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セルロース用高分子分散剤の製造方法、セルロース用高分子分散剤、高分子分散剤含有の水系分散処理剤、易分散性セルロース組成物、セルロース分散樹脂組成物、セルロース分散用分散剤含有の樹脂組成物、及び、水系分散処理剤含有の樹脂組成物 外国出願あり

国内特許コード P200016733
整理番号 4595
掲載日 2020年4月6日
出願番号 特願2015-525663
登録番号 特許第5904520号
出願日 平成27年3月30日(2015.3.30)
登録日 平成28年3月25日(2016.3.25)
国際出願番号 JP2015060028
国際公開番号 WO2015152188
国際出願日 平成27年3月30日(2015.3.30)
国際公開日 平成27年10月8日(2015.10.8)
優先権データ
  • 特願2014-072482 (2014.3.31) JP
発明者
  • 今井 貴宏
  • 青柳 太洋
  • 嶋中 博之
  • 辻井 敬亘
  • 榊原 圭太
  • 後藤 淳
出願人
  • 大日精化工業株式会社
  • 国立大学法人京都大学
発明の名称 セルロース用高分子分散剤の製造方法、セルロース用高分子分散剤、高分子分散剤含有の水系分散処理剤、易分散性セルロース組成物、セルロース分散樹脂組成物、セルロース分散用分散剤含有の樹脂組成物、及び、水系分散処理剤含有の樹脂組成物 外国出願あり
発明の概要 親水性物質であるセルロースに適用することができる高性能の高分子分散剤の提供、該セルロース用高分子分散剤をセルロースに適用し、熱可塑性樹脂中に分散させた場合に、より簡便に、多量の有機溶剤を使用することがない、環境にも配慮した方法で安定したセルロースの分散を実現したセルロース分散樹脂組成物を得る実用化技術を達成することを目的とし、該目的を、高分子分散剤を、重金属、ニトロキサイド化合物又は硫黄系化合物のいずれについても用いない、有機ヨウ素化合物を開始化合物とし、リン化合物、窒素化合物、酸素化合物又は炭素化合物を触媒とする、可逆連鎖移動触媒重合(RTCP)法により合成された、樹脂親和性セグメントAと、セルロース吸着性セグメントBとを有するブロック共重合体構造を有する高分子化合物であるセルロース用高分子分散剤としたことで達成する。
従来技術、競合技術の概要

セルロース繊維は、全ての植物の基本骨格物質であり、地球上に一兆トンを超える蓄積があり、植樹によって再生可能の資源であることからも、その有効活用が望まれる。セルロース繊維は、鋼鉄の1/5の軽さであるにも関わらず、鋼鉄の5倍以上の強度、ガラスの1/50の低線熱膨張係数を有する繊維である。そこで、セルロース繊維を、樹脂等のマトリックス中にフィラーとして含有させ、機械的強度を付与させる技術が提案されている(特許文献1)。また、セルロース繊維が有する機械的強度を更に向上させる目的で、セルロース繊維を解繊して、セルロースナノファイバー(CNF、ミクロフィブリル化植物繊維)が添加剤中に分散した状態で存在するようにした繊維状樹脂補強剤についての提案がある(特許文献2)。また、CNFと同様にセルロース繊維を解繊処理したものとして、セルロースナノクリスタル(CNC)が知られている。CNFは、セルロース繊維を機械的解繊等の処理を施すことで得られる繊維であり、繊維幅4~100nm程度、繊維長5μm程度以上の繊維である。CNCは、セルロース繊維を酸加水分解等の化学的処理を施すことで得られる結晶であり、結晶幅10~50nm程度、結晶長500nm程度の結晶である。これらCNF及びCNCは、総称してナノセルロースと称される。ナノセルロースは、高比表面積(250~300m2/g)であり、鋼鉄と比較して軽量であり且つ高強度である。

