TOP > 国内特許検索 > 制振合金

制振合金 UPDATE 外国出願あり

国内特許コード P210017745
掲載日 2021年5月31日
出願番号 特願2012-287955
公開番号 特開2014-129567
登録番号 特許第6182725号
出願日 平成24年12月28日(2012.12.28)
公開日 平成26年7月10日(2014.7.10)
登録日 平成29年8月4日(2017.8.4)
発明者
  • 澤口 孝宏
  • 櫻谷 和之
  • 小川 一行
  • 長島 伸夫
  • 古谷 佳之
  • 関戸 信彰
  • 小林 覚
  • 中村 照美
  • 西村 俊弥
  • 津崎 兼彰
  • 櫛部 淳道
  • 井上 泰彦
  • 菅田 昌宏
  • 丸山 忠克
  • 杉村 誠一
  • 千葉 悠矢
出願人
  • 国立研究開発法人物質・材料研究機構
  • 株式会社竹中工務店
  • 淡路マテリア株式会社
発明の名称 制振合金 UPDATE 外国出願あり
発明の概要 【課題】 Fe-Mn-(Cr、Ni)-Si系合金において、耐力と繰り返し引張圧縮変形後の応力振幅を低下させ、かつ破断繰り返し数を増加させて、長周期地震動後もメンテナンスフリーで使用可能で、かつ量産可能な弾塑性ダンパー用の制振合金を提供する。
【解決手段】 少なくともCr、Niのいずれかを含有するFe-Mn-(Cr、Ni)-Si系の制振合金、又はさらにAlを含有する制振合金であって、成分組成として、5質量%≦Mn≦28質量%、0質量%≦Cr≦15質量%、0質量%≦Ni<15質量%、0質量%<Si<6.5質量%、0質量%≦Al<3質量%、残部Fe及び不可避不純物を含有し、[%Ni]+0.5[%Mn]>0.75[%Cr]+1.125[%Si]+2[%Al]、かつ、37<[%Mn]+[%Cr]+2[%Ni]+5[%Al]<45(式中[%Ni]、[%Mn]、[%Cr]、[%Si]、[%Al]は、Ni、Mn、Cr、Si、Alの質量%を意味する)の条件を満足することを特徴とする。
【選択図】図2
従来技術、競合技術の概要

2011年3月11日に発生した東日本大震災とその後の活発な地震活動により、巨大災害に対する防災意識がかつてないほどに高まっている。特に、東海・東南海・南海地震や首都直下型地震等、巨大地震の発生が予測される地域に、大都市圏が含まれていることから、災害予測や防災体制の強化整備とともに、建築構造物を地震の被害から守る制振・免震技術などの工業的減災対策にも最大限の努力がなされている。

制振ダンパーは、風や地震により建物に入力される振動エネルギーを吸収して、振動が構造物本体に及ばないようにする制振装置である。これまでに提案、開発されている制振ダンパーを大別すると、粘性ダンパー(特許文献1)、粘弾性ダンパー(特許文献2)、鉛ダンパー(特許文献3)、弾塑性ダンパー(特許文献4)などがある。

その中でも、特に地震時における構造物の揺れを低減する制振ダンパーとしては、低降伏点鋼を用いた弾塑性ダンパーが、性能、コスト、メンテナンス性において優れていることから、近年特に普及が進んでいる。

この弾塑性ダンパーは、ダンパー用の芯材として用いられる合金の塑性変形により、建物へ入力される地震エネルギーを主に熱エネルギーとして吸収し、建物の振動を低減する機能を有するものである。

制振ダンパーの性能には、芯材となる制振合金の塑性変形特性が重要な影響を及ぼす。この塑性変形特性は、構造物本体よりも早期に塑性変形させるために、制振合金の降伏応力又は耐力は低いことが望ましい。また、地震発生後、ダンパー用の芯材自体は繰り返し弾塑性変形してしまうため、長期使用の観点からは、繰り返し硬化による機械的性質の変化や金属疲労が課題である。

繰り返し硬化は、制振ダンパーとしての作動開始強度が上昇するなど、制振機能を著しく損なう原因となり、また金属疲労が進行すると最終的には疲労破断による制振装置自体の損壊にすら至るものである。このような状況を避けるため、繰り返し硬化率が低く、疲労寿命が長い制振合金が期待されている。

現在最も広く用いられている制振合金は、降伏応力、あるいは0.2%耐力を100~225MPa程度まで意図的に低下させた低降伏点鋼であるが、降伏応力が低いタイプほど弾塑性変形における初期の繰り返し硬化率が高く、また疲労寿命は、当然構造物の柱・梁といった主架構に用いる鋼材よりも優れてはいるが、疲労特性に著しい差がなく、明らかな優位性があるとは言い難い。

