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食材への物質含浸方法 新技術説明会 実績あり 外国出願あり

国内特許コード P190016267
整理番号 2611
掲載日 2019年8月20日
出願番号 特願2017-517138
登録番号 特許第6218206号
出願日 平成28年6月7日(2016.6.7)
登録日 平成29年10月6日(2017.10.6)
国際出願番号 JP2016066930
国際公開番号 WO2016199766
国際出願日 平成28年6月7日(2016.6.7)
国際公開日 平成28年12月15日(2016.12.15)
優先権データ
  • 特願2015-116006 (2015.6.8) JP
発明者
  • 柴 田 賢 哉
  • 梶 原 良
  • 中 津 沙弥香
  • 渡 邊 弥 生
  • 杉 岡 光
出願人
  • 広島県
発明の名称 食材への物質含浸方法 新技術説明会 実績あり 外国出願あり
発明の概要 【課題】食材に短時間で大量の物質を含浸することができる新規な方法の提供。
【解決手段】本発明による食材への物質含浸方法は、減圧下で食材内の水の相転移現象を利用して含浸駆動力を発生させて、外観で認識可能な形状を保持した食材内に物質を含浸する方法であって、
食材を減圧処理し、減圧下で食材内の水を沸騰させて、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を引き起こし、
続いて、含浸物質に接触した食材を昇圧処理し、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を引き起こし、含浸駆動力を発生させて、食材内に物質を含浸することを特徴とする。
従来技術、競合技術の概要

超高齢社会を背景として、高齢者用食品の需要が高まっている。これまでの高齢者用食品として主流であった刻み食や流動食、成型食に加えて、近年では、形状保持軟化食品が注目を集めている。形状保持軟化食品は、見た目が自然で、食べ応えのある大きさであるにもかかわらず、その色や形、味や香りが楽しめ、食材の素材感を残したまま軟らかい。

形状保持軟化食品の製造方法として、食材に食品用分解酵素を含浸し、食材内の組織接着物質を分解して軟らかく調製する方法が用いられ、食品工場での利用も進んでいる。通常、食材への酵素の含浸には、浸漬処理ではなく減圧含浸処理が利用される。減圧含浸処理は短時間に分解酵素を食材中心部まで導入できるため、厚みある形状保持食材においても食材内部の組織接着物質を偏りなく分解でき、食材をムラなく均一に軟化できる特長がある。通常の食品加工では煮込みに代表される加熱処理が比較的短時間での物質浸透手段として利用されるが、酵素は加熱により変性して失活するため利用できない。加圧含浸処理でも酵素を含浸することは可能であるが、装置コスト等の面から減圧処理が優れている。酵素含浸後、食材内での酵素分解の程度を制御すれば、食材の形状を保持したまま、健常者にとっても軟らかく食べやすい食材から、高齢者・要介護者用の舌や歯茎で容易に潰せる非常に軟らかい食材まで、様々な軟らかさに調整することができる。

発明者らは、これまでに、凍結食材を酵素液中で解凍して減圧し、減圧下に5~60分間保持して酵素を食材内に急速に含浸する方法を発明した(特許文献1)。凍結含浸法とよばれ、食材を凍結解凍して細胞間隙を緩和する前処理と、素材内細胞間隙の空気及び水分と食材外の酵素とを急速置換する減圧圧力処理が必須工程となっている。酵素を含浸した後、酵素反応、加熱酵素失活、包装工程などを経て形状保持軟化食品が製造される。減圧処理して物質を食材に含浸する方法として真空含浸法は古くから知られているが、食材中心部まで物質を含浸するには、凍結乾燥などを用いて食材を多孔質化し、十分な空隙を形成して導入する必要がある(特許文献2)。多孔質でない食材を真空含浸した場合、物質の含浸は食材表面に留まる。凍結含浸法では、凍結処理を行って、氷結晶生成による組織構造変化を促し、解凍により組織内に空隙を発生させることで、その後の減圧処理による食材内空気と酵素液との飛躍的な置換効率の向上につながる。その結果、酵素などの高分子物質をも中心部まで速やかに含浸することができる。

