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siRNA細胞内送達のための脂質膜構造体 新技術説明会

国内特許コード P200017125
整理番号 (S2017-0830-N0)
掲載日 2020年8月6日
出願番号 特願2019-525575
出願日 平成30年6月15日(2018.6.15)
国際出願番号 JP2018022940
国際公開番号 WO2018230710
国際出願日 平成30年6月15日(2018.6.15)
国際公開日 平成30年12月20日(2018.12.20)
優先権データ
  • 特願2017-117708 (2017.6.15) JP
発明者
  • 原島 秀吉
  • 佐藤 悠介
出願人
  • 国立大学法人北海道大学
発明の名称 siRNA細胞内送達のための脂質膜構造体 新技術説明会
発明の概要 この脂質膜構造体は、脂質成分として式(I):(R1)(R2)C(OH)-(CH2)a-(O-CO)b-X〔式中、aは3~5の整数を示し;bは0又は1の整数を示し;R1及びR2はそれぞれ独立に-CO-O-を有していてもよい直鎖状炭化水素基を示し;Xは5~7員非芳香族ヘテロ環基又は下記の式(B)(式中、dは0~3の整数を示し、R3及びR4はそれぞれ独立にC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基を示す。R3及びR4は互いに結合して5~7員非芳香族ヘテロ環(当該環上には1又は2個のC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基が置換していていてもよい)を形成してもよい)で表される基を示す〕の脂質化合物を含む脂質膜構造体である。
[化1]
(式省略)
従来技術、競合技術の概要

薬剤を患部に特異的に輸送する手段として脂質膜構造体であるリポソームに薬剤を封入する方法が提案されている。特に、悪性腫瘍の治療分野において抗腫瘍剤を封入したリポソームの有効性が数多く報告されている。また、遺伝子発現に利用可能な脂質膜構造体として多機能性エンベロープ型ナノ構造体(MEND: Multifunctional envelope-type nano device;以下、本明細書において「MEND」と略す場合がある。例えば非特許文献1などを参照のこと)が提案されている。この構造体は、遺伝子などを特定の細胞内に選択的に送達するためのドラッグデリバリーシステムとして用いることができ、例えば、腫瘍の遺伝子治療などに有用であることが知られている。

脂質膜構造体を用いて薬物、核酸、ペプチド、ポリペプチド、糖などの目的物質を標的臓器や腫瘍組織など特異的な部位に送達するための手段として、脂質膜構造体の表面を機能性分子で修飾する方法が多数提案されている。抗腫瘍剤などの薬剤を内包した脂質膜構造体は、標的細胞に到達するとエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれてエンドソーム内に包含された状態となり、その後、リソソームの酵素による加水分解作用などを受けて内包されていた薬剤を細胞質内に放出する。エンドソーム内に取り込まれたリポソームからの薬剤放出性を高めるために、リポソームの表面をペプチド(GALA:非特許文献2)で修飾したリポソーム(非特許文献3)やMEND(特許文献4)が提案されている。

また、核酸などの目的物質を内包した脂質膜構造体を標的細胞の核内に移行させるための手段としては、例えば、リポソームの外側表面をオクタアルギニンで修飾したリポソーム(特許文献1、非特許文献4)、核移行性ペプチドで修飾された脂質膜を有する2枚膜リポソーム(特許文献2)、ガラクトースやマンノースなどの単糖で表面を修飾したリポソーム(特許文献3)が提案されている。単糖で修飾された多重脂質膜構造体(T-MEND)は脂質膜及び核膜と融合性を示し、in vitroでの試験結果において遺伝子発現効率を改善できたと報告されている。さらに、KALAペプチド(非特許文献5)により修飾された脂質膜構造体が細胞の核内に核酸などの物質を効率的に送達できることが報告されている(特許文献5)。

一方、樹状細胞は、免疫応答の中心を担っている抗原提示細胞であることから、がん免疫療法の重要な標的細胞の1つである。がん患者から樹状細胞を採取し、体外で抗原導入や活性化を行った後、再びその患者に投与する免疫細胞療法(樹状細胞療法)も行われている。近年、樹状細胞における免疫抑制因子が発見されたことから、樹状細胞はsiRNA医薬の標的としても注目を集めており、樹状細胞療法を免疫療法と組み合わせることにより、より強力ながん免疫誘導を行えると期待されている。