したがって、従来の低降伏点鋼制振ダンパーは、低ひずみ振幅(小振幅)で多数の繰り返しにさらされる風揺れに対しては、芯材を塑性化させない(弾性範囲)にとどめ、地震時のみ塑性化するように設計するなど、疲労損傷に配慮した設計を余儀なくされてきた。

また、大地震後には、繰り返し硬化による性能変化や累積疲労損傷の問題から、場合によっては点検・交換を必要とする場合がある。その結果、災害復旧期間や費用が発生することとなる。

さらに、近年超高層ビル等においては、地震時に建物が共振し、比較的大きな変形の揺れが長時間続く、いわゆる長周期地震動問題に注目が集まることとなり、構造物の耐震安全性の確保の観点からも、より疲労寿命が長い制振合金に対する要請が高まっている。

一方、NbCを含むFe-Mn-Si系形状記憶合金が構造物の制振合金として利用可能であることが発明者らによって開示されている(例えば、特許文献1を参照)。

これは、地震後に残留する塑性ひずみを、加熱による形状記憶効果で取り除き、初期の形状を回復できることに着目した発明である。また、引張圧縮塑性変形による合金の金属組織変化が、FCC型結晶(面心立方格子構造)のγオーステナイト相とHCP型結晶(六方最密充填構造)のεマルテンサイト相の間で可逆的に行われるために、繰り返し硬化率が低く、疲労寿命も長いなど、制振合金としての別の効果も見出された(例えば、非特許文献1を参照)。

通常、形状記憶効果を利用するためには、ダンパー部材を加熱する機構が必要であるが、上記の提案によれば、そのような加熱機構を設けなくとも、少なくとも繰り返し変形による硬化率が低く、疲労寿命が長いことで、長周期地震動に対しても有効に作動する高性能な制振合金として使用可能である。

Fe-Mn-Si系形状記憶合金が、ほぼそのままの組成で制振合金としても有効であることは特許文献5で示唆されるところであるが、その後の研究の進展によって、形状記憶合金としての適正成分範囲と、制振合金としての適正成分範囲とは完全に一致しているわけではないことも明確になってきた。

特許文献5において、形状記憶特性を改善させるためにNbCを添加した合金は、振幅1%の繰り返し引張圧縮変形に対する応力振幅が650MPa以上と極めて高い。弾塑性ダンパー用の芯材は、構造物本体より先に弾塑性変形しなければ、構造物本体を保護する振動吸収効果は発揮できない。

すなわち、強度が建物などの構造物本体よりも低くなければならない。したがって材料強度の高い素材をダンパー用の芯材に使用すると、ダンパーの断面積を小さくして構造物の強度を上回らないようにする必要がある。

ところが、断面積の小さいダンパーは圧縮変形時に座屈の危険性が高くなるので、ダンパーとしての広い適用可能範囲を確保するには、ダンパー用の芯材はある程度材料強度の低い方が有利である。

この問題を解決するために、発明者らはさらに検討を進め、NbC等の析出物を含まないFe-30Mn-6Si形状記憶合金をベースに、Al添加による塑性変形特性の制御を試みた。

その結果、Alを1~3質量%含む合金が、振幅1%の繰り返し引張圧縮変形に対して300MPa程度の低い応力振幅で作動可能な制振合金として有用であることが開示されている(例えば、特許文献6を参照)。

一方、非特許文献2によれば、Fe-30Mn-6Si形状記憶合金への1質量%を超えるAlの添加は、形状記憶効果をほぼ消失させてしまうものであり、このことからも形状記憶合金と制振合金の最適成分範囲が必ずしも一致しないことは明らかである。

また、弾塑性ダンパー用の芯材は、既存の量産製鉄設備を使って低コストで生産できることも構造物の耐震化を早期に進めるための重要な要請である。特許文献6で開示されている公知の制振合金は、Mnを30質量%と高濃度に含むため、アーク炉溶解など一般鋼材が生産される設備で作ることが難しい。

その理由は、Mnの沸点が2010℃とFeの3070℃に比較して非常に低く、更にFeよりも酸化物を生成し易いため、Mnの蒸発や酸化によるMn歩留の低下、溶解炉耐火物との反応などが避けられず、操業的にも、コスト的にも困難を伴うからである。したがって、経済的、かつ、技術的な要請から、Fe-Mn-Si系制振合金を量産化、実用化するにはMn含有量を更に低くした合金開発が必須である。

なお、Fe-Mn-Si系形状記憶合金においては、耐食性改善のためにCrやNiでMnの一部を置換した成分系が公知であるが(例えば、非特許文献3を参照)、これは同時にMnの含有量を低下させるためにCrやNiによる置換が有効であることを示唆するものである。

