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スフェロイドの作製方法及び該方法に用いる培地

国内特許コード P180015016
整理番号 (S2015-0789-N0)
掲載日 2018年5月23日
出願番号 特願2017-505367
出願日 平成28年3月9日(2016.3.9)
国際出願番号 JP2016057307
国際公開番号 WO2016143808
国際出願日 平成28年3月9日(2016.3.9)
国際公開日 平成28年9月15日(2016.9.15)
優先権データ
  • 特願2015-046420 (2015.3.9) JP
発明者
  • 山田 勝也
  • 小野 幸輝
出願人
  • 国立大学法人弘前大学
発明の名称 スフェロイドの作製方法及び該方法に用いる培地
発明の概要 本発明は、簡易な方法で、良質なスフェロイドを大量に作製できる方法を提供することを目的とする。本発明はまた、成長因子や接着因子、または細胞間マトリックス、あるいは特殊な培養システムを用いることなく、容易にスフェロイドを作製できる方法を提供することを目的とする。本発明により、グルコース含有培地であってグルコースが実質的にL-グルコースから構成される培地を用いて細胞を培養することを特徴とするスフェロイドの作製方法が提供された。また、成長因子、接着因子、および細胞間マトリックスを添加しない培地にて、立体的な支持体を用いない培養系でスフェロイドを作製する方法が提供された。
従来技術、競合技術の概要


市販の培養ディッシュやマルチウェルプレート等の一般的培養容器を使用して、細胞を二次元的に単層で培養すると、細胞の生体内での機能のいくつかは十分発現しない場合がある。これに対して、細胞を3次元的に増殖させ、球形や卵形等の立体的形態をとらせるスフェロイド培養法は、栄養素や酸素、あるいは二酸化炭素等の代謝産物や老廃物の生理学的勾配がスフェロイド内に生じていると考えられ、より生体内環境に存在する細胞に近い細胞状態を出現させることができ、薬効評価等の創薬スクリーニングや腫瘍評価、細胞産生物の生産等の機能発現に有効な方法として急速に使用が広がっている。



スフェロイドを形成させる方法として、これまでハンギングドロップ培養法(非特許文献1)やゲル中での培養(非特許文献2)、低接着性容器を用いた培養(非特許文献3)、ナノインプリンティング精密加工技術により足場(scaffold)を作製した特殊ディッシュを利用する培養(非特許文献4)、成長因子やマトリゲルの添加(非特許文献5)等、様々な方法が提案されてきた。



しかしこれらの方法は、再現性が低かったり、特殊な装置や高価な容器を必要とする、あるいは、容器の形状によりそのままでは細胞観察に支障をきたす場合や、成長因子や接着因子、成分が明らかにされていない培地等の添加が必要であるなどの問題がある。



具体的な培養法として以下のようなものが提案されている。
ハンギングドロップ培養法は、表面張力を利用した培養液の液滴の中に細胞懸濁液をスポットして培養する方法である(非特許文献1)。この方法により、大きさが均一なスフェロイドが形成されるが、培地交換ができないため、長期培養が困難となる問題があり、また大量のスフェロイド生成に向かない、という問題がある。



低接着性ディッシュを用いたスフェロイド培養は、細胞がディッシュ表面に接着することを防ぐことによりスフェロイドを形成させる培養方法であるが、いったん形成されたスフェロイド同士が次第に融合しやすく、安定性に問題がある(非特許文献6)。



U-Shapeディッシュ等の使用による培養法は、スフェロイド同士の融合を回避し、シングルスフェロイドの形成を可能にすることができる。そして、U底やV底の特殊容器を用いる方法が考案され、市販されている。この方法は、サイズの均一なスフェロイドが形成されるが、細胞間が疎になりがちで、形も球形または楕円形にならずお椀型になりやすい欠点がある。緻密なスフェロイドとするためには、培地に成長因子等の添加を行うが、なおスフェロイドとしての性質は不十分となりがちである。



回転培養によるスフェロイド培養法では、回転培養に特殊な装置を必要とする上、スフェロイドのサイズや形状が不均一で、スフェロイド実験の再現性に影響を及ぼす(非特許文献1)。



微細な特殊加工を施した特殊容器によるスフェロイド培養法として、ディッシュ底面に、狭い面積の細胞接着表面と広い面積の細胞非接着表面とを並べることで、細胞のディッシュ底面への接着を不安定にすることによりスフェロイド形成を起こす方法や、ディッシュ底面にナノサイズの格子状構造を微細加工して細胞接着を抑制することによりスフェロイドを形成させる方法等が提案され、市販されている。これらの方法を用いれば、均一な形状を有するスフェロイドが形成される。しかし、特殊加工を施したディッシュが極めて高価である上、マトリゲルや推奨されている成分未公開の特殊添加物等を加えても、なお生体内での状態を模した緻密なスフェロイドの形成は不十分となりがちである。更にまた顕微鏡観察においては、これらの特殊ディッシュ底面の加工が邪魔になる場合があるなどの短所がある(非特許文献4)。



生体内で異常細胞が増殖して、がん細胞に至る過程や、未分化の細胞が分化していく過程などでは、互いに近接した細胞であっても形態や機能が一様でない状態が知られている。従来のスフェロイドの作製方法を用いても、直径およそ100μm以上のスフェロイドでは、周辺部に増殖する細胞、中心部に壊死細胞を呈する典型的なスフェロイド様細胞集塊は形成される。しかしながら、上記したような生体内での状態を模した細胞間が緻密なスフェロイドを、多量に、再現性よく、安定にin vitroで形成させることは困難であった。



