法は化学反応を利用し熱エネルギーを化学エネルギーとして貯蔵する方法である。熱を放出する際には、逆反応を起こし貯蔵した化学エネルギーを熱エネルギーとして回収する。化学蓄熱は熱貯蔵密度が大きく、熱損失が少ないために常温で長時間熱を貯蔵できるという長所がある。また、反応系の適切な選択により広い温度範囲で利用することが可能である。しかし、不均一反応系が多いために安定性が低く、長期的に持続できる蓄熱システムの構築に大きな課題がある。
潜熱蓄熱は、一般的に物質の固体・液体間の相変化において発生する潜熱を利用して蓄熱する方法である。比較的高い熱交換ができ、単位体積当たりの蓄熱容量は大きく顕熱蓄熱法などと比較して装置体積や質量を大きく減らす事ができるという利点を持つ。また、潜熱蓄熱に用いられる物質にはパラフィンなどの有機系材料と無機水和物系材料に大別され、利用したい温度域により適切な材料を選択する必要がある。
このように蓄熱システム毎に長所、短所があり、使用法や場所、予算など目的に応じたシステムの選択が重要である。



潜熱蓄熱は前述の通り、他の方法と比べて高い蓄熱密度を持ち、装置のコンパクト化が可能であるため注目を集めている。なかでも氷蓄熱は冷房用として発展を遂げている。また、太陽熱利用発電、冷暖房給湯用など多くの用途に潜熱蓄熱技術が研究開発されていると共に将来性を嘱望されている。一方で多くの工学的課題を持つ技術でもある。
図45に潜熱蓄熱法の基本的概念図を示した。潜熱蓄熱法において蓄熱過程で、熱源より供給される温度Tの熱媒体を蓄熱材に接して流して蓄熱材側に熱を与え、固相を融解させる。この時Tは潜熱蓄熱材(以下「PCM」という。)の融解温度Tより高温とする。融解後は固相時より潜熱分だけ熱を蓄えた事になる。放熱過程では、温度T(<T)熱媒体を流して蓄熱材から熱を放出させて凝固を起こし、出した熱エネルギーを利用する。以上をサイクル的に行う事で熱利用を可能にする。
潜熱蓄熱の長所は、1)蓄熱密度が大きく蓄熱槽容積をコンパクトに出来る、2)温度がほぼ一定の熱の出し入れが可能である、3)大規模になるほど経済性が高くなる、等が挙げられる。一方短所は、1)温度範囲が限定される、2)蓄熱材と熱媒体を別にする必要があり、熱交換プロセスが必要である、3)蓄熱材には毒性や環境安全性で問題になるものも多い、4)技術的課題が比較的多い、などが挙げられる。



蓄熱槽でPCMを用いる研究は1947年にTelkes Mによって始まった。従来における潜熱蓄熱システムにおける研究としては、融解潜熱が大きく熱理学的な性質が蓄熱媒体として優れている無機塩の水和結晶や単位面積当たりの貯蔵能力に優れ融点範囲が広く、過冷却や相分離現象が起こり難いパラフィンなどの有機物を利用する潜熱蓄熱システムの基礎および応用研究が注目されている。例えば稲葉等は、低温潜熱物質としてテトラデカンを用い、水を連続相とするO/Wエマルジョンの熱的物性を測定し、エマルジョンの検討を行っている。その結果、エマルジョン中のテトラデカン油滴は過冷却現象を起こすことを明らかとした。F.L.Tan らの研究では、様々な形態の熱貯蔵システムの融解・凝固に関して検討されている。潜熱を貯蔵するためにn-octadecaneをカプセル内に充填し、そのカプセル内部における相変化とカプセルの対流現象を観察するため、実験的な結果やCFD(Computational fluid dynamics)プログラムで解析の結果と比較を行った。また、Tyagi等は無機系水和材料であるCaCl・6HOの過冷却挙動に関する研究を行い、pHを変化させることにより過冷却を減少させる事を明らかにした。



