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赤外線リモコンの信号識別方法及び装置

国内特許コード P190015877
整理番号 S2017-0772-N0
掲載日 2019年2月25日
出願番号 特願2017-134155
公開番号 特開2019-016960
出願日 平成29年7月7日(2017.7.7)
公開日 平成31年1月31日(2019.1.31)
発明者
  • 高橋 雄太
  • 水本 旭洋
出願人
  • 国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学
発明の名称 赤外線リモコンの信号識別方法及び装置
発明の概要 【課題】プロトコルに依存することなく、かつ、ロバスト性があり、未知の赤外線リモコン信号を識別できる赤外線リモコン信号識別方法及び装置を提供する。
【解決手段】本方法及び装置は、赤外線リモコン信号のHIGH状態及びLOW状態のパルス幅シーケンスの誤差の頻度分布に関する統計モデルを用いて、未知の赤外線リモコン信号を識別する。本方法は、パルス幅シーケンスに対して、機器種別とコマンド種別のタグ付けを行い、データベースに登録し、パルス幅シーケンス間の誤差を算出し、算出した誤差の頻度分布に関する統計データを確率分布及びパラメータで統計モデルを構築する。未知の赤外線リモコン信号を受信し、データベースに登録されているパルス幅シーケンスと、受信した未知の赤外線リモコン信号のパルス幅シーケンスとの誤差を算出し、構築した統計モデルから導き出した算出誤差の発生確率に基づいて機器種別とコマンド種別を識別する。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要

近年、情報通信技術(ICT)の進歩により、日常生活で使用されるテレビ、照明、エアコンなどの家電製品がネットワークに接続され、モバイル通信端末を用いて家電製品の調整が可能になり、ユーザは、情報家電と呼ばれるこのような家電製品を遠隔から制御し、ネットワークを通じて有用な情報を受け取ることが可能になっている。情報家電を有する多くのシステムは、ユーザの操作に応じてサービスを提供する。
また、今後注目を集めると予想される「人やモノの状況や変化を認識する」という概念のコンテキストアウェアネス(Context Awareness)をコンピュータで実現するコンテキスト認識システムでは、例えば、モバイル通信端末に内蔵されたセンサによって、温度や湿度などの居住空間内のコンテキストを監視し、そのコンテキストが事前定義されたルールを満たす場合には対応するサービスを提供することができる。しかしながら、このルールを事前設定することは、ユーザビリティと柔軟性を低下させ、単純で柔軟性のないサービスしか提供できないといった問題がある。より有用なコンテキスト認識システムを実現するために、ユーザの嗜好やコンテキストに応じてルールを生成する仕組みが必要であり、そのためには、ユーザの生活行動を長期間収集して、ユーザの嗜好を知ることが重要である。

一方、我々の日常生活は、家電製品や居住空間内のコンテキストに強く依存している。例えば、テレビを見ている時間や時間帯は、ユーザによって異なり、エアコンを操作するタイミングについても、ユーザが暑さや寒さに敏感であるか否かに関係している。また、センサの低コスト化やモバイル通信端末の普及により、日常生活の様々な行動を収集することが可能である。さらに、モバイル通信端末で情報家電を操作する場合、制御した家電の操作ログを収集することも可能である。しかしながら、情報家電の種類は様々な製品ラインナップを揃えているわけでなく、しかも高価であるため、一般のユーザの殆どは、従来の家電製品のみを有するか、或は、従来の家電製品の一部が情報家電に置き換えられた環境下で日常生活を行っている。
そのため、一般ユーザのかかる環境下では、日常生活の中で家電製品の操作ログを収集することは困難である。

そこで、一般ユーザのこのような環境下の日常生活の中で家電製品の操作ログを収集する方法として、家電製品のON/OFF状態を消費電力量から推定する方法が提案されている。例えば、消費電力をディジタル計測し、計器内に通信機能を持たせた電力量計をコンセントや電気パネルに取り付け、リアルタイムで消費電力量を分析し、家電製品のON/OFF状態を推定して家電製品の操作ログを入手するやり方である。しかしながら、この方法では、家電製品のON/OFF状態のログのみを提供するに止まり、詳細な操作ログ収集ができないといった問題がある。居住者であるユーザの嗜好や居住空間内のコンテキストを理解するためには、家電製品のON/OFF状態のみならず、家電製品に対する操作コマンドの操作ログ収集が必要である。

