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細胞癌株、およびそれを用いた原発性肝癌の発症動物モデル UPDATE

国内特許コード P180015119
整理番号 (P16-004)
掲載日 2018年6月20日
出願番号 特願2017-209587
公開番号 特開2018-075000
出願日 平成29年10月30日(2017.10.30)
公開日 平成30年5月17日(2018.5.17)
優先権データ
  • 特願2016-212991 (2016.10.31) JP
発明者
  • 金子 周一
  • 本多 政夫
  • 山下 太郎
  • 岡田 光
  • 村居 和寿
  • 院南 結香
出願人
  • 国立大学法人金沢大学
発明の名称 細胞癌株、およびそれを用いた原発性肝癌の発症動物モデル UPDATE
発明の概要 【課題】実験動物例えば免疫不全マウスの生体内での悪性度を高め、野生型マウスのような動物に生着可能な肝細胞癌株や胆管細胞癌株である細胞癌株、及びその樹立方法、並びに肝細胞癌や胆管細胞癌である原発性肝癌の発症動物モデルを提供する。
【解決手段】細胞癌株は、C型肝炎ウィルスを遺伝子導入した動物に、動脈硬化性高コレステロール食と高中性脂肪食とを摂取させる工程、前記動物の肝臓に肝癌を発生させる工程、発生した肝癌組織から肝癌細胞を採取する工程、採取した前記肝癌細胞を培養する工程によって、肝細胞癌株や胆管細胞癌株として、樹立したものである。肝細胞癌や胆管細胞癌である原発性肝癌の発症動物モデルは、細胞癌株を樹立した後、同系統又は異系統若しくは異種で癌細胞生着用の動物の肝臓に、前記細胞癌株を生着させて、腫瘍を形成させることによって、得られたものである。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


癌細胞には、癌細胞を攻撃するリンパ球の一種の細胞傷害性T細胞(キラーT細胞:CTL細胞)の活性を低下させる免疫チェックポイントがある。肝臓癌のような癌疾患の免疫治療として、免疫チェックポイントを抑制する免疫標的薬が知られている。



癌細胞を攻撃するため活性化したキラーT細胞の表面にPD-1分子があり、また癌細胞にはキラーT細胞の活性を抑制するPD-L1分子があり、両者が結合するとキラーT細胞の活性が抑制されてしまう。そこで、抗PD-1抗体はPD-1と結合することにより、また抗PD-L1抗体はPD-L1と結合するにより、PD-1分子とPD-L1分子との結合を阻害し、キラーT細胞を活性化させ、免疫細胞が正常に機能することによって癌細胞を殺傷する。抗PD-1抗体は悪性黒色腫の治療に利用されており、治療効果が実証されている。これら免疫治療は、腎細胞癌、食道癌、肺癌での臨床試験が行われている。



原発性肝癌(肝癌)には、肝臓の大部分を占める肝細胞の癌である肝細胞癌と、肝臓で産生された胆汁を十二指腸へ運ぶ胆管の細胞の癌である胆管細胞癌(肝内胆管癌)とがある。肝癌の多くは、慢性肝炎や肝硬変から発症したり、感染したウィルスにより発症したB型肝炎やC型肝炎で肝細胞の遺伝子に突然変異が起こって癌化したりする。肝癌は、初期では症状に乏しく、症状が現れた時点では進行した状態である臨床症例が多い。肝癌についても、近い将来、免疫チェックポイントの抑制薬を用いた免疫治療、又は腫瘍増殖を直接抑える抗癌剤や分子標的薬と免疫チェックポイントの抑制薬との併用療法が行われるようになると言われている。



