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アンドロゲン依存性又は非依存性前立腺癌細胞の抑制用の組成物及びそれを含有する前立腺癌の医薬製剤

国内特許コード P170014417
整理番号 P15-069(2)
掲載日 2017年7月12日
出願番号 特願2017-062557
公開番号 特開2017-178941
出願日 平成29年3月28日(2017.3.28)
公開日 平成29年10月5日(2017.10.5)
優先権データ
  • 特願2016-063542 (2016.3.28) JP
発明者
  • 溝上 敦
  • 後藤 享子
  • 斎藤 洋平
  • 泉 浩二
出願人
  • 国立大学法人金沢大学
発明の名称 アンドロゲン依存性又は非依存性前立腺癌細胞の抑制用の組成物及びそれを含有する前立腺癌の医薬製剤
発明の概要 【課題】前立腺癌のために用いられ、アンドロゲン受容体の活性化を抑制し、アンドロゲン依存的又は非依存的な前立腺癌増殖の抑制に有効で、AR-V7が発現していてもその作用を抑制し、抗癌剤耐性の細胞株に対しても有効なアンドロゲン依存性又は非依存性前立腺癌細胞の抑制用の組成物、及びそれを用いた前立腺癌の医薬製剤を提供する。
【解決手段】アンドロゲン依存性又は非依存性前立腺癌細胞の抑制用の組成物は、化学式(1)
【化1】



(X-は炭化水素芳香環基又は芳香族複素環基、Y1-及びY2-は両方又は一方が炭化水素芳香環基又は芳香族複素環基で他方が水素原子、Z=は結合炭素原子と共にケトン基、チオケトン基、イミノ基、又はオキシム基を成し又は生成する原子若しくは官能基、Y3-は水素原子、パーハロゲノ炭化水素基等)で表わされるα,β-飽和又は不飽和のケトン誘導体又はその薬学的に許容される塩を含む。前立腺癌の医薬製剤は、この組成物を含有する。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


前立腺癌は、男性ホルモンであるアンドロゲンが刺激になってアンドロゲン受容体(AR)活性化を介して分化・増殖するホルモン依存症の腫瘍である。



前立腺癌の罹患患者は、1999年に約1万8千人であったが、食生活の欧米化や高齢者の増加により、また検査技術向上及び早期発見に伴い、急激な増加傾向にあり、2020年には約10万5千人となると見込まれている。



アンドロゲンが減少すると前立腺癌が小さくなることが判って以来、前立腺癌の患者に対して、アンドロゲンを分泌する精巣を外科的に切除する去勢術が行われている。しかし、脳の視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモンと副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンとが分泌され、脳の下垂体に働きかけることにより、精巣でアンドロゲンの一種のテストステロンが多量に分泌され、一方、副腎でも少なからず副腎性アンドロゲンが分泌される。また前立腺癌組織の間質細胞でも副腎性アンドロゲンからテストステロンが合成される。従って去勢術を施しても幾ばくかのテストステロンや副腎性アンドロゲンが存在することから、アンドロゲン依存性の前立腺癌を完治することはできない。



そこで、前立腺癌進行ステージが初期から中期である前立腺癌の患者の多くに、アンドロゲンの作用を抑える抗アンドロゲン薬が、去勢術と併用して施される。このようなホルモン療法は、アンドロゲン依存性前立腺癌がアンドロゲン受容体の活性化により異常増殖することから、アンドロゲンを遮断して前立腺癌細胞の増殖を抑制するためのものである。例えば、(1)精巣又は副腎からのテストステロンや副腎性アンドロゲンの分泌を抑制したり、(2)前立腺細胞内において、アンドロゲン依存性転写活性化因子であって、アンドロゲンが前立腺内で変換されたジヒドロテストステロンと結合するアンドロゲン受容体に、阻害剤が競合結合し拮抗作用を示したり、(3)アンドロゲン受容体タンパク質の核内移行を阻害してアンドロゲンの作用発現を抑えたりするものである。このホルモン療法は、よく奏功し、平均生存率は5年を超える。



