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撥水性高分子素材およびその製造方法

国内特許コード P04A005034
掲載日 2004年11月29日
出願番号 特願平10-331313
公開番号 特開2000-154464
登録番号 特許第3044302号
出願日 平成10年11月20日(1998.11.20)
公開日 平成12年6月6日(2000.6.6)
登録日 平成12年3月17日(2000.3.17)
発明者
  • 新居 孝之
  • 塚田 益裕
出願人
  • 農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所長
発明の名称 撥水性高分子素材およびその製造方法
発明の概要 【課題】 風合い感の低下も起こらず、優れた耐久性と撥水性ならびに耐摩耗性を持つものであって、処理時における素材の劣化が防止された撥水性高分子素材およびその製造方法の提供。
【解決手段】 高分子素材と分子内に一つの二重結合を持つ長鎖二塩基酸無水物とをアシル化反応させ、高分子素材の反応部位に長鎖のアシル基を導入することで撥水性機能を持つ高分子素材を得る。該無水物は、下記一般式(I):
【化5】
(但し、式中nは10~19の整数である)で表され、これを有機溶媒に溶解して用いる。また、撥水性高分子は、式:S-NHCO-CH2-CH(COOH)-CH2-CH=CH-Cn2n+1(但し、Sは高分子素材の分子であり、nは10~19の整数である)、または式:S'-OCO-CH2-CH(COOH)-CH2CH=CH-Cn2n+1(但し、S'は高分子素材の分子であり、nは10~19の整数である)を有する。
従来技術、競合技術の概要


従来、良好な染色性と特徴ある風合い感を持つ絹繊維は、古くから衣料素材として利用されてきた。絹繊維は伝統的に和装用素材として用いられてきたが、近年、生活様式が変わり、行動的な衣料素材が次第に好まれるようになったため、和装用素材としての絹繊維の利用は減少する傾向にある。絹繊維素材の需要を拡大するためには、伝統的に用いられてきた和装分野の素材はもとより、洋装分野の素材として利用開発することが求められている。例えば、シャツ、ブラウス製品、ならびに上衣、帽子等のカジュアル分野の素材として利用するための技術開発が重要である。そのためには、天然の絹繊維が持つ優れた実用機能特性を失うことなく、絹繊維を化学加工して、本来持ち合わせていない、例えば形態安定性、耐熱性、撥水・撥油性等の諸機能を付与することで改質した絹繊維およびその繊維製品を得ることが必要である。形態安定性、耐熱性、撥水・撥油性等の諸機能を絹繊維に付与しようとすると、化学加工の際に生じる素材劣化の問題があり、また、製品の風合い感を損なうことが多いので、こうした問題のない加工が望まれる。この点は、羊毛繊維や他の蛋白質繊維についてもいえることである。
絹繊維や羊毛繊維等の蛋白質繊維は、その表面が強い親水性を示すために用途に制約があるが、この表面に撥水性機能を付与することができれば、衣料素材、非衣料素材として利用できる可能性が広がる。このように蛋白質繊維の表面に撥水性機能を発現させる技術が確立できれば、衣料分野はもとより医用分野などの先端素材としても利用できる機能性に富む素材が提供できる。
また、絹繊維や、絹繊維/ポリエステル繊維、または絹繊維/羊毛繊維等の絹繊維複合素材の表面は、汚れが付き易く、かつ洗濯時の汚れが落ち難い等の問題があるため、シャツやブラウス等のカジュアル用途にこれらの絹繊維や絹繊維複合素材を用いる場合には、イージー・ケア(洗濯の後にアイロン掛け不要など、手数のかからないものをイージー・ケアと呼ぶ)の点で多くの制約があった。
絹繊維の実用機能性の欠点を補い、衣料素材としての性能を改善する技術が種々提案されている。例えば、特開平3-213572号公報には、水溶性エポキシ化合物で先ず絹繊維織物を処理し、更にパーフルオロアルキル基とポリオキシエチレン基とを同一分子中に有する撥水・撥油加工剤と帯電防止剤を含む処理液で処理し、次いで熱処理することにより絹繊維に防汚機能を付与する方法が提案されている。しかしながら、この方法では、絹繊維に撥水・撥油性を付与するために行う加工過程、すなわち、エポキシ化合物による加工反応、更にそれに引き続く防汚加工、および熱処理等の複数の処理を繰り返し行っているので、絹繊維に物理的ならびに化学的な変化を繰り返し与えることになって、繊維の微細構造の変化が起こり、素材劣化や微細構造の破壊の危険性が高い。更に、この公開公報記載の方法において用いられている撥水・撥油加工溶液には、帯電防止用加工剤として20g/L程度の高濃度の非イオン化合物が含まれているので、仕上げ加工後の絹繊維の表面には若干親水性が付与されてしまい、目的とする防汚加工の効果が得られ難いという問題がある。また、撥水・撥油加工剤は、絹繊維の内部に浸透することなく、繊維表面で3次元的に架橋結合して樹脂化するため、加工剤の付着量が多いと絹繊維が固くなり絹繊維本来の風合い特性が失われるという問題もある。
また、絹繊維のような蛋白質繊維の表面に撥水性を付与する方法としては、高重合エポキシ変性シリコーンとベースポリマーとからなるエマルジョン型繊維処理剤により樹脂加工して、シリコーンを繊維試料表面に導入する技術が知られている。即ち、この技術は、濃度3~30g/Lのこれらのエマルジョン型繊維処理剤溶液中に絹織物を浸漬・パッディング(処理液中に織物等を通過させ、ローラーで絞り、処理液をよくしみ込ませること)し、取り出して搾液し、乾燥することで加工を完了させる技術である。かかる方法によると繊維製品に柔軟仕上げを行うことができ、柔軟性、平滑性、風合い等に優れた製品とすることができるものの、加工効果を上げるために加工剤濃度を高めると、繊維表面への被覆樹脂量が増加し、風合い、柔軟性、光沢等が劣悪となり、その結果繊維製品が固くなる。さらには、蛋白質繊維が本来有するしなやかで吸湿性に富んだ特性が損なわれ、衣料素材としての価値が半減するという問題もある。

