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レーザーを用いた細胞内への外来物質の導入方法

国内特許コード P190016501
整理番号 (S2017-0143-N0)
掲載日 2019年11月25日
出願番号 特願2018-555090
出願日 平成29年12月8日(2017.12.8)
国際出願番号 JP2017044259
国際公開番号 WO2018105748
国際出願日 平成29年12月8日(2017.12.8)
国際公開日 平成30年6月14日(2018.6.14)
優先権データ
  • 特願2016-238946 (2016.12.9) JP
発明者
  • 祐村 恵彦
出願人
  • 国立大学法人山口大学
発明の名称 レーザーを用いた細胞内への外来物質の導入方法
発明の概要 本発明の課題は、外来物質を高効率、且つ、容易にシングル細胞内へ導入でき、さらに細胞への損傷による影響が少ない方法を提供することにある。
上面に金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属の薄膜がコーティングされたカバースリップの前記薄膜上に細胞を静置し、導入する外来物質を含有する液体を前記細胞に接触させ、前記細胞に近接した薄膜に対してレーザー光を照射して前記薄膜にレーザー光を吸収させることにより前記細胞膜に細孔を形成し、前記細孔から前記外来物質を前記細胞内へ導入する。
従来技術、競合技術の概要

細胞内に外来遺伝子等を導入することで、新たな形質を有する細胞又は生物の作製や、細胞内に蛍光色素を導入して細胞内の機能を蛍光測定するバイオイメージング解析が行われている。近年研究が進んでいるiPS(人工多能幹)細胞も任意の分化形質を有する細胞に分化させるために、細胞内への物質導入技術が必須である。

従来、細胞へ遺伝子やタンパク質を導入する方法として、トランスフェクション試薬を用いる方法、ウイルスを用いる方法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、ソノポレーション法、リポソーム融合法、マイクロマニピュレーターを用いる方法等が用いられてきた。

トランスフェクション試薬を用いる方法は、脂溶性の試薬で親水性の遺伝子やタンパク質を覆い、遺伝子やタンパク質が脂質からなる細胞膜を通過できるようにする方法である。導入効率は高いが、すべての細胞に適用できるわけではなく、例えばプライマリー培養細胞、神経細胞、血球細胞、粘菌細胞等には適用することができないという問題があった。また、トランスフェクション試薬は細胞に残ることから細胞毒性や発がん性が危惧されていること、加えて市販のトランスフェクション試薬は導入剤の成分が公開されていないことから、ガン医療や再生医療等の治療目的でヒトに使うことができないし、このようなトランスフェクション試薬を用いて導入改変した植物を使った食品をヒトが摂取するには安全性を確認する必要があるという問題があった。

ウイルスを用いる方法は、ウイルスに遺伝子を持たせ、細胞に感染させることで細胞内に導入する方法である。すべての細胞種に応用できず、ウイルスが感染できる細胞だけに使用が限定されるという問題や、ウイルスの一部が細胞に残るので、この方法で改変した細胞を医療又は食品に用いることができないという問題があった。

エレクトロポレーション法は、細胞に一過的に電流を流すことで細胞膜に細孔を形成し、細胞膜に接触させた液体中の遺伝子やタンパク質を細胞内に導入する方法である。操作は比較的簡単であるが、専用の装置が必要であること、細胞の生存率が10~50%と低いこと、多量の細胞と多量の外来物質が必要となること、さらに導入効率が1×10-4%以下と低いこと等の問題があった。

パーティクルガン法は主に植物細胞に用いられており、金属粒子に遺伝子などを付着させ、専用の銃によって高速で細胞を通過させる間に導入する方法である。導入効率が1×10-7%以下程度と低く、また生存率も20%以下と低いという問題があった。

ソノポレーション法は超音波で細胞膜に穴をあけ、外液にある遺伝子などを穴が閉じるまでの間に導入する方法である。導入効率が1×10-7%以下程度と低く、また生存率も20%以下と低いという問題があった。

リポソーム融合法は、脂質からなるリポソーム(小胞)内部に遺伝子やタンパク質を入れ、細胞とリポソームを膜融合させることで、リポソーム内部の遺伝子やタンパク質を細胞に導入する方法である。汎用性及び簡便性が高いが、リポソームの調製が難しく、準備に時間がかかるという問題があった。

マイクロマニピュレーターを用いる方法は、マイクロマニピュレーターを用いて細胞に直接微小注射して外来物質を導入する方法である。ねらった1細胞への古典的な物理的導入方法であり卵細胞のような比較的サイズの大きな細胞で利用されている。しかしながら、高度な操作技術が要求されると共に導入に時間がかるという問題や、導入効率及び生存率はその導入作業を行う人の技術次第という問題や、多数の細胞(例えば10個の細胞)への導入は極めて時間と労力がかかるという問題があった。

また、細胞へ遺伝子やタンパク質を導入する方法として、レーザー光照射により細胞膜に孔を形成する方法も用いられている。

例えば、細胞あるいは生組織に光ファイバーを通してレーザー光を照射し、照射された細胞の、細胞壁及び/又は細胞膜あるいは細胞全体を、切断、除去又は開孔し、該照射部位を通して前記細胞及び/又は生組織内へ外来物質を導入する方法(特許文献1参照)や、生細胞の細胞表面の一部に外来物質を担持した小粒子を置き、該細胞表面の一部にレーザー光を照射し加工することにより細胞壁及び/又は細胞膜に穿孔を設けると同時に外来物質を前記生細胞内へ導入する方法(特許文献2参照)が開示されているが、細胞壁及び/又は細胞膜に穿孔が生じる程の強いレーザーを細胞に直接照射するために、レーザー光を照射した細胞における損傷が大きくなるおそれがあった。さらに、細胞は立体的で複雑な3次元構造を有し、しかも常に刻々と形態を変化させており、細胞膜の一定の場所を狙ってレーザー光を照射することは難しいため、特定のシングル細胞をねらって物質を導入することが難しいという問題があった。

