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低温活性が改善された酵素及びその製造方法 新技術説明会

国内特許コード P180014885
整理番号 Q20050JP
掲載日 2018年4月24日
出願番号 特願2017-219234
公開番号 特開2019-088225
出願日 平成29年11月14日(2017.11.14)
公開日 令和元年6月13日(2019.6.13)
発明者
  • 玉田 太郎
  • 平野 優
  • 上田 光宏
出願人
  • 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
発明の名称 低温活性が改善された酵素及びその製造方法 新技術説明会
発明の概要 【課題】低温側での活性が向上している変異型酵素を提供する。
【解決手段】酵素の分岐型の塩橋を形成しているアミノ酸残基に、塩橋を消失させずに架橋強度を弱めるような変異を導入した変異型酵素とする。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要

酵素は、触媒として生体中の様々な反応に関与するタンパク質であり、酵素を利用した各種機能性物質の生産、各種廃棄物質の処理などは、化学・物理的な方法に比べ、特異性が高く、反応に高温条件を要せず、大量廃液の問題もないために、エネルギーコストが小さく、環境への負荷が小さい技術として、食品・医薬品・エネルギー・廃棄物処理等の様々な分野で利用されている。

他方、酵素を利用した工業的な生産及び処理においては、生産又は処理効率の向上および製造又は処理コストの低減が解決すべき課題として残されている。例えば、酵素は、タンパク質であるため、その触媒作用を効果的に発揮させるには、pH、温度等の反応条件を厳密に制御する必要がある。ところが、工業的な生産又は処理において利用される酵素の多くは、至適温度が室温よりかなり高い温度であるため、このような温度条件で反応を行うための設備を要し、生産効率の低下および製造コストの増大の一要因となっている。このため、高温での反応に利用されている酵素の低温での活性が改善されれば、よりエネルギー効率の高い工業生産が可能となる。

K. S. Siddiqui及びR. Cavicchioliは、天然の低温適合性酵素に関する総説で、酵素の立体構造の高い柔軟性は、低い活性エンタルピーに翻訳され、低温での高い特異的な活性をもたらす一方、立体構造が不安定化し、基質親和性の低下をもたらす、ことを教示する(非特許文献1の要約)。また、K. S. Siddiquiらは、多くの低温適合性酵素において、Arg/Lys比が低減している報告に言及し、アルギニンが、一般的に、酵素の熱安定性を増大させることを教示している(非特許文献1の第424頁)。また、栗原らは、好冷性細菌の総括的な報告において、好冷性酵素でArg/Arg+Lys比が低減しているものが多いと報告している(非特許文献2)

また、Guozeng Wangらは、低温活性のキシラナーゼのD83Nの置換で塩橋を破壊すると相対的に低温側の活性が高くなったものの熱安定性が低下し、D39Nの置換で橋を破壊すると全体的に活性が低下し、熱安定性も低下したことを報告している(非特許文献3)。

しかしながら、K. S. Siddiquiら及びGuozeng Wangらが指摘する通り、通常、酵素の立体構造の柔軟性を高めると、酵素が不安定化するため、活性は低下し、場合によっては喪失してしまう。従って、立体構造の柔軟性を高める変異を導入した、工業的な利用が可能な酵素は知られていない。

産業上の利用分野

本発明は、特定部位のアミノ酸を改変して低温での活性を改善した変異型酵素、これをコードする核酸、これを含む発現カセット、発現ベクター、及び形質転換体、これらの製造方法、並びにこれらを利用して目的物質を工業的に製造する方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
親酵素が有する分岐型の塩橋の少なくとも一つを形成するアミノ酸残基が、前記塩橋を維持しながら塩橋強度が小さくなるように変更されている、変異型酵素。

【請求項2】
前記親の酵素は、配列番号1並びに配列番号15乃至18のいずれかに示すアミノ酸配列に対して80%以上の配列同一性を有し、分岐型の塩橋を形成するアミノ酸は保存されている、アミノ酸配列を含み、配列番号1並びに配列番号15乃至18のいずれかに示すアミノ酸配列で特定される酵素と同じ酵素活性を有する、請求項1に記載の変異型酵素。