しかし、CrやNiでMnを置換した形状記憶合金の疲労特性については、これまでに開示も示唆もされていない。上述したように、形状記憶合金の適正成分範囲と制振合金の適正成分範囲は必ずしも一致しない。したがって、制振合金としてのFe-Mn-Cr-Ni-Si系の最適成分範囲は不明である。非特許文献4によれば、CrやNiを添加したFe-Mn-Si系合金には、δフェライト相、シリサイド、α’マルテンサイト相などの第二相が形成されやすいが、これら第二相が疲労特性に及ぼす影響も不明である。

一方、Fe-Mn系オーステナイト鋼の疲労特性については近年盛んに研究されている。これは、強度延性バランスに優れた新しい自動車用鋼板として注目されている、TWIP(Twinning Induced Plasticity:双晶誘起塑性)鋼において、γオーステナイト相の双晶変形が疲労特性にも良好な影響を与えることが認識されているからである(例えば、非特許文献5を参照)。

Fe-Mn-Cr-Ni系合金の疲労特性も同様の観点から調べられ、疲労特性と組織の関係が一部公知化されている(例えば非特許文献6を参照)。しかし、これらFe-Mn合金やFe-Mn-Cr-Ni合金の塑性変形組織は、変形双晶、α’マルテンサイト相、εマルテンサイト相、積層欠陥、転位などが組み合わされた複雑なものであり、疲労特性と組織の関係が十分に解明されたとはいえない状況である。

発明者らによるこれまでの実験・研究の結果、εマルテンサイトが疲労特性の改善に効果的であることが解明されているが、TWIP鋼やFe-Mn-Cr-Ni系合金では、εマルテンサイトが疲労特性に及ぼす影響についてはほとんど解明されていない。さらに、TWIP鋼を初めとするオーステナイト系構造鋼は、通常構造材料として降伏強度がなるべく高くなるよう成分設計されており、弾塑性ダンパー用の芯材には適さない。

なお、εマルテンサイト相を利用する制振合金としてFe-Mn-Cr-Si-Al-C合金が開示されている(例えば、特許文献7を参照)。しかし、この制振合金は変形前の状態でγオーステナイト相中にεマルテンサイト相を15%以上含むことで弾性変形域における内部摩擦を向上させたものであり、弾塑性変形に対する疲労特性は開示されていない。

変形前の状態で既にεマルテンサイト相を含むことや、γオーステナイト相を固溶硬化させる性質が極めて強い炭素を含むために高強度であり、弾塑性ダンパー用の芯材には不向きである。したがって、制振合金に要求される低耐力、低応力振幅でかつ疲労寿命を増加させるための成分については開示も示唆もされていない。

以上に述べたように、建築構造物の制振装置における弾塑性ダンパー用の芯材として、主に地震から構造物を守る目的で使用される制振鋼又は制振合金に求められる性質は、低耐力、低繰り返し硬化率、大ひずみで疲労寿命が長い(破断繰り返し数が大きい)ことである。しかしながら、これら全ての性質をバランスよく具備する弾塑性ダンパー用の芯材としての制振合金は存在しなかった。

産業上の利用分野

本発明は、低応力で弾塑性変形が可能で、かつ疲労特性に優れた制振合金に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
少なくともCr、Niのいずれかを含有するFe-Mn-(Cr、Ni)-Si系の制振合金、又はさらにAlを含有する制振合金であって、成分組成として、5質量%≦Mn<20質量%、0質量%≦Cr≦15質量%、0質量%≦Ni<15質量%、質量%Si<6.5質量%、0質量%≦Al<3質量%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、[%Ni]+0.5[%Mn]>0.75[%Cr]+1.125[%Si]+2[%Al]、かつ、37<[%Mn]+[%Cr]+2[%Ni]+5[%Al]<45(式中[%Ni]、[%Mn]、[%Cr]、[%Si]、[%Al]は、Ni、Mn、Cr、Si、Alの質量%を意味する)の条件を満足することを特徴とする制振合金。

【請求項2】
10質量%≦Mn20質量%、2質量%≦Ni≦10質量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の制振合金。

【請求項3】
2質量%≦Si≦6質量%を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の制振合金。

【請求項4】
塑性加工及び溶体化熱処理を施した後の合金の金属組織が、15体積%未満のεマルテンサイト相(HCP構造)、残部がγオーステナイト相(FCC構造)のみからなり、この状態からさらに、振幅1%の引張圧縮変形を100サイクル以上繰り返した後の状態が、50体積%未満のεマルテンサイト相、3体積%未満のα’マルテンサイト相、残部がγオーステナイト相であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の制振合金。

【請求項5】
耐力が280MPa以下、振幅1%の引張圧縮変形を100サイクル以上繰り返した後の応力振幅が400MPa以下、かつ、破断繰り返し数が2000サイクル以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の制振合金。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2012287955thum.jpg
出願権利状態 登録
特許についてのご質問及びご相談等については、公開特許番号、ご質問内容・ご相談内容等、お名前、会社名、ご連絡先(電話番号、FAX番号、メールアドレス)をご記入の上、下記までご連絡ください。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close