TOP > 国内特許検索 > 微小タンパク質の骨格構造に基づく分子ライブラリ

微小タンパク質の骨格構造に基づく分子ライブラリ コモンズ 新技術説明会 外国出願あり

国内特許コード P180015269
整理番号 2015000851
掲載日 2018年9月19日
出願番号 特願2014-554102
登録番号 特許第5904565号
出願日 平成25年12月9日(2013.12.9)
登録日 平成28年3月25日(2016.3.25)
国際出願番号 JP2013007238
国際公開番号 WO2014103203
国際出願日 平成25年12月9日(2013.12.9)
国際公開日 平成26年7月3日(2014.7.3)
優先権データ
  • 特願2012-285734 (2012.12.27) JP
発明者
  • 本田 真也
  • 渡邊 秀樹
  • 山崎 和彦
出願人
  • 国立研究開発法人産業技術総合研究所
発明の名称 微小タンパク質の骨格構造に基づく分子ライブラリ コモンズ 新技術説明会 外国出願あり
発明の概要 複数の分子の群から構成される分子ライブラリであって、ライブラリの各メンバーは、ランダム化配列部分と微小タンパク質部分とを有するポリペプチドである分子ライブラリが開示される。微小タンパク質とは、溶液中で自発的にフォールディングし特定の立体構造を形成する能力を有する30アミノ酸残基以下のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるシニョリンである。また、本発明のライブラリを用いて新規な機能性分子を同定する方法も開示される。
従来技術、競合技術の概要


天然に存在するタンパク質や核酸などの生体高分子を高機能化する方法、あるいは新規な機能を有する分子を創製する方法として一般に進化分子工学(あるいは試験管内進化)と呼ばれる技術領域が存在する(非特許文献1)。近年、バイオ医薬品および診断検査薬の開発における基盤技術として、その利用が拡大している。



タンパク質およびポリペプチドを対象とした進化分子工学において、初期ライブラリの構成は、新規分子創製の成否の鍵となる要素技術である(非特許文献2、3)。この初期ライブラリを構成する分子の形態には、大きく分けて二つのタイプが存在する。ひとつは10残基長程度の短鎖ペプチドで、分子のほぼ全配列がランダム化されたものである。もう一つは、特定のタンパク質の骨格構造(フォールド)を土台として利用し、その分子の一部の配列をランダム化した比較的長鎖のポリペプチドである。短鎖ペプチドライブラリとタンパク質骨格型ライブラリにはそれぞれ以下のような長所と短所がある。



短鎖ペプチドライブラリは、ライブラリの構築やスクリーニング作業が比較的容易である。7~10残基のペプチドをランダム化した場合の分子多様性は、理論上20の7~10乗、即ち109~1013オーダーの規模になる。この程度のライブラリサイズであれば、既存技術を用いてライブラリの作製とスクリーニングを行うことができる。また、スクリーニングで広く利用されている各種のディスプレイ技術においても、分子量が小さいほうが容易に適用できる。その一方、一般に短鎖のペプチドは分子の柔軟性が高く、溶液中で特定の三次元構造を安定に形成しないことから、ペプチド-標的受容体やペプチド-標的酵素などの特異的結合において熱力学的に安定性が低く、高親和性分子、高特異性分子が得られにくいという短所を有している。



タンパク質骨格型ライブラリは、特定の天然タンパク質(あるいは人工タンパク質)の骨格構造を土台として用いる。多くの場合、該タンパク質の三次元立体構造が既知のものを選択する。タンパク質骨格型ライブラリでは、分子全体ではなく、その一部の領域のみがランダム化される。その他の部分は特定の配列で、多くの場合天然配列のままである。この理由は、すべての領域をランダム化すると固有の三次元構造の形成が期待できなくなるからである。このため、立体構造データ等を参照して、元のタンパク質の構造安定化に寄与するアミノ酸残基は温存し、分子の表面側に位置するループ領域などをランダム化することが多い。複数のループ領域をランダム化することもある。また、近年は、天然タンパク質ではなく人為的に設計した配列からなる人工タンパク質の骨格構造を土台として用いることもある。



タンパク質骨格型ライブラリのコンセプトは、抗体(免疫グロブリン)の分子構造様式を模したものである。すなわち、ランダム化部分は、抗体の可変領域に相当し、天然配列のままであるその他の部分は、定常領域に相当する。抗体が可変領域で抗原を認識するように、タンパク質骨格型ライブラリでは、ランダム化される部分で新たな機能の獲得を目指している。



タンパク質骨格に導入されたランダム化配列は、短鎖ペプチドライブラリの場合と異なり、その両端が堅固な骨格構造に固定されていることから取りうるコンホメーションが限定され、その結果、分子の柔軟性に起因する欠点を回避することが期待できる。一方で、分子サイズは相対的に巨大化せざるを得ず、これに伴う研究開発上の難度、実用化した際の製造コスト、保存安定性の低下などが短所として指摘される。また、コンホメーションが限定されることで、逆に活性な構造を実現できなくなるというリスクも潜在している。