また、細胞を、導入目的物質の存在する液中、ゲル中若しくはゲル表面に配置し、前記液若しくはゲル又は前記細胞にパルスレーザー光を集光させて照射し、それにより生じた衝撃波により前記細胞の細胞膜の構造を一時的に変化させ、前記物質を細胞内に導入する方法(特許文献3参照)が開示されている。しかしながら、微粒子又は微粒子の近くを狙ってレーザー光を照射することは高度な技術を要するほか、導入効率が低く、さらに大型で高価なフェムト秒レーザーを用いる必要があるという問題があった。

さらに、生体組織において、薬剤を導入する細胞の近傍に該薬剤を定位させ、該細胞の近傍に存在する光吸収体に吸収される波長のレーザー光を照射して、ヒト以外の生物の細胞に薬剤を導入することを特徴とする薬剤導入方法(特許文献4参照)が開示されている。しかしながら、生体組織に直接レーザー光を照射する方法であり、シリンジにより導入する薬剤をレーザー光照射前に生体組織へ注入する必要があるという問題があった。

このほか、上面に集光剤からなる薄膜がコーティングされたカバースリップの前記薄膜上に細胞を静置し、導入する外来物質を含有する液体を前記細胞に接触させ、前記細胞に近接した薄膜に対してレーザー光を照射して細胞膜に細孔を形成し、前記細孔から前記外来物質を前記細胞内へ導入する方法(特許文献5、非特許文献1参照)が開示されている。しかしながら、例えば集光剤としてカーボンを用いた場合には、透過光のおよそ10%はカーボンが吸収してしまい、蛍光観察するにあたって蛍光のロスが生じるという問題があった。

また、a)一つ以上の細胞を固体表面から有効な距離内の実質的に静止した位置に維持し、及びb)前記固体表面に、上記一つ以上の特定の3次元的な位置は前もって認識することなく、該一つ以上の細胞の膜の透過化を誘導するに十分な電磁放射線を指向させ、ここで前記一つ以上の細胞を前記電磁放射線の経路に一致させることを備える一つ以上の細胞を一時的に透過性にする方法(特許文献6参照)が開示されている。しかしながら、細胞膜だけでなく細胞自体に損傷を与えるという問題や、一つの細胞だけを狙って外来物質を導入できないという問題があった。

ところで、近年は共鳴プラズモン効果を利用したバイオ系解析技術が進められている。例えば、試料中の被検物質を標識物質により標識するとともに捕捉物質により固定化して検出するイムノクロマト分析法において、2種の標識試薬を共鳴プラズモン効果によって発色を増感する方法(特許文献6参照)や、基板と、前記基板の表面上に互いに独立して多数の金属微粒子が分散配置された増強電磁場形成層と、前記基板及び前記増強電磁場形成層の上層に形成された保護層とを有する光増強素子を構成するセンサチップを備えたセンサ(特許文献7参照)が開示されている。

産業上の利用分野

本発明は、レーザー光照射によって細胞膜に細孔を形成することにより、細胞内へ外来物質を導入する方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
細胞内への外来物質の導入方法であって、上面に金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属の薄膜がコーティングされたカバースリップの前記薄膜上に細胞を静置し、導入する外来物質を含有する液体を前記細胞に接触させ、前記細胞に近接した薄膜に対してレーザー光を照射して前記薄膜にレーザー光を吸収させることにより前記細胞膜に細孔を形成し、前記細孔から前記外来物質を前記細胞内へ導入することを特徴とする細胞内への外来物質の導入方法。

【請求項2】
カバースリップの下面から細胞に近接した薄膜に対してレーザー光を照射することを特徴とする請求項1記載の細胞内への外来物質の導入方法。

【請求項3】
薄膜に対して対物レンズを通してレーザー光を照射することを特徴とする請求項1又は2記載の細胞内への外来物質の導入方法。

【請求項4】
レーザー光のスポット径が0.2μm~2μmであることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の細胞内への外来物質の導入方法。

【請求項5】
上面に金又は白金の薄膜がコーティングされたカバースリップを用いることを特徴とする請求項1~4のいずれか記載の細胞内への外来物質の導入方法。

【請求項6】
薄膜をスパッタ法により形成することを特徴とする請求項1~5のいずれか記載の細胞内への外来物質の導入方法。

【請求項7】
外来物質がDNA、RNA、タンパク質、ポリペプチド、アミノ酸、糖類、脂質、薬剤、蛍光色素のいずれか1以上の物質であることを特徴とする請求項1~6のいずれか記載の細胞内への外来物質の導入方法。

【請求項8】
請求項1~7のいずれか記載の細胞内への外来物質の導入方法によって得られた形質転換細胞。

【請求項9】
請求項1~7のいずれか記載の細胞内への外来物質の導入方法に用いるための、上面に金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属からなる薄膜がコーティングされたカバースリップ。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2018555090thum.jpg
出願権利状態 公開


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