しかしながら、多くの場合、ホルモン療法を始めてから、数年もすると前立腺癌が去勢抵抗性・ホルモン療法抵抗性を持つ。治療開始時期や前立腺癌進行ステージによって個人差があるものの、短い患者で2~3年間、長い患者で7~8年間はホルモン療法が十分に効くが、やがて効かなくなる。そして、前立腺癌はアンドロゲン遮断への応答性を失い、持続的ホルモン療法や再発・再燃により、去勢抵抗性前立腺癌、ホルモン療法耐性癌が高頻度で生じる。この過程は、アンドロゲン受容体(AR)経路が強く関与している。



これらの癌の多くは、変異を起こしたアンドロゲン受容体やアンドロゲン非依存的な増殖能を獲得した癌細胞により構成される。



ホルモン療法が効かなくなる理由として、前立腺癌の発生や生育に不可欠なアンドロゲン受容体に、遺伝子変異が生じてわずかなアンドロゲンに反応したり、副腎や脂質や間質細胞などからアンドロゲンが生成したりすることが原因だと言われている。さらに、進行前立腺癌患者の血中循環腫瘍細胞におけるアンドロゲン受容体スプライスバリアント7のメッセンジャーRNA(mRNA)であるAR-V7の発現や、アンドロゲン非依存性癌細胞の増殖促進が原因とも言われている。



とりわけAR-V7によってコードされるタンパク質は、ジヒドロテストステロンやアンドロゲン受容体阻害薬が結合できる部位が欠損しており、リガンド非依存性の転写因子として、アンドロゲン受容体が常に活性化された状態となっている。AR-V7は、さらにDNAの結合部位や転写活性化部位を有しているものである。そのためAR-V7が発現していると、実質的にアンドロゲン分泌抑制剤やアンドロゲン受容体阻害薬が効かない。



このように、これらホルモン療法が効かない前立腺癌の多くは、男性ホルモン非依存的なアンドロゲン受容体の活性化が見られることから、既存の別なホルモン療法剤による抗癌効果は全く期待できない。このようなホルモン療法耐性前立腺癌は、転移性があり、悪性度が非常に高く、予後不良である。



ホルモン療法の時点で、又はホルモン療法が効かなくなり前立腺癌が再発・再燃した時点で、去勢抵抗性前立腺癌には、化学療法としてタキサン系抗癌剤が使用される。このような抗癌剤は、アンドロゲン受容体を競合阻害するものでなく、また前立腺癌が抗癌剤耐性を獲得し易いものである。このような抗癌剤耐性は、p-糖蛋白質の発現上昇が主な原因と考えられている。



本出願人は特許文献1に、また本発明者らは非特許文献1に、2’-ヒドロキシフラバノン(2’-HF)又はその誘導体を含むものであって、アンドロゲン受容体活性を抑制し、アンドロゲン反応性を抑制し、アンドロゲン受容体タンパク質の核内移行を阻害し、又はアンドロゲン受容体発現を阻害する組成物や、それを含む前立腺癌の予防・治療剤を、開示している。しかし、この2’-ヒドロキシフラバノン又はその誘導体はAR-V7を抑制しない。



この2’-ヒドロキシフラバノンやその誘導体は、アンドロゲン受容体の働きを抑制し、アンドロゲン受容体が発現していなくても抗腫瘍効果を有する。しかし、前立腺癌細胞抑制強度がより一層高く、しかもAR-V7抑制を作用できる簡素な構造で製造し易く、低毒性で安全な薬物が望まれていた。さらに、2’-ヒドロキシフラバノンやその誘導体も、市販のアンドロゲン受容体阻害薬も、AR-V7発現が去勢抵抗性前立腺癌になる機序の一つであるにも関わらずAR-V7の働きを抑制できずAR-V7発現前立腺癌に有効でないことから、とりわけAR-V7に有効でしかも抗癌剤耐性を有しない薬物が望まれていた。

産業上の利用分野


本発明は、前立腺癌を予防し又は治療し若しくは再発・再燃を予防するために用いられるものでアンドロゲン依存性又は非依存性前立腺癌細胞の抑制用の組成物及びそれを含有する前立腺癌の医薬製剤に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
下記化学式(1)
【化1】


