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イオン交換膜およびその製造方法 UPDATE

国内特許コード P200016653
整理番号 H21-023D
掲載日 2020年2月28日
出願番号 特願2011-509294
登録番号 特許第5531267号
出願日 平成22年4月13日(2010.4.13)
登録日 平成26年5月9日(2014.5.9)
国際出願番号 JP2010056566
国際公開番号 WO2010119858
国際出願日 平成22年4月13日(2010.4.13)
国際公開日 平成22年10月21日(2010.10.21)
優先権データ
  • 特願2009-097076 (2009.4.13) JP
  • 特願2009-097077 (2009.4.13) JP
発明者
  • 比嘉 充
  • 直原 敦
  • 小林 謙一
  • 藤原 直樹
出願人
  • 国立大学法人山口大学
発明の名称 イオン交換膜およびその製造方法 UPDATE
発明の概要 カチオン性重合体および/またはアニオン性重合体からなるイオン交換層と支持層とを有するイオン交換膜であって、該イオン交換層が印刷によって支持層上に形成されていることを特徴とするイオン交換膜とする。このようなイオン交換膜は耐有機汚染性に優れ、かつ膜抵抗が小さく、長期間にわたって効率よく、安定に電気透析を行うことができる。また、イオン交換層を、前記カチオン性重合体のドメインと前記アニオン性重合体のドメインとから構成されるモザイク荷電層とすることにより、電解質選択透過性および機械的強度に優れたモザイク荷電膜を得ることができる。
従来技術、競合技術の概要

イオン交換膜は海水の濃縮、飲料水用の地下鹹水の脱塩や硝酸性窒素の除去、食品製造工程における塩分除去や医薬品の有効成分の濃縮など、現在、多種多様な用途に、電気透析法、拡散透析法などで使用されている。これらに使用される有用なイオン交換膜は、主にスチレン-ジビニルベンゼン系の均質イオン交換膜であり、一価と二価のイオン選択、特定イオンの選択性アップ、低抵抗化など種々の技術が開発され、工業上有用な分離ができるまでに至っている。

一般に、上記の食品、医薬品、農薬などの分野における有機物の合成工程では、塩類などを副生する場合が多い。かかる有機物に含まれる塩類を分離するために、イオン交換膜電気透析法によって被処理液を脱塩する場合、被処理液中の有機汚染物質、特に荷電を有する巨大分子(以下、巨大有機イオンという。)がイオン交換膜に付着して膜の性能を低下させる、いわゆる、膜の有機汚染という問題が生じる。

従来、有機汚染を抑制するイオン交換膜として、膜内への巨大有機イオンの侵入を膜表層部で阻止するようにしたイオン交換膜と、巨大有機イオンが容易に膜透過するようにしたイオン交換膜が提案されている。巨大有機イオンの膜透過を容易にする方法は、膜構造をルーズにすることによって容易に達成される。

上記、巨大有機イオンの膜内への侵入を防止するようにしたイオン交換膜は、膜表面に中性、両性あるいはイオン性基とは反対荷電の薄層を形成したものである。このイオン交換膜は、膜構造が緻密なもの程、また、巨大有機イオンの分子量が大きい程、その効果は顕著である。上記イオン交換膜の代表的なものとして、陰イオン交換性基を有する樹脂膜の表層部に反対荷電のスルホン酸基を導入し有機陰イオンの膜内への侵入を抑制した陰イオン交換膜(特許文献1)等がある。

特許文献1には、イオン性基の導入に適した官能基を有する膜状高分子体をスルホン化して、該官能基の一部にスルホン酸基を導入し、ついで残余の官能基に陰イオン交換性基を導入して該膜状高分子体を陰イオン交換膜となし、この際全イオン性基に対するスルホン酸基の当量数が0.05~20%であり、かつ得られる陰イオン交換膜の直流電流抵抗対交流電気抵抗の比の値が抵抗比限界値以下となるように、スルホン化の反応条件を選ぶことを特徴とする陰イオン交換膜の製造方法が記載されている。この方法により得られた陰イオン交換膜は、有機汚染されにくく、しかも良好な電流効率と低い電気抵抗を維持できるとされている。また、簡単な手段で有機物に対する耐汚染性の陰イオン交換膜を得ることができるとされている。しかしながら、樹脂膜の表層部に設ける反対荷電層によりイオン交換膜の電気抵抗(膜抵抗)が著しく増大するという欠点を有している。