【請求項3】
前記親酵素が有する分岐型の塩橋の少なくとも一つを形成するアミノ酸側鎖の窒素と酸素の原子間距離が3.2Å未満である、請求項1又は2に記載の変異型酵素。

【請求項4】
前記分岐型の塩橋を形成するアミノ酸側鎖が、前記酵素の至適温度以下の温度で単一のコンフォメーションをとる、請求項1~3の何れかに記載の変異型酵素。

【請求項5】
前記親酵素が有する分岐型の塩橋の少なくとも一つが、以下の構造を有する、請求項1~4の何れかに記載の変異型酵素。
【化1】
(省略)

【請求項6】
前記分岐型の塩橋の少なくとも一つを形成するアルギニン残基がリジン残基に置換されている、請求項1~5の何れか1項に記載の変異型酵素。

【請求項7】
前記親の酵素は、配列番号1に示すアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列の少なくとも302位のアルギニン残基がリジン残基に置換されている、請求項1に記載の変異型酵素。

【請求項8】
前記親酵素より、前記親酵素の至適温度より低い温度での比活性が向上している、請求項1~7の何れか1項に記載の変異型酵素。

【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の変異型酵素をコードする、核酸。

【請求項10】
請求項9に記載する核酸を含む、発現カセット又は発現ベクター。

【請求項11】
請求項9に記載する核酸、又は請求項10に記載する発現カセット若しくは発現ベクターを含む、形質転換体。

【請求項12】
微生物である、請求項11に記載する形質転換体。

【請求項13】
請求項1~8の何れか1項に記載の変異型酵素、或いは請求項11又は12に記載する形質変換体を含む、リアクター。

【請求項14】
請求項1~8の何れか1項に記載の変異型酵素、請求項11又は12に記載する形質変換体、或いは請求項13に記載するリアクターを用いて、目的物質を製造する方法。

【請求項15】
親酵素の分岐型の塩橋を特定する工程と、
前記特定した塩橋の少なくとも一つを形成するアミノ酸残基の少なくとも一つを、前記塩橋を維持しながら架橋強度が小さくなるように変更する工程と
を含む、変異型酵素の製造方法。

【請求項16】
前記親酵素は、配列番号1並びに配列番号15乃至18のいずれかに示すアミノ酸配列に対して80%以上の配列同一性を有し、分岐型の塩橋を形成するアミノ酸は保存されている、アミノ酸配列を含み、配列番号1並びに配列番号15乃至18のいずれかに示すアミノ酸配列で特定される酵素と同じ酵素活性を有する、請求項15に記載の製造方法。

【請求項17】
前記親酵素が有する分岐型の塩橋の少なくとも一つを形成するアミノ酸側鎖の窒素と酸素の原子間距離が3.2Å未満である、請求項15又は16に記載の製造方法。

【請求項18】
前記分岐型の塩橋を形成するアミノ酸側鎖が、前記酵素の至適温度以下の温度で単一のコンフォメーションをとる、請求項15~17の何れかに記載の変異型酵素。

【請求項19】
前記親酵素の分岐型の塩橋の少なくとも一つが、以下の構造を有する、請求項15~18の何れかに記載の製造方法。
【化2】
(省略)

【請求項20】
前記親酵素が有する前記分岐型の塩橋の少なくとも一つを形成するアルギニン残基がリジン残基に置換されている、請求項15~19の何れかに記載の製造方法。

【請求項21】
得られる変異型酵素は、前記親の酵素より、前記親の至適温度より低い温度での比活性が向上している、請求項15~20の何れかに記載の製造方法。

【請求項22】
熱安定性を改善した変異型酵素の製造方法であって、
親酵素の塩橋部位を特定する工程と、
前記特定した塩橋を形成するアミノ酸残基を、前記塩橋を維持しながら架橋強度が増大するように変更する工程と
を含む、変異型酵素の製造方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開


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