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糖タンパク質のN結合型糖鎖の解析方法及び解析システム UPDATE

国内特許コード P190016045
整理番号 (S2016-1050-N0)
掲載日 2019年5月10日
出願番号 特願2017-562372
登録番号 特許第6502534号
出願日 平成29年8月18日(2017.8.18)
登録日 平成31年3月29日(2019.3.29)
国際出願番号 JP2017029658
国際公開番号 WO2018034346
国際出願日 平成29年8月18日(2017.8.18)
国際公開日 平成30年2月22日(2018.2.22)
優先権データ
  • 特願2016-161118 (2016.8.19) JP
発明者
  • 太田 悠葵
  • 川崎 ナナ
  • 高倉 大輔
出願人
  • 公立大学法人横浜市立大学
発明の名称 糖タンパク質のN結合型糖鎖の解析方法及び解析システム UPDATE
発明の概要 N結合型糖鎖の結合部位ごとの定性・定量を正確に実行できる新規な手段が開示されている。本発明の糖タンパク質のN結合型糖鎖の解析方法では、分析すべき糖ペプチド含有試料の一部をエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼで処理して、N結合型糖鎖結合位置のAsn上にキトビオースコアのGlcNAcを一つだけ残して糖鎖を切断し、この糖鎖切断試料を事前に液体クロマトグラフィー/質量分析に付し、その結果をもとに、本分析での目的糖ペプチドの液体クロマトグラフィー保持時間及びプリカーサーイオンのm/zを予測して本分析を実施する。これにより、糖タンパク質のどの部位にどのような構造のN結合型糖鎖が結合しているかを解析できる。糖鎖切断試料を本分析時の内部標準として用いることで、糖鎖結合部位ごとの糖鎖の定量解析も可能となる。
従来技術、競合技術の概要


糖鎖は重要なタンパク質の翻訳後修飾であり、近年、その構造及び機能の解析が急速に進められている。このような糖タンパク質、糖ペプチドの解析方法として、液体クロマトグラフィー/質量分析を用いた方法が広く用いられるようになっている。このように液体クロマトグラフィー/質量分析を用いてN結合型糖タンパク質、糖ペプチドの構造を解析する場合、ペプチド-N-グリカナーゼ(PNGase F)による糖鎖の切断を行い、N結合型糖鎖が結合していたアスパラギン(Asn)をアスパラギン酸(Asp)へ変化させ、この変化を検出することによりN結合型糖鎖の結合位置を決定する手法が一般的である。(例えば特許文献1、非特許文献1参照)。



しかしながら、PNGase Fを用いてN結合型糖鎖結合位置に存在するAsnのAspへの変化を観察する方法には、Asnの脱アミド化によるAspへの変化なのか、PNGase F処理によるAspへの変化なのか判別がつかないという問題、AsnからAspへの質量の変化が+1 Daと小さいことから、誤同定が頻発しやすいという2つの問題がある。



これらの問題への対処法として、例えば、安定同位体標識したH218O中でPNGase Fで糖鎖を切断することにより、糖鎖結合位置のAsnをAspへ変化させる際にAspのカルボキシル基のヒドロキシ基を18Oでラベルし、質量の変化を+3 DaとすることでAsnの脱アミド化と差別化し、モノアイソトピックピークピッキングのミスによる誤同定を緩和する方法が用いられている(例えば非特許文献1参照)。



糖タンパク質、糖ペプチドから遊離させた糖鎖の定量に関しては、PNGase FによりすべてのN結合型糖鎖をタンパク質から切断遊離させ、糖鎖を標識した後液体クロマトグラフィー等を用いて測定する方法がよく知られている(例えば特許文献2参照)。

