TOP > 国内特許検索 > 炎症及び脱髄の少なくとも一方を伴う神経疾患の検出方法
多発性硬化症(MS)の確定診断マーカーとして、現在、脳脊髄液中に含まれるオリゴクローナルバンド、または血清中および髄液中のIgGの量的変化を評価するIgGインデックスが用いられている。しかしながら、これらはいずれもMS特異性はなく、臨床的にMSと診断される患者でも陰性である症例も少なくないため、これらの診断マーカーだけでは十分な診断に至らない(非特許文献1)。かつてはMSに包含されていた視神経脊髄炎(NMO: 現在では別病態として認定)患者の血清中に抗アクアポリン4抗体の抗体価が高値であること(非特許文献2)も病態関連マーカーとして存在するが、現在では別の病気として扱われている上、抗体陰性であっても診断基準を満たすこともあれば、抗体陽性であっても診断基準を満たさないこともあるため、更なる診断マーカーとの複合的な判定による診断が強く望まれている。上記以外に、多発性硬化症・視神経脊髄炎の鑑別診断にはMRI所見が参考にされる。また、髄膜炎・髄膜脳炎・脳炎・脳症においては、脳脊髄液に細胞(単球・多核球等)が認められることやグルコース量の低下(細菌性・結核性・真菌性髄膜炎等)などが主たる診断基準であるが、これらの検査所見が乏しい髄膜炎・髄膜脳炎・脳炎・脳症も多数見られ、また分子マーカーによる診断は存在しない。
一方、多発性硬化症・視神経脊髄炎の多くは確定診断後も再発と緩解を繰り返しながら機能障害が増悪し、一部には活動性が治まらず持続的に機能障害が増悪する経過を辿る。急性的に発症する再発または活動性亢進時にこれらの病態を評価・診断して速やかに治療を行うことが機能障害の増悪を防ぐ主たる急性期治療となるが、これらの病態を評価する方法としてMRIを用いることが一般的である。しかし、MRI検査が可能な施設は限られており、また設備があったとしても緊急的に検査施行できる施設はより限られている。また、MRI検査以外には、髄液中のミエリン塩基性タンパク質(MBP)の検出が再発の診断に用いられることがあるが(非特許文献3)、特異性に欠けるために診断には至らない。髄膜炎においては病勢を診断する客観的な指標は存在しない。
特許文献1には、血漿中のCrtac1タンパク質の低値を指標として脳梗塞の検出や脳梗塞の病型判別を行なう方法が記載されている。しかしながら、多発性硬化症等の炎症及び脱髄の少なくとも一方を伴う神経疾患を早期に確定診断するための方法は全く開示されていない。
本発明は、炎症及び脱髄の少なくとも一方を伴う神経疾患の検出方法に関する。
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