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色素が起電力と出力を増幅する光燃料電池 新技術説明会

国内特許コード P180015746
整理番号 P17-075
掲載日 2018年12月26日
出願番号 特願2018-107691
公開番号 特開2019-209259
出願日 平成30年6月5日(2018.6.5)
公開日 令和元年12月12日(2019.12.12)
発明者
  • 泉 康雄
  • 漆舘 和樹
  • 松澤 繁光
出願人
  • 国立大学法人千葉大学
発明の名称 色素が起電力と出力を増幅する光燃料電池 新技術説明会
発明の概要 【課題】起電力及び出力をより高めた、光燃料電池の提供。
【解決手段】(1)負極層1、(2)当該負極層に接して配置された第1光触媒層2であって、紫外光を受けて励起し水が光酸化されるのを触媒する第1光触媒層、(3)前記第1光触媒層の一部又は全部及び前記負極層の一部に接して配置された有機色素層3であって、可視光を受けて励起する有機色素層、(4)正極層4、(5)当該正極層に接して配置された第2光触媒層5であって、紫外光及び/又は可視光を受けて励起し下記酸性水溶液に含まれるプロトン及び酸素の存在下で前記酸素が光還元されるのを触媒する第2光触媒層、並びに、(6)前記第1光触媒層、前記有機色素及び前記第2光触媒層の3点全部に接している酸性水溶液6であって、少なくとも前記第2光触媒層周辺に酸素を含む酸性水溶液、からなる光燃料電池。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要

燃料電池とは、燃料の酸化還元反応を用いることにより電気を取り出すことのできる電池であり、一般に、酸素と水素の反応を用いて電気を取り出すものであって、重金属等を使う他の化学電池に比べ地球環境に優しく、現在も活発に研究開発が行われている。この種の燃料電池において、光エネルギーを用いてより効率的に電気を取り出そうとする試みがなされており、特許文献1に、光触媒を用いた「光燃料電池」が開示されている。しかしながら、特許文献1の「光燃料電池」は、メタノール等の燃料を使用しており、原理的には従来の燃料電池の範疇であり、化石燃料由来の燃料を使い、CO等も排出する。

それに対して、メタノールや水素等のいわゆる燃料を使わず、強いて言うと、水を「燃料」とする燃料電池を、以前に、本発明者の一人:泉康雄らが世界で初めて発明した(特許文献2)。これは、前記の通り、「燃料」は強いて言えば、水であり、この水も電池内で再生産されるので、理論的には供給不要である。エネルギー源は、光、代表的には太陽光であり、特許文献2の燃料電池は、化石燃料を使わず、CO等も排出しない。特許文献2では、単に「燃料電池」と表現したが、今は「光燃料電池」と称している。

次に、この世界で初めての特許文献2の(光)燃料電池の原理を説明する。
この光燃料電池の構成は、以下の通りである。
(1)負極層;
(2)当該負極層に接して配置された第1光触媒層であって、紫外光を受けて励起し水が光酸化されるのを触媒する第1光触媒層;
[(3)は欠番]
(4)正極層;
(5)当該正極層に接して配置された第2光触媒層であって、紫外光を受けて励起し下記酸性水溶液に含まれるプロトン及び酸素の存在下で前記酸素が光還元されるのを触媒する第2光触媒層;並びに
(6)前記第1光触媒層及び前記第2光触媒層の2点全部に接している酸性水溶液であって、少なくとも前記第2光触媒層周辺に酸素を含む酸性水溶液(特許文献2では「酸水溶液」と表現);

次にこの光燃料電池の動作原理を説明する。
第1光触媒層は、当該光触媒のバンドギャップ以上のエネルギーを含む紫外光を受けて励起し下記(式1)に従ってホール(h)によって水が光酸化されるのを触媒する。
2HO + 4h → 4H+O (式1)
詳しく説明すると、第1光触媒層は、紫外光を受けて励起し価電子帯の電子が伝導帯に励起されて第1励起電子となり、価電子帯は電子を1個失った状態即ち1価のホール(h)を持った状態となり、このホール(h)が(式1)に従い水(HO)分子から電子を奪うことで水から酸素への酸化反応が進み、ホール(h)は奪った電子と結合して消滅し、他方、第1励起電子は負極層に進み、第1励起電子は、間に負荷を含み得る外部回路を通じて正極層に供給される。