特許文献2には、イオン性基を有する樹脂からなるイオン交換膜の表層部に当該イオン性基と同種の電荷のイオン性基を有する高分子鎖が結合していることを特徴とするイオン交換膜が記載されている。このようなイオン交換膜とすることによって、膜抵抗の上昇を起こすことなく、優れた耐有機汚染性を付与することができ、また、巨大有機物を含有する系の電気透析においても優れた性能を長時間持続することができるとされている。しかしながら、より高い耐有機汚染性と、より小さい膜抵抗を有するイオン交換膜が望まれている。

特許文献3には、ポリアルキレングリコール鎖を有するポリエーテル化合物が膜表面および/または膜内部に固定化されてなることを特徴とするイオン交換膜が記載されている。イオン交換膜の表面や内部にポリエーテル化合物が存在することにより、巨大有機イオン等が直接イオン性基と接しにくくなるため、巨大有機イオン等のイオン交換膜への吸着が抑制され、その結果、耐有機汚染性が向上すると考えられている。また、ポリエーテル化合物は、アルキレングリコール鎖に由来する親水性から、イオン交換膜の電気抵抗の上昇を極力抑えることができるとされている。しかしながら、より高い耐有機汚染性と、より小さい膜抵抗を有するイオン交換膜が望まれている。

特許文献4には、微多孔膜の空隙内にイオン交換樹脂が充填されてなり、該微多孔膜の少なくとも片面に存在する微細孔において、上記イオン交換樹脂が微多孔膜表面より陥没した位置で露出したことを特徴とするイオン交換膜が記載されている。また、特許文献5には、微細な細孔が貫通している微多孔性膜の該細孔内にイオン交換樹脂が充填されて成るイオン交換膜であって、膜表面において、微細孔の細孔径が5μm以下であり、かつ、微細孔の占める面積が全面積の3~60%であるとともに、15~120μmの厚みを有していることを特徴とする電気透析用イオン交換膜が記載されている。これらのイオン交換膜とすることにより、膜抵抗やイオン選択性などの基礎特性を低下させることなく、優れた耐有機汚染性を発揮することができるとされている。しかしながら、これらのような膜の製造は、高度な技術かつ煩雑な製造工程が必要であるという問題を有している。

また、モザイク荷電膜は、カチオン交換ドメインとアニオン交換ドメインが交互にかつ並列に配列し、各ドメインが膜の両面まで貫通したイオン交換膜である。この独特な荷電構造は、外部からの電流を必要とすることなく対象溶液中の低分子量イオンの透過を促進することができる。正荷電領域と負荷電領域がモザイク状に並べられると、それぞれの領域の電位の方向が互いに逆であるため、膜の両側の塩溶液部分が抵抗となる電気回路ができる。その回路に流れる電流のようにカチオンとアニオンがそれぞれ負荷電領域、正荷電領域を通って輸送されることで循環電流が生じ、塩の輸送が促進される。このことはモザイク荷電膜が、外部からの電流が必要な、一種類の固定電荷を有するイオン交換膜と異なり、イオン輸送を引き起こす機構を膜自体に内在させていることを意味する。

モザイク荷電膜として種々の手法により作製したものが報告されている。特許文献6には、ブロック共重合体のミクロ相分離現象を利用して作製したモザイク荷電膜を用いる有機化合物の脱塩方法が記載されている。しかしながら、ブロック共重合体のミクロ相分離現象を利用してモザイク荷電膜を作製する方法は、ブロック共重合体の特定部位を変性させるなど非常に煩雑な操作かつ高度な技術が必要であり、しかも高コストになることから、モザイク荷電膜を容易に大面積化し、かつ安価に製造することは困難であるという問題がある。