従来の家電製品の殆どは、赤外線リモコン信号によって操作することが可能である(例えば、特許文献1を参照。)。赤外線リモコン信号を収集し分析するためには、操作された家電製品および操作コマンドを識別する必要がある。しかしながら、赤外線リモコン信号のフォーマットが家電製品のメーカーによって異なるため、赤外線リモコン信号の復号が困難である。また、同じメーカーの同じ家電製品であっても、居住空間の環境状態によりノイズが影響して、同じ操作の赤外線リモコン信号が異なる場合があり、さらにリモコン操作の仕方によっても赤外線リモコン信号が異なる場合がある(例えば、特許文献2を参照。)。

ここで、従来の家電製品の赤外線リモコン信号について説明する。赤外線リモコン信号とは、ピーク波長が940~950nmの範囲にある赤外線LEDを使用して数バイト分の情報を送る信号であり、十分なSN比を得ることができる強度を有する光である。1ビットのデータ0/1の区別は、ビットの長さ(赤外線が出されていない期間の長さ、又は、赤外線が出されている期間の長さ)で区別される。赤外線リモコン信号の主な通信フォーマットは、パルス位置変調方式(PPM)を採用しており、日本では以下に説明する3種類の通信フォーマットが主流である。

第1番目の通信フォーマットでは、データが“1”の場合、HIGH状態の後にLOW状態がHIGH状態の期間(T)の3倍(3T)継続し、データが“0”の場合は、HIGH状態とLOW状態はほぼ同じ期間(T)になる仕様である。赤外線リモコン信号の受信側である家電製品では、HIGH状態の後にLOW状態がどれだけあるかで判断する。データが“1”の具体的な時間は、HIGH状態の期間は約0.56msであり、LOW状態の期間はHIGH状態の3倍の約1.69msであり、合計2.25msであり、データが“0”の具体的な時間は、HIGH状態の期間は約0.56msであり、LOW状態の期間もHIGH状態と同じ約0.56msであり、合計1.12msである。図13にデータ“0”とデータ“1”の赤外線リモコン信号イメージを示す。
なお、HIGH状態はその全ての期間連続して赤外線を出しているわけではなく、一定の周波数(キャリア周波数)で赤外線を出している期間と出していない期間を繰り返している。このキャリア周波数は、33~40kHzが標準である。HIGH状態の時は、デューティ比が約1/3でパルスを出力して、消費電力を抑えて、信号強度を上げている。

第1番目の通信フォーマットでは、1つの赤外線リモコン信号は、図14に示すように、リーダコード、次に16ビットのカスタムコード、次に8ビットのデータコード及びデータコードの0/1を反転した8ビットのコードが続き、次にストップビット、この後に赤外線を出さない区間(フレームスペース)があり、1フレーム(リーダコードからフレームスペースまで)は約108msである。リーダコードは約9msのHIGH状態が続き、その後に約4.5msのLOW状態がある。リーダコードの部分はその後のデータコード等の部分と各状態の期間が大きく異なり、容易に識別ができるようになっている。カスタムコードやデータコードの部分がデータ0/1を含む部分であり、各部分はその下位ビットから順に送信される。

カスタムコードは、赤外線リモコン信号を使用する家電製品のメーカーを識別するためのものであり、16ビットのコード長で、データコードの前につけて送信される。0000h~00FFhの256通りは各メーカーが自由に使え、これ以外のコードは通信フォーマット管理会社が管理し各メーカーに割り当てている。データコードは、8ビットの家電製品の操作コマンドデータとそのビット反転値が送信される。カスタムコード長はそのデータ内容により変化するが、データコード長についてはその反転データが送信されることから、データコード及びその反転コードの部分でのデータ1の総数は常に8個であり、長さは固定になる。赤外線リモコン信号の受信側で、データコードの8ビットと反転した8ビットを比較して、同じ値であることを確認することにより、ノイズ等によりビット反転や信号エラーをチェックする。ストップビットは、カスタムコードとデータコード合わせて32ビットの後に33ビット目として送信される。ストップビットは0.56msのHIGH状態の後はLOW状態のままとなる。受信側はストップビットを受け取った時点で受信処理を終了する。
その他、図示しないが、赤外線リモコン信号の1フレームの後、リモコンの操作ボタンを押している間に108msの周期で送信されるリピート(約9msのHIGH状態が続き、その後に約2.25msのLOW状態があるコード)がある。