その治療法や治療薬の開発のためには動物試験とりわけマウスでの前臨床動物試験が重要である。これらの抗癌剤や分子標的薬と免疫チェックポイントの抑制薬の候補化合物のスクリーニングや開発、前臨床動物試験での作用メカニズムの解明等で汎用されているマウスは、主にC57BL/6系統とBALB/C系統との2系統のマウスであり、他にC57L系統マウスも知られている。C57BL/6系統マウスは、ヒトに続いて全ゲノム配列が明らかになった動物種であり、遺伝子改変マウスモデルとして汎用されているが、癌細胞を初めとする細胞株の樹立が困難な動物種である。一方、BALB/C系統マウスから、殆どの癌細胞株が作出されており、例えば市販のマウス肝細胞癌株BNLはBALB/C系統マウス由来の細胞株である。別なマウス肝細胞癌株Hepa1-6はC57L系統マウス由来である。本発明者が検討したところ、BNLとHepa1-6とのいずれもC57BL/6系統マウスに生着させようとしても、腫瘍形成は認められなかった。



現在使用されているマウスの担癌モデルとして、ヒトの癌細胞を免疫不全マウスに生着させるXenograftモデルが知られている。例えば特許文献1に、(a)ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を、非ヒト正常動物に投与して癌を誘発させる段階と、(b)前記癌が誘発された動物に分析対象の樹状細胞を投与する段階と、(c)前記動物から癌細胞の形成または成長を測定し、樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の治療効能を決定する段階とを含む、ヒト肝癌動物モデルを利用した樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の肝癌治療効能を分析する方法が、開示されている。このXenograftモデルでは、免疫不全マウスを用いているため免疫チェックポイントの抑制による免疫の解析ができない。免疫不全マウスには免疫学的な細胞としてナチュラルキラー細胞(NK細胞)やマクロファージが残っているが、獲得免疫に有用なB細胞やT細胞が存在しないため、腫瘍を特異的に破壊し得る細胞傷害性T細胞(CTL細胞)が増強されたことを評価できないという問題がある。



また、系統の異なるマウスを用いるAllograftモデルも知られている。このモデルは、例えばBALB/C由来の肝癌細胞BNLを系統の異なるC57/B6マウスに生着させるというものである。このようなモデルでは系統が異なることから主要組織適合性抗原が違うので生体拒絶を惹起するという問題がある。そうすると拒絶反応で癌細胞が成長しないのか癌免疫が活性化して癌細胞が成長しないのか分からない。



別なマウスの担癌モデルとしてSyngeonic graftモデルも知られている。このモデルは、マウスの癌細胞を同系統のマウスに生着させるというものであり、例えば、肝癌細胞としてBALB/C由来のBNL癌細胞をBALB/Cに生着させるというものである。同系統移植であるため拒絶反応を惹起し難い点で前二種のモデルより優れている。しかしBALB/Cは遺伝子改変マウスが殆ど使われていないため、このモデルは実用的でなく汎用性に乏しいという問題がある。



今後、免疫チェックポイントのような癌生存シグナルと患者免疫シグナルとのインタラクションを作用点とする抗癌創薬が主流になりつつあることから、従来のモデルのような異系統動物種での癌細胞株の移植組み合わせ又は遺伝子非改変動物種での癌細胞株の移植では、癌発症の微小環境/メカニズム検証に課題が残る。



そのため、遺伝子導入マウスやノックアウトマウスのような遺伝子改変マウスとして汎用されており交配が容易で頑健なC57/B6マウス又は免疫不全マウスに、同系統のC57/B6マウス由来の癌細胞を、生着させて動物モデルと成すのが好ましい。



また、腫瘍環境の研究をする際、腫瘍血管や宿主の免疫担当分子や血管の因子や血管壁の因子等のマーカーや生理活性物質が多量に発現したとき免疫チェックポイントの効能があるか否か分子学的に研究する際に、C57/B6マウス由来の癌細胞株を用いて、同系統のC57/B6トランスジェニックマウス又は免疫不全マウスで行う必要がある。



それにも関わらず、肝臓癌の動物モデルは極めて限られており患者に即したデータを取り得る有用な動物モデルは、殆ど無い。



そこでC57/B6マウスのような動物に由来するもので、免疫不全動物等の生体内での悪性度を高め、野生型マウス(WTマウス)等の動物に生着可能である肝細胞癌株や胆管細胞癌株として細胞癌株を樹立すること、及びそれを用いた肝細胞癌や胆管細胞癌である原発性肝癌の発症動物モデルを確立することが、求められている。

