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がん遺伝子の転写調節領域

国内特許コード P200017150
整理番号 (S2017-0795-N0)
掲載日 2020年8月12日
出願番号 特願2019-525586
出願日 平成30年6月15日(2018.6.15)
国際出願番号 JP2018023028
国際公開番号 WO2018230731
国際出願日 平成30年6月15日(2018.6.15)
国際公開日 平成30年12月20日(2018.12.20)
優先権データ
  • 特願2017-119159 (2017.6.16) JP
発明者
  • 伊藤 公成
出願人
  • 国立大学法人長崎大学
発明の名称 がん遺伝子の転写調節領域
発明の概要 本発明は、c-Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTの少なくとも一部を含む、連続する12ヌクレオチド以上の標的領域を特異的に認識し、該Runx結合配列へのRunx3の結合を阻害する物質を含有する、抗腫瘍剤を提供する。
従来技術、競合技術の概要

がん細胞が蓄積する遺伝子異常は多種多様で、時間経過とともに、その複雑性が増している。それに対抗しようと、多種多様な分子標的薬(抗がん剤)が開発されているが、その複雑性を克服できていない。

抗がん剤としては、細胞分裂をターゲットとする従来の抗がん剤に加えて、がん特有の変異をターゲットとする分子標的剤や抗PD-1抗体などの、体の免疫を調整して免疫機構にがんを攻撃させる免疫療法剤等が挙げられる。しかし、従来の抗がん剤は正常細胞も影響を受けやすく、分子標的剤は標的によって非常に有効なこともある一方、あまり有効でない場合もあり、免疫療法剤は、治療を受ける患者のうち、効果がある人が限定されるといった問題がある。

細胞において変異が蓄積しても、大抵の場合は、該変異が修復されるか、アポトーシスや免疫攻撃により該細胞が死滅するが、3~10回の変異が蓄積すると、がんになるといわれている。その変異のうちには、共通の因子に生じる変異があり、複雑な悪性腫瘍にも共通の分子基盤が存在する。例えば、ヒトのがんでは、p53の不活性化とc-Mycの発現上昇が最も広範に確認される。p53は最も有名で影響があると考えられている「がん抑制遺伝子」である。p53の主な役割は、細胞内における遺伝子異常をチェックし、異常があればアポトーシスを誘導することである。p53は、全腫瘍の50%~80%程度において何らかの変異(機能不全、発現量低下)があることが知られている。また、悪性度、抗がん耐性と相関があると考えられている。

p53及びその周辺分子について非常に多くの方法で抗がん剤開発が行われているが、現在まで成功していない。正常なp53を増加させることは技術的に困難であって、一定量以上増えた場合はアポトーシスを誘導するので、過剰に発現させると正常細胞にもアポトーシスを誘導することになる(即ち、「正常量」に調整することが難しい)。このため、p53の上流・下流をターゲットにした抗がん剤も多く開発中であるが、いずれも成功していない。

c-Mycは、細胞増殖のためのタンパク質を調整する役割を有する。c-Mycをノックダウンすると、増殖準備が起こらず、細胞周期が停止する。アポトーシスは、増殖する瞬間が最も誘導しやすいが、細胞周期が停止するとアポトーシスには抵抗性となる。従って、c-Mycも、創薬の直接的なターゲットとするのは困難である。

Runxファミリーは進化的に保存されたRuntドメインを有し、該ドメインを介して標的遺伝子の転写調節領域に結合する。Runxファミリーはまた、C末端側に様々な転写因子(コファクター)と相互作用してヘテロダイマーを形成し、下流の標的遺伝子群の転写を制御する領域を有する(非特許文献1)。哺乳類のRunxファミリーはRunx1、Runx2及びRunx3から構成されるが、これらの異常は種々の疾患と密接に関連する。例えば、Runx1は急性骨髄性白血病における染色体転座の標的であり、染色体不安定性によるRunx2の片方の対立遺伝子の欠落(LOH)は、鎖骨頭蓋骨異形成の原因とされている。一方で、Runx3は胃がんのがん抑制遺伝子であることが指摘されている(非特許文献2)。さらに、Runx3は核内でp53と結合し、p53の標的遺伝子群の転写を正に制御することが示唆されている(非特許文献2)。また、Runx3をノックダウンしたマウスは致死であり、発現量を半減させたマウスも寿命が短いことから、Runx3は生存に必須の機能を有すると考えられ、抗がん剤のターゲットとしては不向きなようである。

c-Myc遺伝子の転写開始点より上流には、多数のRunx結合配列(ACCACA,TGCGGT)が存在し、内在性のRunx1がそれらのRunx結合配列に結合すること、コファクターとの相互作用を介してc-Myc遺伝子の発現を抑制していることが報告されている(非特許文献1)。

