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宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別マーカー

国内特許コード P190016003
整理番号 (S2016-0498-N0)
掲載日 2019年5月8日
出願番号 特願2018-507455
出願日 平成29年3月24日(2017.3.24)
国際出願番号 JP2017012112
国際公開番号 WO2017164391
国際出願日 平成29年3月24日(2017.3.24)
国際公開日 平成29年9月28日(2017.9.28)
優先権データ
  • 特願2016-060914 (2016.3.24) JP
発明者
  • 林 誠
  • 岩崎 佳子
  • 林 哲太郎
  • 海老澤 昌史
  • 笹川 洋平
  • 芳村 美佳
  • 二階堂 愛
  • 市田 健介
  • 吉崎 悟朗
出願人
  • 国立大学法人東京海洋大学
  • 国立大学法人筑波大学
発明の名称 宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別マーカー
発明の概要 本発明は、(I)の宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別マーカーおよび/または(II)の宿主生殖腺への生着能を有さない生殖細胞識別マーカーを含んでなる、生殖細胞識別マーカーに関する。本発明は、魚類の宿主生殖腺への生着能の有無を識別できる生殖細胞マーカーを提供する。
従来技術、競合技術の概要

欧米での健康志向の高まりや中国等の経済発展により、世界の食用水産物消費量は年々増加を続け、その結果、天然水産資源量の減少が問題となっている。特に、高級魚として需要の高いウナギおよびクロマグロなどは、乱獲による天然資源量の減少が著しく、絶滅が危惧される状態にまで至っている。そのため、水産資源量の増加を目的とした種苗生産および人工種苗(稚魚)放流が検討されている。一般的に、種苗生産では、近親交配や特定疾病の発症による全滅を避けるために、親魚となる個体の遺伝的多様性が必要とされ、従って、多数の親魚を育成する必要がある。しかしながら、魚種によっては、種苗生産は難しい。例えば、クロマグロでは親魚は体重100kg以上と大型であり、遊泳方法から広い飼育環境を必要とする。また、チョウザメでは精子や卵の成熟に長い年月を要する。人為催熟が技術的に難しい魚種や、1対1交配が難しい魚種もいることから、多数の親魚を人為的な管理下で育成し、精子や卵を採取することは、コスト的および技術的に極めて難しい。

魚類の種苗生産技術として、本発明者らは、宿主(レシピエント)魚類とは異なる異種の魚類(ドナー魚類)由来の生殖細胞を、孵化前後の宿主魚類個体の腹腔内へ移植することによって、生殖細胞を生殖細胞系列へ分化誘導することができることを見いだし、異種の宿主魚類での分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導に成功している(例えば、特許文献1参照)。この技術は、代理親魚技法または借り腹養殖技法とも呼ばれ、親魚の飼育に問題の多い魚類の精子や卵を、飼育しやすい異種の宿主魚類によって生産し、交配することにより低コストで簡便な種苗生産を可能にする技術であるとして期待されている。

特許文献1では、移植する生殖細胞として始原生殖細胞を用いている。具体的には、始原生殖細胞に対して特異的に発現するvasa遺伝子の調節領域にGFP(Green Fluorescent Protein:緑色蛍光タンパク質)遺伝子を導入した遺伝子組換えニジマスの孵化胚から得た生殖隆起組織の懸濁液を原料に、緑色蛍光を指標としたフローサイトメトリー解析により蛍光強度の強い細胞集団を始原生殖細胞として分離している。しかしながら、始原生殖細胞は、孵化前後の極めて若い胚に由来し、その数は孵化稚魚1尾当たり60個程度と大変少ないものであるため、商業的な量産化には向かない。

商業的な量産化を目的として、移植する分離生殖細胞の数を十分確保するために、例えば、非特許文献1には、ドナー魚類の生殖腺である精巣の細胞懸濁液から、生殖細胞を分離し、その分離生殖細胞を、代理親魚技法において、宿主魚類個体の腹腔内に移植する方法が開示されている。しかしながら、移植する分離生殖細胞として、精巣由来の分離生殖細胞を用いた場合の宿主生殖腺への移植細胞の生着した個体の割合は、始原生殖細胞を用いた場合より低かった。

非特許文献2には、ニジマス精原細胞を孵化稚魚腹腔内に移植すると、一部のA型精原細胞(A-SG)のみが宿主生殖腺へと生着し、ドナー由来の機能的配偶子を生産することから、高い生着能を有しているA型精原細胞は、精原幹細胞(SSC)であるという考えのもと、精原幹細胞のSide Population(SP)に着目した、宿主生殖腺への高い生着能を有しているA型精原細胞の濃縮方法が開示されている。しかしながら、この方法では精原幹細胞の濃縮率が不十分であり、宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別マーカーを得るには至っていない。よって、代理親魚技法において、移植する分離生殖細胞の宿主生殖腺への生着能の有無を判断するためには、実際に孵化前後の宿主魚類個体に移植して確認する以外、識別する方法は存在しない。