次に、第2番目の通信フォーマットでは、1つの赤外線リモコン信号のフレームは、図15に示すように、リーダコード、次に16ビットのカスタムコード、次に4ビットのパリティコード、次に可変長のデータコードが続き、最後にトレーラ(上述のストップコードとフレームスペースに相当)があり、1フレームは通常では約130ms(各メーカーによって相違)である。
データ1/0は、第1番目の通信フォーマットと同様、データが“1”の場合は、HIGH状態の後にLOW状態がHIGH状態の期間(T)の3倍(3T)継続し、データが“0”の場合は、HIGH状態とLOW状態はほぼ同じになる仕様である。データが“1”の具体的な時間は、第1番目の通信フォーマットと異なり、HIGH状態の期間(T)は約0.35~0.5msであり(典型的には中央値0.425msを使用)、LOW状態の期間はHIGH状態の3倍(3T)の約1.05~1.5msであり、合計1.4~2.0msであり、データが“0”の具体的な時間は、HIGH状態の期間は約0.35~0.5msであり、LOW状態の期間もHIGH状態と同じ約0.35~0.5msであり、合計0.7~1.0msである。
また、リーダコードは一定期間のHIGH状態の期間(8T)が続き、その後にHIGH状態の期間の半分の期間(4T)のLOW状態がある。カスタムコードは、第1番目の通信フォーマットと同様、16ビットのメーカー識別データである。パリティコードは、カスタムコードを4ビット単位でXORをとったものであり、カスタムコードのビット反転などエラー制御するコードである。操作コマンド等のデータコードは、3バイト以上の任意のバイト数の可変長のコードであり、エラー制御は各メーカーの実装に依存している。通常はデータNが、XOR値、補数、CRC(Cyclic Redundancy Check)、BCC(Block Check Character)の機能を担っている。

さらに、第3番目の通信フォーマットでは、1つの赤外線リモコン信号のフレームは、図16(2)に示すように、リーダコード、次に7ビットのデータコード、次に数ビット(機種によって異なる)のアドレスコードが続き、最後にトレーラ(図示せず)があり、1フレームは約45msである。上述の第1番目と第2番目の通信フォーマットと異なり、リーダコードの次のデータコードで操作コマンドのデータを送り、アドレスコードで機器の識別データを送る。
また、データ1/0の仕様が、第1番目と第2番目の通信フォーマットと異なり、図16(1)に示すように、データが“1”の場合は、LOW状態の後にHIGH状態がLOW状態の期間(T)の2倍(2T)継続し、データが“0”の場合は、LOW状態とHIGH状態はほぼ同じ期間(T)になる仕様である。データが“1”の具体的な時間は、LOW状態の期間は約0.6msであり、HIGH状態の期間はLOW状態の2倍の約1.2msであり、合計1.8msであり、データが“0”の具体的な時間は、LOW状態の期間は約0.6msであり、HIGH状態の期間もLOW状態と同じ約0.6msであり、合計1.2msである。リーダコードは一定期間のHIGH状態の期間(4T)が続き、第1番目と第2番目の通信フォーマットと異なり、リーダコード内にLOW状態はなく、その後はデータコードのLOW状態が続くようになっている。

第1~第3番目の通信フォーマットは、日本において代表的なものであるが、これら以外にもメーカー独自フォーマットもあり、海外メーカーの家電製品も含めると多種多様である。また、同じメーカーの製品であっても、テレビとオーディオ機器で通信フォーマットが異なる場合もある。すなわち、赤外線リモコン信号のフォーマットが家電製品のメーカーによって異なるため、未知の赤外線リモコン信号の復号は非常に困難である。

産業上の利用分野

本発明は、赤外線リモコン信号の識別技術に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
赤外線リモコン信号のHIGH状態及びLOW状態のパルス幅シーケンスの誤差の頻度分布に関する統計モデルを用いて、未知の赤外線リモコン信号を識別することを特徴とする赤外線リモコン信号識別方法。

【請求項2】
異種機器及び異種コマンドの前記パルス幅シーケンスに対して、機器種別とコマンド種別のタグ付けを行い、データベースに登録する登録ステップと、
前記データベースの前記パルス幅シーケンス間の誤差を算出する誤差算出ステップと、
算出した誤差の頻度分布に関する統計データを確率分布及びパラメータでモデル化した統計モデルを構築するモデル構築ステップと、
未知の赤外線リモコン信号を受信する赤外線受信ステップと、
前記データベースに登録されている前記パルス幅シーケンスと、受信した未知の赤外線リモコン信号のパルス幅シーケンスとの誤差を算出し、前記統計モデルから導き出した算出誤差の発生確率に基づいて機器種別とコマンド種別の少なくとも何れかの識別を行う識別ステップ、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の赤外線リモコン信号識別方法。