産業上の利用分野


本発明は、免疫不全動物等の生体内での悪性度を高め、野生型動物等に生着可能である肝細胞癌株や胆管細胞癌株として樹立された細胞癌株、及びそれを用いた肝細胞癌や胆管細胞癌である原発性肝癌の発症動物モデルに関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
C型肝炎ウィルスを遺伝子導入した動物に、動脈硬化性高コレステロール食と高中性脂肪食とを摂取させる工程、
前記動物の肝臓に肝癌を発生させる工程、
発生した肝癌組織から肝癌細胞を採取する工程、
採取した前記肝癌細胞を培養する工程
によって、肝細胞癌株及び/又は胆管細胞癌株として、樹立したものであることを特徴とする細胞癌株。

【請求項2】
前記採取する工程の後、それで得られた前記肝癌細胞を動物に投与して腫瘍生着させてから腫瘍細胞から再度、癌細胞を採取して悪性化させる工程を行ってから、それを前記培養する工程を行うによって、樹立したものであることを特徴とする請求項1に記載の細胞癌株。

【請求項3】
前記動物が、マウスであることを特徴とする請求項1に記載の細胞癌株。

【請求項4】
前記マウスが、C57BL/6系統マウスであることを特徴とする請求項3に記載の細胞癌株。

【請求項5】
前記動脈硬化性高コレステロール食が、コレステロールを0.1~10質量%含んでおり、前記高中性脂肪食が、動物性脂肪及び/又は植物性脂肪を含む中性脂肪を15~80質量%含んでいることを特徴とする請求項1に記載の細胞癌株。

【請求項6】
受託番号がNITE P-02353、又は受託番号がNITE P-02558のものであることを特徴とする請求項1に記載の細胞癌株。

【請求項7】
C型肝炎ウィルスを遺伝子導入した動物に、動脈硬化性高コレステロール食と高中性脂肪食とを摂取させる工程、
前記動物の肝臓に肝癌を発生させる工程、
発生した肝癌組織から肝癌細胞を採取する工程、
採取した前記肝癌細胞を培養する工程
を有し、それによって、肝細胞癌株及び/又は胆管細胞癌株として、細胞癌株を樹立することを特徴とする細胞癌株の樹立方法。

【請求項8】
前記採取する工程の後、それで得られた前記肝癌細胞を動物に投与して腫瘍生着させてから腫瘍細胞から再度、癌細胞を採取して悪性化させる工程を行ってから、それを前記培養する工程を行うことを特徴とする請求項7に記載の細胞癌株の樹立方法。

【請求項9】
C型肝炎ウィルスを遺伝子導入した癌細胞発生用の動物に、動脈硬化性高コレステロール食と高中性脂肪食とを摂取させる工程;前記動物の肝臓に肝癌を発生させる工程;発生した肝癌組織から肝癌細胞を採取する工程;採取した前記肝癌細胞を培養する工程によって、肝細胞癌株及び/又は胆管細胞癌株として細胞癌株を樹立した後、
同系統又は異系統若しくは異種で癌細胞生着用の動物の肝臓に、前記細胞癌株を生着させて、腫瘍を形成させることによって、得られた、肝細胞癌及び/又は胆管細胞癌である原発性肝癌の発症動物モデル。

【請求項10】
前記癌細胞発生用の動物がC57BL/6系統マウスであり、前記癌細胞生着用の動物が野生型マウス、遺伝子改変マウス、及び/又は免疫不全マウスであることを特徴とする請求項9に記載の原発性肝癌の発症動物モデル。

【請求項11】
被スクリーニング試料を投与し、前記腫瘍の形成の促進又は抑制を指標にしてスクリーニングし、及び/又は
前記腫瘍の形成を観察することを特徴とする請求項9に記載の原発性肝癌の発症動物モデル。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開
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