特許文献7には、膜形成ポリマー、該膜形成ポリマーを溶解し得る溶媒、陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂を混合し、ポリマー溶液に陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂を分散させて均一なポリマー分散液を調製する工程;および前記ポリマー分散液を基材上に塗布および延伸し、乾燥して凝固させた後、得られた膜から溶媒を除去し、洗浄する工程を行うことを特徴とする、モザイク荷電膜の製造方法が記載されている。この方法により得られたモザイク荷電膜は、圧透析実験において圧力上昇とともに塩透過量も増加した。しかし、このモザイク荷電膜では膜マトリックスとイオン交換樹脂が化学的に結合されていないため、その界面において水や中性溶質の漏れが生じるため、高い塩選択透過性を達成することは困難である。

特許文献8には、カチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーのいずれか一方のイオン性ポリマーが形成する架橋連続相中に、連続相形成ポリマーと少なくとも反対イオン性のポリマーが平均粒子径0.01~10μmの架橋粒子として分散してなるカチオン性ポリマードメインとアニオン性ポリマードメインからなるモザイク荷電膜を製造する方法において、前記膜の連続相を形成するいずれか一方のイオン性ポリマーの溶液に少なくとも連続相形成ポリマーと反対イオン性のポリマーの球状微粒子を分散させた分散液を用いて膜を形成し、該膜中の少なくとも連続相を架橋させ、次いで水または水溶液浸漬処理することを特徴とするモザイク荷電膜の製造方法が記載されている。この方法で製造される膜は、ドメインサイズや膜厚の調整が容易であり、また最大の利点は比較的容易に大面積の膜の作製が可能である点である。しかし、この製造方法では、平均粒子径が小さい重合体微粒子を調製しなければならず、高度な技術および長時間を要するといった問題がある。しかも得られるモザイク荷電膜は、含水性の高いミクロゲルで構成されているため、耐圧性が非常に低く、特に構造上、膜マトリックスと陽、陰ミクロゲル界面との接着性が完全ではないため、高い電解質透過性を有するモザイク荷電膜の作製が困難であり、また機械的強度も十分とは言えない。そのため、拡散透析用の膜としては使用可能であるものの、圧透析用の膜としては使用に耐えないか、もしくは耐久性に極めて劣るといった欠点を有する。

非特許文献1には、積層法によって作製されたモザイク荷電膜が記載されている。当該積層法では、ポリビニルアルコールとポリアニオンから陽イオン交換膜を、ポリビニルアルコールとポリカチオンから陰イオン交換膜を作製し、これらをポリビニルアルコールを接着剤として交互に貼り合わせることにより積層荷電ブロックを作製し、得られたブロックを積層面と垂直にラボカッターで切断した後、架橋処理を行うことによって、約150μmの膜厚を有する積層モザイク荷電膜を作製している。このようにして得られた積層モザイク荷電膜のKClの塩流束JKClは3.0×10-9mol・cm-2・s-1、電解質選択透過性αは2300と非常に高い塩選択透過性を示すことが記載されている。引張強度は荷電層と平行な方向で5.7MPaであったが、垂直方向で2.7MPaであり、拡散透析用には使用可能であるが、圧透析用に使用するには、より強度を高める必要がある。また、塩の透過流束も小さく、透析性能が不十分である。

非特許文献2には、ポリビニルアルコールを膜マトリックスとするポリマーブレンド法によって作製されたモザイク荷電膜が記載されている。当該ポリマーブレンド法では、ポリビニルアルコールとイタコン酸基を含有するビニル化合物を2mol%共重合組成として含有する変性PVAポリアニオンの水溶液に、イタコン酸基のカルボキシル基からの水素イオンの解離を抑制するために塩酸を加えて酸性にした溶液と、ポリビニルアルコールとポリアリルアミン塩酸塩水溶液とを混合することでポリマーブレンド水溶液を調製した。この溶液をガラス板などにキャストして膜を得た後、化学的架橋を行うことによってモザイク荷電膜を得ている。このようにして得られたモザイク荷電膜のKClの塩流束JKClは1.7×10-8mol・cm-2・s-1であり、電解質選択透過性αは48であり、比較的高い値を示すことが記載されているけれども、より高い電解質選択透過性αが望まれている。また、酸性溶液では塩選択透過性が低下するという問題も有している。