【請求項3】
前記統計モデルは、
同一機器種別間における前記誤差の頻度分布に関する機器種別モデルと、
同一機器種別の同一コマンド間における前記誤差の頻度分布に関する第1コマンド種別モデルと、同一機器種別の異なるコマンド間における前記誤差の頻度分布に関する第2コマンド種別モデル、から構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の赤外線リモコン信号識別方法。

【請求項4】
前記パルス幅シーケンスの誤差は、
比較する2つのシーケンスが同一パルス数の場合には、並び順に対応するそれぞれのパルス幅の誤差を算出し、
比較する2つのシーケンスが異なるパルス数の場合には、パルス数が多いシーケンスの一部であってパルス数が少ないシーケンスと同一パルス数の部分シーケンスと、他方のパルス数が少ないシーケンスと比較して、並び順に対応するそれぞれのパルス幅の誤差を算出し、全ての部分シーケンスとの比較を行い、最小誤差を算出する、
ことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の赤外線リモコン信号識別方法。

【請求項5】
算出するパルス幅の誤差は、それぞれのパルス幅の絶対誤差であり、
前記パルス幅シーケンスの誤差として、平均絶対誤差と合計絶対誤差の少なくとも何れかを算出することを特徴とする請求項4に記載の赤外線リモコン信号識別方法。

【請求項6】
算出するパルス幅の誤差は、それぞれのパルス幅の一致度から算出した値であり、
前記パルス幅シーケンスの誤差として、平均絶対誤差と合計絶対誤差の少なくとも何れかを算出することを特徴とする請求項4に記載の赤外線リモコン信号識別方法。

【請求項7】
前記機器種別モデルは、前記パルス幅シーケンスの平均絶対誤差の頻度分布にフィッティングする確率分布であり、
前記第1コマンド種別モデルと前記第2コマンド種別モデルは、共に、前記パルス幅シーケンスの合計絶対誤差の頻度分布にフィッティングする確率分布である、ことを特徴とする請求項3~6の何れかに記載の赤外線リモコン信号識別方法。

【請求項8】
赤外線リモコン信号のHIGH状態及びLOW状態のパルス幅シーケンスの誤差の頻度分布に関する統計モデルを用いて、未知の赤外線リモコン信号を識別する赤外線リモコン信号識別装置。

【請求項9】
異種機器及び異種コマンドの前記パルス幅シーケンスが、機器種別とコマンド種別のタグ付けされ登録されたデータベースと、
前記データベースの前記パルス幅シーケンス間の誤差を算出する誤差算出手段と、
算出した誤差の頻度分布に関する統計データを確率分布及びパラメータでモデル化した前記統計モデルを構築するモデル構築手段と、
未知の赤外線リモコン信号を受信する赤外線受信手段と、
前記データベースに登録されている前記パルス幅シーケンスと、受信した未知の赤外線リモコン信号のパルス幅シーケンスとの誤差を算出し、前記統計モデルから導き出した算出誤差の発生確率に基づいて機器種別とコマンド種別の少なくとも何れかの識別を行う識別手段、
を備えたことを特徴とする請求項8に記載の赤外線リモコン信号識別装置。

【請求項10】
モニタリング対象の赤外線リモコン操作対象機器と同一空間に設置され、赤外線受信装置を備えた端末と、
前記端末とネットワークで接続されたサーバから構成され、
前記端末は、受信した赤外線リモコン信号を前記サーバへ送信し、
前記サーバは、前記データベース及び前記識別手段を備え、前記端末から受信した赤外線リモコン信号のパルス幅シーケンスの誤差を算出し、前記統計モデルから導き出した算出誤差の発生確率に基づいて機器種別とコマンド種別の少なくとも何れかの識別を行うことを特徴とする請求項9に記載の赤外線リモコン信号識別装置。

【請求項11】
請求項10の赤外線リモコン信号識別装置における前記サーバ。

【請求項12】
前記統計モデルは、
同一機器種別間における前記誤差の頻度分布に関する機器種別モデルと、
同一機器種別の同一コマンド間における前記誤差の頻度分布に関する第1コマンド種別モデルと、同一機器種別の異なるコマンド間における前記誤差の頻度分布に関する第2コマンド種別モデル、から構成されることを特徴とする請求項8~10の何れかに記載の赤外線リモコン信号識別装置。

【請求項13】
前記機器種別モデルは、前記パルス幅シーケンスの平均絶対誤差の頻度分布にフィッティングする確率分布であり、
前記第1コマンド種別モデルと前記第2コマンド種別モデルは、共に、前記パルス幅シーケンスの合計絶対誤差の頻度分布にフィッティングする確率分布である、ことを特徴とする請求項12に記載の赤外線リモコン信号識別装置。
国際特許分類(IPC)
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