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多能性幹細胞を所望の細胞型へ分化する方法

国内特許コード P180015015
整理番号 (S2015-0777-N0)
掲載日 2018年5月23日
出願番号 特願2017-505381
出願日 平成28年3月9日(2016.3.9)
国際出願番号 JP2016057420
国際公開番号 WO2016143826
国際出願日 平成28年3月9日(2016.3.9)
国際公開日 平成28年9月15日(2016.9.15)
優先権データ
  • 特願2015-046318 (2015.3.9) JP
発明者
  • 洪 実
出願人
  • 学校法人慶應義塾
発明の名称 多能性幹細胞を所望の細胞型へ分化する方法
発明の概要 転写因子の発現誘導によって起こる細胞分化の方向性を予測し、哺乳類由来の多能性幹細胞を所望の細胞型に分化する方法を提供する。
ヒト細胞を使用したヒト遺伝子発現相関マトリックスを新たに作成し、さらに該マトリックスから選択した転写因子カクテルをヒト多能性幹細胞に導入することにより、所望の細胞型に分化することができることを確認し、本発明を完成した。
従来技術、競合技術の概要


(転写因子のネットワーク)
転写因子(TF)のネットワークは、細胞識別情報を決定し、複数の転写因子を組み合わせて過剰発現させることによって、改変可能となる。特定の細胞分化をもたらす転写因子の組み合わせを選択し、証明することは、転写因子の可能な組み合わせが約2,000種と多数にわたるために困難となっている。
再生医療の目的の1つは胚性幹(ES)細胞や人工多能性幹(iPS)細胞などの多能性幹細胞から所望の型の分化細胞を生成することである{非特許文献1:Nature 292, 154-156 (1981)、非特許文献2:Proc Natl Acad Sci U S A 78, 7634-7638 (1981)、非特許文献3:Science 282, 1145-1147 (1998)、非特許文献4:Cell 126, 663-676 (2006)}。
しかし、膨大かつ多種多様で複雑な転写因子の調節メカニズムは、転写因子の正しい組み合わせを探し出すことに大きな課題となっている。



転写因子ネットワーク分析を容易にしようと、機能喪失、即ちマウスES細胞の転写因子のノックアウトまたは抑制{非特許文献5:Nat Genet 36, 543-544 (2004)、非特許文献6:Nature 442, 533-538 (2006)、非特許文献7:Cell 128, 9-13 (2007)、非特許文献8:Sci Rep 3, 1390 (2013)}に対してシステム生物学的アプローチが応用されており{非特許文献9:Annu Rev Cell Dev Biol 26, 721-744 (2010)}、その後に、表現型解析または広範囲なトランスクリプトーム解析を行うことになる。
しかし、転写因子の組み合わせを強制的に誘導することによって、細胞識別情報の改変がこの様にかなり達成できていることから、機能の獲得、即ち転写因子過剰発現のアプローチがより好ましい{非特許文献10:Cell 51, 987-1000 (1987)、非特許文献4:Cell 126, 663-676 (2006)、非特許文献11:Proc Natl Acad Sci U S A 105, 6057-6062 (2008)、非特許文献12:Nature 468, 521-526 (2010)、非特許文献13:Nature 463, 1035-1041 (2010)、非特許文献14:Nature 476, 224-227 (2011)、非特許文献15:Cell Stem Cell 9, 205-218 (2011)、非特許文献16:Nature 475, 390-393 (2011)、非特許文献17:Nature 475, 386-389 (2011)}。従って、NIA Mouse ES Cell Bank{非特許文献18:Cell Stem Cell 5, 420-433 (2009)、非特許文献19:Sci Rep 1, 167 (2011)}が設立され、ここでは、それぞれ137種の転写因子、即ちマウスゲノムにコードされた全転写因子(1500~2000種の転写因子)の7~10%{非特許文献20:Biochem Biophys Res Commun 322, 787-793 (2004)}がテトラサイクリン調節可能な方法で誘導され得る。各転写因子を強制的に誘導発現させてから48時間後に、これらのES細胞株のそれぞれにおいて広範囲な遺伝子発現プロファイル(即ちトランスクリプトーム)を測定した{非特許文献19:Sci Rep 1, 167 (2011)}。一方、様々な細胞種、組織、臓器で発現している全遺伝子の発現量のプロファイルが、パブリックドメインのデータベースとして利用可能である。その一つにGenomics Institute of the Novartis Research Foundation(GNF)による多様な細胞型の発現プロファイルがある{非特許文献21:Genome Biol 10, R130 (2009)、非特許文献22:Proc Natl Acad Sci U S A 99, 4465-4470 (2002)}。前述の実験で得られた転写因子誘導遺伝子発現プロファイルとGNFの遺伝子発現プロファイルとを比較することによって、遺伝子発現レベルの相関を示すマトリックス(遺伝子発現相関マトリックス)を作成した。



(細胞の分化)
細胞の分化状態は、その細胞に発現する特定の転写因子のセットとそれらの発現レベルによって規定されていると考えられている。転写因子は、遺伝子発現を直接的に制御する因子であり、プロモーターやエンハンサーといった転写を制御する領域に結合し、DNAの遺伝情報をRNAに転写する過程を促進、あるいは抑制し、細胞特異的な遺伝子ネットワークを形成する重要な役割を果たす。
近年、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた任意細胞への分化誘導技術の開発が盛んに研究されているが、分化効率の低さや異なる細胞系譜の混在が問題となっている。そのため、細胞分化の決定や最終分化を統制できる転写因子の同定が極めて重要な課題である。