現在では食材の組織を緩和する方法として、凍結解凍の他に、誘電加熱(特許文献3)、飽和水蒸気加熱(特許文献4)、過熱水蒸気処理(特許文献5)、テンダライズ処理(特許文献6)などが代替処理として考案されている。このような方法によって、食材組織の構造変化によって生じた空隙の空気と酵素の効率的な置換が実施されている。また、含浸処理操作も様々な工夫がされ、減圧処理を複数回繰り返して含浸効率を高める方法が提案されている(特許文献7、非特許文献1)。さらには減圧保持状態での食材内からの空気の排出を十分に促すため、減圧装置に超音波処理機能を付加して物理的振動を与える方法や、マイクロ波加熱して加温する方法、減圧処理の後に加圧処理を追加する方法なども考案されている(特許文献8~12)。これらの方法を組み合わせて食材内に酵素を含浸し、形状保持軟化食品の製造が行われている。

これら食材組織を緩和させる前処理と減圧処理とを組み合わせた減圧含浸方法は、いずれも非特許文献2で明らかにされている凍結含浸原理と同様の仕組みにより、食材への物質含浸が達成される。すなわち、組織緩和した食材を減圧処理すると、組織緩和で生じた食材内の空気が、ボイル・シャルルの法則に則って膨張する。膨張空気は組織間の水分を食材外に押し出し、組織間隙は膨張空気で満たされる。その後、減圧状態から常圧に復圧することにより、組織間隙の膨張空気の収縮に追従して酵素液が組織間隙に含浸される。

産業上の利用分野

本発明は、減圧下での水の相転移現象を利用して含浸駆動力を発生させて、外観で認識可能な形状を保持した食材内に効率的に物質を含浸する方法、及びその方法によって製造される物質含有食材に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
減圧下で食材内の水の相転移現象を利用して含浸駆動力を発生させて、外観で認識可能な形状を保持した食材内に物質を含浸する方法であって、前記方法が、
食材を減圧処理し、減圧下で食材内の水を沸騰させて、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を引き起こす工程であって食材にかかる圧力P(kPa)を、気化熱に伴い低下する食材温度T’(K)を用いて下記数式(I)(アントワン式)で計算した水蒸気圧P’(kPa)に対して下回るように制御(P<P’)し、かつ、食材にかかる圧力P(kPa)及び減圧処理時間t(s)を、水蒸気圧P’(kPa)並びに沸騰開始時間t=t(s)及び沸騰終了時間t=t(s)を用いて下記数式(II)で計算した圧力差総和値S(kPa・s)が115kPa・s以上となるように制御する、工程、
【数1】
(省略)
【数2】
(省略)
(式中、S:圧力差総和値(kPa・s )、t:減圧処理時間(s)、
P(t):減圧処理時間tにおける、食材にかかる圧力P(kPa)、
P’(t):減圧処理時間tにおける、食材温度T’でのアントワン式で計算した水蒸気圧P’(kPa)、
:P=P’となり、食材内の水の沸騰が開始するまでの減圧開始からの時間(s)、
:P=P’となり、食材内の水の沸騰が終了するまでの減圧開始からの時間(s))
続いて、食材の組織間隙を水蒸気で満たした後、含浸物質に接触した食材を昇圧処理し、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を引き起こし、含浸駆動力を発生させて、食材内に物質を含浸する工程であって、食材にかかる圧力P(kPa)が、気化熱に伴い低下する食材温度T’(℃)を用いてアントワン式で計算した水蒸気圧P’(kPa)に対して上回る(P>P’)までの圧力区間において、1kPa/秒以下の速度で昇圧処理する、工程、
を含むことを特徴とする、食材への物質含浸方法。

【請求項2】
食材を減圧処理し、食材内の水を沸騰させる工程において、10kPa以上の圧力において食材内の水の沸騰を開始させる、請求項1に記載の食材への物質含浸方法。

【請求項3】
下記のI~Vの工程:
I. 食材の組織を緩和する前処理工程であって、前処理工程として、冷凍処理、解凍処理、加熱処理、テンダライズ、タンブリング、圧延処理、脱水処理、乾燥処理、酸処理、アルカリ処理、及び酵素処理からなる群から選択される少なくとも一種を用いる、工程
II. 前処理した食材を加温する工程、
III. 加温した状態の食材に、含浸する物質を接触させる工程、
IV. 食材を減圧処理し、減圧下で食材内の水を沸騰させ、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を行う工程、
V. 食材を昇圧処理し、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を行い、含浸駆動力を発生させて、食材の組織内に物質を含浸する工程、
前記I~Vの順序で含む、請求項1又は2に記載の食材への物質含浸方法。

