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青色に発光する蛍光体とその製造方法および利用

国内特許コード P180014942
掲載日 2018年5月1日
出願番号 特願2010-055172
公開番号 特開2011-190297
登録番号 特許第5700326号
出願日 平成22年3月11日(2010.3.11)
公開日 平成23年9月29日(2011.9.29)
登録日 平成27年2月27日(2015.2.27)
発明者
  • 加藤 栄
  • 松本 泰治
  • 後藤 義昭
  • 伊東 裕恭
  • 岡村 達也
  • 山田 隆之
出願人
  • 栃木県
  • 吉澤石灰工業株式会社
発明の名称 青色に発光する蛍光体とその製造方法および利用
発明の概要 【課題】 厚さ方向にはナノサイズであるが、面方向には十分な広がりの粒径をもった板状体の結晶体であって、紫外線の照射を受けて青色の光を発する蛍光体を提供する。この蛍光体を使用して、記録の偽造防止のためのセキュリティ印刷に適した塗料を提供する。
【解決手段】 K2O・Al23・2SiO2・xH2Oの組成を有し、六角板状の結晶形態をもつ「リンデQ」型ゼオライトを、その中のKイオンとCe3+イオンとのイオン交換を行なったのち、濾過、洗浄、乾燥をへて、非酸化性の雰囲気下に900℃近辺の温度で焼成することにより、ゼオライトの結晶構造を破壊して非晶質にするが、板状の結晶の外形は維持した焼成体を得る。焼成体は板状の蛍光体であって、295nmの紫外光で励起すると、410nm付近にピークを有する青色の蛍光を発する。この板状の蛍光体をビヒクルに分散させれば、蛍光塗料が得られ、セキュリティ印刷に使用できる。
【選択図】 図4
従来技術、競合技術の概要


ゼオライトは、そのキャビティ(細孔)内に発光中心となる希土類元素をイオン交換により均一に分散させることが容易であることから、ゼオライトを母結晶ないし原料に用いた蛍光体が、多数知られている。ゼオライトを使用した蛍光体の技術を概観すれば、つぎのとおりである。



まず、希土類金属のイオンを、ゼオライトキャビティに混入した配位子と錯体を形成させ、この配位子を希土類金属の発光輻射線より低い波長範囲において励起電磁線を吸収できるように、電子構造に関して希土類金属を選定し、かつ、配位子のトリプレットレベルを希土類金属の放射レベルより上にするという原理が開示された(特許文献1)。希土類元素としてはさまざまなものが使用可能であるが、とくにユーロピウムEuが有用であることが知られている。Euや、Tbのイオンを含むゼオライトに、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化タンタルなどの遷移金属酸化物を加えたものも提案された(特許文献2)。



ゼオライト中の水分の存在は励起を妨げるので、ゼオライトのイオン交換をしたのち焼成して、ゼオライト構造を非晶質化するか、または他のアルミノケイ酸塩構造の化合物に変換するか、希土類金属を有機配位子と錯体化するかのいずれかを行なう必要があり、この処理を経て、蛍光体として機能するようになる。蛍光体の製造時に水分を除去しても、使用中に水分を環境から再度取り込んでしまえば、蛍光体は、蛍光を発する機能を失う。これを防止して、蛍光を発する機能を維持するため、ゼオライトに水分が再吸着しないような手段が考えられている。たとえば、ビピリジンのような有機化合物を用いてEuと錯体を形成させて、Y型ゼオライトの内部に位置させるということが試みられた(非特許文献1)。



一方、ゼオライト細孔内に金属酸化物-希土類金属からなる蛍光体を均一に分散させた蛍光体材料も提案された(特許文献3)。ただしこれは、ゼオライトそのものに蛍光特性を付与するものではない。



前記した蛍光性能の維持という目的を達する技術としては、ゼオライト単結晶に発光マトリックス用金属酸化物、具体的にはスズ、亜鉛またはインジウムの酸化物に、発光中心用希土類金属との複合体を担持させたものもある(特許文献3)。発明者らの一部は、フォージャサイト型ゼオライトをEu3+でイオン交換したのち、焼成してなる蛍光体を開示した(特許文献4)。