上述のようにPCMの研究の基礎的な事から応用にかけて幅広い研究がなされている。理想的に考えれば、PCMは一定の相変化温度で融解・凝固するはずである。しかし実際には非可逆的挙動を示し、それらの性能低下を示す。このことがPCMを工学的に応用する際の大きな課題となっている。例えば、塩水和物などでは特に過冷却が問題となる。冷却をしても本来固化する温度よりも相当の過冷却温度で固化する。加えて、不純物や冷却速度によって、準安定域は異なってくるために定量的評価も難しい。対策として核生成剤などを付与するなどが挙げられるが、用いる材料により核生成剤も様々であり分析が必要となる。また、使用している間に固相と液相に分離してしまう相分離現象を起こしてしまう。他に 高温用蓄熱に使われる溶融塩は容器などへの腐食が大きく防蝕技術が必要なこと、相変化時の体積膨張が構造物に与える影響を避ける設計が必要であること、低熱伝導性などの課題が挙げられる。



硫酸ナトリウム10水和物(NaSO・10HO)は代表的な無機水和物系材料であり、潜熱蓄熱材として知られる。NaSO・10HOは安価であり、潜熱量もおよそ240kJ/kgと比較的大きく、1940年代から多くの研究がなされてきた。また、人体に無害であり、その融点は32℃であるため生活環境においても使用し易いという利点がある。
純粋なNaSO・10HOは過冷却が大きく、融解凝固の過程で相分離を起こしNaSO・7HOを形成するため、蓄熱性能や安定性が低下する。図1に-40℃~80℃の温度範囲でのNaSO・10HOのDSC(示差走査熱量計)測定結果を示す。図1に示すように-40℃から昇温時には約32℃で融解時の吸熱に起因するピークが観察された。しかし一方で80℃からの降温時には結晶が凝固する際の放熱に起因するピークが3つに分裂した状態で観察された。このようなピークの分裂は相分離により目的となる10水和物以外の低次の水和物が形成されたためだと考えられる。このように相分離、過冷却状態により安定性の低下につながり、所望の温度で熱を取り出すことが難しくなってしまう。このように不均一状態で融解した蓄熱材がその融点以下になり過冷却状態になると融解していないNaSOは新しく生成したNaSO・10HOおよび水と3成分が準安定状態(meta-stable condition)を形成する。潜熱量はNaSO・10HOの生成量によって、直線的に増加するため蓄熱システムの性能を減少させる。こうした減少を解決するには、一般的には核形成剤を加え、各成長を促す必要がある。また増粘剤などを加えて系全体の粘度を増加させ、溶解したNaSO粒子の沈殿を防止することにより、平衡状態を保つことができ相分離を防止することができる。前述のように純粋なNaSO・10HOの初期潜熱量は約240kJ/kgである。しかし20~40回の測定後には約64kJ/kgまで減少する。9.3wt%の増粘剤を加えた系では、初期の潜熱量は純粋なものに比べて85%程度まで減少するが200回の測定後にも106kJ/kgという潜熱量を保つことが可能であり、その後はほぼ安定した値を示すという報告がある。



また、近年相分離防止策の一つとして溶融体をミクロな構造に閉じ込めることで、その構造の中で溶融凝固させるような方法がとられるようになってきた。溶融体をミクロ構造内に閉じ込めることにより、吸熱時に高次の水和塩から低次の水和塩ができる際に放出される水分子が、水和塩の近隣に存在することになる。そのため放熱時に水和塩がこの水を容易に取り込むことが出来る。基本的な原理自体は増粘剤を加えることによる相分離防止策と同じである。こうしたミクロ構造を利用した相分離防止法の一つにマイクロカプセル化がある。



マイクロカプセルはそれを球とみなしたとき、径がマイクロメートル領域にあるカプセルである。しかし製法が原理的に同じであるならば、径がミリメートルあるいはナノメートル領域にあるものもマイクロカプセルと呼んでいる。マイクロカプセルの役割として、芯物質あるいは核物質と呼ばれる中身を外部環境から保護することである。また、芯物質を外部に放出する速度を調節する機能なども持つ。このような機能からマイクロカプセルは幅広い分野に利用されている。製法原理は通常のそれと異なる。微小なマイクロカプセルを作るには芯物質を微粒子状にして適切な媒質中に分散し、次いで微粒子に膜をかぶせて被覆する。特に後者の過程はマイクロカプセル化(microencapusulation)と呼ばれる。カプセル化の方法は多数報告されており、大別すると化学反応を利用する化学的方法、物理化学的変化を利用する物理化学的方法及び物理的ないし機械的操作を主に利用する物理的方法に分類できる。また、内包する物質の物理化学的・生化学的性質および使用する壁材の物性、カプセル化によりどのような機能を期待するかによってマイクロカプセル化の方法を選択する必要がある。その方法は、前述の大別方法とは別に、芯物質界面への壁材の沈積を利用する場合と界面での反応を利用して被膜を形成させる場合とに大別できる。前者を界面沈積法、後者を界面反応法とすると表1のように分類できる。本発明では特に界面反応法の中で広く一般的に用いられているin situ重合法について着目した。



