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細胞培養基材、がん細胞集合体及び該基材を用いたその製造方法、並びに該がん細胞集合体を用いた薬剤のスクリーニング方法

国内特許コード P200017088
整理番号 (S2017-0598-N0)
掲載日 2020年8月4日
出願番号 特願2019-509439
出願日 平成30年4月2日(2018.4.2)
国際出願番号 JP2018014119
国際公開番号 WO2018182044
国際出願日 平成30年4月2日(2018.4.2)
国際公開日 平成30年10月4日(2018.10.4)
優先権データ
  • 特願2017-072512 (2017.3.31) JP
発明者
  • 宮武 由甲子
  • 繁富 香織
  • 岡嶋 孝治
  • 笠原 正典
出願人
  • 国立大学法人北海道大学
発明の名称 細胞培養基材、がん細胞集合体及び該基材を用いたその製造方法、並びに該がん細胞集合体を用いた薬剤のスクリーニング方法
発明の概要 【課題】 本発明は、形態学的極性や組織運動極性といったがん組織としての本来の生物学的特性を有するがん細胞集団を、インビトロで作製することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、基板と生体適合性ポリマー層とを有する細胞培養基材であって、生体適合性ポリマー層で覆われていない所定の形状の所定の表面構造を持つ複数の粗面部分を所定の間隔で基材表面上に有する前記細胞培養基材に関する。本発明によると、所定の構造を有する細胞培養基材上でがん細胞を培養するという、とても簡便な操作により、生体内で観察されるものと同様の形態学的極性及び組織運動極性を有するがん細胞集合体を生きた状態で得ることができ、これにより従来不可能であったインビトロでの微小腫瘍のライブイメージングが可能となる。また、このがん細胞集合体は、生体内に生じるがんの発生、増殖、浸潤、転移、再発の一連の流れを再現していると考えられるため、がん研究におけるリサーチツールとして、又は抗がん剤のスクリーニングのために利用することができる。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要

がんは、未だに完全に克服することのできない疾患の一つである。新薬開発費用の高額化、及び超高齢化に伴うがん患者数の増加は医療費の増大をもたらし、国家財政を圧迫する要因となってきている。このような状況において、効果的かつ安価な次世代のがん治療薬開発は、喫緊の課題とされている。

疾患としてのがんの研究において、細胞レベルでの生物学的特性の解明は進んできたと言える一方、がん細胞が集まって形成されるがん組織レベルの生物学的動態の特性は、観察技術法の不在により、重要であるにもかかわらず注目されず、その結果その大部分が解明されていない。そのため、インビトロにおけるがん組織を対象とした基礎的な分子生理学的検討、特にがん組織としての生物学的動態特性の解明は、次世代のがん治療薬開発において、重要な意義を有するものと期待されている。

がん研究において従来行われてきたがん組織レベルでの分子生理学的検討は、主に、生体外に摘出した生体組織試料を固定して病理診断学的に観察し、推測することによるものであった。一方、生体内のがん細胞集団をインビトロでライブイメージングする技術は、その技術的困難性故に開発されておらず、がん組織としての病態生理学的ダイナミクスはほとんど考慮されないまま、がんの基礎研究又は新規抗がん剤開発等が行われているのが、現状である。

多くの上皮系癌細胞において、浸潤・転移にEMT(上皮間葉転換)が必要であることが知られている。上皮系癌細胞はEMTによりその上皮系形質を失い、運動能や浸潤能といった間葉系形質を獲得して浸潤・転移を引き起こすものと考えられているが、近年の研究により膵管腺癌細胞においてEMTを必要としない浸潤・転移が生じることが明らかになった(非特許文献1)。EMTを介さない新たながんの浸潤・転移機構として細胞集団運動(collective cell migration)が注目されており、生体内のがん細胞集団をインビトロで観察する技術へのニーズは益々高まっている。

インビトロにおいて、2次元的な従来の単層細胞培養ではなく、より生体内環境を模倣するものとして、特殊な構造を有する培養基材を用いて3次元的な細胞塊を形成させる、いわゆる3次元細胞培養が報告されている(例えば特許文献1、2等)。しかし、3次元細胞培養によって形成される細胞塊のほとんどは、活発な運動極性及び形態学的極性を示さない膨張性増殖のスフェロイド(回転楕円がん細胞塊)であり、悪性腫瘍の特徴である浸潤性増殖を示す生体内のがん細胞集団を適切に反映したものであるとは言い難い。

また、正常な上皮細胞の生存及び増殖には細胞外マトリクス等の足場への接着が必須であり、足場に適切に接着できなかった上皮細胞はアノイキス(anoikis)と呼ばれるアポトーシスを起こして死滅する。これに対し、EMTを起こした上皮系癌細胞は、アノイキス耐性を獲得することで細胞死を免れ、脈管内を浮遊して原発巣から他の組織に転移することが知られている。

上皮系癌細胞のアノイキス耐性は癌の浸潤・転移のしやすさに関係することから、上皮系癌細胞のアノイキス耐性を決定することの意義は大きい。しかしながら、従来上皮系癌細胞の培養に用いられる細胞培養基材に対しては、上皮系癌細胞はそのアノイキス耐性の有無にかかわらず接着してしまうため、インビトロで上皮系癌細胞のアノイキス耐性を評価することは困難であった。