この蛍光体を、粒子形状が均一であって粒径の制御が容易であり、粒径が小さくても強い発光が得られるものとして得るため、アルミノシリケート系非晶質マトリックス中に、セラミックスの結晶微粒子を分散させた複合体とする提案もある(特許文献5)。ただしこれは、ゼオライト由来のシリカとアルミナの非晶質マトリックス中に、蛍光体であるセラミックス微粒子を分散させる方法であり、ゼオライト構造を保持した蛍光体を与えるものではない。



フィールドエミッションディスプレイ用の蛍光体に代表される、いわゆる次世代蛍光材料には、高発光効率に加えて、低速電子線のようなエネルギーの低い電磁波で励起できるという特性が要求される。この目的には、ナノサイズの蛍光体が適当であるが、従来の蛍光体を単にナノサイズ化すると、表面積の増大に伴う発光強度の減少が避けられない。この問題を解決する途は、蛍光体を厚さ方向にだけナノサイズであって、面方向には大きな板状体にすることである。



また、有価証券や製品ラベル等には、偽造防止技術(セキュリティ技術)として、蛍光体を使用した印刷や、紙そのものが発光するセキュリティペーパーを用いることが行なわれている。この目的に適した蛍光体としては、紫外線励起可視光発光蛍光体が好適であるとして使用されている。セキュリティ技術に利用する蛍光体は、紙をはじめとする媒体の上に印刷ないし塗布して使用することから、塗布性、遮蔽性が高い板状の粒子であることが好ましい。



このように、さまざまな分野において、板状の蛍光体が求められている。しかし、従来の酸化物系または硫化物系の蛍光体を製造する方法は、固相反応法やフラックス法であって、これらの方法で、結晶形態や粒径を制御することは困難である。



これまで板状の蛍光体として知られているのは、ホウ酸塩系のa(M11-x223・B23(MはY,LaまたはGd、M2はEu,TbまたはCe、0.005≦x≦0.2、0.5≦a≦2)の組成式により表される化合物であるが(特許文献6)。得られる蛍光体粒子は、最大径1~5μm、厚さ0.05~0.5μmとのことであるが、形態や粒径の制御は容易でない。



発明者らは、厚さ方向にはナノサイズであるが、面方向には十分な広がりをもつ板状体の結晶であって、比較的弱い励起電磁波によっても高い輝度の発光をするものを開発し、すでに提案した(特許文献7)。この蛍光体は、「リンデQ」型ゼオライトを基質とし、そのKと希土類金属イオンとをイオン交換したのち、焼成してなるものであって、その蛍光スペクトルのピークは、希土類金属としてユーロピウムEuを使用したものは610nm(赤色)、テルビウムTbを使用したものは540nm(緑色)、ツリウムTmを使用したものは453nm(青色)である。しかしながら、Tmを使用した青色板状蛍光体は発光効率が低く、RGBの三原色をバランスよく揃えるには至らなかった。



青色に発光する蛍光体としては、セリウムCe(III)イオンを発光中心とした材料が多数提案されている。その種の青色発光蛍光体のひとつは、ランタンイオンサイトに固溶置換によりセリウムイオンを付活した、ランタン窒化ケイ素蛍光体に関するもの(特許文献8)である。いまひとつは、酸素、カルシウム、マグネシウムまたはアルミニウム、およびケイ素またはイットリウムからなる酸化物にセリウムを固溶した、セリウム含有酸化物に関するもの(特許文献9)である。さらに、バリウム化合物、ケイ素化合物およびセリウム化合物の混合物を、硫化水素または二硫化炭素の雰囲気中で焼成して得た青色発光蛍光体も提案された(特許文献10)。これらの技術は、いずれも、蛍光体の粒径や形態を制御することを含んでいないし、板状形態を有するものは、まだ実現していなかった。



