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低サイクル疲労特性に優れるFe-Mn-Si系合金鋳造材 UPDATE 外国出願あり

国内特許コード P210017748
掲載日 2021年5月31日
出願番号 特願2017-074517
公開番号 特開2018-178150
出願日 平成29年4月4日(2017.4.4)
公開日 平成30年11月15日(2018.11.15)
発明者
  • 澤口 孝宏
  • 高森 晋
  • 大澤 嘉昭
  • 櫻谷 和之
  • 櫛部 淳道
  • 井上 泰彦
  • 梅村 建次
  • 大塚 広明
  • 千葉 悠矢
  • 坂井 裕美
出願人
  • 国立研究開発法人物質・材料研究機構
  • 株式会社竹中工務店
  • 淡路マテリア株式会社
発明の名称 低サイクル疲労特性に優れるFe-Mn-Si系合金鋳造材 UPDATE 外国出願あり
発明の概要 【課題】構造用建築材等として有用な、低サイクル疲労特性に優れた新しいFe-Mn-Si系合金鋳造材の提供。
【解決手段】Mn及びSiを必須成分元素として含有し、かつ、Cr、Ni、Al、Cのうちの1種以上を任意成分元素として含有し、成分組成が、5質量%≦Mn≦35質量%、1.5質量%≦Si≦6.5質量%、Cr≦15質量%、Ni≦15質量%、Al≦3質量%、C≦0.4質量%、残部Fe及び不可避不純物であるFe-Mn-Si系合金鋳造材であって、式(ア)の条件を満する、Fe-Mn-Si系合金鋳造材。式(ア):37<[%Mn]+0.3[%Si]+0.7[%Cr]+2.4[%Ni]+5.2[%Al]+28[%C]<45、かつ、式(イ):[%Ni]+30[%C]+0.5[%Mn]>0.75[%Cr]+1.125[%Si]+2[%Al]
【選択図】図2
従来技術、競合技術の概要

鋳造は古代からある金属の加工方法であり、金属を融点より高い温度で熱して液体にした後、型に流し込み、冷やして目的の形状に固めることで、様々な形状に加工することができる。現代でも、鋳造は多くの輸送機器部品や機械工作の躯体部品など少量生産品から大量生産部品などの製造に幅広く用いられている。また鋳造は塑性加工や切削加工では製造が難しい硬い材料、脆性的な材料、複雑な形状の製品の製造に利用されている。

ただ、鋳造により製造された鋳造材は固液の体積差に起因する凝固収縮や成分元素の再分配により、空隙、偏析、介在物などの鋳造欠陥を含む場合がある。これら鋳造欠陥は通常鋳造材の機械的特性を著しく低下させるため、従来より、凝固を制御して欠陥のない製品を生み出すようにしている。それでも一部の構造用金属材料の重要部品などの場合には、均一化熱処理や、均一化を促進させる鍛造・圧延等の塑性加工を施して、鋳造欠陥を取り除き、材質を均一化してから用いられる。耐食性や、耐摩耗性などの特殊な用途に用いる機械部品などは一般に機械加工性が悪いため鋳造により作製される場合が多いが、このような部品は、鋳造後均一化熱処理を行い、材質を均一化してから用いることもある。

しかしながら、従来より鋳造欠陥の克服について様々な工夫、改善がなされてきているものの、低サイクル疲労変形のように、大きな塑性ひずみを繰り返し負荷する場合には、鋳造欠陥が疲労き裂の発生源となるために、容易に疲労破壊してしまい、均一化処理した金属材料と比較して鋳造材の低サイクル疲労寿命は著しく短いという課題があった。

このため、鋳造材を強度部材として使用する際には鍛造・圧延等で均質化された材料に比べ安全率を高めに設定し、疲労破壊を防止するために鋳造材に生じる応力を弾性範囲とするなどの配慮が必要であり、例えば、建築部材では大地震時にも弾性範囲で使用する部材にしか使えないなど、強度を十分に生かした効率的な素材の使い方ができないため不経済であった。