従来、樹状細胞の核内へのRNA導入に関して、shRNAを発現するレンチウイルスベクターを用いて免疫抑制因子をノックダウンしたとの報告(非特許文献6、非特許文献7)はある。しかし、人工デリバリーシステムを用いた樹状細胞へのsiRNA導入の報告は殆どない。ウイルスベクターの使用は標的遺伝子の高効率ノックダウンを実現可能であるが、安全面に問題がある。

siRNA導入用の人工デリバリーシステムとしてR8/GALA-D-MEND(D-MEND)が報告されている(非特許文献8)。D-MENDは、細胞親和性素子であるオクタアルギニン(R8)ペプチドとエンドソーム脱出性素子であるGALAペプチドをMENDに修飾し、MENDのエンベロープ膜枚数を制御したナノキャリアである。D-MENDは、一般的に使用されるがん細胞であるHeLa細胞においてはsiRNA濃度が12 nMという低濃度で約70%のノックダウンを示し、その活性は一般導入試薬として汎用されているリポフェクタミン2000(LFN2000)と比較して2倍以上の活性を示す。

しかしながら、マウス骨髄細胞から誘導した樹状細胞にD-MENDでトランスフェクションを行う場合には、70-80%のノックダウン効率を達成するためにsiRNA濃度を高濃度(80-120 nM)にする必要があり、siRNAの標的因子によっては40%程度のノックダウン効率に留まるという問題もある(非特許文献9)。このように従来の人工デリバリーシステムを用いた場合には、一般的ながん細胞に比べて樹状細胞におけるノックダウン効率は大きく低下する傾向があり、siRNA医薬の免疫療法分野への展開を妨げている。

これまでに、機能性核酸、とりわけ特定の標的遺伝子の発現を抑制可能なsiRNAの効率的なin vivo送達を達成する目的で、多くのカチオン性脂質が開発されている。特に、生理的pHでは電気的に中性であり、エンドソームなどの弱酸性pH環境下ではカチオン性に変化するpH感受性カチオン性脂質の開発は著しい。JayaramanらはDLin-MC3-DMAを開発し、マウス肝臓における第7因子(F7)ノックダウンにおいてED50で0.005 mg siRNA/kgを達成した(非特許文献10)。本発明者らもこれまでに独自のpH感受性カチオン性脂質YSK05及びYSK13-C3を開発しており、F7ノックダウンにおけるED50としてそれぞれ0.06、0.015 mg siRNA/kgを達成している(非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13)。また、MaierらはMC3-DMAに生分解性を付与したL319を開発し、ED50で0.01 mg siRNA/kgと高い安全性の両立について報告している(非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16)。しかしながら、これら上記脂質を含む脂質ナノ粒子のエンドソーム脱出効率は未だ数%程度に過ぎないことが明らかにされており(非特許文献17)、バイオアベイラビリティを更に向上させることが可能な技術の開発が望まれている。

さらに、Dongらはハイスループットスクリーニングを通して独自の脂質様物質cKK-E12を見出し、F7ノックダウンにおいてED50で0.002 mg siRNA/kgを達成した(非特許文献18)。当該技術は活性の面では文献上最も優れているが、高投与量における毒性や脂質の生分解性等の安全面における知見はない。

近年、多くのがん組織、特にヒト患者がん組織は、コラーゲンをはじめとする間質成分が非常に豊富であり、それら成分ががん組織内におけるナノ粒子の浸透性を著しく妨げることが明らかにされつつある。ナノ粒子の小型化はこの問題を解決するための非常に有効な戦略として考えられている。実際に、Cabralらは、白金製剤内封高分子ミセルの直径を約30 nmに小さく制御することでがん組織内浸透性が向上し、抗腫瘍効果が向上することを報告している(非特許文献19)。siRNA送達においても同様の戦略が非常に有効であると考えられるが、脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticle: LNP)を小さく制御することは技術的に難しく、報告は非常に乏しい。2液の瞬間混合を達成可能なマイクロミキサー内蔵マイクロ流路を用いることで直径30 nm程度のLNPを再現良く製造可能であることが、近年報告された(非特許文献20、非特許文献21)。一方で、LNPを小型化することで、そのsiRNA送達活性は著しく減少することが見出されている(非特許文献22、非特許文献23)。この問題を克服することは優れたがん治療用siRNA送達技術を実現する上で極めて重要である一方で、その克服法についての知見は現時点で皆無である。