一方、分子量が小さく、かつ安定した構造を持つポリペプチドのライブラリとして、環状オリゴペプチド骨格に基づく分子ライブラリも知られている。しかし、オリゴペプチドの環状化を行うためには、官能基の導入や煩雑な化学反応操作を必要とし、合成工程が複雑になる。また、システインの酸化反応で環状化されているオリゴペプチドは、細胞内などの還元環境での利用が一般に困難であるという欠点を有する。



上述したようにタンパク質骨格型ライブラリは、土台として用いるための天然タンパク質(あるいは人工タンパク質)を選定する必要がある。これまで40種を超す様々なタンパク質が利用されている(非特許文献2、3)。表1に主なライブラリを示し、以下にそのいくつかを例示する。



【表1】




ブドウ球菌プロテインA (SPA)の抗体結合ドメインを改変したプロテインZをタンパク質骨格とするアフィボディ (非特許文献4、5、6、特許文献1、2) は、58残基(6.5 kDa)のタンパク質で、分子内ジスルフィド架橋に依存することなく高い安定性・溶解性を保ち、微生物発現系での大量製造を可能とするほか、固相合成による化学的製造も実施されている(非特許文献7)。ヘリックス上の13残基を可変化することで分子ライブラリを作製し、これまで数十種類の標的タンパク質に対する結合分子が取得されている。診断試薬として最も研究が進展しているアフィボディは、細胞表面受容体HER-2に対する高親和性アフィボディであり、腫瘍診断のイメージング分子として応用されている(非特許文献8)。



フィブロネクチン3型ドメインはβシートからなる小型のタンパク質ドメインであり、2ないし3本のループ領域におけるアミノ酸残基をランダム化したライブラリからユビキチンなど複数の標的に対する結合性分子が取得されている(非特許文献9、特許文献3)。



ミニボディは、モノクローナル抗体の重鎖の可変ドメインから3つのβ鎖を除去することで設計された人工タンパク質である(非特許文献10)。このタンパク質は全長61残基からなり、2つのループをもつ。この2つのループ部がランダム化される。低溶解度(10μM)が実用に際して問題視されていたが、変異導入により高溶解度(350μM)を実現した変異型ミニボディが報告されている(非特許文献11)。



74残基からなるテンダミスタットは、サンドイッチ状の6本のβシート鎖が2つのジスルフィド結合によって結合している(非特許文献12)。この骨格には3つのループが含まれている。これまでのところ、これらのループのうちの2つについてのみ、ランダム化が試されている。



シトクロムb562は106残基からなる4ヘリックスバンドル構造のタンパク質ドメインであり、2本のループ状のアミノ酸残基9箇所をランダム化することにより低分子ハプテンに対し290 nMの平衡解離定数で結合する分子が得られている(非特許文献13)。



オリゴヌクレオチド/オリゴ多糖結合性フォールド(OB-フォールド)は、両親媒性のα-ヘリックスでキャップされた五本鎖β-バレルで構成される骨格構造である(特許文献4)。20種以上のゲノム配列の解析で28番目に多い代表的なフォールドである (非特許文献14)。



環状化βターンペプチド骨格は、ジスルフィド制約型環状化によってペプチドの二次構造形成を促進し、溶液中コンホメーションを安定化させた低分子型タンパク質骨格である(特許文献5)。



短鎖ペプチドのαヘリックスを安定化させるため、ジスルフィド架橋が導入されたコイルドコイル構造に基づくタンパク質骨格が設計されている。アルギニン-グリシン-アスパラギン酸 (RGD) 配列を導入したコイルドコイルタンパク質骨格はフィブリノーゲンに対し競合阻害活性を示す(非特許文献15)。



アンキリンリピートタンパク質に基づく人工タンパク質(Designed AR protein, DARPin)は、繰り返し構造を有する巨大タンパク質である(非特許文献16)。繰り返し単位は33残基の小型ドメインで、ジスルフィド結合を含まないβターンおよび逆平行ヘリックスとループから構成される。



A-ドメイン(非特許文献17)は、繰り返し単位として観察される骨格構造で、様々な種の細胞表面受容体に認められ、35-40アミノ酸残基からなるドメインの連結体として構成される。



細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)はイムノグロブリンスーパーファミリーに属するヘルパーT細胞表面受容体であり、超可変ループへの認識配列導入によってインテングリンに対する親和性が獲得される(非特許文献18)。



