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コレステロール蓄積疾患治療薬

国内特許コード P170013995
整理番号 (S2014-0214-N0)
掲載日 2017年4月7日
出願番号 特願2015-551538
登録番号 特許第6452115号
出願日 平成26年12月3日(2014.12.3)
登録日 平成30年12月21日(2018.12.21)
国際出願番号 JP2014081969
国際公開番号 WO2015083736
国際出願日 平成26年12月3日(2014.12.3)
国際公開日 平成27年6月11日(2015.6.11)
優先権データ
  • 特願2013-252174 (2013.12.5) JP
  • 特願2014-135865 (2014.7.1) JP
発明者
  • 江良 択実
  • 入江 徹美
出願人
  • 国立大学法人熊本大学
  • 日本食品化工株式会社
発明の名称 コレステロール蓄積疾患治療薬
発明の概要 本発明は、ライソゾーム病などのコレステロール蓄積が原因の疾患、例えばニーマンピック病やGM1ガングリオシドーシスを治療するための医薬組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、疾患の表現型を模写するiPS細胞株を用いた、それらの医薬組成物をスクリーニングするための方法を提供することを目的とする。 ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンを有効成分として含むことを特徴とする、ライソゾーム病の治療または予防のための医薬組成物が提供される。また、新規な温度感受性センダイウイルスベクターを用いて作製された難病疾患の患者由来のiPS細胞株、およびそれを用いた薬剤のスクリーニング方法が提供される。
従来技術、競合技術の概要

細胞内小器官の一つであるライソゾームに関連する酵素が遺伝的に欠損または変異していると、分解または輸送されるべき物質が細胞内外に異物として蓄積してしまう。このような現象によって引き起こされる先天代謝異常疾病はライソゾーム病として知られている。ライソゾーム病の例として、ニーマンピック病やGM1ガングリオシドーシスをあげることができる。

ニーマンピック病C型(NPC)は、細胞内でのコレステロールを中心とした脂質の輸送を司る膜タンパク質NPC1あるいはエンドソームでNPC1と共存する分泌性蛋白質NPC2分子の異常によっておこる先天性ライソゾーム病の1つである。患者細胞ではフリーコレステロールや脂質がライソゾーム内に蓄積する。肝、脾腫大と神経症状を特徴とする。幼少期に発症し、肝脾腫や進行性の神経障害が起こり、10歳前後で死亡する希少難病である。本疾患に対する有効な治療法は確立していない。

環状オリゴ糖シクロデキストリン(CyDs)は、分子内に疎水性の空洞を有する単分子的ホスト分子である。CyDsの空洞にゲスト分子が取り込まれて包接複合体を形成すると、ゲスト分子の物理化学的性質は様々に変化する。分子カプセルと呼ばれるCyDsの超分子的な包接現象は、多方面で有効利用されている。特に、医薬品開発においては、
製剤特性の改善やドラッグデリバリーシステムの構築などに広く応用されている。
最近、Liuらは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)をNpc1遺伝子欠損(Npc1-/-)マウスに静脈内投与すると、病状改善や延命に有効であること、HPBCDを脳内に直接投与すると、その改善効果は全身投与に比べて数百倍増大することを報告した(非特許文献1)。これら基礎研究の成果をもとに、米国FDAはNPC患児へのHPBCD(静脈内投与及び髄腔内投与)の人道的使用を特認している。このような背景のもと、日本でも、佐賀大学医学部附属病院で、HPBCD注射剤を院内調製し、NPC患児への治療が始まった。NPC患児へHPBCD(1回2500mg/kg、週1-3回)の静脈内点滴投与を1年以上にわたり継続した結果、患児の肝脾腫の縮小や脳波上の改善に一定の効果が得られたが、神経症状の改善には至っていない。そこで、HPBCDに加えて糖脂質合成阻害剤ミグルスタット(1回50あるいは100mg,1日2回)が併用された。さらに、HPBCDを、血液脳関門を介さず脳内へ直接送達するために、HPBCDの静脈内投与に並行して、髄腔内投与およびOmmayaリザーバーを介した脳室内投与(30mg/kg,週1回)が行われている。HPBCDによる治療は国内初であり、大量投与・長期投与の前例はないので、治療の有効性や有害事象等を精査しながら、治療が継続されている。しかし、副作用の問題もあり国内では未だ一般化していない。

一方、HPBCDは、医薬品の添加剤(溶解補助剤)として認められているが、腎障害が懸念されている。また、肺障害などの事象も報告されており、大量投与や長期投与の場合は、その安全性が問題となっている。従って、HPBCDに代わる、NPCのより安全な治療薬が望まれている。

GM1ガングリオシドーシスは、糖加水分解酵素であるライソゾーマル-β-グルコシダーゼの変異が病因となるゴーシェ(Gaucher)病の一つであり、ライソゾーマル-β-ガラクトシダーゼの変異が病因である。ベータガラクトシダーゼが欠損することにより、その基質であるGM1-ガングリオシドやアシアロGM1-ガングリオシドなどの糖脂質が脳や内臓(肝臓、脾臓)などに、またケラタン硫酸などのムコ多糖が骨に蓄積する疾患である。乳児期早期から発症し、痙性対麻痺をはじめ広汎な中枢神経障害、眼底のチェリーレッドスポット、肝脾腫、骨の異常を伴う乳児型(1型)、幼児期から発症し、中枢神経障害が進行する若年型(2型)、さらに学童期から構音障害などの症状が現れ、錐体外路症状が中心となる成人型(3型)の3型がある。

これらの疾病に対し、酵素補充療法が現在までの主な治療法となっているが、酵素製剤は中枢神経に到達しにくく脳を含む神経系に対する治療効果が見られないこと、また高価な酵素製剤の点滴治療を生涯にわたって続けなければならないことなどが問題点として挙げられる。従って、これらのライソゾーム病の新たな治療薬が望まれている。

