スクリーニング用ベクター
国内特許コード | P200016659 |
---|---|
整理番号 | H30-017 |
掲載日 | 2020年3月2日 |
出願番号 | 特願2018-187129 |
公開番号 | 特開2020-018287 |
出願日 | 平成30年10月2日(2018.10.2) |
公開日 | 令和2年2月6日(2020.2.6) |
優先権データ |
|
発明者 |
|
出願人 |
|
発明の名称 | スクリーニング用ベクター |
発明の概要 |
【課題】IPTG等の発現誘導剤を必要とせず、かつ蛍光を発した株を選択(ポジティブセレクション)することでインサートDNAが導入されたベクターを含有する株をスクリーニング可能なベクターの提供。 【解決手段】特定の塩基配列からなるミオシン調節軽鎖(myosin regulatory light chain:mlcR)をコードするポリヌクレオチドの全長又は部分配列であって、前記塩基配列の少なくとも474~483番目の塩基配列を含むポリヌクレオチドと、リボソーム結合サイトをコードするポリヌクレオチドと、発色団を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドとを順次備えたベクター。 【選択図】なし |
従来技術、競合技術の概要 |
遺伝子クローニングは、遺伝子工学実験の基礎技術の一つである。生命科学に関する基礎研究やバイオテクノロジーの応用分野等の様々な場面で日常的に利用されている。制限酵素が発見されて以降、遺伝子クローニングは汎用性の高い手法として浸透し、さらに近年では、DNA配列に依存しないシームレスクローニング(In-Fusion法等)の発達により、自由なDNA配列の改変が可能になっている。その一方で、クローニングが成功したかどうかを判別するスクリーニング方法は、現在でも限定的である。 現在最も広く知られるスクリーニング方法は、「ブルー・ホワイトスクリーニング」である。β-ガラクトシダーゼ(β-galactosidase:β-gal)遺伝子の産物が無色の試薬である5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(X-galactopyranoside:X-gal)を加水分解し、青い色素を生成する性質に基づく方法である。簡単に説明すると、まず、β-gal遺伝子の内部にインサートDNA配列(目的DNA配列)をライゲーションしたプラスミドベクターを作製する。そのプラスミドベクターを大腸菌(Escherichia coli)に形質転換し(Transformation)、X-galを含む寒天プレートに播種し一晩培養する。その後、形成された青色のコロニーはβ-gal遺伝子がそのままの状態(インサートDNAが入っていない、すなわちハズレ)を示し、白色のコロニーはβ-gal遺伝子が破壊された状態(インサートDNAが入っている、すなわちアタリ)を示すため、青色・白色で目的のコロニーをスクリーニングすることができる。 しかしこの方法には、以下のような問題点がある。まず、形質転換体が白と青の中間色を示す場合があることや、インサートDNAが短い時にインサートDNAを有するコロニーとインサートDNAを有さないコロニーとの区別が難しいこと等により識別が難しく、信頼性がそもそも高いとはいえない。また、色素原基質としてX-galを培地に添加することに加え、β-gal遺伝子の発現を高める為にイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)も培地に添加する。これらの試薬は、熱や光に弱く不活化しやすいため、使用する直前に個別の寒天プレートに逐一塗り広げる等する必要があり、作業が非常に煩雑である。さらに、プラスミドベクターの宿主株として、野生型lacZの欠損に加えてLacZのωフラグメントのみをコードしているlacZΔM15遺伝子を持つ変異株を用いなければならないという制限もあった。 上記「ブルー・ホワイトスクリーニング」に代わる技術も開発されている。例えば、プロモーター/オペレーター領域とGFP遺伝子の間にマルチクローニング部位を設けたベクター(非特許文献1参照)が開示されている。かかるベクターを用いれば、コロニーの緑色蛍光によってインサートの挿入の有無を判別することができる。さらに、GFP遺伝子の上流及び下流にマルチクローニング部位を設けたベクター(非特許文献2参照)や、GFPのオープンリーディングフレームの上流にストップコドンを設けたベクター(特許文献1、非特許文献3参照)が開示されている。 また、「ブルー・ホワイトスクリーニング」方法のβ-gal遺伝子の代わりにGFP遺伝子を用いて、目的DNA配列挿入をGFP蛍光の有無によって確認する方法(特許文献2参照)が開示されている。この方法では、インサートDNAが導入された場合には発現するGFPの構造が変化することで緑色蛍光性が損なわれることを利用して、緑色蛍光を発しない株をインサートDNAが導入された株として選択するというものであった。この方法は、ブルー・ホワイトスクリーニングと比較すると偽陽性が少ない。 |
