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コイルドコイルを利用した膜タンパク質標識方法 NEW

国内特許コード P180015485
整理番号 1939
掲載日 2018年11月21日
出願番号 特願2009-534428
登録番号 特許第5182671号
出願日 平成20年9月26日(2008.9.26)
登録日 平成25年1月25日(2013.1.25)
国際出願番号 JP2008067518
国際公開番号 WO2009041633
国際出願日 平成20年9月26日(2008.9.26)
国際公開日 平成21年4月2日(2009.4.2)
優先権データ
  • 特願2007-255648 (2007.9.28) JP
発明者
  • 松崎 勝巳
  • 矢野 義明
  • 杉本 幸彦
  • 辻本 豪三
  • 藤井 信孝
出願人
  • 国立大学法人京都大学
発明の名称 コイルドコイルを利用した膜タンパク質標識方法 NEW
発明の概要 膜タンパク質を、その局在や機能に影響を与えることなく、細胞膜上に発現させて簡便かつ迅速に検出する方法を提供する。
コイルドコイル2量体を形成する1対のαへリックスペプチドのうち、陰性コイルペプチドを目的膜タンパク質に融合させてタグとし、コイルドコイル2量体を形成する1対のαへリックスペプチドのもう一方のペプチド、陽性コイルペプチドを蛍光色素に結合させてプローブとすることで、目的膜タンパク質と蛍光色素を特異的に結合させ、簡便かつ迅速に該膜タンパク質を検出する。
従来技術、競合技術の概要


生細胞に発現しているタンパク質の細胞内局在や機能を研究するうえで、蛍光イメージングは非常に重要な手法である。これまでに、特定のタンパク質だけを蛍光標識する手法として、目的とするタンパク質と例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)といった蛍光タンパク質を遺伝子レベルで融合させて発現させる方法が開発され、現在頻繁に使用されている。しかしながら、蛍光タンパク質の分子サイズは比較的大きく(GFPで238アミノ酸残基;分子量約26.9 kDa)、融合するタンパク質本来の局在や機能に大きく影響することがしばしばある。また、蛍光タンパク質は、化学合成による蛍光色素ほど、蛍光団を自由に選ぶことはできない。すなわち蛍光色素の吸収や発光の波長特性、明るさ、安定性、またタンパク質周囲の環境(pH、極性、イオン組成)の変化に対する応答性などに対して、選択肢が限られる。共焦点レーザー顕微鏡をはじめとする顕微鏡技術の進歩が著しい現在、生細胞でのタンパク質の構造変化やタンパク質間相互作用をより精度よく定量的に可視化したいという要望は高まっており、蛍光ラベルの小分子化および色素選択肢の拡大は重要な課題である。



一方、タンパク質に合成蛍光色素などの化学物質を標識する方法は、これまで主として精製したタンパク質のシステインやリジン残基などへの修飾に限られていた。しかし近年、生細胞においても、特定のタンパク質を選択的に標識する小分子ラベル法が開発されてきている。このような小分子ラベル法では、目的のタンパク質に6-200残基程度のアミノ酸配列(タグ配列)を融合させて発現させ、外部からタグ配列に特異的に結合する蛍光ラベル分子(プローブ)を加え、標識を行う方法を基本とする。当該方法は、上記の蛍光タンパク質を融合させる方法に比べ、目的タンパク質に融合させる分子(タグ)のサイズが一般に小さくすみ、また合成蛍光色素を利用できるために色素選択肢も拡大する。このため、目的タンパク質本来の局在や機能への影響が比較的小さく、複数の蛍光色素の使用やFRETを利用した解析も可能であり、大いに注目されている。
ラベル化原理としては、大きく分けて1)既知の分子間相互作用を用いるもの(非特許文献1、2及び3)、2)既知の酵素反応を利用するもの(非特許文献4、5及び6)、が報告されている。しかしこれらの手法においても、1)では、タグとして働くアミノ酸配列と金属イオン間の複合体形成を利用するものが多く、特にこの金属イオンが細胞にとって毒性を持ち、問題となる場合がある。また2)の酵素反応を利用する方法では、ラベル化に時間がかかる(典型的には 30分前後)うえに、蛍光ラベル基質を個別に加えなければならないという欠点がある。



このように、目的とするタンパク質本来の局在及び機能に影響せず、細胞毒性が少なく、短時間でラベル化が可能である簡便な生細胞蛍光標識法は開発されていないのが現状であり、特に膜タンパク質においては、標識のための様々な処理を行うことで、膜に局在しなくなったり、局在したとしても本来の機能を有さないおそれがある。



