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抗ヒトノロウイルス剤

国内特許コード P210017999
整理番号 (S2019-0175-N0)
掲載日 2021年12月20日
出願番号 特願2020-562517
出願日 令和元年12月27日(2019.12.27)
国際出願番号 JP2019051496
国際公開番号 WO2020138447
国際出願日 令和元年12月27日(2019.12.27)
国際公開日 令和2年7月2日(2020.7.2)
優先権データ
  • 特願2018-244213 (2018.12.27) JP
発明者
  • 片山 和彦
  • 藤本 陽
  • 芳賀 慧
  • 戸高 玲子
  • 佐藤 俊朗
出願人
  • 学校法人慶應義塾
  • 学校法人北里研究所
発明の名称 抗ヒトノロウイルス剤
発明の概要 本発明の課題は、ヒトノロウイルスの感染と増殖を抑制することが可能な、抗ヒトノロウイルス剤を提供することである。本発明者らは、フコーストランスフェラーゼ(FUT)による糖鎖修飾を阻害する活性を伴うフコースアナログを有効成分とする抗ヒトノロウイルス剤を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。当該有効成分としては、例えば、下記式(III)又は(IV)のフコースアナログあるいはそれらの塩が例示される。
【化1】
(省略)
[式中、式(III)又は(IV)のそれぞれは、α若しくはβアノマーであり、
、R及びRのそれぞれは、-OH又は-OAcであり、
は、ハロゲン原子、-OH又は-OAcであり、
は、-CH、-C≡CH、-C≡CCH、又は-CHC≡CHである。]
従来技術、競合技術の概要

ノロウイルス(Norovirus)は、カリシウイルス科にある4つのウイルス属の1つであり、現時点でウイルス種としてはノーウォークウイルス(Norwalk virus)が唯一である。

ヒトノロウイルスは、主に食品(魚介類や水)を介してヒトに感染し、食品中100-1000個程度の僅かなウイルス粒子であっても感染可能であり、非常に感染力が強い。ヒトノロウイルスによる食中毒は、ウイルス性食中毒の90%以上を占めている。

ヒトノロウイルス感染症の主症状は、嘔気、嘔吐、下痢であり、発熱も認められる。嘔吐や下痢は、一日数回から酷いときには10回以上であり、吐物には胆汁や腸内物が混じることがあり、激しい苦痛に見舞われる。

北米のデータでは,年間約2000万人がヒトノロウイルス感染症を罹患し、約200万人が病院を受診、40万人が救急に運ばれ、7万人が入院、7000人が死亡している。

日本国におけるヒトノロウイルス感染による嘔吐下痢症は、国立感染症研究所の推計によると、数十年にわたり年間100-300万人に上っており、これによる深刻な社会・経済的影響が認められる。このようなことから、日本国国民からのヒトノロウイルスに対する抗ウイルス薬、ワクチンなどに対する要望は高く、行政上も開発優先順位は第4位に位置づけられている。日本国では、ヒトノロウイルス感染症が直接の死因となった死亡例はほとんど無いが、他の病気の罹患者や高齢者の場合は、長期化や重篤化の高いリスクがある。また、上記の症状が治まっても、感染力が非常に強いヒトノロウイルスの便中への排泄は7-14日間、長い場合は2ヶ月以上続き、その間の学校や職場に復帰をすることができない。さらに、全人口の数パーセントの割合で常にヒトノロウイルスの不顕性感染者が検出される。ヒトノロウイルスの不顕性感染者は、感染者自身ウイルス感染に気づかないため、例えば、当該不顕性感染者が食品従事者として働くことで、大規模食中毒を引き起こすことが報告されている。

このようにヒトノロウイルスは、罹患頻度が高く、患者の苦痛を伴う食中毒性のウイルスで、かつ、感染力が強く、不顕性感染が認められるウイルスであるが、特効薬は現状では存在しない。経口又は点滴等による水分補給により、脱水症を防ぎつつ、経過観察が基本であり、その他は制吐剤や整腸剤投与等の対処療法が行われる。止瀉剤の使用は、ウイルスを腸管内に溜めてしまい回復を遅らせることになるので、少なくとも発症当初においては消極的な指導がなされている。

2002年にフランスのグループが、ヒトの組織血液型抗原(HBGA)にヒトノロウイルスのウイルス様中空粒子(VLP)が結合することを報告し、この分子がヒトノロウイルスのレセプターである可能性が提唱された(非特許文献1)。

