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Ca3N2、Sr3N2、Ba3N2等のアルカリ土類金属窒化物は、半導体装置に用いる窒化アルミニウムの原料、金属摺動部材用のセラミック粒子、電池電極構成材料、導電性微粒子等に用いられる化合物である。特許文献1には、アルカリ土類金属窒化物は、対応するアルカリ土類金属アミドを熱分解して製造する方法が開示されている。また、特許文献2には、アルカリ土類金属に、アンモニアを反応させて液相化し、得られた金属アミド化合物を熱分解し、高純度の金属窒化物を製造する方法が開示されている。
特許文献3には、金属アミド化合物の製造方法としては、金属水素化物又は金属水素化物にさらに金属単体又は合金を加えて、液体アンモニアと反応させて金属アミド化合物を製造する方法が開示されている。また別の方法として、反応容器にLiやCa等の金属やその化合物を封入し、冷却下、対金属体積比10倍以上のアンモニアを導入して液化した後、撹拌反応させて、LiNH2、Ca(NH2)2等の金属アミドを製造する方法が開示されている(特許文献4)。
代表的なアルカリ土類金属窒化物である窒化カルシウムは、これまでα-Ca3N2、β-Ca3N2、γ-Ca3N2、Ca11N8、Ca2N等が知られている。また、窒化カルシウムの水素化物(以下、「Ca-N-H系化合物」ということもある)であるCa2NH、CaNH、Ca(NH2)2等も知られている。
Ca2Nは、容易に酸化されるなど、非常に化学的に不安定な物質であることが知られており、Ca2Nが安定に存在できる範囲としてはAr中で1000℃以下、又は窒素中で250℃から800℃の間と報告されている(非特許文献1)。
一方、本発明者らは、AE2N(AEは、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種の元素を表わす。)で表わされる窒化物が、高い伝導度を有する「2次元エレクトライド化合物」であることを見出した(特許文献5)。この2次元エレクトライド化合物AE2Nは、[AE2N]+で構成される層間に、電子(e-)が陰イオンとして結びついた層状化合物である。すなわちイオン式ではAE2N+:e-と表わすこともできる。
例えば、代表的な2次元エレクトライド化合物であるCa2Nは、Ca3N2と金属Caを真空中で加熱することにより得られる。Ca2Nの伝導電子濃度は1.4×1022/cm3であり、2.6eVの仕事関数を有することが報告されている(非特許文献2)。その後、この2次元のエレクトライドをピナコールカップリングの還元剤として利用した例が報告されている(非特許文献3)。
Ca(NH2)2は、塩基触媒として作用し、2-メチル-1-ブテンなどのオレフィンの異性化反応に対して触媒活性を示す例(非特許文献4)や、Al2O3などの酸化物担体にNa、K、Eu、Ybのアミド化合物を担持した触媒が、2-メチル-1-ブテンなどのオレフィンの異性化反応に対して触媒活性を示す例(非特許文献5)が報告されている。いずれの例も塩基触媒として機能することが報告されている。
アンモニア合成には、一般的にFe3O4に数質量%のAl2O3とK2Oを含んだ触媒を用いる方法(ハーバー・ボッシュ法)が用いられている。また、ハーバー・ボッシュ法以外の合成方法として、鉄系触媒やRu系触媒(例えば、Ru/MgO、Ru/CaO、Ru-Cs/MgO)が検討されている(非特許文献6,7)。これらの触媒は、担体にアンモニア合成活性を持つ遷移金属を担持した触媒であり、一般に「担持金属触媒」と言われる。
アンモニア合成用のその他の担持金属触媒としては、Fe、Ru、Os、Co等の周期表8族又は9族の遷移金属、周期表8族又は6B族遷移金属の窒化物やCo・Mo複合窒化物等が用いられる(特許文献6~9)。また、Al2O3、SiO2、Mg2O又はマグネシウムアルミニウムスピネルを副担体とし、その上に担持された窒化ケイ素又は窒化ホウ素にRuを担持させたアンモニア合成触媒が知られている(特許文献10)。
そして、本発明者らは、前記2次元エレクトライドに遷移金属を担持させることで、高い活性を有するアンモニア合成触媒となることを見出した。具体的には、MxNyHz(Mは、Mg、Ca、Sr、及びBaから選ばれる少なくとも1種、xは1≦x≦11を満たす整数であり、yは1≦y≦8を満たし、zは0≦z≦4を満たす。)で表わされる金属窒化物又はその水素化物に、RuやFeなどの遷移金属を担持した担持金属触媒が、アンモニア合成用の触媒となる(特許文献11)。しかし、担体に金属アミド化合物及び金属を担持した複合体、及び担持金属触媒の報告は一切ない。
本発明は、遷移金属、担体及び金属アミドを含む複合体、前記複合体を用いた担持金属触媒並びにアンモニア合成触媒、及びアンモニア合成方法に関する。
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