産業上の利用分野


本発明は、液体クロマトグラフィー/質量分析を用いてN結合型糖鎖を解析するN結合型糖鎖解析方法及びN結合型糖鎖解析システムに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
N結合型糖鎖を有する糖タンパク質を断片化して糖ペプチド含有試料を得る、糖タンパク質断片化工程、
糖ペプチド含有試料の一部をエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼと反応させ、糖鎖とアスパラギン(Asn)残基との結合部に存在するキトビオースのβ-1,4結合を切断することにより、1残基のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)(ただし該GlcNAcには1残基のフコース(Fuc)が結合していてもよい)をペプチド上に残して糖鎖を切断する、糖鎖切断工程、
糖鎖切断工程で得られた糖鎖切断ペプチド試料に対して液体クロマトグラフィー/質量分析を行ない、クロマトグラム、マススペクトル及びプロダクトイオンスペクトルを得る、事前液体クロマトグラフィー/質量分析工程、
Asn残基のGlcNAc修飾又はGlcNAc-Fuc修飾を考慮したMS/MSイオンサーチ又はde novoシーケンス解析を行ない、糖ペプチドにおける糖鎖結合位置を決定する、糖鎖結合位置決定工程、
事前液体クロマトグラフィー/質量分析及びMS/MSイオンサーチ又はde novoシーケンス解析の結果より、糖鎖切断前の糖ペプチドの液体クロマトグラフィー保持時間及びプリカーサーイオンのm/zを推定する、保持時間・m/z推定工程、
糖ペプチド含有試料の残部を液体クロマトグラフィー/質量分析に供し、前記保持時間及び前記m/zの推定結果に従い分析すべきプリカーサーイオンピークを選定し、選定されたピークに対してプリカーサーイオン選択質量分析を行ない、糖ペプチドの糖鎖構造を決定する、本分析工程、
を含む、糖タンパク質のN結合型糖鎖の解析方法。

【請求項2】
エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼが、Endo F1、Endo F2、Endo F3、Endo M、Endo H及びEndo Sから選択される1種又は2種以上を含む、請求項1記載の方法。

【請求項3】
糖ペプチド含有試料として、糖鎖が結合していないペプチドを除去して糖ペプチドを濃縮した試料を用いる、請求項1又は2記載の方法。

【請求項4】
糖鎖切断工程で得られた糖鎖切断ペプチド試料を内部標準として、糖ペプチド含有試料の残部に添加して本分析工程を実施し、当該糖鎖結合部位に存在する糖鎖を相対定量することをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。

【請求項5】
前記内部標準として、糖鎖未切断の糖ペプチドを除去した糖鎖切断ペプチド試料を用いる、請求項4記載の方法。

【請求項6】
糖鎖未切断の糖ペプチドの除去は、冷却したアセトンを添加し、糖鎖未切断の糖ペプチドを沈殿させて分離する方法により、又は親水性相互作用クロマトグラフィーを用いて糖鎖未切断の糖ペプチドを吸着除去することにより行われる、請求項5記載の方法。

【請求項7】
N結合型糖鎖を有する糖タンパク質を断片化した糖ペプチド含有試料より調製された、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼにより1残基のGlcNAc(ただし該GlcNAcには1残基のFucが結合していてもよい)をペプチド中のAsn残基上に残して糖鎖が切断された糖鎖切断ペプチド試料について、クロマトグラム、マススペクトル及びプロダクトイオンスペクトルを取得する、事前液体クロマトグラフィー/質量分析データ取得部と、
Asn残基のGlcNAc修飾又はGlcNAc-Fuc修飾を考慮したMS/MSイオンサーチ又はde novoシーケンス解析を行ない、糖ペプチドにおける糖鎖結合位置を決定する、糖鎖結合位置決定部と、
事前液体クロマトグラフィー/質量分析及びMS/MSイオンサーチ又はde novoシーケンス解析の結果より、糖鎖切断前の糖ペプチドの液体クロマトグラフィー保持時間及びプリカーサーイオンのm/zを推定する、保持時間・m/z推定部と、
本分析用試料である糖鎖切断前の糖ペプチド含有試料について、本分析を行なう、本分析部であって、
本分析用試料について、クロマトグラム、及び推定された保持時間の画分のマススペクトルを取得する、本分析用試料の液体クロマトグラフィー/質量分析データ取得部、
m/zの推定結果に従い、前記推定された保持時間の画分のマススペクトルより分析すべきプリカーサーイオンピークを選定する、分析対象ピーク選定部、及び
選定された分析対象ピークについてのプリカーサーイオン選択質量分析データを取得し、糖ペプチドの糖鎖構造を決定する、糖鎖構造決定部
を含む、本分析部と、
分析結果を出力する出力部と
を備える、糖タンパク質のN結合型糖鎖の解析システム。

