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解糖系代謝制御物質のスクリーニング方法及び解糖系代謝制御剤 UPDATE 新技術説明会

国内特許コード P200016783
整理番号 5810
掲載日 2020年4月13日
出願番号 特願2017-095320
公開番号 特開2018-194299
出願日 平成29年5月12日(2017.5.12)
公開日 平成30年12月6日(2018.12.6)
発明者
  • 近藤 祥司
  • 三河 拓己
出願人
  • 国立大学法人京都大学
発明の名称 解糖系代謝制御物質のスクリーニング方法及び解糖系代謝制御剤 UPDATE 新技術説明会
発明の概要 【課題】本発明は、癌での解糖系代謝を特異的に制御できるような選択的制御物質や、老化を抑制したい細胞、組織の解糖系代謝を特異的に制御できるような選択的制御物質、すなわち解糖系代謝制御物質を見出すことができる、新規なスクリーニング方法を提供することを目的とする。また、このスクリーニング方法により見出された解糖系代謝制御物質を提供することも目的とする。
【解決手段】本発明は、被検物質が、PGAMとChk1との結合を、阻害又は促進する場合に、上記被検物質が解糖系代謝を制御する物質であると評価する、解糖系代謝制御物質のスクリーニング方法である。また、具体的には、本発明のスクリーニング方法は、被検物質の存在下及び非存在下でPGAMとChk1との結合量を測定し、それぞれの場合における結合量の比から、上記被検物質の解糖系代謝制御活性の有無を判定することを特徴とする。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要

解糖系代謝とは、細胞が取り込んだグルコースを分解することにより、ATPという高エネルギー分子を合成する代謝過程の総称である。解糖系代謝には、その中間産物であるピルビン酸から乳酸を合成する過程と、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化へと進む過程の、二通りの経路が存在する。前者は、酸素呼吸を必要しないので嫌気的解糖系代謝と呼ばれ、後者はミトコンドリア酸素呼吸によりATPを合成するので好気的解糖系代謝と呼ばれる。この解糖系代謝は、ほとんどの通常細胞においてエネルギー代謝の重要な役割を担っており、個体が生きていく上で不可欠である。そのため、解糖系代謝の異常は、ヒトの疾患に密接に関連する。

解糖系代謝が低下すると、神経変性疾患、心機能低下、糖尿病、筋肉萎縮、貧血等の原因となる一方、解糖系代謝が亢進する病態もいくつか知られている。解糖系代謝が亢進する病態としては、例えば癌、虚血(血流低下)、局所炎症等が挙げられるが、特に多くの癌細胞では、解糖系代謝が亢進しており(ワールブルグ効果;非特許文献1参照)、癌の細胞生物学的な特徴の一つとして知られている。実際、現在の臨床現場では、この性質を利用して、FDG-PETが、患者体内の腫瘍の大きさや転移の有無の評価に有用であり、広く普及している。

一方、細胞老化研究では、1997年頃より、若い細胞でも酸化ストレスやDNA障害等の様々なストレスにより老化することが判明し、このような老化は「ストレス老化」の名前で知られるようになった。このストレス老化を誘導するようなストレスを、総称して「ストレス老化シグナル」と呼ぶ場合もある。そして、癌細胞とは、「ストレス老化シグナル」に不応性で、ストレス老化しにくい細胞であると再認識されるようになった。本発明者らは、ストレス老化研究に2001年頃より従事し、解糖系代謝が亢進すると、ストレス老化しにくくなることを報告した(非特許文献2参照)。すなわち、解糖系代謝亢進が、ストレス老化シグナルへの応答性を低下させることにより、細胞癌化を引き起こす原因の一つとなり得る事を見出した。また、本発明者らはその主な理由の一つがミトコンドリア由来の酸化ストレスの減弱であること(非特許文献3参照)、逆に解糖系代謝が低下すると細胞老化が引き起こされることも見出した(非特許文献2参照)。よって、細胞が「老化」から「癌化」へ、又は「癌化」から「老化」へと転換する重要因子が、解糖系代謝の亢進、低下であるという結論が導き出された。