産業上の利用分野

本発明は、所定の構造を有する細胞培養基材、がん細胞集合体及び該基材を用いたその製造方法、並びに該がん細胞集合体を用いたがんの予防及び/又は治療のための薬剤のスクリーニング方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
基板と生体適合性ポリマー層とを有する細胞培養基材であって、
該基材は、生体適合性ポリマー層で覆われていない複数の粗面部分を基材表面上に有し、
ここで
粗面部分の形状は、径が20μm~100μmのスポットであるか、又は幅が3μm~30μmのグルーブであり、粗面部分の形状がグルーブの場合、粗面部分はその端部において他の粗面部分と連結されていてもよく、
2つの隣接する粗面部分間の距離は少なくとも10μm以上であり、
粗面部分はその表面に高さ20nm~200nmの凹凸構造を持つ、前記細胞培養基材。

【請求項2】
粗面部分の界面展開面積比(Sdr)が0.002以上である、請求項1に記載の細胞培養基材。

【請求項3】
2つの隣接する粗面部分間の距離が10~1200μmである、請求項1又は2に記載の細胞培養基材。

【請求項4】
粗面部分表面の算術平均粗さ(Ra)が4nm以上、最大高さ粗さ(Rz)が30nm以上、及び/又は山頂点算術平均曲(Spc)が300以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の細胞培養基材。

【請求項5】
生体適合性ポリマーが生物学的材料との非特異的吸着を抑制する両親媒性ポリマーである、請求項1~4のいずれか一項に記載の細胞培養基材。

【請求項6】
生体適合性ポリマーが2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の細胞培養基材。

【請求項7】
以下の(a)~(e)の特徴を持つ、接着性がん細胞から構成される、分離された生きたがん細胞集合体。
(a)細胞内細胞構造を有する
(b)非スフェロイド状形態を示す
(c)表面にα-チューブリンの膜状発現がある
(d)形態学的極性を有する
(e)組織運動極性を有する

【請求項8】
さらに以下の(f)~(k)のうちの少なくとも1つの特徴を持つ、請求項7に記載のがん細胞集合体。
(f)生きたがん細胞を可逆的に放出し、取り込む能力がある
(g)表面に繊毛を有する
(h)糸状仮足又は葉状仮足様形態を示す
(i)死細胞を取り込む能力がある
(j)細胞デブリ吸引力を有する
(k)表面がホスファチジルセリン陽性である

【請求項9】
請求項7又は8に記載のがん細胞集合体が3次元構造を有する細胞培養基材に接着してなる、複合体。

【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の細胞培養基材を用いて接着性がん細胞を培養する工程を含む、請求項7又は8に記載のがん細胞集合体の製造方法。

【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の細胞培養基材を用いて接着性がん細胞を培養する工程を含む、請求項9に記載の複合体の製造方法。

【請求項12】
請求項7又は8に記載のがん細胞集合体と被験物質を共存させる工程、
以下のがん細胞集合体の特徴
(a)細胞内細胞構造を有する
(b)非スフェロイド状形態を示す
(c)表面にα-チューブリンの膜状発現がある
(d)形態学的極性を有する
(e)組織運動極性を有する
(f)生きたがん細胞を可逆的に放出し、取り込む能力がある
(g)表面に繊毛を有する
(h)糸状仮足又は葉状仮足様形態を示す
(i)死細胞を取り込む能力がある
(j)細胞デブリ吸引力を有する
(k)表面がホスファチジルセリン陽性である
のうちの少なくとも1つを観察し、被験物質と共存させないがん細胞集合体のそれと比較する工程、及び
被験物質共存下で上記特徴の減弱又は喪失がより強く観察された場合、被験物質は抗がん作用を有すると判定する工程
を含む、がんの予防及び/又は治療のための薬剤のスクリーニング方法。

【請求項13】
請求項7又は8に記載のがん細胞集合体と被験物質を共存させる工程、
がん細胞集合体又はその仮足の長さ又は大きさを測定し、被験物質と共存させないがん細胞集合体のそれと比較する工程、及び
被験物質共存下でがん細胞集合体又はその仮足がより短くなった又はより小さくなった場合、被験物質は抗がん作用を有すると判定する工程
を含む、がんの予防及び/又は治療のための薬剤のスクリーニング方法。

【請求項14】
薬剤が、がんの浸潤及び/又は転移を抑制する薬剤である、請求項12又は13に記載のスクリーニング方法。

【請求項15】
薬剤が、がんの免疫回避機構を抑制及び/又は解除する薬剤である、請求項12又は13に記載のスクリーニング方法。

【請求項16】
請求項1~6のいずれか一項に記載の細胞培養基材を用いて被験上皮系癌細胞を培養する工程、及び
上皮系癌細胞が細胞培養基材に接着せずに増殖した場合に上皮系癌細胞はアノイキス耐性を有すると判定する工程
を含む、上皮系癌細胞のアノイキス耐性を判定する方法。
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 公開
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