人為的にヒト体細胞から産生される人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、持続的に無制限に増殖することができ、多分化能(すなわち、インビトロで種々の細胞型を生じさせる能力)を示すように誘導できる。これらの特徴により、iPS細胞は、臨床医学における細胞療法のリソースとして潜在的な用途を有している。リプログラミングとして知られているiPS細胞作製のプロセスは、4つの転写因子、OCT3/4、Sox2、Klf4、およびc-Mycの発現によって引き起こされる。これらの因子は、例えば、胚幹細胞(ES細胞)などの他の多能性幹細胞の多能性の基礎となるコア因子と同じである。ヒト皮膚由来線維芽細胞中でのこれらの4つの因子の過剰発現は、初期のころはレンチウイルスやレトロウイルスベクターによって媒介された。これらの遺伝子発現システムは安定であるが、2つの潜在的な問題があった。一つは、4つの因子をコードする遺伝子が宿主ゲノムに組み込まれることであり、もう一つは、それらが得られたiPS細胞中に残ることである。そのため、生体内で腫瘍形成を促進しうる挿入突然変異の危険性がある。

そこで、Cre/loxPを組換え系、アデノウイルスベクター、ピギーバックトランスポゾン、マイクロRNA、またはタンパク質に基づく、効率的かつ安全なリプログラミング方法が開発されているが、低頻度でのiPS細胞コロニーの形成、繰り返し誘導の必要性、および短い長さの外来遺伝子が宿主ゲノム中で保持されるという問題があった。最近の研究では、めったに宿主ゲノムに組み込まないエピソームプラスミドベクターを用いて、血液細胞からのiPS細胞の作製を行うことが報告されているが、効率が低く(~0.1%)、さらには、4つのリプログラミング因子に加えて、p53ノックダウンとEBNAの一時的な発現が必要である。

センダイウイルス(SeV)ベクター技術は、上記の問題を克服するために開発された代替戦略である。センダイウイルスベクターは、宿主ゲノムに組み込まれることなく、目的の遺伝子を発現するマイナス鎖RNAであり、ヒト皮膚由来線維芽細胞や血液細胞からのiPS細胞を効率的に作製するために使用されてきた(非特許文献2、非特許文献3)。センダイウイルスベクターによるiPS細胞コロニーの発生頻度は、レトロウイルスやレンチウイルスベクターを用いた従来の方法で達成されるよりも高い(0.1%対0.01%)。しかし、センダイウイルスは、一ヶ月以上細胞内に残っているので、導入遺伝子を含まないiPS細胞の作製は、長い時間がかかる。近年、センダイウイルスの持続的な細胞複製による制御できないiPS細胞の作製を防ぐために、温度感受性センダイウイルス(TS-SeV)システムが開発された(非特許文献4)。Ts-SeVは、臍帯血細胞や線維芽細胞由来のiPS細胞から、温度上昇により、容易かつ直ちに除去できるが、iPS細胞の作製効率はSeVよりも低い。
また、SeVを用いて、末梢血単球からiPS細胞を作製する方法が報告されている。そこでは、初期化遺伝子であるOct4、Sox2、Klf4、およびc-Mycを持続的に発現するSeVベクターが用いられており、siRNAを使用して細胞からの初期化遺伝子搭載ウィルスベクターの除去が行われている(特許文献1)。

皮膚線維芽細胞は、iPS細胞作製に用いる最も一般的な細胞型であるが、皮膚生検は侵襲性であり、子供や皮膚疾患または凝固障害を有する患者にとって理想的ではない。末梢血細胞が好ましいソース細胞であるが、Ts-SeVベクターを用いた、末梢血細胞からのiPS細胞作製については報告されておらず、また、iPS細胞における長期にわたるセンダイウイルスの保持は、これまでの温度感受性SeVを用いる場合の問題として残っている。

センダイウイルスを含む方法を用いて得られた、病原性突然変異を保有する患者の体細胞に由来する多数のiPS細胞株は、疾患の表現型を模写することが示されている。よって、これらの細胞株は、細胞治療のためだけでなく、生物医学研究や医薬品開発のための、強力なツールとなる。難病患者から得られた生体材料のサンプルは、疾患の分子メカニズムを研究し、新たな治療薬を開発するために不可欠であるが、そのような患者からのサンプル数は通常限られているので、疾患由来のiPS細胞は、細胞治療のための生体材料の代替または補足源として有用であると期待されている。このように、iPS細胞は現在、細胞源と病気の細胞モデルとして用いられているが、非効率的な作製と細胞内の導入遺伝子の存在によりその使用が制限されている。そこで、より効率的に作製でき、かつ、細胞内に導入遺伝子を含まない安全なiPS細胞の作製方法が望まれている。

産業上の利用分野

本発明は、ライソゾーム病などのコレステロール蓄積が原因の疾患を治療するための医薬組成物および方法に関する。より詳細には、本発明は、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンを有効成分として含む、コレステロール蓄積が原因の疾患を治療するための医薬組成物に関する。本発明はまた、ライソゾーム病などのコレステロール蓄積が原因の疾患の治療薬をスクリーニングするための方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンを有効成分として含むことを特徴とする、ライソゾーム病の治療または予防のための医薬組成物。

【請求項2】
前記ライソゾーム病が、ニーマンピック病である請求項1に記載の医薬組成物。

【請求項3】
前記ライソゾーム病が、GM1ガングリオシドーシスである請求項1に記載の医薬組成物。

【請求項4】
前記医薬組成物が、注射剤であって数週間以上の期間投与されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の医薬組成物。
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 登録
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