このような背景において、近年になって建築用制振ダンパーの心材としてFe-Mn-Si系合金が特許文献1において提案されている。この合金は優れた低サイクル疲労寿命を示すとされている。そして、このFe-Mn-Si系合金は、ある方向への塑性変形による、面心立方(FCC)構造のγオーステナイト相から最密六方(HCP)構造のεマルテンサイト相へのマルテンサイト変態と、これに続く逆方向への塑性変形によるεマルテンサイト相からγオーステナイト相への逆マルテンサイト変態が、交互に、かつ、可逆的に発生する仕組みにより、繰り返し塑性変形による原子配列の変化が可逆的に生じ、金属疲労の原因となる格子欠陥の蓄積が起こりにくいために、従来材より飛躍的に優れた低サイクル疲労寿命を示すとされている。

非特許文献1には、Fe-Mn-Si系合金の低サイクル疲労寿命を改善するための設計指針として、(A)γ相とε相の自由エネルギー差を小さくすること、(B)体心立方構造のα’マルテンサイト相の形成を抑制すること、(C)約4質量%のSiを添加すること、の三条件が開示されている。そして、特許文献1では、(A)の条件を満足させるための成分設計指針として、以下の式(X)で与えられるMn当量([%Mn]eq)を定義して、化学成分としてのMn、Cr、Ni、Alの質量%([%Mn]、[%Cr]、[%Ni]、[%Al])の配合割合が式(Y)を満足すべきであることが開示されている。
[%Mn]eq =[%Mn]+[%Cr]+2[%Ni]+5[%Al] (X)
37<[%Mn]eq<45 (Y)

また、特許文献1では、条件(B)を満足させるための成分設計指針として、いわゆるシェフラー状態図の概念を取り入れ、Mn、Cr、Ni、Si、Alの質量%([%Mn]、[%Cr]、[%Ni]、[%Si]、[%Al])の配合割合が、以下の式(Z)を満足すべきであるとしている。
[%Ni]+0.5[%Mn]>0.75[%Cr]+1.125[%Si]+2[%Al] (Z)

さらに、特許文献1では、条件(C)の最適Si濃度4質量%を中心に、Fe-Mn-Si系合金が、通常の鋼材よりも有意に高い低サイクル疲労寿命を示す条件が、0質量%<Si<6.5質量%、さらに望ましくは、2質量%≦Si≦6質量%であるとしている。

非特許文献2によれば、以上の設計指針を基に、従来比10倍の低サイクル疲労寿命を有するFe-15Mn-10Cr-8Ni-4Si合金が開発され、超高層ビルのせん断パネル型制振ダンパーとして採用されており、長周期地震動に対する耐久性にも優れた高機能制振ダンパーとして期待されている。このような優れた疲労耐久性は、せん断パネル型制振ダンパーのみならず、様々な部材への活用が期待されるとしている。

しかし、特許文献1、非特許文献1、2で開示されているFe-Mn-Si系合金は、鋳塊を鍛造・圧延して熱処理することにより、板状に成形するとともに、粗大で結晶配向性が高い鋳造組織を均一微細なランダム等軸晶組織にすることで、欠陥の少ない材質としたものであり、特許文献1、非特許文献1、2では、鋳造材の低サイクル疲労特性については開示も示唆もされていない。

Fe-Mn-Si系合金鋳造材としては、Fe-Mn-Si系形状記憶合金の締結部材が特許文献2に開示されている。特許文献2では、目的とする製品部材に近い形状の素部材に鋳造した後、適宜加熱処理を施すことで、熱間加工工程を経ることなく簡略な製造工程で、かつ、従来では簡単には得られなかった装飾的なもしくは複雑な形状の締結部材をも、容易に得ることができる方法が提供されている。また、特許文献3では、遠心鋳造法により製作された鉄系形状記憶合金製パイプ用継手において、横断面内のマクロ組織の中で、柱状晶の面積率を50%以上とすることにより、高い内径収縮率が得られることが開示されている。

だが、特許文献2および3は、鋳型への鋳造、または連続鋳造で製造したFe-Mn-Si系形状記憶合金継手が、形状記憶効果を発現させるために十分な変形能を有することを示唆しているが、低サイクル疲労変形に対する耐久性については開示も示唆もされていない。

構造用材料として広く用いられている類似の鋳造材としては、高Mn耐摩耗鋳鋼や高Mn非磁性鋳鋼が挙げられる。高Mn耐摩耗鋳鋼は、耐摩耗性や強度に優れ、レールポイントなどに使用されている。強度や加工硬化率が高く、塑性加工による成形が難しいため、鋳造により作製される。特許文献4には、高Mn耐摩耗鋳鋼中のオーステナイト相がき裂進展に対する高い耐久性を示すことも開示されている。また、特許文献5には、高C高Mn非磁性鋼の連続鋳造法が開示されている。