産業上の利用分野

本発明は、イオン交換膜およびその製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
カチオン性重合体および/またはアニオン性重合体からなるイオン交換層と支持層とを有するイオン交換膜であって、
前記カチオン性重合体が、カチオン基を含有するポリビニルアルコール、またはカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であり、
前記アニオン性重合体が、アニオン基を含有するポリビニルアルコール、またはアニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であり、
該イオン交換層が印刷によって支持層上に形成されていることを特徴とするイオン交換膜。

【請求項2】
前記イオン交換層が、前記カチオン性重合体のドメインと前記アニオン性重合体のドメインとから構成されるモザイク荷電層である、請求項1記載のイオン交換膜。

【請求項3】
前記カチオン性重合体のドメインおよび前記アニオン性重合体のドメインに内接する円の直径の平均値で定義される、カチオン性重合体のドメインサイズおよびアニオン性重合体のドメインサイズが、それぞれ300μm以下である、請求項2記載のイオン交換膜。

【請求項4】
前記カチオン性重合体が、カチオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体またはグラフト共重合体である請求項1~3のいずれか記載のイオン交換膜。

【請求項5】
前記アニオン性重合体が、アニオン性単量体を重合してなる重合体成分とポリビニルアルコール成分とを含有する、ブロック共重合体またはグラフト共重合体である請求項1~3のいずれか記載のイオン交換膜。

【請求項6】
前記カチオン性重合体のカチオン性単量体含有量が0.1モル%以上である請求項1~のいずれか記載のイオン交換膜。

【請求項7】
前記アニオン性重合体のアニオン性単量体含有量が0.1モル%以上である請求項1~のいずれか記載のイオン交換膜。

【請求項8】
前記イオン交換層が架橋処理の施されたものである、請求項1~のいずれか記載のイオン交換膜。

【請求項9】
前記支持層が多孔質である請求項1~のいずれか記載のイオン交換膜。

【請求項10】
前記支持層がポリビニルアルコール繊維集合体からなる請求項記載のイオン交換膜。

【請求項11】
前記イオン交換層の厚み(A)と前記支持層の厚み(B)の比(A/B)が、0.2以下である請求項1~10のいずれか記載のイオン交換膜。

【請求項12】
カチオン性重合体および/またはアニオン性重合体からなるイオン交換層と支持層とを有するイオン交換膜の製造方法であって、
前記カチオン性重合体が、カチオン基を含有するポリビニルアルコール、またはカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であり、
前記アニオン性重合体が、アニオン基を含有するポリビニルアルコール、またはアニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しないポリビニルアルコールとの混合物であり、
該イオン交換層を印刷によって該支持層上に形成することを特徴とするイオン交換膜の製造方法。

【請求項13】
前記イオン交換層が、前記カチオン性重合体のドメインと前記アニオン性重合体のドメインとから構成されるモザイク荷電層である、請求項12記載のイオン交換膜の製造方法。

【請求項14】
前記イオン交換層を、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、転写印刷法またはディスペンサー印刷法によって前記支持層上に形成する請求項12または13記載のイオン交換膜の製造方法。

【請求項15】
前記イオン交換層を印刷によって前記支持層上に形成した後に架橋処理を施す請求項12~14のいずれか記載のイオン交換膜の製造方法。

【請求項16】
前記イオン交換層を印刷によって前記支持層上に形成した後に熱処理を施す請求項12~15のいずれか記載のイオン交換膜の製造方法。

【請求項17】
前記イオン交換層を印刷によって前記支持層上に形成した後に熱プレス処理を施す請求項12~16のいずれか記載のイオン交換膜の製造方法。
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 登録
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