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リン酸化タンパク質の組織学的検出方法及びキット UPDATE

国内特許コード P200017015
整理番号 (S2018-0918-N0)
掲載日 2020年7月8日
出願番号 特願2019-099443
公開番号 特開2020-038192
出願日 令和元年5月28日(2019.5.28)
公開日 令和2年3月12日(2020.3.12)
優先権データ
  • 特願2018-164623 (2018.9.3) JP
発明者
  • 宮坂 知宏
  • 角田 聡子
  • 角田 伸人
  • 東 優人
出願人
  • 学校法人同志社
発明の名称 リン酸化タンパク質の組織学的検出方法及びキット UPDATE
発明の概要 【課題】リン酸化タンパク質を組織学的に明確に検出できる方法を提供する。
【解決手段】リン酸化タンパク質を含む組織の凍結切片を作成する凍結切片作成工程と、凍結切片をホルマリン等の組織固定液の蒸気で処理して組織を燻蒸固定する燻蒸固定工程と、染色前に、燻蒸固定された組織にイオン性界面活性剤を含浸させる前処理工程と、イオン性界面活性剤が含浸された組織を抗体染色する抗体染色工程と、を有する。更に、凍結切片作成工程の前に、灌流脱血する脱血工程を有することが好ましい。本発明によれば凝集型のリン酸化タウだけでなく非凝集型リン酸化タウをも検出可能である。
【選択図】図5
従来技術、競合技術の概要

アルツハイマー病(Alzheimer’s disease : AD)は脳内の神経細胞の脱落及び機能不全により記憶障害を起こす、認知症の一つである。ADの病理学的特徴として老人斑と神経原線維変化(neurofibrillary tangle : NFT)がある。老人斑はAβというペプチドが神経細胞外に沈着することで形成される。NFTの主要成分はタウである。タウは微小管結合タンパク質ファミリーの一つであり、生理的にリン酸化されることで、微小管重合の安定化や細胞骨格の構造維持等の機能を制御されている。NFTは、このタウが異常にリン酸化された状態で重合し、神経細胞内において封入体を形成したものである(非特許文献1)。このように、タウの蓄積を伴う疾患は総称してタウオパチーと呼ばれており、ADはタウオパチーの代表的な疾患である。ADの発症機序は未だ不明な点が多く、根本的な治療法は確立されていない。従って、有効な治療法の開発のためにもタウオパチー神経変性機構の全容解明が急がれている。

現在タウのリン酸化サイトは40カ所以上確認されており(非特許文献2)、正常から異常タウとして蓄積するまでに脳内において様々なリン酸化状態で存在していると考えられている(非特許文献3)。このようなリン酸化タウは特異抗体を用いることで、ウエスタンブロッティング法、ELISA 法等の生化学的手法により容易に検出できる。しかし、これらの抗体を用いて免疫組織染色等の方法によりリン酸化タウの組織局在を解析する場合、病態脳において凝集・蓄積したタウについては検出できる場合があるものの、正常神経細胞におけるリン酸化タウ又はタウオパチー神経変性の前段階に想定される非凝集異常リン酸化タウについては極めて染色性に乏しい。この結果、例えば AT8 等の抗リン酸化タウ抗体 (Thermo Fisher Scientific Inc.) で病態脳を組織染色すると、NFT のみが選択的に染色される。この原因については不明であり、これまで有効な染色方法は確立されてこなかった。一方、非凝集型リン酸化タウの組織染色を試みた論文報告は複数存在するものの(非特許文献4,5,6)、いずれも広く応用されるには感度が不十分であったり、タウの本来の軸索局在からは説明のつかない染色像であったり十分信頼できる染色がなされているとは言い難い。また、この原因については凝集型リン酸化タウの特殊な構造が想定されているものの不明であり(非特許文献7)、有効な染色法は確立されていない。従って、正常脳におけるリン酸化タウあるいはタウオパチー形成に至るまでの非凝集型リン酸化タウの組織局在は明らかになっていない。