(化学式(1)中、X-は置換基を有していてもよい、炭化水素芳香環基又は芳香族複素環基であり、Y-及びY-は両方それぞれ又は一方がX-と同一又は異なる炭化水素芳香環基又は芳香族複素環基で他方が水素原子であり、Z=は結合炭素原子と共にケトン基、チオケトン基、イミノ基、又はオキシム基を成し又は生成する原子若しくは官能基であり、Y-は水素原子、飽和又は不飽和の炭化水素基、飽和又は不飽和のパーハロゲノ炭化水素基、飽和又は不飽和のパーシャルハロゲノ炭化水素基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、アシル基、若しくは置換基を有していてもよい炭化水素芳香環基又は芳香族複素環基)で表わされるα,β-飽和又は不飽和のケトン誘導体又はその薬学的に許容される塩を含むことを特徴とするアンドロゲン依存性又は非依存性前立腺癌細胞の抑制用の組成物。

【請求項2】
前記ケトン誘導体が、X-並びにY-、Y-及びY-中における前記炭化水素芳香環基の炭化水素芳香環をベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、又はアズレンとし、前記芳香族複素環基の芳香族複素環を、チオフェン、チアナフテン、ベンゾチオフェン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キノキサリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、又はフラザンとすることを特徴とする請求項1に記載の組成物。

【請求項3】
前記ケトン誘導体が、Y-を、水素原子、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状の前記飽和又は不飽和の炭化水素基、炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状の飽和又は不飽和のパーフルオロ炭化水素基、炭素数1~14の直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状の飽和又は不飽和のパーシャルフルオロ炭化水素基、炭化水素芳香環基、若しくは芳香族複素環基とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の組成物。

【請求項4】
前記ケトン誘導体が、下記化学式(2-1)、又は化学式(2-2)
【化2】


(化学式(2-1)及び(2-2)中、R-~R10-、及びR16-~R20-R26-は、それぞれ同一又は異なり、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、水酸基、アミノ基、アンモニウム塩、モノ又はジアルキルアミノ基、メルカプト基、カルボキシル基又はその塩、アシル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、モノ又はジアルキルアミド基、ハロゲノ基、ニトロ基、ニトリル基、スルホン酸基又はその塩、スルフィン酸又はその塩若しくはそのエステル、スルフェン酸又はその塩若しくはそのエステル、リン酸又はその塩若しくはそのエステルから選ばれる前記置換基、又は水素原子であり、Y-、及びZ-は前記と同じであり、Y-は前記芳香族複素環基である)で表わされることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の組成物。

【請求項5】
前記ケトン誘導体が、前記化学式(2-1)又は前記化学式(2-2)で表わされ、Y-を水素原子又はC2n+1-(CH-(式中、nは1~12の数、mは0~2の数)とすることを特徴とする請求項4に記載の組成物。

【請求項6】
前記ケトン誘導体が、前記化学式(2-1)中のR-~R10-のうちR-及び/又はR10-と、前記化学式(2-2)中のR16-~R20-のうちR16-及び/又はR20-とを水酸基とすることを特徴とする請求項4に記載の組成物。

【請求項7】
請求項1~6の何れかのアンドロゲン依存性又は非依存性前立腺癌細胞の抑制用の組成物を含有することを特徴とする前立腺癌の医薬製剤。

【請求項8】
前記前立腺癌の予防用剤、治療用剤、再発防止用剤、及び/又は再燃防止用剤であることを特徴とする請求項7に記載の医薬製剤。

【請求項9】
アンドロゲン受容体活性化の抑制剤、アンドロゲン反応性の抑制剤、アンドロゲン受容体発現の抑制剤、アンドロゲン依存性前立腺癌の増殖抑制剤、アンドロゲン非依存性前立腺癌の増殖抑制剤、アンドロゲン受容体の転写活性化能の阻害剤、AR-V7の抑制剤、及び/又は抗癌剤耐性前立腺癌の抑制剤であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の医薬製剤。

【請求項10】
前記前立腺癌が、去勢抵抗性前立腺癌であることを特徴とする請求項7~9の何れかに記載の医薬製剤。

【請求項11】
賦型剤、分散剤、充填剤、担体、及び/又は溶剤を含有することを特徴とする請求項7~10の何れかに記載の医薬製剤。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開
(有)金沢大学ティ・エル・オーは、金沢大学の研究者の出願特許を産業界へ技術移転することを主目的として、金沢大学の教官の出資により設立された技術移転機関です。
ご興味のある方は、下記「問合せ先」へ整理番号と共にご連絡願います。
なお、既に活用のお申し込み・お打合わせ等の段階に入っている場合もございますので、予めご承知おきください。


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