産業上の利用分野 |
本発明は形質転換体のスクリーニングに用いることが可能なベクターや、かかるベクターを用いてインサートDNAを含むベクターが導入された形質転換体をスクリーニングする方法や、インサートDNAを含むベクターが導入された形質転換体をスクリーニングするためのキットに関する。 |
特許請求の範囲 |
【請求項1】 以下の(1)又は(2)記載のポリヌクレオチドと、リボソーム結合サイトをコードするポリヌクレオチドと、発色団を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドとを順次備えたベクター。 (1)配列番号1に示すミオシン調節軽鎖(myosin regulatory light chain:mlcR)をコードするポリヌクレオチドの全長又は部分配列であって、前記配列番号1に示す塩基配列の少なくとも474~483番目の塩基配列を含むポリヌクレオチド; (2)上記(1)記載のポリヌクレオチドと少なくとも90%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチド; 【請求項2】 発色団を有するタンパク質が、蛍光タンパク質であることを特徴とする請求項1記載のベクター。 【請求項3】 リボソーム結合サイトをコードするポリヌクレオチドと、発色団を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドの間に4~20塩基のスペーサー配列を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のベクター。 【請求項4】 配列番号1に示す塩基配列の少なくとも474~483番目の塩基配列が、配列番号2に示す塩基配列であることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載のベクター。 【請求項5】 以下の工程(a)~(c)を備えた、インサートDNAを含むベクターが導入された形質転換体をスクリーニングする方法。 (a)請求項1~4のいずれか記載のベクターにインサートDNAをライゲーションして、インサートDNAを含むベクターを作製する工程; (b)工程(a)で作製したインサートDNAを含むベクターを宿主細胞に導入する工程; (c)工程(b)でベクターを導入した宿主細胞における発色の有無により、インサートDNAを含むベクターが導入された形質転換体か否かを判断する工程; 【請求項6】 宿主細胞が大腸菌であることを特徴とする請求項5記載の方法。 【請求項7】 インサートDNAを含むベクターが導入された形質転換体をスクリーニングするためのキットであって、請求項1~4のいずれか記載のベクターと、請求項5又は6に記載の方法を実施するための説明書を含むキット。 |
国際特許分類(IPC) |
|
Fターム |
|
出願権利状態 | 公開 |
英語項目の表示
発明の名称 | SCREENING VECTORS |
---|---|
発明の概要 |
PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a vector which allows selection of bacterial strains harboring the vector to which an insert DNA has been inserted by selecting fluorescence-emitting strains (positive selection) without using any expression inducer such as IPTG. SOLUTION: Disclosed herein is a vector comprising: a full length polynucleotide encoding myosin regulatory light chain (mlcR) of a specific base sequence or partial sequence thereof comprising at least the base sequence ranging from the 474th base to the 483rd base of the specific base sequence; a polynucleotide encoding a ribosome binding site; and a polynucleotide encoding a protein having a chromophore in this order. |
『 スクリーニング用ベクター』に関するお問合せ
- 有限会社 山口ティー・エル・オー
- URL: http://www.tlo.sangaku.yamaguchi-u.ac.jp/
-
E-mail:
- Address: 〒755-8611 山口県宇部市常盤台2-16-1 山口大学大学研究推進機構内
- TEL: 0836-22-9768
- FAX: 0836-22-9771