特に、創薬において重要なターゲットの1つである、膜貫通型受容体タンパク質を簡便に標識して視覚的に確認する標識方法の開発は、待ち望まれていた。



これまで、興味ある膜貫通型受容体タンパク質(例えばGPCR)と結合するリガンドを探索するため、興味ある膜貫通型受容体タンパク質又は膜貫通型受容体タンパク質と予測されるタンパク質を発現させた形質転換体に様々な分子を作用させ、その応答を検出するという手法が用いられてきた。しかし、この方法では、膜貫通型受容体タンパク質又は膜貫通型受容体タンパク質と予測されるタンパク質が形質転換体の膜上に実際に発現しているか否か確認できず、検出された応答が目的とする興味ある膜貫通型受容体タンパク質を介したものかどうかは不明確であった。また、この問題を解決するため、目的とする興味あるタンパク質に蛍光タンパク質又は合成蛍光色素を結合させ、タンパク質が膜に局在することを確認する試みもなされてきた。しかし、上述したように、これらの手法はいずれも膜貫通型受容体タンパク質の局在及び機能に影響する、あるいは細胞毒性を有するといった、問題を抱えている。
【非特許文献1】
B. A. Griffin, S. R. Adams, R. Y. Tsien, Science, 281, 269 (1998).
【非特許文献2】
A. Ojida, K. Honda, D. Shinmi, S. Kiyonaka, Y. Mori, I. Hamachi, J. Am. Chem. Soc., 128, 10452 (2006).
【非特許文献3】
C. T. Hauser, R. Y. Tsien, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 104, 3693 (2007).
【非特許文献4】
B. H. Meyer, J. M. Segura, K. L. Martinez, R. Hovius, N. George, K. Johnsson, H. Vogel, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 103, 2138 (2006).
【非特許文献5】
I. Chen, M. Howarth, W. Lin, A. Y. Ting, Nat. Methods, 2, 99 (2005).
【非特許文献6】
C. W. Lin, A. Y. Ting, J. Am. Chem. Soc., 128, 4542 (2006).

産業上の利用分野


本発明は、膜タンパク質の細胞内局在及び機能を研究するための方法に関する。より詳細には、本発明は、細胞膜上で発現したタグ融合膜タンパク質を標識、解析する方法に関する。さらに、本発明は前記タグ融合膜タンパク質をコードする遺伝子構築物及びベクター並びにこれらを導入した形質転換体に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
コイルドコイルを形成し得る陰性コイルペプチドを融合した膜タンパク質を、陰性コイルペプチドが細胞外側に位置するように発現した形質転換体に、コイルドコイルを形成し得る陽性コイルペプチドに蛍光分子を結合した蛍光プローブを作用させ;
(ここで、
前記コイルドコイルは、αへリックス構造を有する陰性コイルペプチドとαへリックス構造を有する陽性コイルペプチドからなる2量体コイルドコイルであり;
前記陰性コイルペプチドは、αへリックスの7アミノ酸反復配列a-b-c-d-e-f-gにおいて、生理的pHでe及びgが負に帯電したアミノ酸、a及びdが疎水性側鎖を有するアミノ酸、b、c及びfが任意のアミノ酸であって、全体として生理的pHで負に帯電しているαへリックスペプチドであり;
前記陽性コイルペプチドは、αへリックスの7アミノ酸反復配列a-b-c-d-e-f-gにおいて、生理的pHでe及びgが正に帯電したアミノ酸、a及びdが疎水性側鎖を有するアミノ酸、b、c及びfが任意のアミノ酸であって、全体として生理的pHで正に帯電しているαへリックスペプチドであり、
前記形質転換体は哺乳類由来細胞又は酵母を形質転換したものである)
当該形質転換体の膜上に存在する該膜タンパク質を検出する方法。

【請求項2】
さらに、陰性コイルペプチドが、7アミノ酸反復配列a-b-c-d-e-f-gのfが生理的pHで正に帯電したアミノ酸である、請求項1に記載の方法。

【請求項3】
さらに、陽性コイルペプチドが、7アミノ酸反復配列a-b-c-d-e-f-gのfが生理的pHで負に帯電したアミノ酸である、請求項1又は2に記載の方法。

【請求項4】
さらに、陰性コイルペプチドが、7アミノ酸反復配列a-b-c-d-e-f-gのe及びgがグルタミン酸である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。