上記のような細胞老化と癌化の接点を担う解糖系代謝酵素として、本発明者らはホスホグリセリン酸ムターゼ(PGAM)を見出した(非特許文献2参照)。解糖系代謝経路は10個の解糖系酵素の順次反応よりなるが、PGAMはその8番目の酵素として、3-Phosphoglycerate(3PG)から2-Phosphoglycerate(2PG)への変換反応を触媒する。本発明者らは細胞にPGAMを強発現させることにより、解糖系亢進と酸化ストレス減弱効果が誘導され細胞は老化しにくくなる一方、PGAMを失活するとストレス老化が誘導されることを見出した(非特許文献2参照)。

従来の解釈では、解糖系代謝経路の律速酵素としては、アロステリックな制御を受けるPFKやGAPDHが知られており、PGAMは律速酵素ではないと考えられていた。そのため、PGAMの解糖系代謝における重要性は未知のままだった。さらに低酸素下、即ちミトコンドリア酸素呼吸のできない環境で解糖系代謝を亢進させる転写因子としてHIF-1が報告されていたが、HIF-1ノックアウト細胞での観察において、低酸素下でもHIF-1の制御を受けない唯一例外の解糖系酵素がPGAMであることが明らかにされている。しかし、このPGAMの上流因子については謎のままだった。最近、本発明者らはPGAMの上流制御機構の解明に取り組み、ストレス老化シグナル活性化により、PGAMのユビキチン化依存性たんぱく分解が促進されることを見出した。PGAMのユビキチン化を担うユビキチンリガーゼ酵素は、発癌遺伝子Mdm2であることも見出した(非特許文献4参照)。よって、PGAMが転写因子HIF-1で制御されない理由は、転写後制御(この場合はユビキチン化)がより重要であることにあるという見解に達した。同時に、PGAMはストレスによりユビキチン化を受けやすい不安定な蛋白であり、PGAMタンパク量の増減が解糖系代謝全体に影響しうる可能性も示唆された。実際、PGAMがユビキチン化を受けにくい変異体を作製すると、解糖系代謝が亢進しやすくなり、発癌しやすいことも明らかとなった(非特許文献4参照)。以上のように、従来は知られていなかった解糖系酵素PGAMの老化・癌化における重要性を、本発明者らは見出してきた。

産業上の利用分野

本発明は、解糖系代謝制御物質のスクリーニング方法及び解糖系代謝制御剤に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
被検物質が、PGAMとChk1との結合を、阻害又は促進する場合に、上記被検物質が解糖系代謝を制御する物質であると評価する、解糖系代謝制御物質のスクリーニング方法。

【請求項2】
被検物質の存在下及び非存在下でPGAMとChk1との結合量を測定し、それぞれの場合における結合量の比から、上記被検物質の解糖系代謝制御活性の有無を判定することを特徴とする、請求項1に記載のスクリーニング方法。

【請求項3】
以下の工程を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のスクリーニング方法;
1)PGAM及びChk1を含む試料に被検物質を加えた場合のPGAMとChk1との結合量を測定する工程、
2)上記被検物質を加えていない場合のPGAMとChk1との結合量を測定する工程及び
3)上記工程1)による測定値と、上記工程2)による測定値とを比較する工程。

【請求項4】
PGAM及びChk1が、互いに結合し得るタグで標識されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。

【請求項5】
上記解糖系代謝制御物質が、抗がん剤として用いられる、請求項1から4のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。

【請求項6】
上記解糖系制御物質が、抗老化用組成物に用いられる、請求項1から4のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。

【請求項7】
PGAMとChk1との結合を阻害又は促進する物質を含む、解糖系代謝制御剤。

【請求項8】
PGAMとChk1との結合を阻害又は促進する物質が、
i)PGAM遺伝子若しくはChk1遺伝子に対するアンチセンス核酸又はsiRNA、ii)PGAM又はChk1に特異的な抗体、及び
iii)ナトリン
からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項7に記載の解糖系代謝制御剤。

【請求項9】
抗がん剤として用いられる、請求項7又は8に記載の解糖系代謝制御剤。

【請求項10】
抗老化用組成物に用いられる、請求項7又は8に記載の解糖系代謝制御剤。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開
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