従来のスフェロイド培養法では、培養日数の経過と共にスフェロイドが急速に崩れるため、良質なスフェロイドを使用できるタイミングが非常に短かく、使いにくいという欠点があった。また、スフェロイドが崩れない培養方法の場合には、細胞間が疎となっており、良質なスフェロイドが形成されにくかった。



スフェロイドの作製・培養法においては、細胞集塊が3次元構造を形成することにより、より生体内に近い状態を出現させ、細胞の特異的な機能を発揮できると考えられている。また、薬効評価等の創薬スクリーニングや腫瘍評価、細胞産生物の生産等の機能発現の評価等においては、生体内での細胞と類似の特異的機能を発揮する細胞からなる細胞集塊が安定に作製されることが望ましい。その際、できるだけ簡易な方法で、良質なスフェロイドを大量に作製することが望まれている。



これまでに発明者らは、自然界にないL-グルコースを蛍光で標識した誘導体2-NBDLG(2-[N-(7-nitrobenz-2-oxa-1,3-diazol-4-yl)amino]-2-deoxy-L-glucose;特許文献1)を、ヒトから摘出した生きたがん組織やがん細胞に適用すると、がん細胞が選択的に2-NBDLGを取り込んで蛍光を発し、非がん細胞と識別可能であることを見出した(特願2014-015735、および特願2014-193424)。



また発明者らは、培養がん細胞を用いた場合は、大小不同の異常核様態を呈する細胞群を含むスフェロイド中に2-NBDLGを取り込む細胞を認めることを報告している(特許文献2)。すなわち、生体由来の細胞と同様に、培養がん細胞においてもスフェロイドを形成させた場合は2-NBDLGを取り込むことを報告している。しかし、このようなスフェロイドを再現性よく多量に形成させることは従来法ではマトリゲル等の添加によってもなお困難であった。

産業上の利用分野


本発明は、スフェロイド(機能細胞集合体)を作製するのに適した培養方法に関する。本発明はまた、該培養方法に適した培地に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
グルコース含有培地であってグルコースが実質的にL-グルコースから構成される培地を用いて細胞を培養することを特徴とするスフェロイドの作製方法。

【請求項2】
L-グルコースの割合が、D-グルコースおよびL-グルコースからなる全グルコースの90%以上である請求項1に記載の方法。

【請求項3】
前記細胞が、がん細胞由来の細胞である請求項1または2に記載の方法。

【請求項4】
前記培地での培養が3日以上である請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。

【請求項5】
前記培地が、成長因子および/または接着因子を添加しない培地である、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。

【請求項6】
前記培地が、細胞間マトリックスを添加しない培地である、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。

【請求項7】
前記培養が立体的な支持体を用いない培養である請求項1~6のいずれか一つに記載の方法。

【請求項8】
以下の工程:
(a)D-グルコースを含有する培地にて細胞を培養する工程、
(b)培地中のD-グルコースをL-グルコースに置き換える工程、
(c)グルコース含有培地であってグルコースが実質的にL-グルコースから構成される培地を用いて細胞を培養する工程、
を含む、スフェロイドの作製方法。

【請求項9】
前記工程(b)が、培地中のD-グルコース濃度を段階的に下げるとともに、L-グルコース濃度を段階的に上げて細胞を培養する工程である、請求項8に記載の方法。

【請求項10】
工程(c)におけるグルコース含有培地中のL-グルコースの割合が、D-グルコースおよびL-グルコースからなる全グルコースの90%以上である請求項8または9に記載の方法。

【請求項11】
前記工程(c)における培養が3日以上である、請求項8~10のいずれか一つに記載の方法。

【請求項12】
前記細胞が、がん細胞由来の細胞である請求項8~11のいずれか一つに記載の方法。

【請求項13】
前記工程(c)の培地が、成長因子および/または接着因子を添加しない培地である、請求項8~12のいずれか一つに記載の方法。

【請求項14】
前記工程(c)の培地が、細胞間マトリックスを添加しない培地である、請求項8~13のいずれか一つに記載の方法。

【請求項15】
前記工程(a)~(c)の培地が、成長因子、接着因子、細胞間マトリックスのいずれも添加しない培地である、請求項8~14のいずれか一つに記載の方法。

【請求項16】
前記培養が立体的な支持体を用いない培養である請求項8~15のいずれか一つに記載の方法。

【請求項17】
請求項1~16のいずれか一つに記載の方法により作製されたスフェロイド。

【請求項18】
前記スフェロイドが細胞間が緻密な状態なスフェロイドである請求項17に記載のスフェロイド。

【請求項19】
グルコース含有培地であってグルコースが実質的にL-グルコースから構成されるスフェロイド培養培地。

【請求項20】
L-グルコースの割合が、D-グルコースおよびL-グルコースからなる全グルコースの90%以上である請求項19に記載の培地。

【請求項21】
前記培地が成長因子および/または接着因子を添加しない培地である、請求項19または20に記載の培地。

【請求項22】
前記培地が細胞間マトリックスを添加しない培地である、請求項19~21のいずれか一つに記載の培地。
国際特許分類(IPC)
Fターム
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出願権利状態 公開
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