第2光触媒層は、当該光触媒のバンドギャップ以上のエネルギーを含む紫外光を受けて励起し下記(式2)に従って下記酸性水溶液に含まれるプロトン(H)及び酸素(O)の存在下で前記酸素が光還元されるのを触媒する。
4H + 4e + O → 2HO (式2)
詳しく説明すると、第2光触媒層は、(a)当該光触媒のバンドギャップ以上のエネルギーを含む紫外光を受けて励起し即ち価電子帯の電子が伝導帯に励起されて第3励起電子となり、そのとき、当該価電子帯には第3ホール(h)が残り、当該第3励起電子は、(式2)に従って酸性水溶液に含まれるプロトン(H)及び酸素(O)の存在下で前記酸素を光還元し、他方、第3ホール(h)は、外部回路を通じて供給される第1励起電子と再結合して消滅する。
4H + 4e + O → 2HO (式2)

外部回路(8)は、負極層から負荷(例えば、電球)を介して正極層へつながっており、負極層で発生した第1励起電子を正極層に送り込むことで、電池が動作する。
この光燃料電池の起電力は、太陽電池の代表例であるシリコンのp-n接合(0.3V)又は第2光触媒層の具体例であるチタンの伝導帯とヨウ素の還元準位差(0.5Vから1V)でなく、チタンのバンドギャップで決まる。従って、この光燃料電池の起電力は、理論的に約2.75V(太陽電池の凡そ2倍)と見積もられる。

なお、負極で発生する酸素(O)は、正極に供給されることが好ましいが、負極付近にあると、(式1)の反応が進みづらくなるので、できるだけ速やかに正極に供給されることが望ましい。
そこで、特許文献3では、負極側の酸性水溶液(特許文献3では「酸水溶液」と表現)の上に積極的に酸素を取り込む有機化合物例えばヘキサンを設け、ヘキサンに取り込まれた酸素は、今度はヘキサンの上の気層に放出され、放出された酸素は、イオン交換膜(本発明で言う「プロトン(H)透過膜」に相当)が上方に延長された形の言わば隔壁(酸水溶液の上の空間を大きく二分するので隔壁)の上方空間に設けられた窓(特許文献3では、「気孔(符号:10)」と表現)を通じて、正極側空間に移動し、そこから正極側空間に接している正極側酸性水溶液に溶け込む。溶け込んだ酸素は、(式2)に従って酸素(O)が光還元される。

イオン交換膜(本発明で言う「プロトン(H)透過膜」に相当)は、酸性水溶液を負極層側と正極層側に大きく二分するが、プロトン(H)を透過させるので、負極で生産される4H(式1)を正極で消費する(式2) 4Hへと供給するのである。
即ち、特許文献2及び3の電池は、本発明も同じだが、理論的に、発生するもの(4H、O、2HO)と消費するもの(4H、O、2HO)が1:1で過不足ないので、閉鎖系を形成することが可能である。

産業上の利用分野

本発明は、色素が起電力と出力を増幅する光「燃料」電池に関する。「燃料」は強いて言えば、水であり、この水も電池内で再生産されるので、理論的には供給不要である。エネルギー源は、光、代表的には太陽光である。水を「燃料」とする光燃料電池は、本発明者の一人:泉康雄らが初めて発明した(特許文献2)もので、太陽電池に似ているが、原理は全く異なり、起電力が理論的に太陽電池の凡そ2倍と言う特徴がある。

特許請求の範囲 【請求項1】
(1)負極層、
(2)当該負極層に接して配置された第1光触媒層であって、紫外光を受けて励起し水が光酸化されるのを触媒する第1光触媒層、
(3)前記第1光触媒層の一部又は全部及び前記負極層の一部に接して配置された有機色素層であって、可視光を受けて励起する有機色素層、
(4)正極層、
(5)当該正極層に接して配置された第2光触媒層であって、紫外光及び/又は可視光を受けて励起し下記酸性水溶液に含まれるプロトン及び酸素の存在下で前記酸素が光還元されるのを触媒する第2光触媒層、並びに
(6)前記第1光触媒層、前記有機色素及び前記第2光触媒層の3点全部に接している酸性水溶液であって、少なくとも前記第2光触媒層周辺に酸素を含む酸性水溶液、
からなる光燃料電池。