(マウス転写因子のネットワーク)
本発明者らは、細胞の分化系譜を決定するマウス転写因子ネットワークの構造を解明するために、マウス転写因子遺伝子を自在に発現誘導できるNIAマウスES細胞バンク(137転写因子遺伝子分の細胞株)を樹立している{非特許文献18:Cell Stem Cell 5, 420-433 (2009)、非特許文献19:Sci Rep 1, 167 (2011)}。
これらの細胞株では、Tet-offシステムを用いて、培養液中からドキシサイクリンを除くことによって単一の転写因子を、速やかかつ強力に強制発現することができる。本発明者らは、これらの細胞株を用いて、遺伝子発現誘導48時間後の転写産物量の変化をマイクロアレイにより網羅的に解析した。得られた遺伝子発現プロファイルを、それぞれのマウス臓器・組織の遺伝子発現パターンと比較(遺伝子発現相関マトリックス)することにより、単一の転写因子の発現誘導により引き起こされる遺伝子発現パターンの変化が、どの細胞系譜を規定する傾向にあるのかを明瞭に観察することができた。これにより、転写因子の発現誘導によって起こる細胞分化の方向性をかなりの正確性で予測できることを確認している。

産業上の利用分野


本発明は、多能性幹細胞を所望の細胞型へ分化する方法及び該分化する方法に用いる分化誘導剤に関する。
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本特願2015-046318号優先権を請求する。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(1)~(5)のいずれか1以上の転写因子を哺乳類由来の多能性幹細胞に導入する工程を含む、多能性幹細胞を神経系細胞に分化する方法。
(1)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される5の転写因子
(2)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される4の転写因子
(3)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される3の転写因子
(4)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される2の転写因子
(5)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される1の転写因子

【請求項2】
前記神経系細胞は、運動神経を含む請求項1に記載の分化する方法。

【請求項3】
前記運動神経は、運動神経に存在する細胞である請求項1又は2に記載の分化する方法。

【請求項4】
以下の(1)~(5)のいずれか1以上の転写因子を含む哺乳類由来の多能性幹細胞を神経系細胞に分化可能な神経系細胞分化誘導剤。
(1)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される5の転写因子
(2)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される4の転写因子
(3)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される3の転写因子
(4)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される2の転写因子
(5)NEUROG1、NEUROG2、NEUROG3、NEUROD1及びNEUROD2から選択される1の転写因子

【請求項5】
前記神経系細胞は、末梢性の運動神経である請求項4に記載の分化誘導剤。

【請求項6】
前記運動神経は、運動神経に存在する細胞である請求項4又は5に記載の分化誘導剤。

【請求項7】
前記転写因子は、mRNA、合成mRNA、核酸又はタンパク質である請求項4~6のいずれか1に記載の分化誘導剤。

【請求項8】
以下の(1)~(5)のいずれか1以上の転写因子を哺乳類由来の多能性幹細胞に導入する工程を含む、多能性幹細胞を肝芽細胞及び/又は肝細胞に分化する方法。
(1)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される1の転写因子
(2)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される2の転写因子
(3)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される3の転写因子
(4)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される4の転写因子
(5)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される5の転写因子

【請求項9】
以下の(1)~(5)のいずれか1以上の転写因子を含む哺乳類由来の多能性幹細胞を肝芽細胞及び/又は肝細胞に分化可能な肝芽細胞及び/又は肝細胞分化誘導剤。
(1)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される1の転写因子
(2)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される2の転写因子
(3)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される3の転写因子
(4)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される4の転写因子
(5)TGIF、TCF4、PITX2、SALL4及びMEIS1から選択される5の転写因子

【請求項10】
以下の(1)~(7)のいずれか1以上の転写因子を哺乳類由来の多能性幹細胞に導入する工程を含む、多能性幹細胞を造血幹細胞及び/又は血液細胞に分化する方法。
(1)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される1の転写因子
(2)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される2の転写因子
(3)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される3の転写因子
(4)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される4の転写因子
(5)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される5の転写因子
(6)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される6の転写因子
(7)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される7の転写因子

【請求項11】
以下の(1)~(7)のいずれか1以上の転写因子を含む哺乳類由来の多能性幹細胞を造血幹細胞及び/又は血液細胞に分化可能な造血幹細胞及び/又は血液系細胞分化誘導剤。
(1)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される1の転写因子
(2)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される2の転写因子
(3)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される3の転写因子
(4)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される4の転写因子
(5)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される5の転写因子
(6)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される6の転写因子
(7)CDYL2、ETS2、SPI1、OVOL2、CDX2、CEBPB及びSALL4から選択される7の転写因子

【請求項12】
転写因子であるSOX9を哺乳類由来の多能性幹細胞に導入する工程を含む、多能性幹細胞を軟骨細胞に分化する方法。

【請求項13】
転写因子であるSOX9を含む哺乳類由来の多能性幹細胞を軟骨細胞に分化可能な軟骨細胞分化誘導剤。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開
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