マウス脳において人為的にタウのリン酸化を加速させる方法として麻酔による低体温モデルが知られている(非特許文献5)。このタウのリン酸化は、生化学的手法では容易に検出できる。しかし一般組織学的解析ではこの検出が極めて困難である。本発明では、タウの高リン酸化モデルを用い、生理的なリン酸化タウの組織学的検出法の確立を行った。

GSK3βは、セリンスレオニンタンパク質リン酸化酵素の一つである。その酵素活性はインスリン受容体シグナルなどによる自身のリン酸化によって制御されている。普遍的に組織に発現し、その基質は多岐にわたることから糖代謝や神経細胞の発生、機能など幅広い生体反応にかかわっている。tau はその基質の一つであり、GSK3βはアルツハイマー病における tau の異常化、神経変性に深く関わっていると考えられている。したがって、GSK3βの活性を決定しうるリン酸化の検出は幅広い研究分野で求められている。ERK1/2はEGFなどの成長因子やサイトカイン、酸化ストレス等によって活性化されるMitogen-activated Protein Kinase (MAPK) のサブファミリーである。細胞増殖や分裂、細胞分化にかかわるとされてきたが、神経系においてはシナプス可塑性とは関連性が指摘されている。マウス海馬ではNMDA型グルタミン酸受容体が活性化されるとシナプス可塑性現象が起きるが、このときに神経細胞ではERK1/2が活性化されており、逆にERK1/2の活性を阻害することでNMDA型受容体依存的な長期増強が抑制される。ERK1/2の活性も、上流のリン酸化酵素によるリン酸化によって制御されており、そのリン酸化と ERK の活性様々な生理現象との関係について盛んに研究がなされている。本発明では、リン酸化GSKβやリン酸化ERK1/2の組織学的検出法の確立を行った。

産業上の利用分野

本発明は、リン酸化タンパク質の組織学的検出方法及びキットに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
リン酸化タンパク質を含む組織の凍結切片を作成する凍結切片作成工程と、
前記凍結切片を組織固定液の蒸気で処理して組織を燻蒸固定する燻蒸固定工程と、
染色前に、前記燻蒸固定された組織にイオン性界面活性剤を含浸させる前処理工程と、
前記イオン性界面活性剤が含浸された組織を抗体染色する抗体染色工程と、
を有することを特徴とする、リン酸化タンパク質の組織学的検出方法。

【請求項2】
前記リン酸化タンパク質は、リン酸化タウである請求項1記載のリン酸化タンパク質の組織学的検出方法。

【請求項3】
前記リン酸化タウは非凝集型リン酸化タウである請求項2記載のリン酸化タンパク質の組織学的検出方法。

【請求項4】
前記リン酸化タンパク質は、リン酸化GSK3βである請求項1記載のリン酸化タンパク質の組織学的検出方法。

【請求項5】
前記リン酸化タンパク質は、リン酸化ERK1/2である請求項1記載のリン酸化タンパク質の組織学的検出方法。

【請求項6】
前記凍結切片作成工程の前に、灌流脱血する脱血工程を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のリン酸化タンパク質の組織学的検出方法。

【請求項7】
前記組織固定液はホルマリンであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のリン酸化タンパク質の組織学的検出方法。

【請求項8】
前記イオン性界面活性剤はアニオン界面活性剤であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のリン酸化タンパク質の組織学的検出方法。

【請求項9】
リン酸化タンパク質を含む組織の凍結切片を蒸気で処理して組織を燻蒸固定する組織固定液と、
抗体染色前に前記燻蒸固定された組織に前処理として含浸されるイオン性界面活性剤と、
前記イオン性界面活性剤が含浸された組織を抗体染色する抗体染色剤と、
を有することを特徴とする、リン酸化タンパク質の組織学的検出キット。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2019099443thum.jpg
出願権利状態 公開
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