【請求項4】
下記のI~Vの工程:
I. 食材の組織を緩和する前処理工程であって、前処理工程として、冷凍処理、解凍処理、加熱処理、テンダライズ、タンブリング、圧延処理、脱水処理、乾燥処理、酸処理、アルカリ処理、及び酵素処理からなる群から選択される少なくとも一種を用いる、工程
II. 前処理した食材を加温する工程、
III. 加温した状態の食材を減圧処理して、減圧下で食材内の水を沸騰させ、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を行う工程、
IV. 減圧下の食材に、含浸する物質を接触させる工程、
V. 食材を昇圧処理し、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を行い、含浸駆動力を発生させて、食材の組織内に物質を含浸する工程、
前記I~Vの順序で含む、請求項1又は2に記載の食材への物質含浸方法。

【請求項5】
下記のI~Vの工程:
I. 食材の組織を緩和する前処理工程であって、前処理工程として、冷凍処理、解凍処理、加熱処理、テンダライズ、タンブリング、圧延処理、脱水処理、乾燥処理、酸処理、アルカリ処理、及び酵素処理からなる群から選択される少なくとも一種を用いる、工程
II. 前処理した食材に含浸する物質を接触させる工程、
III. 含浸する物質を接触させた食材を加温する工程、
IV. 減圧下で食材内の水を沸騰させ、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を行う工程、
V. 食材を昇圧処理し、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を行い、含浸駆動力を発生させて、食材の組織内に物質を含浸する工程、
前記I~Vの順序で含む、請求項1又は2に記載の食材への物質含浸方法。

【請求項6】
下記のI~Vの工程:
I. 食材に含浸する物質を接触させる工程、
II. 食材の組織を緩和する前処理工程であって、前処理工程として、冷凍処理、解凍処理、加熱処理、テンダライズ、タンブリング、圧延処理、脱水処理、乾燥処理、酸処理、アルカリ処理、及び酵素処理からなる群から選択される少なくとも一種を用いる、工程
III. 含浸する物質を接触させた食材を加温する工程、
IV. 食材を減圧処理し、減圧下で食材内の水を沸騰させ、食材内の水の気化と水蒸気の体積膨張とによる体積増加を行う工程、
V. 食材を昇圧処理し、食材内の水蒸気の体積収縮と水蒸気の凝縮とによる体積減少を行い、含浸駆動力を発生させて、食材の組織内に物質を含浸する工程、
前記I~Vの順序で含む、請求項1又は2に記載の食材への物質含浸方法。

【請求項7】
食材を加熱して前処理工程と加温工程を同時に実施する、請求項、又はに記載の食材への物質含浸方法。

【請求項8】
加温工程において、食材の中心温度を50℃以上100℃以下に昇温させる、請求項のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。

【請求項9】
前処理工程の加熱処理及び/又は加温工程の加温処理として、湿熱加熱、誘電加熱、飽和水蒸気加熱、過熱水蒸気加熱、加圧加熱、焼成加熱、及びジュール加熱からなる群から選択される少なくとも一種を用いる、請求項のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。

【請求項10】
含浸する物質として、タンパク質、油脂、酵素、多糖類、増粘剤、乳化剤、及び澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の高分子物質を用いる、請求項1~のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。

【請求項11】
0℃以上50℃以下の温度で食材に含浸する物質を接触させる、請求項1~10のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。

【請求項12】
食材を食品用軟包材又は硬質容器に入れた状態で実施する、請求項1~11のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法。

【請求項13】
食材にかかる圧力Pを制御できる減圧含浸装置を用いる、請求項1~12のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法

【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の食材への物質含浸方法を用いる、物質含浸食材の製造方法

【請求項15】
請求項14に記載の方法により製造された物質含浸食材を用い、加工食品の製造方法
国際特許分類(IPC)
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JP2017517138thum.jpg
出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) 広島県立総合技術研究所


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