【表1】




in situ重合法は互いに混じり合わない2相の一方にモノマーや触媒を加えることでその界面で重合反応を起こして芯物質の表面に均一な膜を形成する方法である。原理を図2に示す。この方法の利点として芯物質は液体に限らず、固体や気体を用いる事が出来ることが挙げられる。メラミン樹脂を膜物質としたマイクロカプセル、スチレンモノマーをW/Oエマルジョンの外部から与える架橋ポリスチレンを膜とするカプセル、スチレンモノマーをO/Wエマルジョンの内部から与え、内部にイソオクタンを含有するカプセルの合成に関する報告が成されている。また高分子に限らず、無機質壁マイクロカプセルの合成についても研究がなされており、無機質壁を持つ球形粒子の合成例も報告されている。例えば、水和酸化鉄球形粒子、酸化亜鉛球形粒子、炭酸カルシウム球形粒子、アルカリ土類金属ケイ酸塩球形粒子、シリカ壁球形粒子などが報告されている。
以上のようにマイクロカプセルは有機、無機を問わず様々な材料で幅広い分野に応用が可能である。現在でも記録材料、医薬品、人工臓器分野、農業材料、表示材料、香料・化粧品、食品などに使用されている。



また、パラフィン等の潜熱蓄熱材及びゲル化剤を含む材料を用い、建材として用いられる潜熱蓄熱材であって、外界に向けられた太陽光の照射側の外側表面と、日中における太陽のふく射熱を受ける外側表面の最低温度と最高温度間の温度範囲内になる相変化温度とを有する潜熱蓄熱材が知られている(特許文献1参照)。本例は、硫酸ナトリウムとポリマーとの配合比率の開示がなく、十分な蓄熱性も得られていない。

産業上の利用分野


本発明は、混合粘性蓄熱体およびその製造方法に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
ポリマーと無機塩との混合粘性蓄熱体において、
ポリマー水溶液と、ポリマー/硫酸ナトリウム水溶液と水溶性界面活性剤とを水相とし、オクタノールと増粘剤とを油相とし、
無機塩を滴下させることにより、硫酸ナトリウム内部にシリカシェルが形成されたことを特徴とする混合粘性蓄熱体。

【請求項2】
前記粘性蓄熱体を、3-10wt%の硫酸ナトリウム水溶液中にて、数μm程度にマイクロカプセル化したことを特徴とする請求項1記載の混合粘性蓄熱体。

【請求項3】
水相をポリエチレングリコールと硫酸ナトリウム10水和物の組み合わせとしたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の混合粘性蓄熱体。

【請求項4】
ポリマーと無機塩との混合粘性蓄熱体において、
ポリマー水溶液と、ポリマー/硫酸ナトリウム水溶液と水溶性界面活性剤とを水相とし、オクタノールと増粘剤とを油相とし、無機塩を滴下し、撹拌、合成することにより、硫酸ナトリウム内部にシリカシェルを形成させたことを特徴とする混合粘性蓄熱体の製造方法。

【請求項5】
前記粘性蓄熱体を、3-10wt%の硫酸ナトリウム水溶液中にて、数μm程度のマイクロカプセル化したことを特徴とする請求項4記載の混合粘性蓄熱体の製造方法。

【請求項6】
水相をポリエチレングリコールと硫酸ナトリウム10水和物の組み合わせとしたことを特徴とする請求項4または請求項5記載の混合粘性蓄熱体の製造方法。

国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2016097527thum.jpg
出願権利状態 公開
ライセンスをご希望の方、特許の内容に興味を持たれた方は、下記までご連絡ください。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close