【請求項5】
さらに、陽性コイルペプチドが、7アミノ酸反復配列a-b-c-d-e-f-gのe及びgがリジンである、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。

【請求項6】
さらに、陰性コイルペプチドが、7アミノ酸反復配列a-b-c-d-e-f-gのfがリジンである、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。

【請求項7】
さらに、陽性コイルペプチドが、7アミノ酸反復配列a-b-c-d-e-f-gのfがグルタミン酸である、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。

【請求項8】
陰性コイルペプチドが、14から140アミノ酸残基からなる、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。

【請求項9】
陽性コイルペプチドが、14から140アミノ酸残基からなる、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。

【請求項10】
陰性コイルペプチドが、配列番号3もしくは4の配列からなる、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。

【請求項11】
陽性コイルペプチドが、配列番号1もしくは2の配列からなる、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。

【請求項12】
さらに、陰性コイルペプチドが1~30アミノ酸残基よりなるリンカーを介して膜タンパク質に融合した、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。

【請求項13】
さらに、蛍光プローブが、陽性コイルペプチドが1~30アミノ酸残基よりなるリンカーを介して蛍光分子に結合した蛍光プローブである、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。

【請求項14】
陽性コイルペプチドに蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)のためのドナー蛍光分子を結合させた蛍光プローブと、陽性コイルペプチドにFRETのための当該ドナー蛍光分子に対応するアクセプター蛍光分子を結合させた蛍光プローブの、2種類の蛍光プローブを同時に形質転換体に作用させ、陰性コイルペプチドを融合した膜タンパク質が2量体を形成し得るかをFRETにより検出する、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。

【請求項15】
形質転換体に、陰性コイルペプチドを融合した2種類の膜タンパク質を発現させ、当該2種類の膜タンパク質が2量体を形成し得るかを検出する、請求項14に記載の方法。

【請求項16】
膜タンパク質が、膜貫通型受容体タンパク質である、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。

【請求項17】
膜貫通型受容体タンパク質が、GPCRである、請求項16に記載の方法。

【請求項18】
形質転換体が、HeLa、CHO、293、COS-7、PC12細胞からなる群より選択される哺乳類由来細胞を形質転換したものである、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。

【請求項19】
請求項16から18のいずれか1項に記載の方法により膜貫通型受容体タンパク質を検出した後に、該膜貫通型受容体タンパク質のシグナル応答を指標としてリガンドとなる物質をスクリーニングする方法。

【請求項20】
細胞内カルシウムイオン濃度変化をシグナル応答の指標とする、請求項19に記載の方法。

【請求項21】
請求項16から18のいずれか1項に記載の方法により膜貫通型受容体タンパク質を検出した後に、さらに該膜貫通型受容体タンパク質にリガンドを作用させることで、該膜貫通型受容体タンパク質が細胞内に取り込まれることを検出する方法。

【請求項22】
請求項13から18のいずれか1項に記載の方法により、細胞外側に陰性コイルペプチドを融合した膜タンパク質を発現した形質転換体に、陽性コイルペプチドに蛍光分子を結合した蛍光プローブを作用させ、陰性コイルペプチドと陽性コイルペプチドがコイルドコイルを形成した後に、当該両コイルペプチドを化学的手法により架橋してコイルドコイルをさらに安定化する方法。

【請求項23】
架橋のためのリンカーとして用いられる化合物が、Sulfo-GMBSである、請求項22に記載の方法。

【請求項24】
請求項22又は2に記載の方法により、コイルドコイルを安定化した後、さらに当該両コイルペプチドの架橋に寄与しないペプチド部分を切断し、コイルドコイルの大きさを小さくする方法。

【請求項25】
ペプチド部分の切断が、プロテアーゼを用いて行われる、請求項24に記載の方法。

【請求項26】
プロテアーゼがFactor Xaである、請求項25に記載の方法。

【請求項27】
請求項22又は2に記載の方法において、陽性コイルペプチドに蛍光分子を結合した蛍光プローブに代えて、陽性コイルペプチドに固体支持体を結合させたものを使用し、陰性コイルペプチドと陽性コイルペプチドがコイルドコイルを形成した後に、当該両コイルペプチドを化学的手法により架橋してコイルドコイルをさらに安定化させ、当該固体支持体を形質転換体から引き離すことにより細胞膜から膜タンパク質を分離させ、当該膜タンパク質及びそれに付着した分子を質量分析装置で解析することで、当該膜タンパク質に付着した分子を同定する方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
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