【請求項8】
N結合型糖鎖を有する糖タンパク質を断片化した糖ペプチド含有試料より調製された、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼにより1残基のGlcNAc(ただし該GlcNAcには1残基のFucが結合していてもよい)をペプチド中のAsn残基上に残して糖鎖が切断された糖鎖切断ペプチド試料について、クロマトグラム、マススペクトル及びプロダクトイオンスペクトルを取得する、事前液体クロマトグラフィー/質量分析データ取得部と、
Asn残基のGlcNAc修飾又はGlcNAc-Fuc修飾を考慮したMS/MSイオンサーチ又はde novoシーケンス解析を行ない、糖ペプチドにおける糖鎖結合位置を決定する、糖鎖結合位置決定部と、
事前液体クロマトグラフィー/質量分析及びMS/MSイオンサーチ又はde novoシーケンス解析の結果より、糖鎖切断前の糖ペプチドの液体クロマトグラフィー保持時間及びプリカーサーイオンのm/zを推定する、保持時間・m/z推定部と、
本分析用試料である糖鎖切断前の糖ペプチド含有試料について、本分析を行なう、本分析部であって、
前記糖鎖切断ペプチド試料が内部標準として添加された本分析用試料について、クロマトグラム、及び推定された保持時間の画分のマススペクトルを取得する、本分析用試料の液体クロマトグラフィー/質量分析データ取得部、
m/zの推定結果に従い、前記推定された保持時間の画分のマススペクトルより分析すべきプリカーサーイオンピークを選定する、分析対象ピーク選定部、
選定された分析対象ピークについてのプリカーサーイオン選択質量分析データを取得し、糖ペプチドの糖鎖構造を決定する、糖鎖構造決定部、及び
内部標準と各糖ペプチドの抽出イオンクロマトグラムを取得して、内部標準に対する各糖ペプチドの相対強度を算出することにより、当該糖鎖結合部位に存在する糖鎖を相対定量する、糖鎖定量部
を含む、本分析部と、
分析結果を出力する出力部と
を備える、糖タンパク質のN結合型糖鎖の解析システム。

【請求項9】
糖タンパク質のN結合型糖鎖を解析するために、1又は複数のコンピューターを、
N結合型糖鎖を有する糖タンパク質を断片化した糖ペプチド含有試料より調製された、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼにより1残基のGlcNAc(ただし該GlcNAcには1残基のFucが結合していてもよい)をペプチド中のAsn残基上に残して糖鎖が切断された糖鎖切断ペプチド試料について、クロマトグラム、マススペクトル及びプロダクトイオンスペクトルを取得する、事前液体クロマトグラフィー/質量分析データ取得部、
Asn残基のGlcNAc修飾又はGlcNAc-Fuc修飾を考慮したMS/MSイオンサーチ又はde novoシーケンス解析を行ない、糖ペプチドにおける糖鎖結合位置を決定する、糖鎖結合位置決定部、
事前液体クロマトグラフィー/質量分析及びMS/MSイオンサーチ又はde novoシーケンス解析の結果より、糖鎖切断前の糖ペプチドの液体クロマトグラフィー保持時間及びプリカーサーイオンのm/zを推定する、保持時間・m/z推定部、
本分析用試料である、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼによる糖鎖切断処理を受けていない糖ペプチド含有試料について、本分析を行なう、本分析部であって、
本分析用試料について、クロマトグラム、及び推定された保持時間の画分のマススペクトルを取得する、本分析用試料の液体クロマトグラフィー/質量分析データ取得部、
m/zの推定結果に従い、前記推定された保持時間の画分のマススペクトルより分析すべきプリカーサーイオンピークを選定する、分析対象ピーク選定部、及び
選定された分析対象ピークについてのプリカーサーイオン選択質量分析データを取得し、糖ペプチドの糖鎖構造を決定する、糖鎖構造決定部
を含む、本分析部、並びに
分析結果を出力する出力部
として機能させるためのプログラム。