上述のように、多くのがんで、p53の不活性化とc-Mycの発現上昇が共通して認められる。また、Runxファミリーは、p53とc-Mycの双方と相互作用し得る因子であることが示唆されている。しかしながら、これらの因子を、抗がん剤創薬の直接的なターゲットとすることは難しいと考えられている。

ここで、ヒト非小細胞肺がん細胞株であるA549細胞を注入したNOGマウスに対し、Runx1~3共通の認識配列であるTGTGGTを標的とするPIポリアミド(Chb-M)を投与したところ、A549細胞の増殖を抑制し、生存率を向上させたことが報告されている(非特許文献3)。また、同文献には、実験には用いられていないものの、TGCGGTを標的とするPIピリアミド(Chb-50)も開示されている。しかしながら、c-Myc遺伝子の転写調節領域には、多数のRunx結合配列が存在しており、どの部位のRunxの認識配列が重要であるかについて知られていない。また、Runx1、Runx2又はRunx3をノックアウトしたマウスはいずれも胎生致死であるため、多数のRunx結合配列を標的とする上記PIピリアミドは、非常に強い副作用を引き起こすことが予想される。

産業上の利用分野

本発明は、c-Myc遺伝子の転写調節領域を特異的に認識し、該配列へのRunx3の結合を阻害する物質を含有する抗腫瘍剤に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
c-Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTの少なくとも一部を含む、連続する12ヌクレオチド以上の標的領域を特異的に認識し、該Runx結合配列へのRunx3の結合を阻害する物質を含有する、抗腫瘍剤。

【請求項2】
前記Runx結合配列が、ヒトc-Myc遺伝子の転写開始点から-309~-304番目のヌクレオチド配列、又は他の哺乳動物オルソログにおける該ヌクレオチド配列に対応する配列(counterpart)である、請求項1に記載の剤。

【請求項3】
p53が不活性化されている対象に適用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の剤。

【請求項4】
前記物質が、前記標的領域内のDNA配列に対するアンチジーンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の剤。

【請求項5】
前記アンチジーンがピロール・イミダゾールポリアミドである、請求項4に記載の剤。

【請求項6】
前記物質が、前記標的領域に特異的に結合する核酸配列認識モジュールである、請求項1~3のいずれか1項に記載の剤。

【請求項7】
前記核酸配列認識モジュールが、CRISPR-Cas、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター又はPPRモチーフである、請求項6に記載の剤。

【請求項8】
前記核酸配列認識モジュールがCRISPR-dCasである、請求項6に記載の剤。

【請求項9】
前記物質が、前記核酸配列認識モジュールと複合体形成するヌクレアーゼとからなる、請求項6又は7に記載の剤。

【請求項10】
前記物質が、前記ヌクレアーゼで切断される部位で相同組換えを生じさせ得るドナーDNAをさらに含む、請求項9に記載の剤。

【請求項11】
前記核酸配列認識モジュールが、転写抑制因子と複合体を形成する、請求項6~8のいずれか1項に記載の剤。

【請求項12】
前記物質が、それをコードする1以上の発現ベクターの形態で提供される、請求項1~3及び6~11のいずれか1項に記載の剤。

【請求項13】
p53の不活性化を検定するための試薬と組み合わせてなる、請求項1~12のいずれか1項に記載の剤。

【請求項14】
(1)被検物質の存在下又は非存在下で、c-Myc遺伝子の転写開始点の上流における、該転写開始点の最も近傍のRunx結合配列TGCGGTを含む、連続する12ヌクレオチド以上の部分ヌクレオチド配列を有する二本鎖DNAと、Runx3とを接触させる工程、
(2)該DNAとRunx3との結合を測定する工程、及び
(3)該DNAとRunx3との結合を阻害した被検物質を、抗腫瘍活性を有する物質の候補として選択する工程
を含む、抗腫瘍活性を有する物質のスクリーニング方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 公開
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