その後、ヒトボランティアによる検証が進み、HBGA非分泌型個体(non-secretor individual)は、ヒトノロウイルスが感染しにくく、HBGA分泌型個体(secretor individual)は、ヒトノロウイルスに感染しやすいことが明らかにされた(非特許文献2)。

しかしながら現在は、HBGA自体はヒトノロウイルスの細胞内への侵入を司るレセプターではない。これは以下の理由に依っている。

secretor status つまり、HBGAを唾液や粘膜に分泌するかどうかは、FUT2(フコース転移酵素2番、1-8番まである内の2番目)の遺伝子多型と関係があるとされている。しかしながら、HBGAが細胞表面に発現していない細胞にFUT2遺伝子を導入して、HBGAの分泌と細胞表面での発現を行っても、当該細胞へのヒトノロウイルスの感染は成立しない。従って、HBGA自体はヒトノロウイルスの細胞内への侵入を司るレセプターとはいえず、FUT2遺伝子多型とヒトノロウイルス感染感受性の間の因果関係(直接的、間接的関係)については、未だ解明されていない(非特許文献3)。

特許文献1は、後述する本発明の抗ノロウイルス剤の有効成分であるフコースアナログについて、主に抗がん剤用途が開示されている先行技術文献である。特許文献1には、感染症治療用途についての一般的な記載は認められるが、実施例は開示されていない。また、特許文献1において列挙されたウイルスの中にノロウイルスとその近縁の下痢症ウイルスは開示されておらず、しかも特許文献1において記載されている対感染症における作用機序は免疫応答の亢進であり、本発明の抗ノロウイルス剤とは全く異なっている。

特許文献2には、実施例で用いた2Dオルガノイドが記載されている。

産業上の利用分野

本発明は、感染症治療薬、さらに具体的には抗ヒトノロウイルス剤に関する発明である。

特許請求の範囲 【請求項1】
フコーストランスフェラーゼ(FUT)による糖鎖修飾を阻害するフコースアナログ又はそれらの塩を有効成分とする、抗ヒトノロウイルス剤。

【請求項2】
フコースアナログにより糖鎖修飾を阻害されるフコーストランスフェラーゼは、FUT2を含んでいる、請求項1に記載の抗ヒトノロウイルス剤。

【請求項3】
下記式(III)又は(IV)のフコースアナログあるいはそれらの塩を有効成分とする、抗ヒトノロウイルス剤。
【化1】
(省略)
[式中、式(III)又は(IV)のそれぞれは、α若しくはβアノマーであり、
、R及びRのそれぞれは、-OH、又は-OAcであり、
は、F(フッ素原子)若しくはCl(塩素原子)であるハロゲン原子、-OH、又は-OAcであり、
は、-CH、-C≡CH、-C≡CCH、又は-CHC≡CHである。]

【請求項4】
前記抗ヒトノロウイルス剤において、Rが前記ハロゲン原子の場合、R、R及びRのうち少なくとも1つが-OAcであり;
が-C≡CH、-C≡CCH、又は-CHC≡CHの場合、R、R、R及びRのうち少なくとも1つが-OAcである、請求項3に記載の抗ヒトノロウイルス剤。

【請求項5】
前記抗ヒトノロウイルス剤において、Rが前記ハロゲン原子の場合、Rは-CHであり;Rが、-C≡CH、-C≡CCH、又は-CHC≡CHの場合、Rは、-OH、若しくは-OAcである、請求項3又は4に記載の抗ヒトノロウイルス剤。

【請求項6】
前記抗ヒトノロウイルス剤において、Rが前記ハロゲン原子の場合、R、R及びRの全てが-OAcであり;
が-C≡CH、-C≡CCH、又は-CHC≡CHの場合、R、R、R及びRの全てが-OAcである、請求項3-5のいずれか1項に記載の抗ヒトノロウイルス剤。

【請求項7】
前記抗ヒトノロウイルス剤において、RはF(フッ素原子)である、請求項3-6のいずれか1項に記載の抗ヒトノロウイルス剤。

【請求項8】
前記抗ヒトノロウイルス剤において、Rは-C≡CHである、請求項3-7いずれか1項に記載の抗ヒトノロウイルス剤。

【請求項9】
有効成分であるフコースアナログあるいはそれらの塩は、式(III)のフコースアナログあるいはその塩である、請求項3-8のいずれか1項に記載の抗ヒトノロウイルス剤。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2020562517thum.jpg
出願権利状態 公開


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