【請求項10】
糖タンパク質のN結合型糖鎖を解析するために、1又は複数のコンピューターを、
N結合型糖鎖を有する糖タンパク質を断片化した糖ペプチド含有試料より調製された、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼにより1残基のGlcNAc(ただし該GlcNAcには1残基のFucが結合していてもよい)をペプチド中のAsn残基上に残して糖鎖が切断された糖鎖切断ペプチド試料について、クロマトグラム、マススペクトル及びプロダクトイオンスペクトルを取得する、事前液体クロマトグラフィー/質量分析データ取得部、
Asn残基のGlcNAc修飾又はGlcNAc-Fuc修飾を考慮したMS/MSイオンサーチ又はde novoシーケンス解析を行ない、糖ペプチドにおける糖鎖結合位置を決定する、糖鎖結合位置決定部、
事前液体クロマトグラフィー/質量分析及びMS/MSイオンサーチ又はde novoシーケンス解析の結果より、糖鎖切断前の糖ペプチドの液体クロマトグラフィー保持時間及びプリカーサーイオンのm/zを推定する、保持時間・m/z推定部、
本分析用試料である糖鎖切断前の糖ペプチド含有試料について、本分析を行なう、本分析部であって、
前記糖鎖切断ペプチド試料が内部標準として添加された本分析用試料について、クロマトグラム、及び推定された保持時間の画分のマススペクトルを取得する、本分析用試料の液体クロマトグラフィー/質量分析データ取得部、
m/zの推定結果に従い、前記推定された保持時間の画分のマススペクトルより分析すべきプリカーサーイオンピークを選定する、分析対象ピーク選定部、
選定された分析対象ピークについてのプリカーサーイオン選択質量分析データを取得し、糖ペプチドの糖鎖構造を決定する、糖鎖構造決定部、及び
内部標準と各糖ペプチドの抽出イオンクロマトグラムを取得して、内部標準に対する各糖ペプチドの相対強度を算出することにより、当該糖鎖結合部位に存在する糖鎖を相対定量する、糖鎖定量部
を含む、本分析部、並びに
分析結果を出力する出力部
として機能させるためのプログラム。

【請求項11】
EEQFNSTFR、EEQYNSTFR、又はEEQFNSTYRのアミノ酸配列からなるペプチドのアスパラギン残基に、1残基のGlcNAc、又は1残基のFucが結合した1残基のGlcNAcが結合してなるペプチドからなる、IgG型抗体のトリプシン消化物に含まれる糖ペプチド上の糖鎖を定量解析するための内部標準物質。

【請求項12】
IgG型抗体を断片化したペプチド混合物から糖ペプチドを分離回収し、糖ペプチドをエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼと反応させた後、糖鎖未切断の糖ペプチドを除去することを含む、IgG型抗体の糖鎖を定量解析するための内部標準の製造方法。

【請求項13】
EEQYNSTYRのアミノ酸配列からなるペプチドのアスパラギン残基に、1残基のGlcNAc、又は1残基のFucが結合した1残基のGlcNAcが結合してなるペプチドの、IgG型抗体のトリプシン消化物に含まれる糖ペプチドを定量解析するための内部標準物質としての使用。
国際特許分類(IPC)
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