別に、シリケート系複酸化物と付活剤とからなる青色発光蛍光体に関し、その粒径を1μm以下に制御する技術がある(特許文献11)。しかしこれも、板状蛍光体を提供する技術ではない。
【特許文献1】
特開平05-194941
【特許文献2】
特表平11-504064
【特許文献3】
特開2003-246981
【特許文献4】
特開2005-048107
【特許文献5】
特開2005-314573
【特許文献6】
特開2002-309245
【特許文献7】
特開2008-069290
【特許文献8】
特開2003-096446
【特許文献9】
特開2005-330348
【特許文献10】
特開2006-265501
【特許文献11】
特開2007-191588
【非特許文献1】
Journal of Luminescence 72-74(1997)532-534



このように、板状の蛍光体であって、強い青色の発光を示すものは、これまで得られていなかった。そこで発明者らは、板状の形状を有するゼオライトを母結晶として利用し、これに青色の発光をするセリウム(III) をイオン交換により保持させたものに立ち戻り、この蛍光体が、大気中の水分の再吸着や酸素によるCeイオンの酸化によって発光強度が減少することを防止する手段を求めて研究を続けた。その結果、板状形態のゼオライトの構造中に発光中心となるCeイオンを均一に分散させ、つづく焼成時にCeイオンが酸化されることを防ぎつつ母結晶の粒径および形態を保って焼成を行ない、ゼオライト構造を分解して非晶質化し細孔をつぶすことによって、使用中のCeイオンが酸化されることも防止でき、蛍光体が耐久性を獲得することを見出した。

産業上の利用分野


本発明は、紫外光による励起を受けて青色に発光する蛍光体に関する。この蛍光物質は、六角板状の形状を有する非晶質体である。本発明はまた、この蛍光体を、ゼオライトのイオン交換および焼成により製造する方法にも関する。本発明はさらに、この蛍光体が板状であるという特徴を利用した、すぐれた塗布性と隠蔽性を有する蛍光インキ、ならびに、この蛍光体を使用したフラットディスプレイ、有価証券および各種製品ラベルの偽造防止技術にも関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
2O・Al23・2SiO2・xH2Oの組成を有し、六角板状の結晶形態をもつ「リンデQ」型ゼオライトにイオン交換を行なってCe3+イオンを分散させ、かつ、Ce3+を酸化させることのない条件下で加熱してゼオライトの結晶構造を破壊することにより非晶質としたが、板状の外形には変更が加えられていない材料からなり、295nmの紫外線により励起されて410nmに波長のピークを有する青色の蛍光を発する板状蛍光体。

【請求項2】
請求項1に記載した板状蛍光体を製造する方法であって、K2O・Al23・2SiO2・xH2Oの組成を有し、六角板状の結晶形態をもつ「リンデQ」型ゼオライトを、Ceの可溶性塩の水溶液に浸漬し、温度100℃以下でゼオライト中のKとCe3+イオンとのイオン交換を行なって、少なくとも20%の交換率でCeイオンを存在させたのち、Ce3+を酸化させることのない非酸化性の雰囲気下で850℃以上1000℃未満の温度で焼成することにより、ゼオライトの結晶構造を破壊して非晶質とするが、板状の外形を維持した蛍光体を得ることからなる製造方法。

【請求項3】
非酸化性の雰囲気下の焼成を、900℃近辺の温度において行なう請求項の製造方法。

【請求項4】
請求項1に記載した板状蛍光体をビヒクルに分散させて形成した蛍光塗料または印刷インク。

【請求項5】
請求項の蛍光塗料または印刷インクを、板状体蛍光体が基材の面に沿って配向される塗布手段を用いて基材に塗布し、厚さ方向にナノサイズの板状蛍光体が存在する塗膜を得ることからなる板状蛍光体の塗膜形成方法。

【請求項6】
偽造を防止すべき書類を基材とし、その表面に請求項に記載した蛍光塗料または印刷インクの塗膜を形成して得た、偽造防止処理を施した書類。

【請求項7】
偽造を防止すべき書類が、有価証券または製品ラベルである請求項の偽造防止処理を施した書類。

【請求項8】
請求項に記載の偽造防止処理を施した書類に対して紫外線を照射し、励起された発光体から生じる青色光を検出することからなる偽造を検知する方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2010055172thum.jpg
出願権利状態 登録


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