特許文献4および5は、高Mn鋳鋼の力学特性が優れていることと、その大量生産技術が十分確立していることを示すものであり、疲労耐久性の高さについても示唆するものであるが、Fe-Mn-Si系厚板で得られた従来比10倍もの低サイクル疲労寿命が得られるかどうかについては開示も示唆もされていない。

特許文献6では、Siを4.7~5.7質量%、Crを0.8~2.2質量%、Mnを2.0~5.5質量%、Niを11~14質量%、Cuを0.8~1.8質量%含むオーステナイト系鋳物が開示されている。ただ、特許文献6の鋳物はCを2.1~3.1質量%を含むため、鋳鉄に相当し、Cが2.1質量%よりも少ない鋳鋼の分類とは全く異なる材料である。また、同文献には疲労耐久性についての言及はない。

特許文献7には、Si1.0質量%以下、Mn10~20質量%、Cr15.0~20.0質量%、Ni2.5~6.0質量%を含む高Mn非磁性鋳造体が開示されている。だが、特許文献7での鋳造体はCの含有量から鋳鋼に分類されるもののSi含有量が低く、同文献には疲労耐久性については示唆されていない。

特許文献8には、Si0.2~1.5質量%、Mn10~24質量%、Cr12~20質量%、Ni4質量%未満を含有する高温耐摩耗材が開示されている。この高温耐摩耗材は、C含有量0.2~0.5質量%であるため鋳鋼に分類される材料であるが、特許文献8には耐摩耗性、耐割れ性に優れることに言及されているものの、低サイクル疲労寿命に関する記載はない。

産業上の利用分野

本発明は、低サイクル疲労寿命に優れるFe-Mn-Si系合金鋳造材に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
MnおよびSiを必須成分元素として含有し、かつ、Cr、Ni、Al、Cのうちの1種以上を任意成分元素として含有し、成分組成が、
5質量%≦Mn≦35質量%、
1.5質量%≦Si≦6.5質量%、
0質量%≦Cr≦15質量%、
0質量%≦Ni≦15質量%、
0質量%≦Al≦3質量%、
0質量%≦C≦0.4質量%、
残部Fe及び不可避不純物であるFe-Mn-Si系合金鋳造材であって、次式(ア)
37<[%Mn]+0.3[%Si]+0.7[%Cr]+2.4[%Ni]+5.2[%Al]+28[%C]<45 (ア)
かつ、次式(イ)
[%Ni]+30[%C]+0.5[%Mn]>0.75[%Cr]+1.125[%Si]+2[%Al] (イ)
(式中[%Mn]、[%Si]、[%Cr]、[%Ni]、[%Al]、[%C]は、Mn、Si、Cr、Ni、Al、Cの質量%を意味する)
の条件を満足することを特徴とするFe-Mn-Si系合金鋳造材。

【請求項2】
成分組成が、
25質量%≦Mn≦35質量%、
2質量%≦Si≦6質量%、
0質量%≦Cr≦8質量%、
0質量%≦Al≦3質量%、
0質量%≦C≦0.2質量%、
残部Fe及び不可避不純物であることを特徴とする請求項1に記載のFe-Mn-Si系合金鋳造材。

【請求項3】
成分組成が、
10質量%≦Mn≦20質量%、
2質量%≦Si≦6質量%、
5質量%≦Cr≦15質量%、
5質量%≦Ni≦10質量、
0質量%≦C≦0.2質量%、
残部Fe及び不可避不純物であることを特徴とする請求項1に記載のFe-Mn-Si系合金鋳造材。

【請求項4】
成分組成が、
5質量%≦Mn≦8質量%、
2質量%≦Si≦6質量%、
9質量%≦Cr≦15質量%、
9質量%≦Ni≦15質量%、
0質量%≦C≦0.4質量%、
残部Fe及び不可避不純物であることを特徴とする請求項1に記載のFe-Mn-Si系合金鋳造材。

【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のFe-Mn-Si系合金鋳造材を用いた制振装置。

【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のFe-Mn-Si系合金鋳造材を用いた鉄骨構造物または鉄筋コンクリート構造物。

【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載のFe-Mn-Si系合金鋳造材を用いた制振装置用鋳造材。

【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載のFe-Mn-Si系合金鋳造材の制振装置、鉄骨構造物または鉄筋コンクリート構造物への使用。
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 登録
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