産業上の利用分野

本発明はsiRNA(short interfering RNA)などの細胞内送達のための脂質膜構造体に関する。より具体的には、本発明は、免疫細胞の核内、特に樹状細胞の細胞内にsiRNAなどを容易に送達することができるリポソームなどの脂質膜構造体に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
下記の式(I):
【化1】
(省略)
〔式中、aは3~5の整数を示し;bは0又は1の整数を示し;R1及びR2はそれぞれ独立に下記の式(A):
【化2】
(省略)
(式中、qは1~9の整数を示し;rは0又は1を示し;sは1~3の整数を示し;tは0又は1を示し;uは1~8の整数を示し;cは0又は1を示し:vは4~12の整数を示すが、bとcが同時に0となる場合には、qが3~5の整数であり、r及びtが1であり、sが1であり、かつu+vが6~10の整数である場合を除く) で表される基を示し;Xは5~7員非芳香族ヘテロ環基(ただし、当該基は炭素原子により(O-CO)b-に結合し、当該環上には1又は2個のC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基が置換していてもよい)、又は下記の式(B):
【化3】
(省略)
(式中、dは0~3の整数を示し、R3及びR4はそれぞれ独立にC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基(当該C1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基は1個又は2個のフェニル基で置換されていてもよい)を示すが、R3及びR4は互いに結合して5~7員非芳香族ヘテロ環(当該環上には1又は2個のC1-4アルキル基又はC2-4アルケニル基が置換していていてもよい)を形成してもよい)で表される基を示す〕
で表される脂質化合物又はその塩。

【請求項2】
r及びtが0であり、q+s+uが8~18の整数、好ましくは10~16の整数である、請求項1に記載の脂質化合物又はその塩。

【請求項3】
rが1であり、tが0であり、qが5~9の整数であり、s+uが5~9の整数である、請求項1又は2に記載の脂質化合物又はその塩。

【請求項4】
vが5~12の整数である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の脂質化合物又はその塩。

【請求項5】
aが4であり、bが0又は1である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の脂質化合物又はその塩。

【請求項6】
bが0であり、Xが式(B)で表される基〔ただし、dは0であり、R3及びR4はそれぞれ独立にC1-4アルキル基(R3が示すC1-4アルキル基は1個のフェニル基で置換されていてもよい)を示すか、あるいはR3及びR4が互いに結合する場合には、1-ピロリジニル基、1-ピペリジニル基、1-モルホリニル基、又は1-ピペラジニル基(当該1-ピロリジニル基、1-ピペリジニル基、1-モルホリニル基、又は1-ピペラジニル基は1個のC1-4アルキル基で置換されていてよい)を形成する〕である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の脂質化合物又はその塩。

【請求項7】
bが1であり、Xが式(B)で表される基〔ただし、dは0~3の整数であり、R3及びR4はそれぞれ独立にC1-4アルキル基(R3が示すC1-4アルキル基は1個のフェニル基で置換されていてもよい)を示すか、あるいはR3及びR4が互いに結合する場合には、1-ピロリジニル基、1-ピペリジニル基、1-モルホリニル基、又は1-ピペラジニル基(当該1-ピロリジニル基、1-ピペリジニル基、1-モルホリニル基、又は1-ピペラジニル基は1又は2個の同一又は異なるC1-4アルキル基で置換されていてよい)を形成する〕である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の脂質化合物又はその塩。

【請求項8】
bが1であり、Xが5~7員非芳香族ヘテロ環基(当該基は炭素原子により(O-CO)b-に結合する)であり、当該5~7員非芳香族ヘテロ環基がピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリニル基、又はピペラジニル基(当該ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリニル基、又はピペラジニル基は、1又は2個の同一又は異なるC1-4アルキル基で置換されていてよい)である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の脂質化合物又はその塩。

【請求項9】
細胞内にsiRNAを送達するための脂質膜構造体の脂質成分として用いられる、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の脂質化合物又はその塩。

【請求項10】
脂質成分として請求項1ないし8のいずれかに記載の脂質化合物又はその塩を含む脂質膜構造体。

【請求項11】
リポソームである、請求項10に記載の脂質膜構造体。

【請求項12】
siRNAが内部に封入されている請求項10又は11に記載の脂質膜構造体。

【請求項13】
細胞内の標的遺伝子をノックダウンするために用いられる、請求項12に記載の脂質膜構造体。

【請求項14】
前記細胞が、免疫細胞又はがん細胞である、請求項13に記載の脂質膜構造体。

【請求項15】
患者から樹状細胞を分離・採取し、in vitroで当該樹状細胞の細胞内にsiRNAを導入した後、標的遺伝子がノックダウンされた樹状細胞をその患者に投与する免疫療法において、樹状細胞における標的遺伝子をノックダウンするために用いられる、請求項14に記載の脂質膜構造体。
国際特許分類(IPC)
Fターム
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出願権利状態 公開
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