ナノセルロースは、ガラスと比較して熱変形が小さい。高強度且つ低熱膨張であるナノセルロースは、持続型資源材料として有用な素材であり、例えば、ナノセルロースと樹脂等の高分子材料と組み合わせて高強度・低熱膨張とする複合材料、エアロゲル材料、CNCの自己組織化によるキラルネマチック液晶相を利用した光学異方性材料、ナノセルロースに機能性官能基を導入して高機能性材料の開発及び創製がなされている。一方で、ナノセルロースは、水酸基を豊富に有するので、親水性で極性が強く、疎水性で極性の無い汎用性樹脂との相溶性に劣る側面がある。このため、ナノセルロースを用いた材料開発では、化学処理により、ナノセルロースの表面改質又はナノセルロースへの官能基導入を行い、ナノセルロースの汎用性樹脂との相溶性を向上させることが検討されている。つまり、ナノセルロースの汎用性樹脂に対する分散性を向上させることが検討されている。

また、セルロース繊維をフィラーとして含む汎用性樹脂組成物の作製において、分散剤を添加して、セルロース繊維と汎用性樹脂との分散性、相溶性を向上させることが検討されている。非特許文献1では、セルロースナノクリスタル(セルロースナノウィスカー)に界面活性剤を吸着させて、セルロースナノクリスタルの有機溶媒分散性を向上させている。非特許文献2では、界面活性剤を吸着したセルロースナノクリスタルを補強材としたアイソタクチックポリプロピレン(iPP)複合材料を作製し、iPP単独に比べて約1.4倍に引張強度を向上させている。前記した特許文献2では、熱可塑性樹脂の補強材としてセルロースを利用する場合に、セルロースの凝集塊の発生を抑え、樹脂にセルロースを均一に分散する目的で、セルロースファイバーと親水性であり且つ特定のHLB値(親水親油バランス)を有する添加剤(低分子系界面活性剤)を用い、セルロースファイバーが添加剤中に分散した状態にさせている。

前記した従来例ではいずれも、分散剤として低分子化合物を用いてナノセルロースの分散性向上を試みている。これに対し、本発明者らは、顔料等の微細な疎水性物質を樹脂や、水系媒体中に分散させるために開発されてきた高分子分散剤を、簡便で、多量の有機溶剤を使用することがない環境にも配慮した方法で、親水性物質であるセルロースに適用することができれば、実用化に向けて非常に有用であるとの認識を持つに至った。しかしながら、上記したように、従来の高分子分散剤は、微細な疎水性物質である顔料等を樹脂中等に分散することを目的としたものであるのに対し、セルロースは、親水性の物質であって、しかも、軽くて凝集し易く、特に汎用樹脂中に分散しにくいものであり、顔料等を分散させる場合と同様にして従来の高分子分散剤を適用することはできない。すなわち、上記した目的を達成するためには、上記したような特性を有するセルロースに対し、所望の機能性を発揮し得る構造の高分子分散剤の開発が必要になる。

ここで、セルロースの汎用樹脂への分散に、高分子分散剤を用いることができれば、以下に挙げるような技術的な利点があると考えられる。まず、モノマー設計によって多種多様な構造の高分子設計が可能であるので、目的、用途に応じた分子設計が可能になる点が挙げられる。すなわち、高分子分散剤として無数の構造の設計が可能なため、モノマー設計によって、分散させる樹脂の種類等に適合させた、より高性能の分散剤の合成が期待できる。高分子分散剤としては、オレフィン系ポリマー、アクリル系ポリマー、エステル系ポリマー、ウレタン系ポリマーなど、様々な種類のものが使用できると考えられる。その中で、特にアクリル系ポリマーは、穏和な条件で重合が可能で比較的容易にポリマーを得ることができ、また、多種多様なアクリル系モノマーが存在するために、配合上無数の組成を選択し、目的、用途に応じた分子設計がし易いため、より有用であることが予想される。

そこで、本発明者らは、アクリル系ポリマーをセルロース用高分子分散剤とすることについての検討を行うこととした。更に、その場合に、水酸基を豊富に有し、疎水性で極性の無い汎用性樹脂との相溶性に劣るセルロースの分散に有用になる、特定構造を有するアクリル系ポリマーを得るためには、精密な合成方法が必要になると予想される。そこで、特定構造を有するアクリル系ポリマーを製造できることが知られているリビングラジカル重合による合成方法を利用することが好適であると考えた。すなわち、リビングラジカル重合法では、末端ラジカルが安定化されることにより、ラジカル重合の副反応であるカップリングや不均化を防止し、分子量を制御したり、分子量分布を狭くしたりすることができる。また、末端ラジカルが安定化できるために、あるモノマーを重合した後に、続けて別のモノマーを添加することで、再び重合を進行させることができ、それぞれに異なる構造とすることで、異なる機能性を発現する重合体セグメントを有するブロック共重合体を合成することができる。

