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動物の行動を評価するための設備および評価方法 NEW

国内特許コード P180015387
整理番号 S2017-0432-N0
掲載日 2018年11月1日
出願番号 特願2017-038614
公開番号 特開2018-143112
出願日 平成29年3月1日(2017.3.1)
公開日 平成30年9月20日(2018.9.20)
発明者
  • 加藤 信介
  • 加藤 雅子
  • 竹内 崇
出願人
  • 国立大学法人鳥取大学
発明の名称 動物の行動を評価するための設備および評価方法 NEW
発明の概要 【課題】非学習型で、かつストレスを加えない(非侵襲的)、実験動物の自発行動異常の評価方法および該方法の実施のための設備を提供する。
【解決手段】実験動物の行動を評価するための設備であって、実験動物を収容するためのコンパートメント10を備え、コンパートメント10内に、誘引物および行動制限用具が設置されている設備、および該設備を使用する、実験動物の自発行動の異常の有無を評価する方法であって、前記制御手段が取得する実験動物の映像を解析して得られる、該実験動物のActivity(活動性)および/またはTrajectory(重心軌跡)を指標とする評価方法である。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


アルツハイマー(Alzheimer)病は、主に記憶を司る海馬神経細胞が変性・消失することによって生じる、記銘力低下を主症状とする神経変性疾患の象徴である。神経病理学的には、アルツハイマー病の神経変性領域は海馬にとどまらず、内嗅皮質(海馬傍回)、海馬支脚、マイネルト核(Nucleus basalis of Meynert)、扁桃核に及ぶ。このため、記憶の回路であるパペッツ(Papez)記憶回路(海馬→脳弓→乳頭体→乳頭体視床路:ビック・ダジール[Vicq d'Azyr]束→視床前核→帯状回→帯状束→海馬の閉鎖回路)とヤコブレフ(Yakovlev)情動回路(扁桃体→視床背内側核(nucleus medialis dorsalis[MD])→前頭前皮質(前頭前野眼窩後方1/4皮質領域)→扁桃周囲皮質→扁桃体の閉鎖回路)も障害され、記銘力に加え、情動障害や思考力低下をきたす疾患であり、認知機能全般が低下する(非特許文献1)。このため、アルツハイマー病は認知症と呼ばれている。



アルツハイマー病患者は近年日本において急速に増加しており、本疾患により惹起される徘徊、失踪、交通事故などが社会問題化しつつある。日本における認知症患者は約200万人いるとされ、その60%がアルツハイマー病と診断されている。当該患者においては、アルツハイマー病に対する治療に加え、日常環境には患者を介護するための介護支援が必要となる。そのため、患者本人のみならず、患者家族および介護者において、肉体的、精神的、経済的に多大な負担を強いられるのが現状である。2045年には、65歳以上の2人に1人がアルツハイマー病になるとの試算も出ている。すなわち、アルツハイマー病は日本を含む先進国において、経済学的費用対効果比の観点からみた場合、最も金銭的コストがかかるとされる疾患であり、国民病とさえ言われている。にもかかわらず、アルツハイマー病に対する治療薬に関しては、現在でもなお、有効なものが確立されていない。



アルツハイマー病の診断に関しては、いわゆる非侵襲的な診断方法が確立されている。ここで、「非侵襲的な」という意味は、当該患者をアルツハイマー病であると確定診断する際に、脳腫瘍患者の確定診断をする際の脳からの生検組織学的診断は実施しないということと、患者に対して一定の知的課題を与えてそれを学習させ、それがうまく学べてなければ熱刺激や電気刺激を与えるという身体的侵襲刺激評価方法を実施しないということである。具体的に挙げれば、アルツハイマー病患者が検査時点で持っている高次機能を正確に評価するウェクスラー知能検査(Wechsler Adult Intelligence Scale:WAIS)と、より簡便に行える長谷川式簡易知能評価スケール(Hasegawa dementia rating scale-revised:HDR-R)の2つの高次機能評価方法が確立している。ウェクスラー知能検査では、主に言語性知能(Intelligence quotient:IQ)と動作性知能の二つの要素による評価をもって判定する。長谷川式簡易知能評価スケールでは、主に言語性知能をもって評価する。これら臨床的評価システムによってアルツハイマー病と診断した場合、これを一般的に臨床的アルツハイマー病という。
アルツハイマー病の正確な最終診断は、病理組織学的評価をもって行われる。すなわち、病理組織学的評価しなくてはアルツハイマー病の最終診断は存在しないということである。換言すれば、アルツハイマー病の確定診断は臨床的アルツハイマー病患者の死亡後の剖検脳の病理組織学的診断をもってなされるわけである。



一方、自然界のマウスにおいては、ヒトアルツハイマー病に相当した自然発症の高度認知障害マウスは存在しない。従って、マウスの認知機能評価は、基本的にマウスが学習できるという前提の上に成り立っている。そのため、従来のマウスの認知機能評価方法は、ヒトアルツハイマー病のような高度認知機能障害のあるマウスを想定しておらず、非侵襲的に実施できる方法ではない。現在マウスなどのモデル動物を使用して行う認知機能評価方法、具体的には、モリス水迷路(非特許文献2)、ホットプレートテスト(非特許文献2)および電気刺激による回避試験(非特許文献2)などの評価方法は、マウスの学習到達度をマウス個体へ侵襲的なストレスを加えることによって評価する方法である。通常、このような評価方法は、評価の正確を期するために多くの試行回数が要求される。そのため、マウスの認知機能評価においては、マウス個体に対するストレスのために、マウスが死亡するリスクが高くなる。