産業上の利用分野


本発明は、撥水性高分子素材およびその製造方法に関するものであり、更に詳細には改質処理時、すなわち化学修飾反応時に高分子素材の材質を劣化することが無く、また、風合い感の低下がなく、かつ、耐久性と持続性に優れた撥水性を有すると共に良好な耐摩耗性を備えた撥水性高分子素材およびその製造方法に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
分子内に一つの二重結合を持ち、下記の一般式(I):
【化1】
(但し、式中nは10~19の整数である)で示される長鎖二塩基酸無水物と塩基性アミノ酸側鎖を有する高分子素材とアシル化反応させることにより改質された下記一般式:
S-NHCO-CH2-CH(COOH)-CH2CH=CH-Cn2n+1
(但し、Sは該高分子素材の分子であり、nは10~19の整数である)を有する撥水性高分子素材。

【請求項2】
前記長鎖二塩基酸無水物と高分子素材とのアシル化反応時に該素材が劣化することが無く、また、アシル化反応後の改質された撥水性高分子素材は、風合い感の低下がなく、かつ、優れた撥水性および耐摩耗性を有するものであることを特徴とする請求項1記載の撥水性高分子素材。

【請求項3】
前記高分子素材は、絹蛋白質、羊毛ケラチン、またはコラーゲンであり、その形状は膜状、繊維状、粉末状、または塊状であることを特徴とする請求項1または2記載の撥水性高分子素材。

【請求項4】
分子内に一つの二重結合を持ち、下記の一般式(I):
【化2】
(但し、式中nは10~19の整数である)で示される長鎖二塩基酸無水物と、ポリビニルアルコールからなる高分子素材とをアシル化反応させることにより改質された、下記一般式:
S'-OCO-CH2-CH(COOH)-CH2CH=CH-Cn2n+1
(但し、S'は該高分子素材の分子であり、nは10~19の整数である)を有する撥水性高分子素材。

【請求項5】
分子内に一つの二重結合を持ち、下記の一般式(I):
【化3】
(但し、式中nは10~19の整数である)で示される長鎖二塩基酸無水物と塩基性アミノ酸側鎖を有する高分子素材とを、有機溶媒中、60~90℃でアシル化反応させて、下記一般式:
S-NHCO-CH2-CH(COOH)-CH2CH=CH-Cn2n+1
(但し、Sは該高分子素材の分子であり、nは10~19の整数である)を有する撥水性高分子素材を得ることを特徴とする撥水性高分子素材の製造方法

【請求項6】
分子内に一つの二重結合を持ち、下記の一般式(I):
【化4】
(但し、式中nは10~19の整数である)で示される長鎖二塩基酸無水物とポリビニルアルコールまたはセルロースからなる高分子素材とを、有機溶媒中、60~90℃でアシル化反応させて、下記一般式:
S'-OCO-CH2-CH(COOH)-CH2CH=CH-Cn2n+1
(但し、S'は該高分子素材の分子であり、nは10~19の整数である)を有する撥水性高分子素材を得ることを特徴とする撥水性高分子素材の製造方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 登録


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