これに対し、本発明が目的とするセルロース用高分子分散剤においては、以下の理由から、その構造中に機能性の異なる重合体セグメントを有するブロック共重合体構造のものが有用であると考えられる。ブロック共重合体は、成分の異なる2種類以上のポリマーセグメントが1本のポリマー鎖に含まれた構造であるため、モノマー組成を工夫することで、それぞれの重合体セグメントに異なる機能性を付与できるという利点がある。例えば、異なるモノマー組成(成分)からなるA鎖とB鎖からなるA-B型ブロック共重合体を例にとって説明すれば、ポリマーセグメントA(A鎖)を、汎用性樹脂と親和性の高い成分を有するものとし、一方で、ポリマーセグメントB(B鎖)を、セルロースと吸着する成分を有するものとなるようにA-Bブロック共重合体を設計できれば、該共重合体を分散剤として利用することで、A鎖とB鎖とがそれぞれ効果的に作用して、汎用性樹脂中におけるセルロースの凝集抑制、分散安定化が期待できる。すなわち、樹脂親和性セグメントA及びセルロース吸着性セグメントBを有するA-Bブロック共重合体をセルロース分散樹脂組成物の分散剤として用いた場合、種々の成型体等に利用されている汎用樹脂中へのセルロースの分散性が良好となり、フィラーとして成型体等の機械的強度を十分に高めることが期待できる。

前記したように、このようなブロック共重合体の合成には、リビングラジカル重合法が適している。リビングラジカル重合法としては、具体的には、下記に挙げるような種々の方法が報告されている。例えば、ニトロキシラジカルの解離と結合を利用するニトロキサイド法(Nitroxide mediated polymerization 以下、NMP法と略す)、銅やルテニウム、ニッケル、鉄などの重金属、そして、それと錯体を形成するリガンドを使用して、ハロゲン化合物を開始化合物として重合する原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization、以下ATRP法と略す)、ジチオカルボン酸エステルなどを開始化合物として、付加重合性モノマーとラジカル開始剤を使用して重合する可逆的付加開裂型連鎖移動重合(Reversible addition fragmentation chain transfer polymerization 以下、RAFT法と略す)、有機テルルや有機ビスマス、有機アンチモン、ハロゲン化アンチモン、有機ゲルマニウム、ハロゲン化ゲルマニウム等の重金属化合物を用いる方法(Degenerative transfer 以下、DT法と略す)などが開発され、幅広く研究開発が行われている。

産業上の利用分野

本発明は、優れたフィラーとしての機能が注目されているものの、親水性の物質であることから、樹脂等への分散が難しく、現状では、その利用が促進されていない微細なセルロース繊維の広範な利用の実現を可能にする新たな技術に関し、具体的には、セルロース用高分子分散剤、高分子分散剤含有の水系分散処理剤、易分散性セルロース組成物、セルロース分散樹脂組成物及びセルロース分散用の分散剤含有樹脂組成物に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
高分子化合物を含んでなるセルロースを分散させるためのセルロース用高分子分散剤の製造方法であって、該高分子化合物が、重金属、ニトロキサイド化合物又は硫黄系化合物のいずれについても用いない、リビングラジカル重合法である、有機ヨウ素化合物を開始化合物とし、リン化合物、窒素化合物、酸素化合物又は炭素化合物を触媒とする、可逆連鎖移動触媒重合(RTCP)法により合成された、樹脂親和性セグメントAと、セルロース吸着性セグメントBとを有するブロック共重合体構造を有する高分子化合物であることを特徴とするセルロース用高分子分散剤の製造方法。

【請求項2】
前記セルロースが、セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル、パルプ、リグノセルロース及び木粉からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のセルロース用高分子分散剤の製造方法。