産業上の利用分野

本発明は、代理親魚技法に関し、特に、代理親魚技法において、移植する分離生殖細胞の宿主生殖腺への生着能の有無を識別する生殖細胞識別マーカーに関する。また本発明は、本発明の生殖細胞識別マーカーを用いた、宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞生産方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
下記(I)の宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別マーカーおよび/または(II)の宿主生殖腺への生着能を有さない生殖細胞識別マーカーを含んでなる、生殖細胞識別マーカー:
(I)下記(a)~(f)から選択される1または2以上のポリヌクレオチドからなる生殖細胞識別マーカー:
(a)配列番号1~74のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
(b)配列願号1~74のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドであって、宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別機能を有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号1~74のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、付加、挿入または置換されたヌクレオチド配列、および/またはその一方または両末端への塩基の付加がなされたヌクレオチド配列で表されるポリヌクレオチドであって、宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別機能を有するポリヌクレオチド、
(d)配列番号1~74のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列と少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列で表されるポリヌクレオチドであって、宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別機能を有するポリヌクレオチド、
(e)配列番号1~74のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列からなる遺伝子のオルソログ遺伝子をコードするポリヌクレオチド、および
(f)前記(a)~(e)のいずれかに示されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドの相補配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別機能を有するポリヌクレオチド、
(II)下記(g)~(l)から選択される1または2以上のポリヌクレオチドからなる宿主生殖腺への生着能を有さない生殖細胞識別マーカー:
(g)配列番号75~101のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
(h)配列願号75~101のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドであって、宿主生殖腺への生着能を有さない生殖細胞識別機能を有するポリヌクレオチド、
(i)配列番号75~101のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、付加、挿入または置換されたヌクレオチド配列、および/またはその一方または両末端への塩基の付加がなされたヌクレオチド配列で表されるポリヌクレオチドであって、宿主生殖腺への生着能を有さない生殖細胞識別機能を有するポリヌクレオチド、
(j)配列番号75~101のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列と少なくとも70%の同一性を有する塩基配列で表されるポリヌクレオチドであって、宿主生殖腺への生着能を有さない生殖細胞識別機能を有するポリヌクレオチド、
(k)配列番号75~101のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列からなる遺伝子のオルソログ遺伝子をコードするポリヌクレオチド、および
(l)前記(g)~(k)のいずれかに示されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドの相補配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、宿主生殖腺への生着能を有さない生殖細胞識別機能を有するポリヌクレオチド。

【請求項2】
生殖細胞識別マーカーが、宿主生殖腺への生着能の有無を識別する生殖細胞識別マーカーである、請求項1に記載のマーカー。

【請求項3】
下記(a)~(f)から選択される1または2以上のポリヌクレオチドからなる、生殖細胞識別マーカーが、宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別マーカーである、請求項1または2に記載のマーカー:
(a)配列番号1~74のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
(b)配列願号1~74のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドであって、宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別機能を有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号1~74のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、付加、挿入または置換されたヌクレオチド配列、および/またはその一方または両末端への塩基の付加がなされたヌクレオチド配列で表されるポリヌクレオチドであって、宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別機能を有するポリヌクレオチド、
(d)配列番号1~74のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列と少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列で表されるポリヌクレオチドであって、宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別機能を有するポリヌクレオチド、
(e)配列番号1~74のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列からなる遺伝子のオルソログ遺伝子をコードするポリヌクレオチド、および
(f)前記(a)~(e)のいずれかに示されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別機能を有するポリヌクレオチド。

【請求項4】
宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別マーカーが、精原幹細胞(SSC)マーカーである、請求項1~3のいずれか一項に記載のマーカー。

【請求項5】
請求項4に記載のポリヌクレオチドまたは該ポリヌクレオチドの相補配列からなるポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる、SSC遺伝子検出用プライマーまたはプローブ。

【請求項6】
下記(g)~(l)から選択される1または2以上のポリヌクレオチドからなる、生殖細胞識別マーカーが、宿主生殖腺への生着能を有さない生殖細胞識別マーカーである、請求項1または2に記載のマーカー:
(g)配列番号75~101のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
(h)配列願号75~101のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドであって、宿主生殖腺への生着能を有さない生殖細胞識別機能を有するポリヌクレオチド、
(i)配列番号75~101のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、付加、挿入または置換されたヌクレオチド配列、および/またはその一方または両末端への塩基の付加がなされたヌクレオチド配列で表されるポリヌクレオチドであって、宿主生殖腺への生着能を有さない生殖細胞識別機能を有するポリヌクレオチド、
(j)配列番号75~101のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列と少なくとも70%の同一性を有する塩基配列で表されるポリヌクレオチドであって、宿主生殖腺への生着能を有さない生殖細胞識別機能を有するポリヌクレオチド、
(k)配列番号75~101のヌクレオチド配列から選択される1または2以上のヌクレオチド配列からなる遺伝子のオルソログ遺伝子をコードするポリヌクレオチド、および
(l)前記(g)~(k)のいずれかに示されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドの相補配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、宿主生殖腺への生着能を有さない生殖細胞識別機能を有するポリヌクレオチド。

【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別マーカーを用いて、該宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別マーカーの遺伝子の発現の有無および/または程度を検出して、
魚類の精巣または卵巣から、発現が有るもしくは発現が高い細胞を分離する
ことを含んでなる、宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞生産方法。

【請求項8】
請求項1、2または6に記載の宿主生殖腺への生着能を有さない生殖細胞識別マーカーを用いて、該宿主生殖腺への生着能を有さない生殖細胞識別マーカーの遺伝子の発現の有無および/または程度を検出して、
魚類の精巣または卵巣から、発現があるもしくは発現が高い細胞を分離する
ことをさらに含んでなる、請求項7に記載の宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞生産方法。

【請求項9】
魚類が、サケ科魚類またはサバ科魚類である、請求項7または8に記載の宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞生産方法。

【請求項10】
請求項1~4のいずれか一項に記載の宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別マーカーがコードするタンパク質の一部に結合する、宿主生殖腺への生着能を有する生殖細胞識別抗体。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開


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