【請求項2】
(1)負極層、
(2)当該負極層に接して配置された第1光触媒層であって、当該光触媒のバンドギャップ以上のエネルギーを含む紫外光を受けて励起し下記(式1)に従ってホール(h)によって水が光酸化されるのを触媒する第1光触媒層、
2HO + 4h → 4H+O (式1)
(3)前記第1光触媒層の一部又は全部及び前記負極層の一部に接して配置された有機色素層であって、当該色素層に最高占有分子軌道(HOMO)と最低非占有分子軌道(LUMO)とのエネルギー差以上のエネルギーを含む可視光を受けて励起しHOMOに非占有軌道、LUMOに励起電子が生じる有機色素層、
(4)正極層、
(5)当該正極層に接して配置された第2光触媒層であって、当該光触媒のバンドギャップ以上のエネルギーを含む紫外光及び/又は可視光を受けて励起し下記(式2)に従って下記酸性水溶液に含まれるプロトン(H)及び酸素(O)の存在下で前記酸素が光還元されるのを触媒する第2光触媒層、並びに
4H + 4e + O → 2HO (式2)
(6)前記第1光触媒層、前記有機色素及び前記第2光触媒層の3点全部に接している酸性水溶液であって、少なくとも前記第2光触媒層周辺に酸素を含む酸性水溶液、
からなる光燃料電池であって、
前記第1光触媒層が紫外光を受けて励起し価電子帯の電子が伝導帯に励起されて第1励起電子となり、当該価電子帯は電子を1個失った状態即ち1価のホール(h)を持った状態となり、このホール(h)が(式1)に従い水(HO)分子から電子を奪うことで水から酸素への酸化反応が進み、前記ホール(h)は奪った電子と結合して消滅し、
他方、前記第1励起電子の一部は負極層に進み、
また、前記有機色素層が可視光を受けて励起してHOMOに非占有軌道、LUMOに第2励起電子が生じ、
当該第2励起電子は負極層に進み、他方、当該非占有軌道には前記第1光触媒層からの前記第1励起電子の残部が流れ込み、当該残部は可視光を受けて励起されて再びHOMOに非占有軌道、LUMOに第2励起電子を生じ、当該第2励起電子は負極層に進み、以下、同様に色素層において「励起、流れ込み、進み」が繰り返されることで、第2励起電子の数は増大し、
前記負極層で発生した前記第1励起電子の一部及び前記第2励起電子は、間に負荷を含み得る外部回路を通じて前記正極層に供給され、
前記第2光触媒層は、(a)当該光触媒のバンドギャップ以上のエネルギーを含む紫外光を受けて励起し即ち価電子帯の電子が伝導帯に励起されて第3励起電子となり、そのとき、当該価電子帯には第3ホール(h)が残り、及び/又は(b)可視光を受けて励起し即ち価電子帯の電子がバンドギャップ間準位に励起されて第4励起電子となり、そのとき、当該価電子帯には第4ホール(h)が残り、
当該第3励起電子及び/又は当該第4励起電子は、下記(式2):
4H + 4e + O → 2HO (式2)
に従って前記酸性水溶液に含まれるプロトン(H)及び酸素(O)の存在下で前記酸素を光還元し、
他方、前記第3ホール(h)及び/又は第4ホール(h)は、前記外部回路を通じて供給される前記第1励起電子の一部及び前記第2励起電子と再結合して消滅する、
ことを特徴とする光燃料電池。

【請求項3】
前記バンドギャップ間準位が欠陥準位又は不純物準位であることを特徴とする請求項2に記載の光燃料電池。

【請求項4】
前記酸性水溶液を前記負極層側と前記正極層側に大きく二分する電子絶縁性のプロトン(H)透過膜を設けたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の光燃料電池。
国際特許分類(IPC)
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JP2018107691thum.jpg
出願権利状態 公開
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