現段階では、ヒトアルツハイマー病のモデルマウスとしては、ヒトアミロイドプレカーサー蛋白質遺伝子およびヒトタウ蛋白質遺伝子、各々のヒト変異遺伝子をマウスに導入したダブルトランスジェニックマウスが、病理組織学的にヒトアルツハイマー患者に最も近い。このダブルトランスジェニックマウスの費用は、例えば、オリジナルラインでは10匹約185万円と非常に高価である。このような高価なアルツハイマー病モデルマウスを使用した実験では、結果の正確な最終診断をするために、一定期間ごとに当該モデルを殺し、脳の病理組織学的評価を行うのが通常である。従って、当該アルツハイマー病モデルマウスを使用した実験は、極めて高価な実験系といえる。
病理組織学的にヒトアルツハイマー病に最も近い当該モデルマウスは空間認知学習能力をすでに喪失していると想定されているところ、従来の学習型マウス認知機能評価方法は、マウスが学習できることを前提としている点と、死亡事故につながる多大なストレスを加えるという2点でふさわしくない。また、一定期間ごとに確定診断を得る病理組織学的評価方法も、実験のコストの面からふさわしいとは言えない。しかしながら、ヒトアルツハイマー病の新規治療薬の開発は、喫緊な課題である。
従って、モデルマウスを使用した認知機能評価を簡易、迅速、かつ、低コストで行うためには、実験動物に対して非侵襲的で、非学習型の評価方法を確立することが必要である。

産業上の利用分野


本発明は、動物、特に実験動物の行動を評価するための設備および該行動の評価方法に関する。より具体的には、実験動物に対する薬剤候補物質の効果を動物の自発行動の変化に基づいて評価するための設備および薬剤候補物質の効果等を自発行動の変化に基づいて評価する方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
実験動物の行動を評価するための設備であって、実験動物を収容するためのコンパートメントを備え、該コンパートメント内に、誘引物および行動制限用具が設置されている設備。

【請求項2】
前記コンパートメントの仕切りと前記行動制限用具の外表面までの距離であって、最短の距離が、前記実験動物の胴体の横幅の長さの約1.0倍~約1.5倍となるように、該行動制限用具が設置されている請求項1に記載の設備。

【請求項3】
前記行動制限用具の外表面から前記誘引物の外表面までの距離であって、最短の距離が、前記実験動物の胴体の横幅の長さの約1.5倍~約2.0倍となるように、該誘引物を設置されている請求項1または2に記載の設備。

【請求項4】
前記コンパートメント内の実験動物を検出するための検出手段であって、該コンパートメント内を撮影するビデオ手段と、該ビデオ手段を操作し、該ビデオ手段が撮影した映像を映像信号として取得する制御手段を含む検出手段をさらに備える請求項1ないし3のいずれかに記載の設備。

【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の設備を使用して実験動物の自発行動の異常の有無を評価する方法であって、前記制御手段が取得する実験動物の映像を解析して得られる、該実験動物のActivity(活動性)および/またはTrajectory(重心軌跡)を指標とする評価方法。

【請求項6】
請求項5に記載の実験動物の自発行動の異常の有無を評価する方法を使用して、該実験動物の認知機能障害の有無を評価する方法。

【請求項7】
以下の(a)~(c)の工程を含む請求項6に記載の評価方法。
(a)コントロールの実験動物の誘引物ゾーンおよび/または安心ゾーンにおけるActivityを測定する工程、
(b)評価対象の実験動物の誘引物ゾーンおよび/または安心ゾーンにおけるActivityを測定する工程、および
(c)工程(b)で得られる誘引物ゾーンにおけるActivityが工程(a)で得られる誘引物ゾーンにおけるActivityよりも有意に高い、および/または、工程(b)で得られる安心ゾーンにおけるActivityが工程(a)で得られる安心ゾーンにおけるActivityよりも有意に低い場合に該実験動物に認知機能に障害があると評価する工程

【請求項8】
以下の(a)~(c)の工程を含む請求項6に記載の評価方法。
(a)コントロールの実験動物の誘引物ゾーンおよび/または安心ゾーンにおけるTrajectoryの集積度を判定する工程、
(b)評価対象の実験動物の誘引物ゾーンおよび/または安心ゾーンにおけるTrajectoryの集積度を判定する工程、および
(c)工程(b)で得られる誘引物ゾーンにおけるTrajectoryの集積度が工程(a)で得られる誘引物ゾーンにおけるTrajectoryの集積度よりも高い、および/または、工程(b)で得られる安心ゾーンにおけるTrajectoryの集積度が工程(a)で得られる安心ゾーンにおけるTrajectoryの集積度よりも低い場合に該実験動物に認知機能に障害があると評価する工程

【請求項9】
前記認知機能障害を示す疾患が、アルツハイマー型認知症、脳血管型認知症、レビー小体型認知症、躁うつ病、統合失調症、発達障害および病気の後遺症に基づく知的障害のいずれかであることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の評価方法。

【請求項10】
前記実験動物が、齧歯類または小型霊長類であることを特徴とする請求項5ないし9のいずれかに記載の方法。

【請求項11】
請求項5ないし10のいずれかに記載の方法を用いて、自発行動異常を伴う疾患の治療に有効な化合物をスクリーニングする方法。

【請求項12】
前記自発行動異常を示す疾患が、アルツハイマー型認知症、脳血管型認知症、レビー小体型認知症、躁うつ病、統合失調症、発達障害および病気の後遺症に基づく知的障害のいずれかであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
国際特許分類(IPC)
画像

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出願権利状態 公開
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