抗体(免疫グロブリン)は、高い特異性を有する結合性分子として最も広範に用いられているタンパク質である。免疫グロブリンGは12のサブユニットからなる分子量約15万の巨大分子であり、酵素処理によって抗原結合部を含む領域を有する抗原結合断片(Fab)、あるいは遺伝子工学的手法により作製された重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)からなる可変領域断片(Fv)、さらにVHとVLをペプチドリンカーで連結した一本鎖抗体(scFv)なども、結合性分子の単位としてしばしば汎用される(非特許文献19)。天然の免疫レパートリーに依存しない人工抗体として、抗体可変領域のフレームワークをタンパク質骨格として用い、相補性決定領域をランダム化した分子ライブラリHuCALが報告されている(非特許文献20)。

産業上の利用分野


本発明は微小タンパク質の骨格構造を有するポリペプチドの分子ライブラリ、および該ライブラリを用いて新規な機能性分子を同定する方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
複数の分子の群から構成される分子ライブラリであって、ライブラリの各メンバーは、ランダム化配列部分と微小タンパク質部分とを有するポリペプチドであることを特徴とする分子ライブラリ。

【請求項2】
微小タンパク質が、溶液中で自発的にフォールディングし特定の立体構造を形成する能力を有する30アミノ酸残基以下の直鎖状ポリペプチドからなるタンパク質である、請求項1に記載の分子ライブラリ。

【請求項3】
微小タンパク質が、下記のアミノ酸配列:
Gly Tyr Asp Pro Glu Thr Gly Thr Trp Gly (配列番号1)
からなるシニョリンであるか、あるいは該アミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入または付加されたアミノ酸配列からなるシニョリン変異体である、請求項1または2に記載の分子ライブラリ。

【請求項4】
微小タンパク質が、下記のいずれかのアミノ酸配列:
Xaa Tyr Asp Pro Xaa Thr Gly Thr Trp Xaa (配列番号2)
Tyr Tyr Asp Pro Glu Thr Gly Thr Trp (配列番号3)
Tyr Asp Pro Glu Thr Gly Thr Trp Tyr (配列番号4)
Tyr Asp Pro Xaa Thr Gly Thr Trp (配列番号5)
(式中、Xaaは任意のアミノ酸残基を示す)
からなるシニョリン変異体である、請求項3に記載の分子ライブラリ。

【請求項5】
ライブラリの各メンバーが、下記のアミノ酸配列:
(Xaa)n-Tyr-Asp-Pro-Xaa-Thr-Gly-Thr-Trp-(Xaa)m
(式中、Xaaは任意のアミノ酸残基を示し、nは0以上の整数であり、m は0以上の整数であり、ただしnとmは同時に0ではない)
からなるポリペプチド分子であることを特徴とする請求項1-4のいずれかに記載の分子ライブラリ。

【請求項6】
ライブラリの各メンバーが、下記のアミノ酸配列:
-[(Xaa)n-Tyr-Asp-Pro-Xaa-Thr-Gly-Thr-Trp-(Xaa)m]k-
(式中、Xaaは任意のアミノ酸残基を示し、kは2以上の整数であり、各nは独立して0以上の整数であり、各mは独立して0以上の整数である)
からなるポリペプチド分子であることを特徴とする請求項1-4のいずれかに記載の分子ライブラリ。

【請求項7】
ライブラリの各メンバーは、さらに固定配列部分を含む、請求項1-6のいずれかに記載の分子ライブラリ。

【請求項8】
前記固定配列部分が、既知のポリペプチドの全部あるいは一部のアミノ酸配列、または請求項1-6のいずれかに記載の分子ライブラリから選択されたポリペプチドの全部あるいは一部のアミノ酸配列からなる請求項7に記載のライブラリ。

【請求項9】
ライブラリの各メンバーのポリペプチドは、それぞれのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと対応付けられた形態で存在していることを特徴とする請求項1-8のいずれかに記載の分子ライブラリ。

【請求項10】
ライブラリの各メンバーのポリペプチドは、それぞれのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと連結されていることを特徴とする請求項9に記載の分子ライブラリ。

【請求項11】
ライブラリの各メンバーのポリペプチドはバクテリオファージの表層に提示されており、それぞれのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは前記バクテリオファージに内包されている、請求項9に記載の分子ライブラリ。

【請求項12】
請求項1-11のいずれかに記載の分子ライブラリの各メンバーをコードするポリヌクレオチドの群から構成されるポリヌクレオチドライブラリ。

【請求項13】
標的物質に結合しうるポリペプチド分子を同定する方法であって、下記(a)~(c)の工程:
(a) 請求項7-11のいずれかのライブラリを前記標的物質に接触させる工程
(b) 前記ライブラリから前記標的物質と結合するメンバーを選択する工程
(c) 前記選択されたメンバーのアミノ酸配列を決定する工程
を含むことを特徴とする方法。

【請求項14】
アミノ酸配列の決定が、ポリペプチドに対応付けられたポリヌクレオチドの塩基配列を決定することにより行われる、請求項13に記載の方法。

【請求項15】
標的物質がヒト免疫グロブリンである、請求項13または14に記載の方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2014554102thum.jpg
出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) バイオメディカル研究部門
分子細胞育種研究グループ


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close