【請求項3】
請求項1に記載の製造方法で合成された高分子化合物を含んでなるセルロースを分散させるためのセルロース用高分子分散剤であって、前記高分子化合物が、下記(1)~(5)の要件をすべて満たす、樹脂親和性セグメントAと、セルロース吸着性セグメントBとを有するブロック共重合体構造を有するA-Bブロック共重合体であることを特徴とするセルロース用高分子分散剤。
(1)前記A-Bブロック共重合体の構成成分の90質量%以上がメタクリレート系モノマーで構成されていること;
(2)前記セルロース吸着性セグメントBは、構成成分の50質量%以上が、水酸基を1個以上有するメタクリレート系モノマー及び/又は尿素基を有するメタクリレート系モノマーで構成されており、且つ、熱可塑性樹脂との相溶性がないこと;
(3)前記樹脂親和性セグメントAのゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるポリスチレン換算の数平均分子量が500~20000であり、且つ、前記A-B共重合体全体に占める該樹脂親和性セグメントAの割合が5~95質量%であること;
(4)前記セルロース吸着性セグメントBのゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるポリスチレン換算の数平均分子量が500~20000であり、且つ、前記A-B共重合体全体に占める該セルロース吸着性セグメントBの割合が5~95質量%であること;
(5)前記A-Bブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるポリスチレン換算の数平均分子量が1000~40000であり、且つ、分子量分布指数(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0~1.6であること。

【請求項4】
前記(2)のセルロース吸着性セグメントBの構成成分の70質量%以上が、水酸基を1個以上有するメタクリレート系モノマー及び/又は尿素基を有するメタクリレート系モノマーで構成されており、
前記(3)の樹脂親和性セグメントAのゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるポリスチレン換算の数平均分子量が1000~8000であり、且つ、前記A-B共重合体全体に占める樹脂親和性セグメントAの割合が30~70質量%であり、
前記(4)のセルロース吸着性セグメントBのゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるポリスチレン換算の数平均分子量が1000~8000であり、且つ、前記A-B共重合体全体に占めるセルロース吸着性セグメントBの割合が30~70質量%であり、
前記(5)のA-B共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるポリスチレン換算の数平均分子量が2000~16000であり、分子量分布指数(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0~1.6である請求項3に記載のセルロース用高分子分散剤。

【請求項5】
前記(2)のセルロース吸着性セグメントBの構成成分の70質量%以上が、水酸基を1個以上有するメタクリレート系モノマー及び/又は尿素基を有するメタクリレート系モノマーで構成されており、更に、構成成分の3~15質量%が、アルカリで中和されたメタクリル酸及び/又はカルボキシ基を有するメタクリレート系モノマー又は第4級アンモニウム塩基を有するメタクリレート系モノマーで構成されている請求項3又は4に記載のセルロース用高分子分散剤。

【請求項6】
セルロースに対する分散性を向上させた高分子分散剤を含有する水系分散処理剤であって、請求項5に記載のセルロース用高分子分散剤が、水系媒体中に分散されてなることを特徴とする高分子分散剤含有の水系分散処理剤。

【請求項7】
セルロースに対する分散性を向上させた高分子分散剤を含有する水系分散処理剤であって、請求項3~5のいずれか1項に記載のセルロース用高分子分散剤と、界面活性剤と、水系媒体とを含んでなることを特徴とする高分子分散剤含有の水系分散処理剤。

【請求項8】
前記界面活性剤が、カチオン性界面活性剤である請求項7に記載の水系分散処理剤。

【請求項9】
請求項3~5のいずれか1項に記載のセルロース用高分子分散剤と、セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル、パルプ、リグノセルロース及び木粉からなる群から選ばれる少なくとも1種のセルロースとを含んでなることを特徴とする易分散性セルロース組成物。

【請求項10】
請求項6又は7に記載の水系分散処理剤と、セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル、パルプ、リグノセルロース及び木粉からなる群から選ばれる少なくとも1種のセルロースとを含んでなることを特徴とする易分散性セルロース組成物。

【請求項11】
請求項9又10に記載の易分散性セルロース組成物と、熱可塑性樹脂とを含んでなることを特徴とするセルロース分散樹脂組成物。

【請求項12】
請求項3~5のいずれか1項に記載のセルロース用高分子分散剤と、熱可塑性樹脂とを含んでなることを特徴とするセルロース分散用分散剤含有の樹脂組成物。

【請求項13】
請求項6又は7に記載の水系分散処理剤と、熱可塑性樹脂とを含んでなることを特徴とする水系分散処理剤含有の樹脂組成物。

【請求項14】
請求項12又は13に記載の樹脂組成物と、セルロースとを含んでなることを特徴とするセルロース分散樹脂組成物。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
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