TOP > 国内特許検索 > 尿中の急性腎障害マーカーの測定方法
急性腎障害は、死亡率が50%を上回る予後不良な疾患である。従来から、急性腎障害の診断は、酵素法による血清クレアチニンの測定と尿量とによって行われている。しかし、血清クレアチニンは、腎不全が完成して2~3日後に変化が現われる遅い指標であるため、急性腎障害の治療開始が手遅れとなることが予後改善の障壁となっている。
血清クレアチニンに代わるマーカーとして、発症後2時間で上昇するNGAL(好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン)やKIM-1(Kidney injury molecule 1)が提唱されている。 しかし、尿中NGALでは、化学発光免疫測定法 (CLIA法)(chemiluminescent immunoassay)により診断に35分、尿中KIM-1ではELISA法(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay法)により診断に6時間を要する。そのため、急性腎障害の予後改善のために、より迅速な診断法の開発が求められている。
本発明者は、先に、尿中のチオレドキン(TRX)が急性腎障害で特異的に高値を示し、急性腎障害の発症後約2時間という非常に早期に尿中で検出されることを発見した。尿中のチオレドキンによる急性腎障害の診断能力は、特定のカットオフ値にてAUC0.94、感度0.88、特異度0.88であった。(非特許文献1)。さらに、本発明者は、化学発光酵素免疫測定法(Chemiluminescent Enzyme Immunoassay法、以下、CLEIA法と略称することがある)を用いた診断システムを開発した(非特許文献2)。この方法では合成TRXや血液検体のようなpHや塩濃度が一定或いは振れ幅が狭い場合のみ測定が可能であったが、急性腎障害を診断法するためには様々な疾患背景を持つ振れ幅の大きい臨床尿検体に幅広く対応することが要望されている。 また、尿に含まれるチオレドキン以外の他の急性腎障害マーカー、例えばNGAL(好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン)およびKIM-1(Kidney injury molecule 1)などについても、同様に迅速で正確な安定した測定法が要望されている。
本発明は、急性腎障害の迅速な診断を行うことができる、尿中の急性腎障害マーカーのCLEIA法等による迅速測定方法に関する。
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